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第68話 今年の文化祭は大忙し(その3):因縁の対バン

<AI依存度>:

ほぼそのまま使用:10%

AI文をベースに改稿:15%

作者独自の構成・設定・加筆:75%


今回、割と自分で書いたつもりだったんだけどな。演奏シーンの一部と(作者がピアノ以外の楽器が未経験)、バンド名・曲名を考えてもらったのが、たまったかもしれません。

あと、文化祭の流れを相談したのは、間接利用として真ん中にカウントされたっぽいです。

でも、ハルうたって、設定だけで、お話はほとんど考えてなかった中、慎吾の過去の♡♡♡とこのバンドのくだりは、シナリオとして昔からありました。今回、形にできましたよー。


挿絵(By みてみん)


~~~

特別収録!

文化祭バンドライブのパンフ作りました!

ちなみに、カバー曲の選曲はAIで、作者が知らない曲も一部ありますw

挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)

 文化祭までの約半月、チーム・アネックス、いや、「Team(チーム)☆ANNEX(アネックス)」のメンバーは、バンド演奏の練習に追われていた。

 まだ、設営とかの準備は始まっていないが、放課後や休み時間など、このところ、クラス内の話題は文化祭で持ち切りだ。

 榊(さかき)原(ばら)妙(たえ)子(こ)先生のクラス、二年五組は、昨年一年七組で大好評だった「ロリータカフェ」を今年もすることになった。実は前年の発案者であった玉(たま)井(い)絢(あや)那(な)は、バンドには参加せず、こちらの総監督となっていた。ノリノリの妙子を巻き込んで、クラス一丸となっていたところだ。

 バンドメンバーのうちドラム初心者の古(こ)波(は)蔵(ぐら)茉(ま)衣(い)子(こ)、それに一曲を覚えて歌い切らないといけないボーカルの杠(ゆずりは)千(ち)宥(ひろ)は、練習に余念がなかった。

 ピアノ経験者ですでに演奏もこなしており、なおかつロリカフェ初参加の新(しん)宮(ぐう)領(りょう)美(み)佳(か)は、前のめりでそちらの準備に参加していた。

 もともと、部活などで何か予定がある人たちは、クラス企画の準備・参加が限定的となるため、準備への参加が少なくても何か言われるわけではないのだが、そういう理由で熱量には差があった。

 二年七組は「“映(ば)え”が撮れる写真館」という、陰キャの樋(ひ)口(ぐち)健(けん)介(すけ)と朝(とも)長(なが)雛(ひな)灯(ひ)には縁遠い企画だった。健介は逆にバンドに没頭する言い訳になったし、雛灯に至っては元々漫研の運営にも携わっていて、そちらの仕事も、ある程度減らしてもらっている状態だ。

 二年六組は縁日だった。朝長慎(しん)吾(ご)は、自分の演奏はすでに申し分なかったが、演出や責任者としての事務的な対応で忙しかった。ただ、気分転換がてら、クラスの運営にも携わっていた。

 バンド不参加の杠二(つぐ)生(み)は、一年二組の謎解き企画の運営に、友人の若(わか)杉(すぎ)果(か)文(あや)と城(じょう)宏(ひろ)子(こ)とともに携わっていた。

 それが、チーアネの文化祭前、各クラスの参加状況だった。

 始業式後、その次の週末の全体練習を経て、ある日、バンド演奏に関する出演者説明会が行われた。打合せ自体は、各出し物で諸々行われているが、チーアネメンバーが参加するのは、二の五の出し物の責任者である玉井を除けば初だ。当然ながら慎吾が参加するが、もう一人連れてきてもよいとのことだったので、サポート役に「副代表」として茉衣子が参加した。

 もし軽音部部長殿に絡まれでもしたら面倒くさいと考え、開始時間ギリギリに入室した。軽音部からは各バンド一人ずつ、中(なか)尾(お)拓(たく)真(ま)と古(ふる)川(かわ)璃(り)早(さ)。目を合わせようともしない中尾と、彼と慎吾を心配そうに見る璃早が対照的だった。もう一組は、確か野球部の一年生たちと聞いている。こちらは代表一人だけらしい。機材の話まで一人で分かるのか?

 プリントがメンバー分用意されており、それに従って説明があり、質疑応答があった程度で、話自体はさほど時間がかからなかった。出番については実行委員会から案があったが、特段の反対意見も出ず、チーアネは三番目、十時四十五分からだった。ちなみにステージ自体は十時開演だ。

 必要な道具についての打ち合わせもありはしたが、軽音部や慎吾だけでなく、野球部の代表者も経験者らしく、スムーズに進んだ。演奏内容についてはレギュレーションが型通り提示されたのみで、詳細は聞かれなかった。

 そんなこんなで、三十分ほどで終了した。参加者各々が申し訳程度に「ありがとうございました」といった感じの挨拶を口にし、慎吾はいち早く席を立ち、回れ右した。

「慎吾くん」

 声をかけられた。振り向くと、璃早だった。

「ああ、璃早ちゃん、おひさ」

「こんちわ」

 横にいた、特段面識のない茉衣子は、申し訳程度に挨拶だけする。

「本当に出るんだね。びっくりしたよ。メンバーも多いね」

「ああ、半分素人集団だけどな。茉衣子(こいつ)含め。まあ、素人トリオがちゃんと聞かせられる演奏できるか、気にしといてくれ」

「がんばってね。……あ」

 璃早は奥の方を一瞥し、黙り込んだ。その視線の先を追うと、案の定、中尾がこちらを睨んでいる。

「あんとき言ったとおりだろ。部長殿の機嫌はとっとけよ。んじゃ」

 慎吾が小声で璃早に忠告する。

「うす」

 茉衣子もそう一声だけ発し、チーアネの代表と副代表は足早にその場を去っていった。


 今年も文化祭の朝は早い。開始は九時からであるが、早い生徒は五時過ぎに登校した者もいたらしい。大一番を控え、樋口健介は去年より早く来た。楽器の搬入やリハーサルは昨日のうちに終わっているため、まずクラスの運営に行く。とはいえ、あまり大きく携わっていたわけでもないため、責任者の、いわゆる「一軍女子」木下(きのした)に言われるがまま準備をするのみだ。

「樋口、あんたバンド出るんでしょ。無理しないで、そっち行っていいよ」

「お、おう」

 今はまだ慎吾も誰もバンドの準備には来ていないと思われるため、別に行っても何もない。ただ、いても役に立たないと判断されたのだろうと思い、素直に立ち去る。要は厄介払いなのだろうけど、ここで居座っても、評価が上がるわけでもない。

挿絵(By みてみん)

 教室を出た。そうなると、せめてもう一度だけ練習したいが、第二体育館には既に他のバンドのものまで置かれている中、そういうわけにもいかず、急に手持ち無沙汰になる。

 ひとまず、健介はぶらつくことにした。今日は、他のバンドは思い思いのステージ衣装を用意しているらしいが、チーアネは、わざと「ぽっと出てきた」感を出すのと、クラスや部活の宣伝をする目的もあり、衣装をあえて統一せず、五組の三名はロリータファッション、六組の慎吾は縁日の法被、漫研の雛灯はコスプレだった。写真館にそんなものは特になく、健介のみ普通に制服だが。

 今頃、五組は着替えているかもしれない。さて、二年六組の前を通る。

「やあ、健介くん、おはよう」

 早朝からやたら元気のいい綾(あや)香(か)雄(ゆう)人(と)だった。

「雄人か、テンション高いな」

「まあ、僕はお祭り男だからね。テンションも上がるよ」

「聞いたことねえよ。ところで、慎吾見かけた?」

「いるよ」

 雄人が教室内を指さす。すると、慎吾が、雄人と同様の法被を着て、設営に奔走していた。

「慎吾くーん!」

 頼んだわけでもないのに、雄人がご丁寧に慎吾を呼び出す。

「お、健介、お前は映えのやつ、いいのか?」

「お払い箱だよ。お前はお前で、直前なのに余裕だな」

「あんなん、ちょちょいだ、一曲ぐれえ。作詞作曲・朝長慎吾ぞ?」

「そりゃそうだが……」

「じゃあ、無理すんなよ。九時半、体育館(あっち)集合な」

 はあ。もう居場所がない。時刻はまだ七時。来るんじゃなかった。

「しゃあねえか」

 健介は鞄を取りにいったん七組に戻り、そのまま一時帰宅した。こういうとき、近所だと助かる。


 土曜日とはいえ、さすがに文化祭開始までに戻らないとまずいと判断し、八時五十五分に再登校した。

 家では、姉・有(ゆ)希(き)乃(の)から、お祭りの空気になじめない陰キャ弟に対し、最大級のため息が贈られた。それでも健介は、スコアを見つつ、エアギターならぬ「エアベース」状態で最終確認をしていた。

 下駄箱で靴を履き替えている頃、校内放送が鳴った。

『ただいまより、令和〇年度、春(はる)若(わか)栄(えい)久(きゅう)高校文化祭を、開催いたします――』

 七組に戻ると、また木下に何を言われるかわからないので、そこを避け、漫研の前に出向いた。雛灯は三十分だけ顔を出すと聞いていたのだ。

「あれ、健ちゃん、何してんの」

 どう聞いても雛灯の声だった。すでにコスプレしていた。十五年ほど前のアニメだが、最近劇場版が公開された某魔法少女アニメのキャラクターだった。健介でも知っている作品だ。イメチェン前の三つ編み眼鏡姿だった。なるほど、雛灯の自前の赤い眼鏡で対応できる。

「ひなちゃん……本格的だな」

「あはは、ありがと。七組はいいの?」

「役立たずだから、木下に追い出された。バンドに集中しろって。けど、楽器ないし、半(・)まで暇だから、こっちきた」

「そっか。よかったら、漫画見てく?」

「ああ」

 素人の漫画ではあるが、暇つぶしになる。部員八名でゆるっと活動しているという漫研は、三年生三名、二年生は雛灯を入れて二名、一年生三名で活動している。

 雛灯じゃないほうの二年生は面識ないが、相(あい)川(かわ)和(かず)彦(ひこ)というらしい。名前からすると、男子だろう。この相川の漫画、絵もいいし、なかなかに面白い。雛灯のも読みたかったが、この相川の作品を読んでいたら、時間がたっていたようだ。

「健ちゃん、健ちゃん、時間。もう九時二十分だからさ、行かない?」

「え?! ああ、行かないとな。悪い、つい読みはまった」

 雛灯は、部屋の前にいたコスプレ(何かはわからないが甲冑らしきものを着ている)をした男子生徒に「行ってきまーす」と声をかけ、漫研を後にした。

「あの人が、相川?」

「いや、三年生の先輩よ。今日で引退。相川くんは、健ちゃん、知らないか。慎吾たちのクラスメイトだけどね」

「ということは、六組か」

 健介は首をかしげる。


 第二体育館につくと、さっきと同様の法被姿の慎吾と、茉衣子・千宥・美佳のロリータトリオがいた。茉衣子は去年とは趣を変え、赤と白を基調にした甘めのロリータ。千宥は生成りに青系の小花柄を合わせたカントリー調、初参加の美佳は深い紫を基調とした上品なクラシカルロリータだった。

「おお……派手だなあ」

 健介がつぶやく。

「ステージだから派手に、だろ?」

「こういうの、いいわね。なんだか新鮮だわ。千宥さんもかわいい」

「えっ、ありがと」

 ステージだから派手に。まあ、茉衣子の言うことももっともである。ただ、気になることはある。

「ステージ、汗かかないか?」

「かくに決まってんじゃん。まあ、終わったら着替えるし」

 茉衣子は汗かきである。

「これさ、妙ちゃんのロリータ仲間のお古なんだってさ。あたしと体格が似てるって。妙ちゃんに相談したら、その人から、捨てる前のやつをもらったらしい」

「妙に用意がいいな……。てか、ロリータからロリータに着替えるのか?」

「たりめえじゃん」

「そっすか」

 健介が驚きあきれる。

 それにしても、改めて見て、「Team☆ANNEX」は統一感がない。ロリータ三名、それにコスプレ、法被、制服というありさまだ。急ごしらえ感をあえて出すのと、五~七組と漫研の宣伝のため、と慎吾は言っていたが、方針として間違っていないだろうか? 第一、健介は制服を着てても、何一つ宣伝にならない。

 健介はため息をつく。他のバンドはいい感じの衣装だぞ? 特に軽音部はステージに慣れているからか、二組ともいかにもなバンド衣装を持っている。

 野球部バンドは、完全にユニフォームで来た。しかし、統一感と分かりやすさでは、チーアネより数倍上だ。特に目を引いたのは、坊主頭だ。栄久の野球部員は、今時らしく、特に坊主にしているわけではなく、確か、ベースがもともと坊主頭だったのを除き、全員髪を伸ばしていたはずだった。しかし、今日になって、ほかの二人も五厘に刈っていた。なんなら、ベースも刈りなおしている。

「マルコメだなあ……」

 慎吾が横からぼそりとつぶやいた。バンド名は「(米)(ベー)'s(ス)坊る」(なお、一文字目は丸で囲んだ「米」である)。それこそ一年坊(・)主(・)にしてはなかなかの命名である。

 ちなみに、軽音部は、古川璃早が一年生を率いた四人組のCider(サイダー) Note(ノート)、それに部長の中尾拓真に、富(とみ)永(なが)駿(しゅん)・南(なん)里(り)妃(ひ)愛(め)華(か)・松(まつ)尾(お)咲(さき)・浦(うら)葉(よう)介(すけ)との五人でVELVET(ベルベット) RUSH(ラッシュ)だった。

 そのVELVET RUSHのリーダーがこっちを見た。そして、忌々しそうに目をそらしたのを、健介は見逃さなかった。富永と浦も顔をしかめている。さっちゃんこと松尾咲は戸惑い、妃愛華は無表情である。

「あれ」

 その時、千宥がつぶやいた。

「どうした?」

 健介が問う。

「あの人がひめか先輩なんだよね、たぶん。どっかで見たような……?」

 首をかしげる。

「マジか。有名人だからじゃね?」

「そ、そうだよね。気のせい気のせい」

 健介のコメントに、千宥がごまかすように笑った。


 十時だ。MCを務める二年七組、渡辺(わたなべ)啓(けい)太(た)郎(ろう)がステージに上がる。

「どうもー! 始まりました! 第三千七百四十五回、A.(栄)Q.(久) ROCK(ロック) JAMBOREE(ジャンボリー)、司会の渡辺啓太郎です! おおきに!」

 去年、健介はこの名前を見て、ジャンボリーの意味を調べたが、「人が大勢集まる、にぎやかなイベント・フェス」とか「大集会」という意味があるらしい。かなり大きく出た名前である。そして、渡辺は笑かそうとすると、スベる。

「俺はこの春大阪から越してきてんけど、毎年盛り上がると聞いてます。今年も四組の精鋭たちが集まってくれました。まあいっぺん上がってもらいましょー。どうぞー!」

 渡辺の呼び込みで、バンド四組が袖から出てくる。(米)'s坊るの応援に来たらしい野球部の野太い声や、軽音部のメンバーを呼ぶ声が目立つ。「拓真」が多いように思えた。チーアネも全く声援がないわけではないが、やはり急ごしらえで、野球部のような「組織票」もないためか、声援が少ない。しかし、後ろの方に、二生・果文・宏子の三人組を見つけた。この時間、自由時間をもらっていると聞いていた。果文が「健ちゃーん!」と叫ぶのが、なぜか聞こえた。

「意気込み語ってもらいましょ。(米)'s坊るの高(たか)橋(はし)くん、どう? 頭まぶしいなあ」

「輝くのは、俺たちだー!!」

 リーダーの高橋が吠え、会場が盛り上がる。

「皆さん、サングラス用意したほうがええかもわかりませんよ、本番の電飾が、目にうるさいでっせ。さて、次はCider Note、軽音部Bですね」

「A・Bじゃないのよ。てか、こっちがBなの? 私ら先じゃん!」

 璃早が笑いながら突っ込む。

挿絵(By みてみん)

「先輩立てなあかんやん。一年坊主もみんなこっちなんやろ?」

「坊主って言ったら、ややこしくなるじゃん!」

 璃早が(米)'s坊るを指し、さらに突っ込む。会場から笑いが起きる。

「ええわ~。俺、古川さんと漫才コンビ組みたい。……そしたら次、こいつら、俺はみーんなよく知ってます。Team☆ANNEXです! 誰に聞く? 慎吾? 杠さん? まあええわ、健介、どう?」

「なんで俺やねん! 聞くの俺じゃねえだろ、絶対」

 健介は関西弁がうつりつつ動揺する。

「初心者が魅せます! 見てろ!!」

 茉衣子が渡辺からマイクを奪い、吠えた。またも盛り上がる。

「茉衣子、ええから、マイク返せ。……はい、こいつら、いつも元気です。最後はもう、大トリですね。軽音部A、あ、いや、すんまへん、VELVET RUSHです。拓真先輩、どうですか」

「お客を満足させて帰す、それだけ!」

 中尾は、右手の指二本を、天に突き立て、一言だけ言った。会場は黄色い声援で大盛り上がりとなった。

「ありがとうございます。俺、女やったら惚れてました。もしくは、男ですけど惚れてええですか?」

 拓真は笑いながら手を横に振る。

「ほな、マルコメ坊主どもから行きますんで、スタンバイお願いしますね」

 袖から合図があり、いったん全員はけた。


 (米)'s坊るは、リーダーでボーカル・ギターの高橋がもともとギター経験者だったという。三つ上の兄は元軽音部だった。本人は野球を選んだものの、ギターも好きで、入学時からこのステージに立ちたかったらしい。

 それで、中学からの友人だった前(まえ)田(だ)(ちなみに、彼がガチ坊主である)をベースにして、ドラム経験者という小太りのキャッチャー、蘭(あららぎ)を引き入れて、数か月練習したらしい。

 少なくとも、三人で合わせてきた経験はチーアネより上だった。

「なるほどな」

 慎吾が袖で唸っていたのを健介は聞き逃さなかった。軽音部外の一年生トリオとのことで前座扱いにされたようなのだが、なかなかだったらしい。健介には違いもよくわからないが。

挿絵(By みてみん)

 お次は軽音部BことCider Noteである。部員九名となった軽音部を二つに割るとき、春に率先して新入部員の世話役になったことから、璃早をリーダーに据えたらしい。彼女は去年はボーカルだったが、今年はギターに回った。

 璃早のほかは、ボーカルの田(た)崎(さき)紀(き)聖(せ)、ベースの松(まつ)田(だ)竜(りゅう)、ドラムの平(ひら)尾(お)陣(じん)の男女二名ずつのバンドだ。璃早もかわいいが、紀聖もかなり華がある。なぜ軽音部は美男美女ぞろいなんだろうか。

 健介はそこまでは考えたが、刻一刻と出番が近づくにつれて、頭の中がいっぱいになってきた。緊張する。ただ、さすがは軽音部、一年生多めの編成でも、普通に上手なのだけはわかった。


「はい、Cider Noteでしたー。古川さん以外一年生で今これなら、来年が恐ろしいですね。はい、三番目! Team☆ANNEXです。これね、ギターの慎吾が経験者やけど、あとは、ほぼみんな初心者やねんて。あ、キーボードの美佳さんは、ピアノめっちゃやってる? まあお嬢やからな。まあええわ、出てきてもらいましょう」

 渡辺が促し、健介はステージに上がった。もう、ここまでくると、感情はない。慎吾はガッツポーズして、茉衣子は大きく手を振る。千宥と美佳も、茉衣子より控えめだが、振っている。雛灯は客席に一礼。俺も礼ぐらいするか。健介も軽く頭を下げる。

 千宥を除く五人が、それぞれの楽器につく。九月に入り、慎吾から「最初、軽く十五秒ぐらい演奏するから」と告げられた。聞いたとき、青ざめたが、まあ、なんとかなった。よし、やるだけだ。

 茉衣子がスティックを掲げ、慎吾を見る。慎吾が小さくうなずいた。

「ワン、ツー、スリー、フォー!」

 カウントと同時に、茉衣子がドラムを叩き込む。

 ――ジャーン!!

 慎吾と雛灯のギター、美佳のキーボード、そして健介のベースが一斉に鳴った。そこから慎吾が短くギターをかき鳴らし、茉衣子が一定のビートを刻む。健介も決められた音を追い、美佳が厚みを加える。

 ほんの十数秒。

 最後に茉衣子がタムを連打し、全員で合わせる。

 ――ジャァァァン!!

 音が体育館いっぱいに伸び、ぴたりと止まった。

 客席から拍手と歓声が上がる。

 インストゥルメンタルから始まり、最初は手拍子だけだった千宥が、マイクをとる。実質一曲のみなので、ここでMCを入れる。

「どうもー! Team☆ANNEXです。あ、どうもありがとうございます!」

 拍手に、千宥が手を振って応える。

 千宥も、なかなかの有名人であるため、会場のあちこちから、「千宥ちゃーん!」という声援が上がる。

「思ったより盛り上がっててびっくりしてます。ありがとうございます!」

 千宥の声にこたえ、歓声が響く。

「私たち、正直、前座ぐらいのつもりで来てたんですよ。そしたら、軽音部さん二組の間に挟まれてるし、トリ前というね……。あと、野球部の子たちも、まぶしかったよね。……いろんな意味で」

 ここで一笑い起きる。最初の一言こそ声が硬かったが、練習してきたやり取りに入ると、千宥も調子が出てきたようだった。

「今回、急にあっちのギターのね、慎吾くんから、バンドやろうぜ、って言われたんですよ。急に言われたからさ、もう私とか茉衣子ちゃん、美佳ちゃんなんか、二年五組のロリカフェの格好で来ちゃって」

 笑いと、声援、このバラバラの服装の意味を理解したような「あー」という声が入り混じる。

「ねえ、慎吾くん、その辺どう? てか、どう見てもお祭り男だよね? ギター弾けるの?」

 慎吾が自分の前のマイクに顔を寄せた。

「あ、どうも、宮(みや)川(がわ)大(だい)輔(すけ)です」

 会場の熱気ゆえか、この程度でもそれなりに笑いが起きる。

「二の六、縁日なのよ、俺、帰ってテキ屋の親父やんなきゃなんだから。で、あっち、一般生徒はお帰りください」

 制服姿の健介に水を向ける。

「え? ああ、二の七はこの格好だからさ」

 健介は一周回って冷静だ。

「健ちゃん、何の人なのかわかんないよ? ほんとに」

 千宥が笑う。

「なんか、映える写真が撮れる写真館だって」

「お前、映えから程遠いだろ。『映え』の対義語が『樋口健介』だろ」

 慎吾が口をはさみ、また笑いが起きる。

「うっせ。まあ、俺以外はイケてる二の七をよろしく。宣伝、終わりました! 効果は未知数!」

 健介がお辞儀する。彼なりの精一杯に、パラパラと拍手が鳴る。

「結局、慎吾くんってなんで出ようって思ったわけ?」

 千宥が改めて問う。

「日頃の欲求不満」

「……だめだこりゃ」

 笑いが起こる。

「まあ、そんな人に突然集められた六人です。ちゃんと合わせ始めて、まだそんなに経ってません。今日は一曲だけ。その一曲、頑張って練習してきました」

 千宥は後ろを振り返り、茉衣子と目を合わせた。

「じゃあ、聴いてください――『青の途中』」

挿絵(By みてみん)

 結果からいえば、練習通りにはできた。慎吾と美佳は仕上がっていたし、千宥のボーカルはかなり良かったと思う。茉衣子は玉井の父が休みの週末ごとに玉井家へ足繁く通って特訓したため、めきめきと上達していたし、慎吾の直接レッスンを受けた雛灯も上手で、びっくりした。健介は――まあこんなもんか、というところだ。明らかにミスをしていたわけではない。一番「急ごしらえとしては及第点」といった出来だった。自己評価としては、もしかすると甘いのかもしれないが、そう思うことにした。


 さて、次はもう一度MCだ。

「ありがとう。初心者バンド、どうでしたかー!」

 千宥が客席にマイクを向ける。大盛り上がりだった。まあ、合格ということにしよう。健介はほっと一息ついた。

 まだ発言していない人たちにマイクを向ける。

「茉衣子ちゃん、どう?」

「チーアネ! あたしらは、一つだー!!」

 茉衣子がドラムをドコドコ叩きながら叫び、また歓声が起こる。

「美佳ちゃん」

「素敵だったわ。こういうのも、たまにはいいんじゃないかしら?」

「裏方さん! 美佳ちゃんに紅茶を一杯!」

 袖に向かって叫ぶふり。千宥からは珍しい、お嬢様いじりでまた一笑い。

「漫研代表、ひなちゃん! ひとこと――」

 言い終わる前に、突然茉衣子がドラムを叩いた。茉衣子のドラムソロ。

 最後に慎吾のギターソロを入れ、茉衣子がドラムで合わせることは、事前に聞いていた。ただ、その前に茉衣子がここまで叩くとは聞いていない。

 ――マジかよ。健介は、度肝を抜かれた。

 ドドン――

 いったんドラムがやみ、慎吾が入ってくる。

 ギュイーン――

「ワン! ツー! スリー! フォー!」

 『青の途中』の倍速に感じるほどの勢いで茉衣子が叫ぶと、慎吾が千宥よりも前に立ち、ギターを激しくかき鳴らす。会場のボルテージは最高潮だ。

 千宥は慎吾がいた位置に退き、雛灯、美佳、健介と腕を突き上げ、盛り立てる。

 約一分半。激しくドラムを叩いていた茉衣子のドラムのリズムが変わる。ほどなくしてもう一度、ドドン。

 ギュルルルルルルルル――

 最後、茉衣子がもう一度ドラムを叩き、慎吾は飛び跳ね、最後にもうひと鳴らし。

 ジャーン!!

 今までで一番大きな歓声が飛んだ。慎吾が、千宥からマイクを奪う。

「以上、ギターがうまい人でした。この後、もっともっと、うまい人たちが上がるんで、帰ります。最後、うちの妹からひと言」

 先ほどMCを遮られた雛灯に水を向ける。

「漫研も来てね! ほむらでした!」


 怒涛の十分余が終わった。これだけの用意しかないので、十五分の持ち時間はむしろ余った。それでも、十分な盛り上がりようだった。

「お前、慎吾、なんやあれ。あっこまでするとか、聞いてへんで!」

 MCの渡辺に呼び止められた。

「打合せ、そこまで聞かれなかったもん」

「お前、ずるい奴やで、ほんま。でもすごかったで。Team☆ANNEXでしたー!」

 渡辺の声に、もう一度歓声が起きた。

 チーアネが退出する。袖に、VELVET RUSHが控えていた。

「会場、あっためときましたよ、パイセン」

 慎吾がニヤッとする。中尾は舌打ちした。

 一仕事終えた健介は、晴れやかな気持ちで、袖からVELVET RUSHを鑑賞している。

挿絵(By みてみん)

「すげえな」

「いや、んなこたねえ」

 感想を漏らす健介に、慎吾が言った。

「中尾の奴、そんなうまくねえよ。顔でギター弾いてるようなもんだわ」

「そうなん?」

 もちろん健介には、その評価が正しいのかどうか分からない。反対を向くと、璃早が苦笑していた。――健介はなんとなく察した。

「だから、俺が一発かまして、ハードル上げて上げて、はけたわけ」

「……お前、性格悪いな」

「サンキュー」

 慎吾の悪びれない態度に、健介はため息をつく。

「まあ、拓真先輩の腕はさておき、慎吾くん、戻ってきたら? もう、拓真先輩もひめか先輩も、引退だよ?」

 璃早が言う。

「いや、それでもあいつらがOB・OGになったら、俺はヘコヘコしなきゃなんねえだろ? 中尾チルドレンの浦もいるしさ。ごめん公務員だな」

 持っていた「祭」の団扇で扇(あお)ぎながら慎吾はため息をつく。「ごめんこうむる」の洒落だろう。

「そっか」

 璃早が肩を落とす。

 しかし、さすがは人気者・中尾拓真。その風格は確かなものだった。慎吾が上げたハードルを、その人気で難なく越えて、大盛り上がりで終了した。

「ありがとうございました! ほかのバンドの皆さんも、もっぺんステージに来てください!」

 渡辺の合図で、四組がステージに出る。健介も、さっきより会場が見える。二生らのトリオのほかに、玉井と雄人のカップル、そして大上が見えた。――あんなデカブツが見えないぐらい、俺はテンパってたのか。

「一言ずついきましょか。(米)'s坊る!」

「俺たち、輝いてましたかー!?」

 高橋のシャウトに、歓声が上がる。

「物理的にな。何ルクスかわかれへんけど。Cider Note!」

「私、のびしろしかないです!」

 璃早の言葉に、歓声と笑い。

「後ろの後輩らに言うてやりいよ。さあ、圧巻の独壇場、チーアネ! 慎吾!」

 渡辺は今度は名指しで慎吾に渡す。

「先輩たちは、すばらしいです。俺には越えられない壁!」

 慎吾は、パントマイムの壁をやりつつ、わざとらしく言ってのけた。確かに、盛り上がりでは、結局VELVET RUSHに勝てていなかった気がする。慎吾にとっての敗北宣言か――と、思いきや、普通に嫌味として効いているらしい。中尾は、無表情で顔を伏せていた。

「ほんま、俺もそう思うで。慎吾なんかには越えられへんねん。ねえ、拓真先輩」

 渡辺がマイクを向けると、それだけで拍手が起こった。

「いや、ギターの慎吾ももちろん、みんなもめっちゃ仕上がってた。よかった! 楽しかった!」

 拍手をして見せる中尾。実に大人の対応である。目の奥は全く笑っていなかったが。

「ほな、これで今年のA.Q. ROCK JAMBOREE、終了です! ありがとうございましたー!」

 渡辺の言葉と、盛大な拍手で、あっという間にこの長いようで短かったライブが終了した。


 クロージングが終わると、そのままステージ下へ移動した。VELVET RUSHと慎吾の間には、もちろん特に会話もない。ステージを降りて、体育館の横の方にたまっていた時だった。

「杠」

 声をかけてくる人物がいた。

「塩(しお)屋(や)くん」

 彼は、千宥の月陵時代の同級生、塩屋修(しゅう)平(へい)だった。

「お前、すげえじゃん。めっちゃよかったよ。あと、ギターの彼も!」

 慎吾は、遠目から何も言わず、「ありがとう」とばかりに敬礼した。

「あ、ありがとう」

 返事をする千宥だったが、塩屋は、千宥よりも奥の方を気にしていた。

「ひめか!」

 すると、南里妃愛華へと駆け寄った。

「え、修平……?! 来てたの。え、うそ。予定があるって」

 妃愛華が明らかに動揺している。

「サプライズだよ。見に来ないで~とか言いそうじゃん」

 千宥の元同級生が、どう見ても彼氏の距離感で妃愛華に話しかけている。

 ……妙だぞ? 健介は首を傾げた。

「あ、あの時だ」

 千宥が声を漏らす。

「どした、千宥?」

 今度は茉衣子が尋ねる。

「あの子に、タバスマで会った話、覚えてる?」

「お前が腹壊したときか」

「そうそう。あの時の彼女さんだ、ひめか先輩。あの時、遠目だったから、ちょっとわかりにくかったんだ」

 え? チーアネが変な空気に包まれる。しかし、あちらも、それ以上にややこしいことになり始めた。

「お前、誰だ! ひめかを気やすく呼ぶんじゃねえよ」

 中尾が塩屋に詰め寄った。

「あんたこそ何だよ! 同じバンドだからって彼氏面しやがって!」

 塩屋も負けじと言い返す。

 あ~……。チーアネが苦笑し始める。慎吾は下を向いて笑いをかみ殺している。当の妃愛華は後ろを向いている。

挿絵(By みてみん)

「ひめか、何だよ。お前、慎吾だけじゃなかったのかよ!」

「どういうことだよ! 何度も、『そっちに男居ない?』って聞いたじゃんか」

「ちょっと待って、二人とも落ち着いたほうがいい!」

 呼ばれて振り向いた妃愛華は、ごまかすように二人をなだめる。

「ふざけんな!」

 二人の声がそろう。

「南里さん、悪いけど、喧嘩は外でしてもらえる?」

 あきれたような実行委員の三年生が駆け寄り、制止に入った。

「ま、大成功だな、今回のステージ。おつかれ」

 修羅場をしり目に、慎吾が健介の肩を叩く。

「……お前がそういうんなら、成功だろうな」

 健介は、修羅場を気にしつつも、安堵したように息をつく。

 ステージは大成功だった。ただ、文化祭はまだまだ続く。

【次回予告】

文化祭は、バンドだけじゃないぞ。

次回に続きます。お楽しみに。

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