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王子に恋をした村娘  作者: 悠木菓子
◇最終章◇

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151/157

第151話 新メンバー➁



 自身の護衛・ショールとチェザライに、アンジュの護衛・キュリバトは全員とそこそこ面識があるため簡単に済ませ、次に紹介したのはアンジュの護衛騎士・メリンダだ。オレンジ色の猫毛が美しく温和な顔つきの女性である。


 そしてクランツの護衛たちだ。まずは騎士のリック。ショールのような恵まれた体格の持ち主で、強面だが礼儀正しく真面目な性格だ。


 もう一人が、バラック研究室所属となったフィーだ。午前中は研究室で勤務し、午後はクランツの護衛を務めることになった。二百年前のクランツの間者では、と疑われているフィーを護衛につけることに反対の声も挙がっていたが、クランツとの相性はなかなかよかった。

 フィーはクランツの教育係的役割も担っている。好奇心旺盛で無邪気なクランツと、魔法学校での勤務経験だけでなく、各国を旅する逞しさと豊富な知識を持つフィーは、主従、師弟、兄弟、親子、友人、どれもが当てはまるような関係だ。


 最後にラハリルの護衛。騎士のスーランはラハリルの剣の師で、ニュイは上級風魔法士だ。二人とも長い黒髪が美しい女性で、もともとバッジャキラでも護衛を務めていた。



 ストレッチも終え、いよいよ稽古が始まる。


「レイディック。しっかり見てるんだ、ぞ・・・」

 レイフォナーは息子に稽古姿を見てもらいたかったのだが、アンジュの腕のなかですやすやと眠っていた。 

「くぅ・・・!残念だが、寝顔がかわいい!」


 本日の組み合わせは、剣術のレイフォナーとフリア、イルとラハリルに、体術のクランツとダンデリゼルだ。剣術組は木剣を手にし、訓練場の中央へと向かった。二組は距離を充分にとると、剣を構えた。


「フリアとの手合わせは何年ぶりだろうか」

「五年ぶり・・・でしょうか。貴重なお時間を割いていただいたのに、相手が私では物足りないかと思いますが、お手柔らかにお願いします」

「何を言う。私はフリアに勝ったことがないぞ」


 と言葉を交わした二人は、同時に踏み込んだ。



「アンジュ様からイルさんのお話、たくさん伺っています。国王陛下直々に、近衛騎士団にスカウトされたとか」

「評価されたのは剣の腕じゃなくて、特殊能力のほうっす」

「・・・その能力とやら、間違っても使わないでくださいね?」

「もちろん。あんたを死なせたら極刑だろうし、俺には叶えたい夢があるんで」

「では、はじめましょうか」


 剣を構えている二人は互いの出方を探っているのか、微動だにしなかった。



「ダンデってまだ若いのにすごいんだね」

「父や兄たちにはまだ手も足も出ないですけど」

「僕も・・・強くなれるかな」

「諦めず厳しい稽古にも耐え続ければ、いつのまにか強くなってますよ」

「稽古って、やっぱり厳しいの?」


 ニコリと笑みを浮かべたダンデリゼルは、クランツに基本動作から教えることにした。



 レイディックを抱えているアンジュはベンチに腰を下ろし、各組の様子をうかがっていた。


 レイフォナーもフリアも本気を出していないようだが、若干レイフォナーが押されているようだ。イルとラハリルのほうもイルが劣勢だ。バッジャキラ流の剣術に翻弄されている。踏み込みや斬り込むタイミングが合わず、なかなか攻撃を仕掛けられない。


 アンジュはごくっと喉を鳴らした。男性をも凌ぐ実力を見せつける女性陣を、素直にかっこいいと思った。


 体術組のクランツは筋が良く、ダンデリゼルのワクワクが伝わってくる。


「自分もはやく稽古に復帰したいな」

 アンジュが振り返るとフィーと目が合った。

「って思ってます?」

「そうですね・・・でも、私にはいまやるべきことがありますから」

 腕のなかで気持ちよさそうに寝ている息子の頬を撫でた。


 フィーは国家魔法士の制服である白いローブを纏っている。身長二メートルほどの彼が身に着けると、なかなかの迫力がある。そんな彼は、穏やかな顔でクランツを見つめた。


「フィーさんこそ、はやく旅に出たいなって思ってますか?」

「うーん・・・そうでもないです。いまの生活、意外とわるくないんですよ」


 だが実際、久しぶりの魔法学校勤務は相当忙しいようだ。バラックの手伝いや雑用をこなしつつ、この十五年分の研究資料に目を通しているのだ。それに加えて王族の護衛という任務に、気を休める暇もない。

 そんなフィーはクランツの境遇を知っているため、興味を持ったことはなんでも自由にやらせてあげたいと思っている。自分の知識や経験が役に立つのなら、いくらでも教えてあげるつもりだ。


「いまは、クランツ殿下のご成長を見守りたいと思っています」



 休憩時間となり、肩を落としながら汗だくで戻ってきたのはレイフォナーとイルだ。反対に、体術の面白さを知ったクランツと教師陣三人は足取りが軽かった。水分補給の最中も、談笑というより反省会のような会話だった。


 休憩が終わり、再開した稽古は予定終了時刻を過ぎても続いたのであった。



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