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王子に恋をした村娘  作者: 悠木菓子
◇最終章◇

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第147話 客人



 レイディックをマリーニに任せ、アンジュたちは貴賓室に向かった。


 室内には国王と王妃、ショール、そして客人の姿があった。姿勢よく椅子に座っていたその客人は、アンジュと目が合うと勢いよく立ち上がった。


「アンジュ様!!」

 と言うと、アンジュに駆け寄って抱きついた。


 それはバッジャキラ王国の王女・ラハリルだ。


「お久しぶりです、アンジュ様!しばらく王城でお世話になります!」

「お久しぶりです、ラハリル王女。ようこそお越しくださいました」


 レイフォナーの婚約者であったラハリルはバッジャキラ国王である父親を説得し、想い人であるショールとの婚約を勝ち取った。二人は夜会などで顔を合わせる程度だったため、仲を深めるために婚約の期間を設け、時期を見て正式に婚姻を結ぶ運びだ。そしてクランツの問題が片付くまでは、メアソーグ王城で過ごすことが決まっている。


 ラハリル本人は婚約が決まりすぐにでもメアソーグに行きたかった。だがレイフォナーの立太子と結婚発表に、アンジュの出産をも控えている王城は慌ただしいはず、と考えた父親にそれらが無事に済んでからと諭されていたのだ。


 アンジュは驚いていた。ラハリルとは一度話をしたことがあるだけで、抱きつかれるような親しい間柄ではない。なにより久しぶりに会うラハリルを別人のように感じた。

 以前バッジャキラ王宮で会ったときは、カスミソウのような控えめな印象だった。そんな彼女はいま、自由でのびのびと太陽の光を一身に浴びるヒマワリのような明るさを放っている。いまのラハリルが本来の姿なのだ。



 その後、今後について話し合いが行われた。


 ラハリルは隣に想い人が座っていることが嬉しいのか、ずっと頬を赤く染めている。それがショールにもうつったようで、二人は目を合わせられないほどモジモジしている。

 そんな状態でもしっかりと受け答えをしているラハリルは、ただで王城で世話になりたくないとの考えを示すと、とんでもないことを言い出した。


「何か役割や仕事を与えてほしいのです。例えば・・・ショール様はレイフォナー殿下の護衛ですので、私もアンジュ様にお仕えするのはいかがでしょう?剣の腕には自信があります!」

「私に・・・つ、仕え、ええええぇぇ!?」


 ラハリルが座っている椅子の横には、茶色の革製の鞘に収まったシンプルな剣が立てかけてある。


 王女であり、のちに伯爵夫人となる女性が何を言ってるのか。


 アンジュがそう混乱していると、さすがにその場の全員がラハリルの案を却下した。レイフォナーは椅子から乗り出し、隣のアンジュに耳打ちした。


「護衛はさせられないけど、これから長い付き合いになるよ」

「そうですね・・・」


 次期国王となるレイフォナーの婚約者候補として名が挙がった女性だ。外見の美しさだけでなく頭脳も器量も兼ね備えており、剣術にも優れている。理想ともいえる人物だ。


 そんなことを思っていたアンジュはある考えが浮かび、挙手をした。


「あ、あの、陛下!私から一つご提案が!」

「聞かせておくれ」

「私のお友達という役割はいかがでしょうか?私は妃教育が始まったばかりですし、ラハリル王女から学べることもたくさんあると思うのです。お友達という関係は、役割でも強いるものでもありませんが・・・その、ラハリル王女がお嫌でなければ・・・」


 アンジュはおそるおそるラハリルに視線を移した。予想外の提案だったようで目を丸くしていたが、すぐに笑みを見せた。


「嬉しい!ぜひお友達になってください!」

「わあ、ありがとうございます!」

「私もメアソーグについて学びたいので、アンジュ様にいろいろ教えていただきたいです」

「お役に立てるかわかりませんが・・・よろしくお願いします」


 本人の希望とはいえ、客人である王女に一体どんな役割を与えればいいのか、と頭を悩ませていた国王は安堵のため息をついた。


「では、ラハリル王女にはアンジュの友人兼先生をお願いしよう」

「はい!お任せください!」



 その日の夜はラハリルの歓迎の宴が開かれ、アンジュとラハリルはすっかり打ち解けたのであった。



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