第27話 近すぎる優しさ
<AI依存度>:
ほぼそのまま使用:15~20%
AI文をベースに改稿:30〜35%
ユーザー独自の構成・設定・加筆:45〜55%
悪気はなくとも、コミュ障には辛い空間はあるものです。ちなみに、作者は友達を作ろうと最初は頑張るけど途中で息切れするタイプでした。
父の命令で、兄もしくは姉である千宥の後を追って春若栄久高校へ進学した杠二生。経緯こそ複雑であったが、千宥とまた一緒に暮らせることはうれしい。しかし、そこで千宥は、新たな友達をたくさん作っていた。二生は少しだけうつむく。もちろん、それはいいことだ。多分、あの人たちも悪い人じゃない。だけど、うまくやっていけるのだろうか。二生はとても不安だった。
母・千鶴が運転する車は、目的地である新居・アネックス久世の駐車場に滑り込んだ。車が止まったとき、二生はすぐにドアを開けなかった。エンジンの音が止まって、少しだけ遅れて、外の音が入ってくる。遠くの車の走る音と、どこかの家からなのか、子供達の声。窓の外に見える建物は、見慣れているはずなのに、少しだけ違って見えた。
ここに来るのは、何度目だっただろう。片手で数えられる程度ではある。でも――今日からは、違う。
「二生?」
運転席の方から声がかかる。
「……うん」
返事をして、ようやくシートベルトを外した。指先が少しだけぎこちない。ドアを開けると、外の空気が思ったよりも柔らかくて、少しだけほっとする。
トランクの方へ回ろうとして、ふと足が止まる。玄関の前に、二人立っていた。千宥と、従姉の田中丸鈴蘭。
「おかえり」
鈴蘭が、いつも通りの声で言った。その言葉に、少しだけ迷ってから、
「……ただいま」
と返す。口に出してみると、思っていたよりも軽かった。でも、その軽さが、逆に落ち着かない。
千宥は、少しだけ距離を置いた場所に立っていた。いつもの家で見る姿よりも、少しだけきちんとした格好で、どこかよそ行きの雰囲気がある。そして、今日は男性の装いである。
わかっている。今日は母がいるからだ。それでも、視線を合わせると、ほんの一瞬だけ、何かを探すみたいに目が揺れた気がして、二生はすぐに目を逸らした。
「荷物、これだけ?」
千宥がトランクを見て言う。
「うん。私の荷物だけだから、ちょっとだけ……」
自分で言いながら、少なさが気になる。これでいい、と思って選んだはずなのに、いざ見られると、どこか足りない気がする。
「十分だよ」
鈴蘭がすぐに言った。
「机とベッドはこっちで買ったもんね。ならむしろちょうどいいくらい」
「……うん」
うなずく。「ちょうどいい」と言われると、少しだけ救われる。
「じゃ、運ぼうか。長くなるとだるいし」
千鶴が、トランクの蓋を上げながら言った。無駄のない声だった。優しいのはわかる。でも、立ち止まる余白はあまりない。
「はい」
思わず背筋が伸びる。段ボールに手をかける。思ったより軽い。持ち上げた瞬間、底が少しだけ軋む音がして、慌てて抱え直す。
「大丈夫?」
横から鈴蘭が覗き込む。
「うん、平気」
そう答えて、先に歩き出す。207号室までの距離は、ほんの少ししかないのに、その少しがやけに長く感じた。
――ここに入るんだ。何度か来た場所なのに、靴を脱ぐ前に、ほんの一瞬だけためらう。自分の家になる場所。でもまだ、自分の場所じゃない。
「どうしたの?」
後ろから声がかかる。
「……なんでもない」
急いで靴を脱ぐ。中に入ると、空気が少し違った。生活の匂いというか、人の気配がそのまま残っている感じ。前に来たときと同じはずなのに、今日はそれが、少し近い。廊下の奥に、開いたままのドアが見える。
「あそこね」
鈴蘭が指で示す。
「今日から、二生の部屋」
その言葉を聞いて、足が止まりそうになる。
今日から。当たり前のことなのに、その一言で、急に現実味が出る。
「……はい」
声が、少しだけ小さくなる。段ボールを抱えたまま、廊下を進む。足音がやけに響く気がして、少しだけ歩き方を意識してしまう。ドアの前まで来て、立ち止まる。既に机とベッドは鈴蘭の方で手配し(念のため言うと、金は両親が出している)、おととい搬入済である。クローゼットは鈴蘭の店のお下がりを持ってきたという。家具もそろった部屋。ここに自分のものを置いていくことが、少しだけ怖い。これでいいのか、という気持ちと、これしかない、という気持ちが、同時に浮かぶ。
「置いていいよ」
後ろから千宥の声。振り返ると、いつもの少し柔らかい表情に戻っていた。
「……うん」
小さく答えて、部屋の中に一歩踏み込む。床に段ボールを置くと、軽い音がして、そのまま静かになった。何もない部屋に、その音だけが残る。ここが、自分の場所になる。まだ、実感はないけれど。
――少しだけ、息を吐いた。段ボールの上に、手を置いたまま、しばらく動けなかった。軽いはずの箱なのに、腕の奥にじんわりと重さが残っている。力を抜くと、そのまま床に沈み込んでしまいそうで、指先だけが少しだけ強くなる。
「じゃあ、次これね」
背後で、母の声がする。振り返ると、もう次の箱を抱えていた。動きに無駄がない。迷いもない。
「はい」
慌てて返事をして、いったん手を離す。指先に残っていた力が抜けて、少しだけ感覚がぼやけた。
廊下に出ると、さっきよりも空気が動いていた。鈴蘭が、ドアを少し大きめに開けている。千宥は、トランクと部屋を往復していて、その動きがどこか落ち着いているようで、でも少しだけ距離があるようにも見えた。
その間に入るのが、自分の役目なのだと思うと、足が少しだけ遅くなる。
「二生、これ持てる?」
鈴蘭が、小さめの箱を差し出す。
「うん、大丈夫」
受け取ると、さっきよりもさらに軽かった。中で何かが少しだけ動く音がする。
軽い。軽すぎる。胸の奥が、ほんの少しだけざわつく。これだけでいいと決めたはずなのに、手の中でその軽さを感じるたびに、何かを置いてきてしまったような気がする。
廊下を戻る。さっきよりも少しだけ足音が揃ってきている気がした。自分の歩幅に、周りが合わせてくれているのか、それともただ気のせいか。
部屋に戻って、箱を置く。さっきよりも、置き方が少しだけ雑になる。音が、少しだけ大きくなる。その音に、自分で少し驚く。
「大丈夫?」
また、鈴蘭の声。
「……うん」
今度は、少しだけ間があいた。顔を上げると、鈴蘭がこちらを見ていた。その視線はやわらかいのに、どこか逃げ場がないような気がして、二生はほんの少しだけ視線をずらす。
「無理しなくていいからね」
「してないよ」
すぐに返す。言葉にすると、少しだけ強くなってしまった気がした。沈黙が一瞬だけ落ちる。
「あとこれで終わりだね」
千宥が、最後の箱を抱えて入ってきた。その声に、少しだけ救われる。「お姉ちゃん」の声だ。今は男に戻っているが、実家を離れて憑き物が取れたように優しさを増した、その声である。さっきよりも、少し近い。箱を床に置いて、軽く手を払う仕草が、いつもと同じで、少しだけ安心する。
「思ったより早かったね」
鈴蘭が言う。
「これくらいなら、まあ」
千宥が答える。
「予定通りね」
母は、腕時計をちらりと見て、そう短く言った。それで、この作業が一つ区切りになったのだとわかる。
部屋の中を見渡す。床の上に、いくつかの段ボール。それだけ。まだ家具も何もない空間に、自分の荷物だけが置かれている。それが少しだけ、浮いて見える。
「じゃあ、私はこれで戻るから」
母が、あっさりと言った。その言葉に、体が少しだけ固まる。
「……もう?」
「仕事があるの。もう福岡帰らないと……」
少々困惑したように言う。
「困ったことがあったら、連絡しなさい」
「……うん」
「千宥」
「はい」
「頼むわね」
「うん」
短いやり取り。それだけで、全部が決まっているみたいだった。
「じゃあ、ごめんね。本当に行かなきゃ」
母はそう言い残し部屋を出ていく。追いかけるように、千宥と二生、それに鈴蘭は見送りに出る。
「お母さん、ありがとう」
「おばちゃん、お茶ぐらい飲んでいけばいいのに」
二生と鈴蘭が口々に声をかける後ろで、どう声をかけていいか迷いつつ千宥はそわそわしている。
「ちょっと特番の仕事が、ね。もう一、二週間したら落ち着くと思うんだけど。また来るからね。じゃ」
「あ……」
千宥が何か言いだす前に、手を振りつつ、車を発進させた。この二人の母親である杠千鶴は、最後はきりっとタレント・いせやちづるの顔になり、そのまま片側一車線の市道の向こうへと消えていった。
車の音が遠ざかっていく。ほんの数秒前までそこにあった存在が、あっさりと日常の向こう側に戻っていくのを、千宥はぼんやりと見ていた。手を振るタイミングを、少しだけ逃した気がする。でも、もう見えない。道路の向こうには、ただいつもの景色があるだけだった。
二生は、初めて親元を離れて暮らすことになり、ただ単純にドキドキが止まらなかった。ただ、それは千宥と暮らせることでもあるので嬉しい戸惑いでもあるのだが。
「……行っちゃったね」
鈴蘭が、小さく言う。
「うん」
短く返す。胸の奥に、ぽっかりとした感じが残る。寂しい、というほど強くはない。でも、さっきまであった緊張が抜けて、その分だけ、何かが空いたみたいだった。隣で、千宥が少しだけ深く息を吐いた。
「ひとつ、終わった」
小さく、苦笑混じりに言う。この姿でいるのは本意ではなく、もう母がいなくなったのだから、すぐにでも元に戻りたい。そんな、本音。さっきまでの「よそ行き」じゃない。偽りではない、女の子としての「私」。少しだけ肩の力が抜けている。それを見て、二生も少しだけ息を吐く。空気が、変わった。
「戻ろっか」
鈴蘭が言う。
「うん」
歩き出そうとして――そのときだった。手前の方から、大きな人影が近づいてきた。コツ、コツ、とリズムよく近づいてくる音。迷いのない歩き方。
「あれ?」
明るい声。そのまま、視線がこちらに合う。ぱっと表情が変わる。見つけた、という顔。そのまま、まっすぐこちらに歩いてくる。距離が、どんどん縮まる。二生は、反射的に少しだけ体を引いた。
「千宥!」
名前を呼ばれて、千宥が軽く声を上げる。
「ま、茉衣子ちゃん」
「何してんだ。鈴蘭さんまで」
古波蔵茉衣子から見て千宥の右隣にいる鈴蘭を一瞥し、そのまま視線が、すぐに二生の方へ向く。
「あ……」
間。ほんの一瞬だけの、沈黙。でも、その一瞬で、空気がぐっと近くなる。距離が、ゼロになる。
「二生じゃねえか!久しぶりじゃん。元気だった?」
ぱっと、顔が明るくなる。手が、少しだけ伸びる。二生は、一瞬だけ固まって、それから慌てて頭を下げた。
「こ、こんにちは、茉衣子さん……」
声が、少しだけ小さい。
「うわー、引っ越し今日だったんだな。うんうん、ようこそようこそ。二生も今日からチーム・アネックスだ」
「チーム……?」
チーム・アネックスが何なのか分かっておらず、きょとんとする二生。しかし、茉衣子には悪気はまったくない。それだけは、わかる。
「引っ越しもう終わったん?」
質問が続く。間がない。息をつく隙がない。
「……あ、はい、さっき」
「じゃあさ!」
言い切る前に、もう次の言葉が来る。
「歓迎会やろうぜ!」
間。思考が、追いつかない。
「え?」
「いや、だって来たばっかだろ?ちゃんとやんなきゃじゃん」
当たり前みたいに言う。それが、この人の中では当たり前なんだと、すぐにわかる。
「明日とかどうだ?あ、みんな呼ぶからよ」
もう決まっている。まだ、何も言っていないのに。二生は、何か言わなきゃと思う。でも、何を言えばいいのかが、わからない。断っていいのか。喜んでいいのか。そもそも、自分に選ぶ権利があるのか。頭の中で、言葉がうまくまとまらない。その間にも、話は進んでいく。
「慎吾とひなも呼ぶし、絢那も来るだろ。健介も、まあどうせ暇してんだろ」
「あ、あのね、茉衣子ちゃん、話が急で……」
千宥が口を挟みかける。
「いいじゃんか別に!それにあさってはあたしが忙しいんだ。だから明日やろうぜ!」
軽く遮られる。強いわけじゃない。でも、止まらない。
「な?」
ふいに、視線が戻ってくる。まっすぐに、見られる。答えを待っている目。逃げ場が、ない。
「……あ、えっと」
喉が少しだけ詰まる。でも、ここで黙るのは、違う気がして。嫌だと思われるのは、もっと嫌で。
「……はい」
気づけば、そう言っていた。口が、勝手に動いたみたいに。
その瞬間、
「よっしゃ!」
ぱっと笑顔が弾ける。
「決まり!」
それだけで、すべてが確定したみたいだった。その明るさに、少しだけ引きずられるように、二生も、ほんの少しだけ笑った。うまく笑えているかは、わからないけれど。でも、そうするしかなかった。
207号室に戻ると、さっきまで外にあった音が、すっと遠くなった。ドアが閉まる音が、やけに大きく感じる。さっきまでのやり取りが、少しだけ現実感を失って、代わりに、静けさが部屋の中に広がる。床に置いたままの段ボールが、視界に入る。開けなきゃ、と思う。でも、手が動かない。
「二生、大丈夫?」
千宥が後ろから声をかける。気づいたら、もういつもの格好に戻っている。着替えるのも慣れてきたようだ。
「あ、うん……」
「……茉衣子ちゃん、相変わらず強引なんだから」
千宥が、小さく息を吐くみたいに言った。少しだけ笑っている。呆れているようで、でもどこか楽しそうでもある。
「……うん」
短く返す。それ以上、言葉が続かない。さっきのやり取りを思い返すだけで、少しだけ胸のあたりがざわつく。歓迎会。みんな呼ぶ。決まり。――決まった。自分からは、何も言えず。
「……大丈夫?」
少しだけ間を置いて、千宥が言った。声はやわらかい。でも、さっきよりも少しだけ低い。試すような感じではなくて、ただ、確認するみたいに。
「……うん」
反射みたいに答える。そのまま、段ボールに手をかける。開けるつもりで、ガムテープの端を探す。指先が、少しだけ迷う。
「ほんとに?」
重ねて聞かれる。強くはない。でも、逃がさない感じもない。ただ、そこに置かれているだけの言葉。少しだけ、喉が詰まる。何を答えるのが正しいのか、一瞬だけ考える。でも、
「……大丈夫」
同じ言葉が出る。今度は、少しだけ遅れて。視線は、箱のまま。ガムテープの端を、やっと見つけて、爪で引っかける。少しだけ剥がれて、また戻る。
うまくいかない。指に力を入れ直す。
「そっか」
千宥は、それ以上は何も言わなかった。その代わりに、少しだけ近くに来て、別の箱を軽く叩く。
「無理しちゃダメだよ」
軽く言う。深くは踏み込まない。でも、完全に離れるわけでもない。ちょうど、手が届くくらいの距離。
「……うん」
小さく返す。やっとテープが剥がれる。ぺり、と乾いた音がして、箱が少しだけ開く。中には、服と、本が少しだけ。見慣れたはずのもの。なのに、ここで見ると、少しだけよそよそしい。取り出そうとして、手が止まる。何からやればいいのか、わからない。部屋を見渡す。まだ何もない。これから、ここに並べていく。自分のものを。自分の場所に。
――ほんとに?
さっきの声が、頭の中で少しだけ残る。ほんとに、大丈夫なのか。言葉にしなかった部分が、少しだけ重くなる。でも、
「……がんばる」
小さく呟いて、服を一枚取り出す。畳み直して、箱の外に置く。それだけの動作なのに、少しだけ呼吸が整う。隣で、千宥が同じように別の箱を開ける。何も言わないまま、作業を始める。その気配が、少しだけ安心する。
静かな時間が流れる。外の音は、もうほとんど聞こえない。部屋の中には、紙の擦れる音と、時々、物を置く小さな音だけ。さっきまでのやり取りが、遠くなる。でも、完全には消えない。どこかに、残ったまま。明日、また、そこに戻るみたいに。
歓迎会の開催告知は、千宥と二生が帰宅した頃には茉衣子から行われ、結果的には、樋口健介、朝長慎吾と雛灯、そして玉井絢那、全員からOKの返事が来た。ただし、慎吾と雛灯の兄妹は帰宅が午前十時過ぎになるため、十一時半からの開催となった。
玄関の前で、一度だけ足が止まった。始業式そして入学式の二日前。時間は、午前十一時半少し前。アネックスの廊下は静かで、部屋の中の気配だけが、ところどころに滲んでいる。
――ほんとにやるのか、これ。内心でぼやきながら、健介は軽く息を吐いた。正直、気は進んでいない。
千宥の妹の歓迎会をやるというお知らせが来た。あの子――二生。まだ二回しか会ったことないが、わかる。あれは、どう見ても、ああいう場が得意なタイプじゃない。なのに、よりによって「歓迎会」。しかも主催が茉衣子。嫌な予感しかしない。それでも来たのは、結局のところ、まあ、放っておくのもな。という、それだけの理由だった。インターホンを鳴らす。
「おー、健介か。開いてるぞー!」
スピーカーから、いつもの声。遠慮なくドアを開けると、熱気が一気に流れ込んできた。
「お、健介!遅えぞ」
「時間ぴったりだろ」
靴を脱ぎながら返す。部屋の中は、既に大分温まっていた。テーブルの上には、適当に買ってきたらしい食べ物と飲み物。床にもクッションが散らばっていて、完全に「いつもの感じ」だ。
そして、その中心にいるのが――
「ほら、はよ座れ!」
「わかったから、せかすな」
茉衣子。完全に主催者の顔だ。悪気がないのが、よくわかる。それが、一番厄介だ。視線を少しずらす。壁際に、二生が座っていた。雛灯が、隣についている。慎吾は反対側で、スマホをいじりながら適当に相槌を打っている。玉井は、もう完全に場に馴染んでいて、茉衣子と一緒に何か並べていた。
――配置は悪くないな。
雛灯が横にいるのは、正解だ。健介は、そのまま部屋の端に腰を下ろす。全体が見える位置。無意識だった。
「で、主役!」
ぱん、と手を叩く音。茉衣子が、二生の方を向く。
「今日はお前の歓迎会だからな!」
「……あ、はい」
小さな声。笑っている。でも、その笑い方が、ほんの少しだけ硬い。――やっぱりな。
「緊張すんなって!」
茉衣子が距離を詰める。ゼロ距離。逃げ場がない。
「いや、まあ最初はそんなもんだろ」
慎吾が軽く言う。
「お前も最初は静かだったしな」
「ああ、こーんな口して黙ってた」
茉衣子が振ると、慎吾は指で自分の口を横向きに真一文字に引っ張って見せた。……そうだったか?健介は首をかしげる。だが、まあそんな感じの軽口が飛ぶ。空気は、明るい。いつも通り。でも、その「いつも通り」が、そのまま乗っかっている。二生の上に。
「二生ちゃん、これ食べる?」
雛灯が、少しだけトーンを落として聞く。
「これ、おいしいよ」
「……あ、はい」
視線が一度雛灯に向いて、それから皿に落ちる。手が、少しだけ遅れて伸びる。受け取る。
「ありがとうございます」
小さく言う。そのやり取りを見て、少しだけ息を吐く。
(まあ、ひなちゃんなら大丈夫か)
完全に崩れてるわけじゃない。ただ、
(ずっとこのままだと、きついな)
「でさ!」
茉衣子が、また声を上げる。
「自己紹介とかいる?もう知ってるか?」
「いやいらねえだろ」
慎吾が即答する。こちらは二生を知っているし、今日二生と初対面なのは慎吾と雛灯の双子ぐらいのもので、もうこれだけ喋っていたら大丈夫ではあるだろう。
「だよな!」
そのまま話題が飛ぶ。止まらない。流れが速い。誰も悪くない。でも、合わせる側は大変だ。
ちら、と二生を見る。笑っている。相槌も打っている。でも、ほんの一瞬、視線が落ちる。会話が次に移る、その隙間で。呼吸が、少しだけ浅くなる。雛灯と目が合う。一瞬だけ。言葉はいらない。同じことを思っている顔だった。
(分かってるの、俺とひなちゃんくらいか)
健介は、視線を戻す。口を挟むほどじゃない。でも、何も見ないふりもできない。
(どうする?)
その答えは、まだ出ないまま、
「健介、なんか喋れよ」
茉衣子に急に振られる。
「は?」
「静かすぎだろお前」
「別にいいだろ」
軽く返す。そのまま、少しだけ体勢を崩して、
「……まあ」
と続ける。
「来たばっかで大変だろうけど、適当にやればいいよ。こいつらうるせえけど、まあ、慣れだよ」
視線は、二生に向けない。あくまで、空気に向けて。でも、少しだけ間を置いて、
「無理すんなよ」
ぽつりと足す。それだけ。大したことは言っていない。でも、
「……はい」
返事が返ってくる。さっきより、ほんの少しだけ素直な声で。その違いに、少しだけ安心する。
場の流れは、またすぐに戻る。笑い声。軽口。いつもの空気。その中に、一人分だけ、少しだけ違うリズムが混ざっている。それを、無理やり揃えようとしている気配。
健介は、コップを手に取る。氷が、軽く鳴る。完全にどうにかする必要はない。でも、見てるやつが一人くらいいてもいい。そう思いながら、ゆっくりとジュースを一口飲んだ。そのまま、場の流れは少しずつ温まっていった。最初のぎこちなさが、ゆっくりと溶けていく。いや、溶けてるように「見える」。
「ねえねえ」
玉井が、ぽつりと口を開いた。
「二生ちゃん、前にちょっと会ったよね。覚えてる?」
声は落ち着いている。
「あ、はい……」
視線が玉井に向く。ほんの少しだけ、表情がやわらぐ。
「なんか、あのときより緊張してない?」
軽く笑う。責める感じじゃない。
「……あ、えっと」
言葉に詰まる。
「まあ、いきなりこの人数だもんね~。慣れれば普通だよ。たぶん」
「たぶんかよ」
慎吾が突っ込む。軽く笑いが起きる。少しだけ、空気が緩む。
(意外といい感じだな、玉井)
健介は内心で思う。距離の取り方がちょうどいい。踏み込みすぎない。でも放置もしない。ただ、その空気も長くは続かなかった。
「てかさあ」
慎吾が、にやっとした顔で口を開く。嫌な予感がした。
「二生ちゃんさ、こうしてみるとさ」
一瞬、言葉を区切る。
「大人っぽいよなって」
「あはは、そうだね。絢那ももっとそういうの目指したいな」
玉井が割って入る。
「そうだな。玉ちゃんにはないものを持っているというか」
「えー、何それー」
慎吾は、直接の言及はしていない。そして、玉井はわかっていないのかわざと交わしているのか不明であるが、明らかに慎吾の視線は両者の胴体に目移りしている。二生もちょっと感じているのか、うつむき加減になる。これはまずいぞ。
「どうした、慎吾。何か気になるか?」
茉衣子が慎吾の頭を掴む。これ自体は、彼氏が他の女性に目移りしている中での、正常な反応だ。寧ろ生易しいほどだ。しかし、健介の嫌な予感はやまない。茉衣子は茉衣子で、心配すぎる。
「まあ、でもなあ。デカいよな。うん」
うっすらぼかそうとしていた慎吾と違い、茉衣子は遠慮がない。
「……!」
二生は顔を伏せた。あーあ。最悪の流れだ。
「あたしと同じぐらいか?F?あたしは高校入った時はもうちょっと小さかったから。これは将来楽しみだぞ」
茉衣子は悪気もなくこんなことを言ってのける。だから余計にタチが悪い。二生が、固まる。肩が、わずかに内側に入る。視線が落ちる。手が止まる。
(やっぱり来たか)
健介は、舌打ちを飲み込む。
「てかさ」
茉衣子が、さらに踏み込む。やめろ。
「いつからデカくなったん?あたしは中三ぐらいの時に急激にでさ。二生は今これだからもうちょっと前から育ってそうだよな」
完全に悪気はない。ただの興味。ただの会話。でも、距離が近すぎる。
「え、あの……」
二生の声が、明らかに小さくなる。視線が上がらない。答えられない。呼吸が浅くなる。
(アウトだな)
健介が動こうとした、その瞬間。
「はいはい、そこまで」
軽い声。千宥だった。空気を切るみたいに、すっと入る。
「この手の話題、あんまり得意じゃなくて」
笑っている。でも、ほんの少しだけ、芯がある。
「え、なんで?」
茉衣子が素直に聞く。
「なんでじゃないよ」
千宥が苦笑する。そこで初めて、二生の方を見る。でも、見すぎない。あくまで自然に。そして、今度は雛灯もフォローを入れる。
「ごめんね、あいつら距離バグってるから」
「え、いえ……」
二生が、慌てて首を振る。否定しようとする。でも言葉が続かない。
「いやいや、否定しなくていいって。その反応が普通だから」
雛灯のその一言で、ほんの少しだけ空気が戻る。
「えー、でもさあ」
茉衣子がまだ食い下がる。
「別にいいじゃんそれくらい」
「いいけど」
千宥が間を置く。
「まだ今じゃない」
さらっと言う。強くない。でも、ちゃんと止める。沈黙が一瞬落ちる。その隙間に、
「ほら、これ食べて」
雛灯が自然に皿を差し出す。さっきよりも少しだけ近い位置で。
「これ、ほんとおいしいから」
「……あ、はい」
受け取る。手が、少しだけ震えている。でも、さっきよりはマシだ。
「慎吾くんも」
千宥が軽く肘で突く。
「ぼかしても顔に出てるよ」
「え、マジ?」
軽い調子。でも少しだけ引いている。
「茉衣子ちゃん、普通に拾っちゃうんだから」
「悪い悪い」
雑な謝罪。悪気はない。それはわかる。だからこそ、余計に疲れる。
空気が、少しだけ整う。完全には戻らない。でも、壊れはしない。健介は、ゆっくりと息を吐く。
(ナイスだな。さすが姉貴だ)
千宥を見る。さっきと同じ顔。でも、ほんの少しだけ、目が鋭い。守りに入っている。でも、それを前面には出さない。うまい。
(俺が出る前にやったか)
コップの中の氷が、また軽く鳴る。場は、また少しずつ動き出す。笑い声も戻る。会話も続く。でも、さっきまでと同じじゃない。一度、引っかかった。その痕が、少しだけ残っている。そして、二生は、また笑っている。さっきより、少しだけ無理をして。それを見ながら、健介は、もう一口、ゆっくりと飲んだ。それでも、場は止まらない。誰かが話せば、誰かが返す。笑い声が続いて、音が途切れない。「いつもの感じ」が、また上から被さってくる。それに、二生も合わせている。合わせている、ように見える。
「でさ、明日どうすんの?」
慎吾が話題を変える。
「い、家でゆっくりしてます……」
「どっか連れて行ってやれよ」
女性陣を見回す。
「あたしが忙しいんだ」
茉衣子が言う。
「そりゃわかってんだけどさ。ひなか、玉ちゃんでも」
慎吾なりに気を遣おうとしているのか?健介は首を傾げた。
「絢那も明日、雄くんとデートだよ?」
玉井も首を横に振る。どうやら綾香雄人との交際は順調らしい。
「じゃあ、あさって」
「学校だろ。入学式」
健介も口を挟む。
「いやそのあとだよ。どうせ暇じゃん」
「お前基準で話すなよ」
軽口が続く。その流れの中で、
「二生ちゃんは?」
不意に、玉井が振る。急じゃない。でも、逃がさない聞き方。
「……え?」
顔が上がる。
「終わったあと、どうする予定?」
「……あ、えっと」
一瞬だけ、詰まる。考えていなかったわけじゃない。でも、「答える前提で聞かれる」と、途端に難しくなる。
「特にないならさ」
玉井が続ける。
「どっか軽く行く?入学式、終わるの三時ぐらいになると思うけど、あさっては絢那も夕方まで空いてるよ」
柔らかい言い方。提案。決定じゃない。ほんの少しだけ、空気が変わる。さっきまでとは違う「余白」ができる。
「……あ」
言葉を探す。
その間に、
「お、いいじゃん!」
茉衣子がまた乗る。早い。
「行こうぜ行こうぜ!あたしもあさっては大丈夫だ」
「さすが、いける時は早いな」
慎吾が笑う。でもさっきほどの勢いではない。少しだけ、抑えが入っている。
「まあ、無理はするなよ」
健介がぼそっと言う。視線は変えないまま。
「疲れてんなら帰ればいいし」
その一言で、また少しだけ、選択肢が戻る。押されるだけじゃない状態。ほんのわずかだけ。
「……あの」
二生が、口を開く。さっきより、少しだけ声が出る。
「少しだけなら……」
言い切らない。でも、それで十分だった。
「お、いいじゃん」
玉井が軽くうなずく。
「じゃあ、ゆるめにね」
「ゆるめってなんだよ」
慎吾が突っ込むとまた笑いが起きる。さっきよりも、少しだけ軽い。少しだけ、引っかかりを残したままの笑い。でも、それでいい。完全じゃない方が、自然だ。健介は、コップを置く。中の氷は、もうほとんど溶けていた。
(まあ、こんなもんか)
完璧にはならない。でも、最初としては、悪くない。ちら、と二生を見る。まだ少しだけぎこちない。でも、さっきよりは、呼吸が浅くない。ほんの少しだけ、この場に「いる」。その変化だけで、十分だった。外では、昼の光がそのまま続いている。まだ一日は長い。その続きを、どうするかは――たぶん、ここからだ。
そのあとも、会話は途切れなかった。大きく盛り上がるわけでも、どこかに引っかかるわけでもなく、ただ、だらだらと続く。時間だけが、ゆっくり進んでいく。気づけば、テーブルの上の食べ物もだいぶ減っていた。
「そろそろ片付けるか」
慎吾が言う。
「だなー」
茉衣子が立ち上がる。
「はいはい、ゴミまとめてー」
そのまま、いつもの流れで解散に向かう。
特別な終わり方じゃない。でも、それでいい。
(無事、終わったな)
健介は、小さく息を吐く。部屋の中を一度見渡す。二生は、雛灯と一緒に皿を片付けていた。さっきよりは、動きが自然だ。まだぎこちないが、「完全に浮いている」感じではない。それだけで十分だと思えた。そして、そう時間もかからず片づけは終わった。
「じゃ、俺は帰るわ」
健介は立ち上がりながら言う。
「おー、またな」
「バイバーイ」
軽く返事が飛ぶ。いつもの感じ。ドアを開けると、外の空気が少しひんやりしていた。廊下に出て、ドアが閉まる。音が、すっと遠くなる。さっきまでの空間が、切り離される。少しだけ、静かになる。
健介は、ゆっくりと歩き出す。まあ、全部がうまくいったわけじゃない。たぶん、これからも何かしらある。でも、今日のところは、あれでいい。見てるやつもいる。止めるやつもいる。あの子も、少しは慣れるだろう。それで十分だ。少しだけ、疲れた。でも、悪い疲れじゃない。
千宥と二生も、207号室に戻った。戻ると、さっきまでの熱が、すっと引いていくのがわかった。ドアが閉まる音が、やけに静かに響く。誰もいない。さっきまであれだけ人がいたのに、その気配だけが少し残っている。
「……ふう」
千宥が、小さく息を吐く。少しだけ伸びをする。
「疲れた?」
振り返らずに聞く。
「……うん」
二生が、少しだけ遅れて答える。声は、小さいけれど、さっきよりは自然だった。
「だよね」
千宥は軽く笑う。
「私も普通に疲れちゃった」
そう言って、適当に床に座る。さっきまでとは違う、力の抜けた動き。その空気に引っ張られるように、二生も少しだけ肩の力を抜く。
居間に戻る。二人だけの空間は、静かだった。外の音も、もうほとんど入ってこない。さっきまでの声や笑いが、遠くにあるみたいだった。
「……ごめんね」
ぽつりと、二生が言う。千宥が顔を上げる。
「ん?」
「なんか……ちゃんとできなくて」
視線は、床のまま。指先が、少しだけ動く。
「……ちゃんと、って?」
すぐには否定しない。そのまま聞き返す。
「その……」
言葉を探す。
「みんなと……」
途中で止まる。うまく言えない。でも、それで十分だった。
千宥は、少しだけ考える。それから、
「できてたよ」
と、普通に言った。軽くも重くもない声。
「……え」
二生が、少しだけ顔を上げる。
「普通に会話してたし、笑ってたし」
肩をすくめる。
「初日であれなら、上出来じゃない?」
あっさり言う。大げさに褒めない。でも、否定もしない。
「……でも」
二生が、小さく言う。まだ何か言いかけて、止まる。その先は、言葉にならない。
「まあ、あれだよね」
千宥が、少しだけ間を置く。
「合う合わないはあるからさ」
視線を少しだけずらす。
「無理に全部合わせなくていいよ」
その言い方は、さっきの場とは違う。少しだけ、踏み込んでいる。
「……うん」
小さく返す。それでも、まだ少しだけ不安そうな顔が残る。
「茉衣子ちゃんとか慎吾くんは、遠慮がないから」
苦笑する。
「距離感バグってるだけで、悪い子じゃないし」
「……うん」
さっきも、同じことを言われた気がする。でも、今は少しだけ違って聞こえる。
「玉ちゃんも、今日はそうでもなかったけど、茉衣子ちゃんに乗っかっちゃうときは結構あるからね。でも、ひなちゃんとか健ちゃんは、たぶん分かってるから」
さらっと言う。
「困ったらそっちに逃げればいいよ。……まあ、男の子は怖いかもしれないけど、それなら少なくともひなちゃんは安定」
軽い言い方。でも、具体的だった。
「……逃げていいの?」
ぽつりと出る。その言葉に、千宥は少しだけ目を細める。
「いいよ」
即答だった。
「むしろ、逃げないときついでしょ、あれ」
軽く笑う。さっきの場を思い出しているような顔。それにつられて、二生もほんの少しだけ笑う。ほんの少しだけ。でも、さっきより自然だった。
「……うん」
今度は、少しだけはっきりした声で答える。
「いやー、慎吾くんはね。ほんとは誰彼構わず言うタイプじゃないんだけど。別に、あの子には直接何か嫌なこと言われたわけでもないでしょ」
確かにそうだ。しかし、その目線は気になった。……男性から「そういう目」で見られることにちょっと慣れつつはあるが、あまりいい気分のしない目線。
「でも、口ではそう振舞ってるけど、目はやっぱりエッチ。でも……相手は選んでると思う。逆に、私にははっきりと言ってきたかな」
「そうなの……?」
「うん。あった。私は男だから、もっと違うことを言われたけど……。まあ、それは、茉衣子ちゃんもね、遠慮はない。むしろ茉衣子ちゃんこそ、ずけずけ言ってくるからね。それは二生にも分かったと思うけど」
「うん……」
「男の子は恥ずかしくないだろ、みたいな感じで結構遠慮なく言うし、あの子は自分が女の子だし、自分があんまり恥ずかしくないから遠慮がないんだよね。だから、誰彼構わず、おっぱいがどうの、おちんちんがどうのとか言っちゃう」
「……」
二生は固まった。
「本当はね、そうやって言ってくるの、私だって全部克服したわけじゃない。だけどね、普段はすごく友達思いの熱い子だから、いっぱい助けてもらったし、私も助けてあげてる。あと、玉ちゃんとかひなちゃんにしてるみたいに、私のことも女友達としてぎゅってしてくれたり、そういうのは……うん」
千宥は、まだ二生には女性化のカミングアウトをしていないことに気づき、途中で口をつぐんだ。ただ、二生はそのことには触れず、聞いている。
「チーム・アネックスって言ったでしょ。今日いたのが、メンバー全員。みんないっぱい支え合ってきたの。だから、最初から一緒にいてくれた茉衣子ちゃんや玉ちゃんにも、途中から来てよくしてくれる健ちゃんやひなちゃんにも、慎吾くんにだって感謝してるの、私は。だから、なんだかんだで私の大事な妹だから、みんな同じように大事にしてくれて、困ったことがあったら守ってくれると思う。だから、時間はかかっていいから、仲良くなってくれたらうれしいな」
「うん……」
そこからさらに沈黙が落ちる。
でも、さっきとは違う。気まずくはない。ただ、静か。それだけ。
「とりあえずさ」
千宥が立ち上がる。
「今日はもういいから、適当に休もう」
軽く手を振る。
「慣れない環境だから、ゆっくり慣れていこう。そして、できるだけ普段通りにできることは、普段通りする」
「……うん」
うなずく。部屋の中に、自分の荷物がある。まだ全部は出していない。でも、ここが自分の場所になることは、なんとなく分かる。さっきよりも、少しだけ。その実感が、近くなる。床に置かれた段ボールに、もう一度目をやる。ゆっくりと、しゃがみ込む。手を伸ばす。今度は、少しだけ迷いが少ない。箱の中から、服を一枚取り出す。それを、そっと広げる。静かな部屋の中で、その動きだけが、ゆっくりと続いていく。
さっきまでの声は、もう聞こえない。でも、完全に消えたわけでもない。少しだけ残っている。その上に、今の静けさが重なっていく。その感覚を確かめるように、二生は、もう一枚、服を取り出した。
【次回予告】
二年生はなんと転校生が二人!運命のクラス替え、どうなる?
という感じです。お楽しみに。
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