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WHITE LIE  作者: うさぎさん⭐︎
エピソード2  死に神のウィープ

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12/15

5 死神のウィープ

「お師様を……ご存じなんですか?」

「あのバカ魔法使いのラーフは……もう、四百年も前に死んだはず……!」

「……死んだ? ノーデータ」

「……奴のパペットは、すべて滅ぼしたはず」

「でも、私は生きていた。だけど再起動したのは、つい数年前。お師様の塔に雷が落ちた。ダストシュートにひっかかっていた私は、長い眠りから覚めた。

 ウィープウィープ……ウィープヲコロセ」

 ヘヴンは俯く。

「そうか……。でもなあ、ウルズ」

 顔を上げる。

「先に嘘をついたのは、ラーフのほうだぜ?」

「ウソ? ワカラナイワカラナイ。NO DATA」

 ヘヴンは何度も何度も頭を掻いた。

「……オレは」

 俯く。

「あの頃……信じてた……思ってた。ラーフは、ラーフだけは……。

 ──ガキだったんだ。試したんだ……ラーフの気持ちを。

 空音じゃない、確かな──本音の声を、聴きたかったから……」

 ウルズの瞳を見つめる。

「あぁわかってたさ。奴はオレの力を利用しようとしただけさ。

 オレは奴により、この世界に召還されたんだから。

 ……おまえと同じだ、ウルズ。奴にとってオレは、ただの人形と変わらなかった。最初から──最期まで」

 赤い月。風に騒ぐ木々。嗤う白銀の髪の少年。

「アイツは嘘をついた。許せない裏切りだ。少なくとも、その頃のオレには嗤って許せる類いのものじゃなかった。

 『おまえが好きだ、ウィープ』そういったんだ──おまえの師匠は。真っ赤な嘘を──……」

 空目遣いをする。

「だから、アイツの目の前で、アイツの女を──わざわざ崖から突き落として殺してやった。好きなら、その気持が嘘の音じゃない、本物の旋律なら、なら──女を殺されたくらいで、心変わりしないはずだろう?」

「ワカラナイ」

「奴はパペットどもをオレに差し向け……だけど、オレはちゃんと最期にチャンスをやったんだぜ?

 女と同じように壁っぷちに追いつめてやって、オレは訊いたよ。

 『オレのことが好きか?』って。アイツは、真っ赤な血を流しながら、夕焼けに赤く染まる崖下の海と、赤い鎌を持ったオレを見比べて、泣きながら言ったよ。

 『好きだ、ウィープ。助けてくれ』」

 ヘヴンは嗤った。

「──だから、殺ったんだ。ソウル・イーターで」

「ワ、ワカラナイ──ウルズには、よくわからない……」

「わかるだろう? オレだよ──オレが、ウィープだ」

 ウルズは目をむいた。

「ウィープウィープ──キサマガウィープ?」

 ウルズは嗤った。

「ソウカ──ナラバ、シネ」


 亀を背負って、ケイオスは帰ってきた。

 探偵所のドアから、中に放り込もうとして、気づく。亀が大きすぎ、ドアにつっかえる。

 舌打ちする。

 迅速に奪還してきた亀を睨む──、

 と、左耳の青いピアスが光り出す。

「…………」

 手をやる。そこに砕けたかけら。

「──ヘヴン……?」


「……ヘヴン⁉︎」

 夜の公園に、ヘヴンは独り佇ん(たたず)でいた。

「ケイオス──……」

 自分を見上げた少年の姿に、ケイオスはどこか、違和感を覚える。

 ヘヴンはボロボロのハーモニカを持って、何かの燃えかすを見下ろしていた。

「また、壊れちゃったね、ピアス……。明日にでも、替わり、買いに行く……」

 ヘヴンは訊いた。

「ケイオスは──ボクが、好き……?」

 ケイオスは黒い瞳を揺らした。

「ヘヴンじゃない、オレが好き?」

「……ヘヴン?」

「ライトじゃない、オレが好き?」

「……!」

 ケイオスはしばし考えるようにしてから、口を開こうとする。

 それをヘヴンは止めた。

「いいよ、言わないで。この世には空音しかない。そんなこともわからないくらい、オレはガキだったんだ」

 ヘヴンはいつもどおりに笑った。

「ボクは──ケイオスが好きだよ」


    ★   ⭐︎


 庭に捨てられたハーモニカに手を伸ばしかけ──ヘヴンはそれを蹴飛ばす。

「くだらない」

 赤い満月に背を向けて、自室に戻る。

 部屋の隅に、袋が置いてある。

 中に、赤い服が入っていた。

 ワードローブを開ける。

 白い服だらけ。

 これは、血の色だ。ケイオスがもっとも嫌う色。ピアスくらいならともかく……

 こんなの、

「着れるわけが、ないじゃないか……」


 ドールも、ハーモニカも、赤い服も、廃棄処分スクラップ

 だけど、本当は──……

「眠れ、哀れなマリオネット」

 一度だけ、

 あの赤い服には袖を通した。


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