4 三日月の下、告げられた依頼
ケイオスはベッドに横になっていた。ようやく、夜になった。起き上がろうとする──。
「ああ~ん、待ってぇ」
背後から白い手が伸びてくる。まだ横になった状態だったケイオスは、ベッドの上で、後ろから女に抱きつかれている格好になる。
「私が慰めてあ・げ・る♡」
「……まだいたのか、鬼畜」
「あーん、お・こ・ら・な・い・で♡」
「そのバカ丸だしな声をやめろ」
「私の依頼を聞いてくれたらやめてあげる♡」
舌打ちし、ケイオスはメモリアを無視して起き上がり、窓辺へ歩いてゆく。
窓の向こうに、鎌のような赤い三日月。
「……こんな気分だったのか」
メモリアはベッドに腰かけ、息を吐く。
「何が?」
「俺に、過去を言い当てられた奴ら」
過去視で酷い目に遭ったのは、何もヘヴンが最初じゃない。
過去を暴き敵を陥れる──そんなふうに考える奴がいくらいても、おかしくはない。
「大したことねぇよな、俺の過去視なんて」
珍しく気弱に呟いて、ケイオスは喋りすぎたと思ったのか、口を閉ざす。
「そうね。確かに私のほうが、ずっとすごいわね? 私別に、あんたの過去調べても、傷なんで負わないし。ま、別に私の場合はデータ読んだだけで、あんたみたいに追体験──というより誰かと一体化して、過去を視られるわけじゃないけどね」
メモリアは、脚を揺らしながら髪を払う。
「……私ね、兄がいるの」
ケイオスが振り向く。
「……兄を、助けて欲しいの……」
「……どういうことですか」
ヘヴンは驚える声で訊いた。
「言ったとおりだ。この女の依頼を受ける。
明日にでも出発する。しばらく帰らない」
「……っ、ボクも行きます‼︎」
「来るな」
リビングに、三人はいた。
ダイニングからヘヴンの作ったクリームシチューの匂いがしていた。
「それは……探偵としての依頼ですか、それとも<過去視のダーク>としてですか」
「……後者だ」
「なら──、ボクも同行する!」
「ヘヴン」
「……ケイオスは言ったね? もうダークとしては生きない。過去視はしない。
その約束を……破るの?」
メモリアを睨む。
「こんな女のために……」
「……」
「ボクは、行く!」




