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魔力は全てを解決する!  作者: 南国ブラックベア
第3章:侵略と防衛
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養殖地

「後の事は私が引き受けるわ。バーストたちは先に帰ってなさい」

「分かった」


 後始末やらの報告はラミ姉に任せ、じゃあ帰ろっか~となったところでアゼリアが目を輝かせながら言い出した。


「バースト、東の山に向かうぞ!」

「何で? 冒険者ギルドで依頼でも受けたのか?」

「依頼ではない。これは妾の感じゃがの、宣戦布告を受けた直後にこれほど迅速な襲撃が行われたのじゃ。臭うとは思わんか?」


 臭う? 臭う臭う……


「えっ、あたしらって臭う?」

「……コボルトやオークを相手にしてたせい」

「なるほど。帰って体を洗ったほうが良さそうだな」

「うむ、そうするかの――ってなるかアホンダラァ! そっちの臭うちゃうわ! 怪しいという意味に決まっておろう!」


 いや、アゼリアには悪いが臭うと言われた以上気にしないわけにはいかない。


「仮にも貴族だからな、清潔さを保つのも貴族の勤めだ。エリー、ファーナ、帰るぞ」

「……賛成」

「急ごう!」


 俺たちはアゼリアを置いてそそくさと帰還した。




「あやつら……。まぁよい、ならば1人で楽しむとしよう」


 山の方から漂う怪しい臭い。そこに何かが有ると、妾の直感が告げておるのじゃ。

 正体? そんなものは現地で確認すればよいだけのこと。


「いざ!」


 翼を生やして一気に急上昇すると、臭いの元を辿って下降し始める。ん? 翼が生えて服は破れないのかじゃと? 安心せぃ、いつでも生やせるよう直に肌を出しておる。そのせいで女共からはエロチックだから止めろと言われたが止める気はない。本来なら尻尾も出したいところなのじゃが、尻だけは絶対に出すなと凄まれたからのぅ。そこは妥協してやることにしたわぃ。


「む? 獣の匂い。場所は……あそこか!」


 四方を山に覆われた場所でコボルトが呑気に生活しとるわぃ。柵で囲われた草地ではオークが豚のような飼われ方をしとるのぅ。そのオークをコボルトが世話するという何とも理解し難い光景がそこにあった。


「コボルトが自身より強いオークを手懐けた、そんな事が有り得るのか?」


 本来コボルトのような細身の体ではオークには敵わん。いったい何がそうさせたのか少々興味がある。


「どれ、探りを入れてみるとしよう。妾の炎に酔いしれるがいい!」


 目についたコボルトやオークを1体1体丁寧に焼き上げていく。焼けたコボルトはその場に捨て置き、ジューシーな肉汁を滴らすオークだけを一気食いじゃ。


「ハグハグ――うむ、やはり大自然で育った天然ものは良いのぅ。口の中で溶けていくわぃ」


 バーストの邸でも馳走になってはいるがの、あちらは上品ではあるものの物量が足りんのじゃ。たまにはこうして息抜き(←違う気がする)でもせんとストレスが溜まって良くないのじゃぞ? そのせいで知り合いの竜は胃に穴が空いたらしいぞぃ。

 胃に穴じゃぞ? そんな事になれば食事が満足に楽しめないではないか(←気にするのはそこ?)。そうならないためにも妾は好きなだけ食う! これに限るのじゃ!


「ヒ、ヒィィィ! ににに、人間の化け物だ、化け物人間が現れたぞぉぉぉ!」

「プギプギィ!」


 おっと、食事風景(←殺人場面とも言う)が見られてしまったか。


「これ、食事時に騒ぐでない」


 ザクッ!


「グゲェ!?」


 飛ばした爪が逃走するコボルトの首に突き刺さる。ふむ、よく考えれば見逃してもよかったかの? どうせ食えんし。


「さて……」

「プギ?」

「オークのくせに丸々と肥えた体をしよって、食欲をそそられるではないか」

「プギプギプギィィィ!」

「逃がさぬ!」


 ボゥッ!


「――――」


 ふむぅ、見事に焼き上がったぞぃ。せっかくじゃしバーストたちにも――


「そこまでだ小娘ぇ! この地を荒らすものはこのパッソールが許さ~~~ん!」

「誰じゃ!?」


 鉄装備で身を固めた男がコボルトを引き連れ現れた。


「とうやって入り込んだかは知らんが、ここを知られたからには生かしてはおけん。覚悟するのだな!」

「なんじゃ、こんな養豚場みたいな場所がそんなに大事か?」

「養豚場ではない! 養成所だ! 家畜化したオークに絶壁を下る訓練を施し、ランタールに攻め入る術を身に付けさせる貴重な場所なのだ!」


 レイジムで燃やしたコボルトとオークはここから攻めてきたのか。


「しかし何故に豚なのじゃ?」

「ノー豚! イェスオーク!」

「細かいのぅ、何故にオークなのじゃ? 馬や鹿でもよいじゃろうに」

「貴様ぁ、このパッソールが馬(・)鹿(・)だと言いたいのかぁぁぁ!」

「いや、そういう意味ではなくてじゃな」

「ふん、冥土の土産に教えてやろう。馬や鹿だと足が地面から離れやすく、そのまま落下してしまう。だが豚は――じゃなかった、オークは違うぞ? 走っても地面から足が離れ難く、安定した走りが出来るのだ」


 細かいことは分からんが、オークだと崖を下れるという事じゃな。


「しかもだ、考案されたのはあのライオネル様であり、聞けば魔王の元四天王だと言うではないか。聡明な思考を持つ御方がトップに立てば国は安泰。今ごろ帝都のすぐ側を制圧し、喉元に刃を突きつけている事だろう。どうだ、お前がその気ならライオネル様に取り成してやってもいいぞ?」

「つまりライオネルとやらに従えと? ならば実力を示してもらわねばのぅ」



 グン!



「グォッ!? こ、この威圧的な魔力は!」

「何を驚いておる? 妾の魔力を僅かに開放しただけじゃぞ?」

「これが僅かだと!? 立っているのさえやっとだと言うのに!」


 やがて耐え切れずに片膝をつくパッソールに対し、畳み掛けるよう投げ掛ける。


「実力の差が分かったようだの? ならばお主がすべき事はただ1つ。この養豚場の豚を定期的に妾へ献上するようライオネルに働きかける事じゃ」

「そ、そんな!」


 しばし考える時間をくれてやろう。


「……分かった」

「おお、ようやく腹を括ったか」

「総員突撃ぃ~~~!」

「は?」


 何を血迷ったのか、手勢のコボルト共を妾へと差し向けてきた。食ってもマズイし相手するのも面倒なんだが……


「仕方ないのぅ――」



 ゴォォォォォォ!



 パッソールの目の前ですべてのコボルトを灰にしてやった。


「ひ、怯むなぁ~~~! ドンドン行けぇ~~~! 生かして帰すなぁ~~~!」

「もうお前しか残っとらんぞ?」

「行け行けぇ~~~! 突撃ぃ――へ? ほげぇぇぇ!? コボルトが1体も居ない! 代わりに炭の塊が散らばってるぅ!」


 ようやく自分以外に生きてる者がいないと悟り、脂汗を流すパッソール。ついに観念するかと思いきや、予想外の台詞を吐いてきよった。


「フハハハハ! このパッソールが死んだとてグロリア帝国が優勢であることに変わりはない。養豚場は潰されても我らにはリザードマンを中心とした別動隊がある。今ごろ帝都に向けて進軍していることだろう」


 まだ策を施しておったか。ライオネルとやら、荒々しい性格とは裏腹に小賢しい手を使いよる。


「その別動隊とやらは何処におる?」

「帝都の北にある湖だ。この機に備えて準備していたのだよ」

「ふむ。ならばそっちも潰さんといかんのぅ。オークも食い尽くしてしもうたし、ワニは非常食にでもしとこうかの。よし、パッソールとやら、そこへ案内いたせ」

「へ? 案内? ――ぬわぁぁぁ!? 高い高い高い高い! 私は高所恐怖症なんだぁぁぁぁぁぁ!」


 これでしばらくは安全じゃろう。進軍中の本隊は……まぁ、グラスフォードが上手くやるじゃろ。



★★★★★



 グロリア帝国の帝都ロードウィップ。ここでは先帝の代わりに弾頭したライオネルが神の如く崇拝され、民からの圧倒的支持を獲ていた。

 それと言うのも先帝はかなりの差別主義者(レイシスト)で、皇族貴族は人間以外認めないと公言しているほどの人物であったからに他ならない。今ではすっかり真逆になり、ライオネルを支える者たちは全員が獣人で構成されてたりする。


「ヒョードル様」

「何だフラスト、しけた面しやがって。それに今の俺は皇帝だ、ライオネル陛下と呼べ」

「し、失礼しましたライオネル陛下」


 ワインを片手に玉座でふんぞり返るライオネル。側近がうっかり口にした名前はライオネルが下積み時代に使っていたもので、魔王軍四天王という身分を隠すために用いていたのだ。だが皇帝の座に上り詰めた今、その名を使う理由はない。


「で、改まってどうした?」

「はい。実はアスタロト共和国が我が国の動きに乗じてランタールに攻め入る動きを見せておりまして」

「……何ぃ?」

「いかが致しましょう?」


 アスタロト共和国のことはライオネルも知っている。もちろんミネルバがそこに入り込んだことも。


「あのミネルバが居る国か。チッ、忌々しい奴め……」


 同じ四天王ではあるが歓迎はしない。何故なら四天王であったのは過去の話。今は己が魔王として名乗りを上げようとしているのだ、他の四天王など邪魔でしかない。


「なぁに、こっちが先に攻め落としちまえば何も問題はねぇ。後からノコノコ現れた共和国を捻り潰すのみよ。それにこっちにはあ(・)の(・)仕(・)込(・)み(・)がある。フラスト、上手くいってんだろうな?」

「は、はい、指揮下に置いたコボルトたちと養殖で増やしたオークたち、これらを組ませて定期的に侵略させる仕掛けですね。すでに動いておりますので、じきに報告が上がるかと」

「他にも有ったろ?」

「リザードマンの部隊ですね。コボルトの部隊が動いてから連動するよう指示を出しております。今ごろ帝都は大パニックかと」

「ガッハッハッハッ! それでいい」


 ライオネルが満足そうに頷く。彼の計画ではグロリア帝国の本隊を進軍させている間にランタール帝国の帝都マインクラウンを消耗させることにあった。

 これにより前線で戦うランタール側の士気はガタ落ち。やがて前線を維持できなくなりマインクラウンへ撤退せざるを得ないだろうと。


「しかしライオネル陛下にしては随分と用心深く動きましたね? 自ら陣頭指揮を取って攻め入るものだとばかり」

「んだよフラスト、俺がバーサーカーだとでも言いてぇのか?」

「めめめ、滅相もない! 決してバーサーカーなどとは……。そりゃ確かに上官の命令を無視してたびたび突撃をかましてたり、絡んできた酔っ払いをボコボコにして複雑骨折させたり、キレイな女を見かけたとか言って兵舎に連れ込んで夜の天体観測を繰り広げたりとか色々あったとは思いますが、バーサーカーなどとは恐れ多い」

「……その割にはえらい滑舌(かつぜつ)だったが?」

「気のせいです」

「何だよ天体観測って」

「それも気のせいです」


 側近のフラストはライオネルをよく知っていた。というのもフラストは元々1兵士でしかなく、ライオネルの後輩として配属されたのだ。つまりはフラストにとってライオネルは先輩であり、彼がたまたま獣人だったため側近として取り立てたのである。


「しかし魔王軍の残党はどうなのですか? 確か北方の大部分は魔王の領土と化していたはずですが」

「ああ、不気味なことにまだ動いちゃいねぇな。あそこには魔王軍四天王の最後の1人――シンドラが残っていたはずだが……」


 四天王の1人シンドラは熱狂的な魔王の支持者であり、今現在も魔王が帰ってくるのを信じて魔王軍の残党をまとめ上げていた。肝心の魔王はすでに死んでいるのだが頑なに信じようとはせず、魔王領に引き込もっているのだとか。


「それはまた不憫な話ですね」

「仕方ねぇさ、それがアイツが選んだ道だ。仮にシンドラも参戦するようなことがあれば全力で迎え撃つがな」

「ところでライオネル陛下。先ほど四天王最後の1人と仰いましたか? ライオネル様を含めて3人しか現れてませんが」

「ああ、四天王の1人にヴァラドっつ~ヴァンパイアが居たんだがな、戦争が始まって真っ先に死にやがったよ。ったくアイツこそ四天王の面汚しだぜ!」


 つまり現時点で四天王は3人であることが確認されているのだ。


「さぁ、手は緩めねぇぜ? 覚悟しやがれランタール帝国ぅ!」


登場人物の紹介


名前:ライオネル

性別:男

年齢:47歳

種族:獣人

備考:魔王軍四天王の1人で獅子獣人の男。ヒョードルという偽名を使ってグロリア帝国に潜入し、魔王軍復活の機会を窺ってきた。やがて人間以外の種族で結束してクーデターを起こし、差別主義者だった先帝を討ちって皇帝の座についた。現在のグロリア帝国の官僚は獣人のみで構成され、人間は下っ端の兵士や使用人以外にはほぼいない。


名前:フラスト

性別:男

年齢:40歳

種族:獣人

備考:ライオネルの側近をしている犬獣人の男。軍人時代はライオネルとは先輩後輩の仲であり、当時はライオネルをヒョードルと呼んでいた。周りの獣人とは違い人間に対しての恨みは持っておらず、ひたすら人間下げを行うライオネルに不信感を懐き初めている。


名前:ギーオ

性別:男

年齢:?

種族:コボルト

備考:グロリア帝国の街で人語を話すコボルトとして見世物小屋にいたところをライオネルによって救出された。以後はコボルトや他の魔物との仲介を任され、近年ではランタール帝国に近い山岳部でコボルトやオークの教育係として配属されていた。しかし満を持してレイジムに攻め込むも不運にもバーストたちと遭遇。呆気なく討ち死にした。


名前:パッソール

性別:男

年齢:35歳

種族:獣人

備考:ライオネルによりランタール帝国に近い山岳部を領地として与えられた猪獣人の男。ランタール侵攻の準備として家畜化したオークの世話とコボルトによる部隊編成を任されていた。ギーオの出撃を見送った後にアゼリアの襲撃を受け囚われの身に。うっかりリザードマンの情報を喋った後に進軍中だったリザードマンたちと共に燃やされた。


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