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王子に恋をした村娘  作者: 悠木菓子
◇最終章◇

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第148話 尾行



 アンジュとキュリバトは、馬車の中から外を眺めていた。

 ここは王都のとある大通りで、平民向けの飲食店や日用品店などが立ち並んでいる。お昼時ということもあって、人通りが多い。


 馬車のドアが開き、胸元で紙袋を抱えているチェザライが乗り込んできた。


「おまたせ〜」


 と言って、アンジュとキュリバトの向かいに座り、紙袋からいくつものパンを取り出して二人に渡した。チェザライはお昼ごはんを買いに行ってたのだ。


「美味しそう!」

「あの二人はまだ店にいるようだね〜」

「はい。ちゃんと会話できてるでしょうか・・・」

「というか、休日に同僚のデートを尾行するなんて悪趣味では?」

 キュリバトはそう言いながらも、店を見張りつつパンをかじった。



 数日前のこと。すっかり仲良くなったアンジュとラハリルは昼食をともにしていた。そのときラハリルが「メアソーグの王都は馬車のなかからしか見たことがない」と話したため、アンジュがショールに王都案内という名のデートを提案した。二人は婚約したものの、顔を合わせれば気恥ずかしさから目を合わせて話すこともできない。これをきっかけに仲が深まれば、という目的もある。


 ショールは了承したものの、少し戸惑っていた。王都は出身地であり庭のようなものだが、女性が好むような店には疎い。しかもラハリルは、ショールがよく通っているところに行きたいと希望した。どこに案内しようか一晩頭を悩ませたが、考えれば考えるほどわからなくなってしまった。そのためアンジュに相談し、王都に詳しい侍女たちと店や観光名所などをピックアップしたなかに、行きつけの店を組み込んだデートプランを完成させた。



 そして休みを合わせた彼らは、ショールとラハリルを尾行中だ。


「ショーくんは人生初デートなんだよ。プランは頭に叩き込ませたけど、ヘマをしたらフォローしてあげないと。あの二人がうまくいかなかったら、我らが王太子夫妻は離婚の危機なんだよ?」

「ちょっ・・・!チェザライ様、縁起でもないこと言わないでください!」


 離婚はないにしても、二人の婚約が流れれば、ラハリルがレイフォナーの二人目の妃となる可能性は捨てきれない。


「ショールさんとラハリル王女、店から出てきましたよ」


 ショール行きつけの飲食店を出た二人は、楽しそうに話をしながら馬車に乗り込んだ。多少、気恥ずかしさが抜けたように見えた。

 

「いい雰囲気なんじゃない?」

「そうですね。引き続き見守りましょう!」



 ショールとラハリルは広場へと向かった。ジャグリングやマジック、コントーションなどの大道芸に、ラハリルは笑ったり驚いたりと表情をくるくると変えながら見入っていた。

 その後訪れた雑貨店でも目新しい品が多かったようで、瞳をキラキラさせていた。これは何に使うのか、などとショールにいくつも質問し、二人はすっかり普通に会話できるようになっていた。


 馬車に乗って次の目的地に向かうあいだ、ショールは向かいに座るラハリルにプレゼントを渡した。包みを開けるとペンとインク、レターセットだった。


「気に入ってたようでしたので・・・よかったら使ってください」

「ありがとうございます!大事に使わせていただきますね!」


 ショールは、「これでお父様たちに手紙を書こうかしら」と喜んでいるラハリルを見てほっとした。何か贈り物をしては?とアンジュたちに言われていたのだ。だが他にも気になっていることがあり、思いきって聞いてみることにした。


「あ、あの!今日、楽しいですか・・・?」

「はい、とっても!」

「俺、女性とこういうこと慣れてなくて・・・ぎこちなくて、すみません」


 ふふっ、と笑ったラハリルはショールの隣に移動した。


「王都を見て回ることができましたし、この数時間でショール様をたくさん知ることもできました。なにより一緒にいられることが嬉しいです。でも・・・」

 ラハリルから笑みが消えた。

「ショール様こそ、私といて楽しいですか?そもそも私との縁談に納得されていないのでは?」


 この縁談はメアソーグ国王からの打診だが、ラハリル自身が望んだことでもある。ショールに無理強いしてしまったのではと気になっていた。


「はじめは確かに、なんで俺なんだ?と思いました。でもいまは・・・王命とか関係なくあなたのことをもっと知りたいし、その・・・よい夫婦になれると思っています。こんな俺の婚約者になってくださり、ありがとうございます」


 いまにも涙がこぼれ落ちそうになっているラハリルは、ショールに抱きついた。


「ちょっ、ラハリル王女!?」

「嬉しい!ショール様、大好き!」


 ショールは顔を真っ赤にしながらもたどたどしくラハリルを抱きしめ、この女性(ひと)を大事にしようと誓った。



 小窓から外を眺めていたアンジュたちは「あれ?」と声を揃えた。ショールとラハリルが馬車から降りてきたのだが、さっきまでのエスコートではなく手を繋いで歩いている。


「絶対、何かありましたよね!?」

「あのショーくんがラブラブしてるぅ〜!」

「心配いりませんでしたね」



 その後もデートは続き、初デートは大成功した。そしてその日の夜、アンジュはラハリルに思いっきりノロケられるのであった。



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