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生真面目マリーは生きるために嘘をつく  作者: 苔茎花
第三章 仮面の少女

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#3 リア様と仮面の少女

 そんなものはただの流行歌。炎の精霊に嫌われたなんてデタラメもいいところだろう。くだらない心配を止めて生徒会長に会いに行った。さっきの精霊魔術の件を調べようと向かったのだ。

「失礼します」

生徒会室に入ると丁度生徒会長とカルロス先輩がいるのが、目に入った。

「生徒会長、精霊魔術にお詳しいと聞いたのですが———」

生徒会室に入って開口一番に行ったのだが、生徒会長よりもカルロス先輩が先に反応した。

「———やめとけ、やめとけ!」

「え?」

カルロス先輩が必死に止めてきた。

「そいつは精霊魔術に関しては面倒なんだ。後悔するぞ」

「カルロス君。誤解を与えることは———」

「何が誤解じゃ。話の雑談程度に精霊魔術を聞いたら七時間拘束されたんだぞ。七時間だぞ!」

「あれはまだ僕が若かった時だから加減が分からなかったんだよ。悪かったよ」

事実なのか。

「お前らがここで精霊魔術の話をしていくならこの部屋から俺は出ていくぞ!」

そんなミステリ小説なら死にそうな事を言って生徒会室から出て行ってしまった。

「⋯⋯」

「⋯⋯」

まあ、生徒会長が精霊魔術に詳しいことがわかって良かったんじゃないだろうか。

「それでなんですけど」

「君もこの空気でよく聴く気になったね」

「いえ、むしろそこまで詳しいなら聞く価値があると思っていますから」

「流石に今はそんな話し相手を考えない訳じゃないから」

「はい、それでなんですけど———」

そう言って本を見せた。

「こんな精霊魔術について詳しく載った本があるなんて」

やっぱりこの本は珍しいものだったか。

「それに著者を見て下さいよ」

生徒会長が本の著者にたどり着くのをイタズラを仕掛ける子供のように待った。

「え!?」

「ふふっ、びっくりしますよね。恐らくはリア様がイタズラで書いたみたいなんですよ」

生徒会長の顔を見ると動揺したせいか、瞳が濡れているように見えた。実際は身長差のせいで瞳が反射してそう見えているのだろうけど。

「これを買わせてくれないか」

「え!?」

思っていた反応とは違う反応が来た。

「お金ならきちんと払う。今すぐ動かせるお金だと100ボノド金貨になるのだが、それでどうだろうか。」

「ああ、いや、そういうつもりではなくて⋯⋯」

そうか希少な本であれば、それに見合った値段なのは当然だろう。

「君が渋るのはわかるが、どうだろうか。それとも君が待ってくれるのならもっと動かせるのだが」

「あの、そういうことじゃなくてですね。そもそもそれはクローバー家にあった書物なので私の物じゃないというか」

「じゃあ、リア君に尋ねればいいか」

流石に学生で金銭のやり取りをするのはどうかと思ったし、何よりもこの本を自分で読み切りたいという下心があった。

「いえ、そうではなくお貸ししますよ」

だから素直に交渉してみることにした。

「え?」

「いえ、最初から私には読めなくて生徒会長のお力を借りて読みたかったのです」

「———成る程、それでは写本にしてもいいかい?」

「どうぞ、どうぞ。私もそんなに価値がある本だと知らなかったので」

「これは精霊魔術だけを見ても価値がある書物だよ。僕には才能がないが、使える人が見たら家宝にする程だろうね」

「そこまでですか」

「早速借りてもいいかね?」

「はい、どうぞ」

そう言って渡すと生徒会長の目はキラキラと光り、少年の様に喜んでいた。何だかそこまで喜ばれるとこっちも喜んでしまう。

 それにもしかしたら生徒会長を利用して解読が進むかもしれない。生徒会長には恩が売れて、私は本を読めるようになる。一石二鳥だ。この出会いには、シズカ嬢に感謝しないといけない。そう思いながら生徒会室を離れた。


 生徒会室から教室に戻る最中で、窓ガラス越しに人だかりが見えた。人だかりのせいで何かわからなかったが、一瞬だけリア様が中心に見えた気がした。

「え?」

 仮面の少女に関して言えば、少し興味があった。しかし、話しかけるまではいかなかった。学んでいるクラスも違えば、出会うことも少なかったし、寮でもあまり見かけない。話す切っ掛けもなかった。

 しかし、まさかリア様が話しかけるとは思いもしなかったのだ。これが起きなければ気になる止まりだったと思う。

 昼下がりの廊下ではざわめきが起こっていた。それは何時もの喧騒とは違ったざわめきで何か事件でも起こった様だった

「##゜##€€#」

「・・・・・・」

言葉が分からない類まれなる美貌の青年と顔がわからない不思議な雰囲気を持った少女。その2人が話していれば、それだけで注目の的になるのは避けられなかった。

「失礼します」

2人のやり取りを覗く人垣をなんとか通り抜けて2人の前に出た。これは2人の間を取り持つ為として使命感として前に出たのだった。しかし、前に出たのは良いものの何をすればいいか頭が真っ白になりそうだった。だってこの2人が何を話しているなんて想像もつかなかったのだ。

取り敢えずリア様に近寄って小声で話しかけた。

「何やっているんですか?」

「#?」

何を問われているかわからない様子だった。

私以上にリア様はこの仮面の少女と接点などないはず。リア様が声をかける筈はない。と思ったが、1点だけ思い出した。

「ねえ、あの子ってリア様にお姫様抱っこされていた」

「ほんとだ」

誰か野次馬の声が自然と耳に入る。

「じゃあ、もう1人の子は?」

「通訳の子らしいけど。もしかして三角関係?」

よくも本人達がいる場で言えるものだ。

「騒ぎになってしまったので移動しませんか?」

リア様がこの子に何を尋ねたか直ぐに聞きたいが、こんな騒ぎの中で聞くべきではないと判断し、何処か人目のつかない場所へと移動した。人だかりができている場所を私が先頭をきって前に進む。後ろにリア様がいることを何度か確認しながら人気がない場所へと移動したか。

「あの、リア様」

後ろを確認するとリア様がしっかりと付いてきているのは確認できていた。

「仮面の少女は?」

「#?」

リア様は今更何を言っているんだという顔をしながら私達の進行方向と逆を指差した。まあ逃げられてしまったというわけだ。

「まあ、付いて来なかったのはこの際いいです。リア様はあの少女に対して何か用があったのですか?」

「%」

首を横に振った。

「何か用があって声をかけたんじゃないですか?」

「#」

今度は首を縦に振った。

「どういうことですか?」

リア様の言っていることからすると用があって声をかけたが、あの少女には用がなかったということになる。全くもって意味が通らない。

「棒棒」

「へ?」

リア様は精霊語を発した。それ自体は驚くことではない。しかし、リア様は恐らく普段喋っている語彙とは明らかに違う単語を口に出したのである。まるで外国語が意味のわからない雑音に聞こえるが如く、聞き取れなかった。

「リア様もう一度お願いします」

「棒棒」

「もう一度」

「棒棒」

忘れない様に頭に音を焼き付けた。私が知っている表音文字を組み合わせ、発した音を無理矢理でも文字にする。

恐らくはこれは固有名詞だ。

恐らくはリア様はこの固有名詞に対して話しかけたのだ。

しかし、それが何なのか、具体的にそれがどの様なものかはわかっていない。リア様には謎が多い。言葉でわからないことは周りの情報で埋めるしかない。あの少女について調べる必要があった。

 そう、私はここから彼女を調べ始めた。


 仮面の少女を調べるにあたり、心当たりとしては2つあった。

とは言えど一つは気が進まないものであった。

リア様と別れ、真っ先に教室へと向かうと少女に声を掛けた。話を要約して一応声を掛けましたというニュアンスを込めて嫌々伝えた。

「という訳で協力して下さいませんか?」

「そんな嫌々言われて協力すると思う? もっとお願いする態度というものがあるんじゃないの?」

協力を扇いだのは「学園の歩く火薬庫」と内心勝手に呼んでいるヴィクトリアさんだった。

「ではあまり気が進まないようですので、ヴィクトリアさんは参加されないということで」

と足早にその場を去ろうとする。

「待ちなさい」

が止められた。

「貴方私がその様な幼稚な煽りで乗せられると思ってるの?」

「いえ、ヴィクトリアさんが参加するとメリットも大きいですが、デメリットも大きいので、参加されないなら別に。という感じなのです」

これは煽りではなく本心だ。権力的な意味で彼女は恐らく学年の女子のトップと言って差し支えがない。彼女が一声かければ、案外簡単に仮面の少女までたどり着くかもしれない。それに彼女は仮面の少女について興味を持っていた。調べるのだったら、ヴィクトリアさんを使うのが、早道だとは思う。ただ、確かにたどり着きはするが、その後は絶対に面倒なことになると私の直感が言っていた。ヴィクトリアさんは何でも物事をストレートにやろうとする。複雑に考慮すべきことであってもだ。それが許されているのは彼女の性格の良さと親の権力があってのものだろう。

「ふむ、そこまで褒められると参加したくなってしまうわね」

「いえ! 参加したくないなら全然参加しなくていいです!」

「次からは最初から口を出されたく無ければ、私に知らせないことね」

「知らせずに実行したら一番面倒なことが起きるじゃないですか!」

「あら私のことがよくわかっているのね」

外野からヴィクトリア嬢とマリー嬢はいつも仲が良ろしいですねと言われるが、それは全くの見当違いだ。

「まあ、知ってしまった以上、勝手に動くのですけど」

「うっ、それは」

それはどんな脅しよりも私を狼狽させた。

「その反応も気に入らないと言えば気に入らないけどあなたを動揺させられるのならいいわ」

「———わかりました。それでしたら一緒に調べましょう」

勝手に動かれるよりは監視していたほうが良いだろう、ということで残念ながらヴィクトリアさんの参加が決まってしまった。とは言えど、彼女がいたら物事は円滑に進むのも確かだ。実際ヴィクトリアさんに黙ってことを進めていたら、もしかしたら平和に済むかもしれないが、途中でバレて勝手に突っかかってくるのは容易に想像できる。しかし、もし仮面の少女に接触するのなら、接触の仕方を考えなければならないだろう。彼女は権力を使うのも、周りに納得させながら進むのもうまい。そこは素直に尊敬している。ただ、彼女は大勢の人を納得させれるが、その大勢に入れなかった人には別に優しいわけではない。おそらくは仮面の少女も大勢の人には入らないだろう。そこだけが気になっているのだ。

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