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魔力は全てを解決する!  作者: 南国ブラックベア
第1章:家族と学友
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帰還

 逃げる暴徒を俺たちは追いかける。暗闇に紛れ易い黒ローブがイラつかせるが、ここで止めてはいけない。モルツとかいう奴も倒さなきゃならないからな。


「……バースト、暴徒が二手に分かれて行く」

「追跡を逃れようってか? でも片方は明らかに城に向かってるな。もう一方は……」


 中心から外れていく暴徒の群。こっちの行き先はよく分からない。


「城の方はミネルバが居るはず。追うならこっちだ」


 思い切って中心から外れていく群に狙いを絞る。だが所詮は凡人の足、ダラダラと走り続けるだけで目的地が見えてこない。

 そこでエリーを抱えて近くの大聖堂へと飛び上がる。屋上には高く聳(そび)える女神像が建てられているからだ。その天辺に立つと、先頭を走る暴徒のその先が何となく見えてきた。


「コイツら、地下の埋葬施設に向かってるんじゃ……」

「……埋葬施設?」

「平民の墓地だよ。貴族の墓地は地上にある反面、平民の墓地はまとめて地下に収められているんだ」


 寂しげに灯されている松明が地下墓地の入口を示し、そこに入り込む黒い影を遠目で確認できた。何故そこに向かっているのかまでは分からない。まぁ行けば分かるか? どのみち行くしかないよな。


「行き先は分かった。ここから――ん?」

「……バースト、ロマンチック……」

「へ?」


 急に手を回してきたと思ったらエリーは何を言っているんだ? って、そういやそうだ、今の俺はエリーをお姫様抱っこして屋根に上がってるんだ、これって夜空の下で「星が綺麗だね」とか言ってるシチュエーションじゃねぇか!


「……コホン。エリー、今はロマンチックに浸(ひた)ってる場合じゃない」

「……うん、理解した。暴徒はゴミ、雰囲気をブチ壊し、1人残らず始末する」

「台詞が物騒だが……まぁいい」


 下ろしたら何故か不機嫌になったエリーが屋根を蹴って猛ダッシュ。遅れを取らないよう俺も続き、地下墓地の入口へと到着した。

 すると後ろから誰かに呼び止められ……


「そこの子供! 子供がこんな時間にウロチョロするんじゃない!」


 予想通り黒ローブの連中だった。


「ここに用があるんだよ。アンタらのお仲間が入って行くのを見たからな」

「チッ、面倒なガキめ!」

「構わんやってしまえ!」



 バシバシバシィィィ!



「「「フギャオ!?」」」


 黒ローブの全員がバンビーボールに当てられ悶絶(もんぜつ)。というかエリーさん、何気に全員が顔面に当たってるんだがわざとだよな?


「クッ、せめて……魔石に触れられればこんなキズなんぞ……」


 ん? 魔石とな!?(←出たな魔石マニア)

 倒れた1人が放った一言に言及せずにはいられず、ソイツを揺すって問い詰めた。


「おい、その魔石とやらは何なんだ?」

「クックックッ。我らデファート教の力の源だよ。デファート様から授かりしアーティファクトを地下墓地の奥に隠してあるのだ。あの魔石は心身を癒(いや)し、削がれた力を取り戻してくれるのだ」


 回復効果のある魔石が有るのか。大方ミネルバが用意したものだろう。


「ふ~ん、便利そうだな。魔石は何個有っても困らないし……」

「ま、まさか貴様、我らのアーティファクトを奪う気――グホォ!?」

「……うるさいゴミ」

「ゴ、ゴミだなんて、ミネルバ様にも言われたこと……ない……のに……」ガクッ!


 再び顔面ブロックを披露した黒ローブを放置し、地下墓地の奥へと向かう。途中で他のデファート教徒に見つかるが俺たちのスピードに付いてこれるはずもなく、難なく最深部へとたどり着く。

 そこには壁に埋め込まれた紫色の大きな鏡が――いや、鏡のように見える魔石を前に、デファート教徒たちが一心不乱に祈りを捧げていた。


「さっきの奴が言っていた魔石だ。放たれてる魔力もかなり多いな」

「……どうする?」

「もちろんこ(・)う(・)す(・)る(・)のさ、ファイヤーボール!」



 バチィィィィィィン!



「ヒィィィ!? アーティファクトにキズがぁぁぁ!」

「な、なな、なんという罰当たりな!」

「見ろ、あのガキ共が犯人だ!」

「うおおお! 犯人を殺せぇぇぇ!」


 チッ、壊すのに失敗した上に見つかっちまったか。ならばと迎撃体勢を取ると、見覚えのある男が前に出てきた。


「フッ、待ちたまえ諸君。ここは1つ、ミネルバ様の片腕であるのモルツに任せてもらおうか」

「モルツ? ああ、お前がバカ2人の片割れか」

「だ、誰がバカだ、バカと言った方がバカなんだぞバカやろう!」

「たったそれだけの台詞でバカが4つも出てくるとか、正に本物の――」

「バカじゃない! いいか? 俺をバカにしたら後悔するぞ? いいや、今すぐにでも後悔させてやる。そして自分のバカさ加減に絶望し、悲しみに暮れてろバカたれめ!」


 短くても長くても同じ数だけバカを連発するところに若干のセンスを感じつつも、モルツは詠唱を開始する。


「我らに仇なす異教の者よ、その身を清め、我が教えに沿い生まれ変わるがいい、ブラッシュボルトォォォ!」



 ジュ~~~~~~ン―――シュ!



 意外にも素早く放たれた黒い球体が、稲光りを帯びた状態で迫る!


「――っと危ねっ!」



 バシュッ!



 シールドを張ってなきゃ直撃だったであろう球体が明後日の方向へと飛んで行く。


「弾かれただと!? バカな、新たな力を得た俺の究極魔法がこんなガキに!」

「ガキで悪かったな。でも悔しがってる余裕はないと思うぞ?」

「余裕がない? 何をバカなことを――」


 だが直後に俺が言ったことが本当であることを証明するかのように、デファート教徒の悲鳴が辺りに響く。


「ンギャッ!?」

「そ、そんな、モルツ殿の魔法がこちらに向かっ――ブゲッ!」

「モ、モルツ殿、お助け――ゲハッ!」

「なななな、何て事だ、ブラッシュボルトって反射するのかよぉぉぉ!」


 そう、モルツが放った魔法が壁や天井に跳ね返って奴らに当たっているんだ。

 あ、俺とエリーは無事だぞ? 俺がシールドでカバーしてるからな。


「この野郎、自分の放った魔法の特性を把握してないのかよ」

「だ、だって、ミネルバ様はそんなこと一言も――ンゴッ!?」


 そしてついには自滅。その後も究極は辺りを荒らし回り、終いには……



 バリィィィィィィン!



 奴らの大事なアーティファクトとやらに命中して粉々に。さっきのファイヤーボールで壊れかけてたんだろうな。


「ま、まただ、また失敗した。大切なアーティファクトを壊しては、ミネルバ様に会わせる顔が……」


 この世の終わりみたいな顔をしたモルツがゆっくりと立ち上がる。


「思えば失敗の連続だった。冒険者に憧れて都会にやって来たまでは良かった。一流の冒険者を目指したはずなのに、結局はそこらの冒険者と何ら変わりない評価。俺みたいな奴は大人しく田舎に引き込もっているべきなんだ……」


 まぁ……そうだな。冒険者は実力主義だし、弱い奴は淘汰(とうた)されるのが当たり前だ。


「お前の妹は先に帰ってったぞ?」

「そう……か。ハハ、どうやら兄妹揃って行き着く場所は同じらしい」

「と言うと?」

「俺も故郷の土が恋しくなった。今後は剣を鍬(くわ)に持ちかえることにするさ」


 そう言ってモルツもトボトボと立ち去って行く。俺とエリーは顔を見合わせ……


「良かったのかこれで?」

「……良かったと思う。ゴミを処分してくれたし」

「そっちかい……」


 どちらにしろ、ミネルバの企みは潰せたのかな? でも一応は城に向かってみるか。



★★★★★



 時間はバーストたちが地下墓地に着いた時まで遡る。城の門前では帝国軍と暴徒による苛烈な押し合いが展開されており、中でも国軍を指揮する皇帝の三男ヴィクトルとデファート教徒から絶大な支持を得ているミネルバの一騎討ちは激しさのあまり他の者が入り込む隙を全く与えてはいない。


「やるわね。この魔王軍四天王のミネルバを相手に剣だけで対抗してくるとは……」

「四天王……ねぇ。つまりボクの実力なら魔王を倒した勇者にも匹敵するのかな?」

「フン、自惚(うぬぼ)れが過ぎる。たかが人間ごときが魔王様を超える気でいる? 夢物語なら日記にでも書くがいい、それで満足するのなら――な!」

「いいや、満足はしないよ。魔王や勇者を超えただけでは――ね!」



 ガキン!



四天王を相手に一歩も引かないヴィクトル。それどころか鍔迫(つばぜ)り合(あ)いでジリジリと押し寄せる様に、堪らずミネルバは距離を取る。


「何て馬鹿力! 貴様本当に人間か?」

「フッ、どうだろうね。良かったら冥土の土産に教えてあげるよ?」

「断る。貴様の素性に興味があるわけではないのでな」

「ほぅ? ならば教えてもらおうか、キミがランタール帝国を狙う理由をね」

「フッ……」


 再びヴィクトルが剣を構えたその時、ミネルバは不適に笑い……


「貴様の強さは認めよう。しかし、剣捌きだけで勝敗が決するほど、世の中は甘くはないのだよ」

「……何が言いたいのかな?」

「こ(・)う(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)だ、深淵悪夢(アビスドリーム)!」



 ザ……ザザ……ザザザザザザ……



「クッ!? これ……は……」


 バーストたちに使ったスキルがヴィクトルを襲う。予想外の展開に頭を押さえてフラフラと後退するヴィクトルだったが……


「フハハハハ! どうだ、身体の自由が利くまい? これからはこの私の手駒として存分に――」


「――活躍しろと? フフ、謹んで遠慮するよ」

「!?」


 なんと、何事もなかったかのように笑顔を見せるヴィクトル。一時(いっとき)でもフラついたのが嘘のようにしっかりと剣を構えて見せた。


「効かないだと!? バカな、四天王の魔力に抵抗できるはずが――」

「出来るんだよそれが。ちょうど帝都で流行り始めた代物でね、重要なポジションに着いている部下には身に付けさせているのさ」

「そ、その指輪は!」


 何を隠そうヴィクトルが自慢気に見せたのはバーストお手製の【解放のカラフルリング】だ。1度目の前で無効化されてるのを見たのだ、疑う余地はない。


「チッ! あのクソガキめ、余計なことをしてくれる!」

「ほぅ、その様子だとバーストくんとは一戦交えたようだね。そして彼を仕留めるのは失敗したと」

「黙れ! 利用価値を見越してわざと生かしているだけだ!」

「フッ、そうかい? まぁどちらでも良いのだけどね、ボクの帝国に牙を向いて無事で居られると――」



 ドド~~~ン!



「「!?」」


 突如として響き渡る爆発音に2人の動きは完全停止。直後にハッとなったミネルバがデファート教徒たちへと視線を移す。


「い、今のはまさか!」


 彼女の想像通りだったのだろう、暴徒と化していたデファート教徒たちが落ち着きを取り戻し、訳も分からずといった感じに周囲を見渡していた。


「うん? 俺は今まで何を……」

「確か外を散歩中に勧誘されて……」

「オ、オラ畑仕事さしとったきに、なしてこげな場所さ居るんだば!?」


 襲うのを辞めたデファート教徒を見た兵士たちも、互いに顔を見合わせてクエスチョンマークを頭上に浮かべる。そして状況を理解したヴィクトルはすぐに指示を飛ばした。


「彼らの洗脳は解けた! 速やかに帝都の外へ誘導せよ!」

「グ……ヌヌヌヌ!」


 一件落着とばかりに胸を撫で下ろすヴィクトルとは反対に、悔しそうに地団駄を踏むミネルバ。いくら四天王とて離れた場所から――しかも多数の者たちへの洗脳を維持するのは容易ではない。そのため帝都のある場所に魔力増幅のための仕掛けを施してあったのだが、洗脳が解けたということは……


「キミの計画は失敗したようだね。どうかな、まだボクと手合わせするかい?」

「フン、誰が貴様の相手なんぞするものか。この場は退いてやるが、いつか帝国は私がいただく。せいぜい首を洗っておくがいい!」


 捨て台詞を吐き、ミネルバは何処かへと飛び去って行く。


「やれやれ、敵が多いのも困りものだね。けれどボ(・)ク(・)の(・)計(・)画(・)を邪魔されるわけにはいかないんだ。そのためには……」


 ヴィクトルは一呼吸置くと……


「……キミには期待しているよ、バーストくん」


 そう呟いたのだった。



★★★★★



 あれから1週間経った。帝都は平穏を取り戻し、いつもと変わらない日常が送られている。


「フンフフ~ン♪」


 うん、母ちゃんがご機嫌で料理をしているのが非日常ではあるけどね。


「てか母ちゃん、料理は苦手じゃなかったのか?」

「はぁ? んなもん苦手に決まってるだろ。運んでるだけだよ」


 んだよ紛らわしい……。


「まぁそうだよな、母ちゃんが料理なんて始めたら、この間の暴徒騒ぎどころじゃないもんな」

「ああ、例のデファート教徒かい? アンタも活躍したみたいだけど、ヴィクトル様も素晴らしかったってね。何でも魔王四天王の1人を撃退したんだろ? 残党とは言え四天王を退けるたぁ憧れるねぇ。あたしももう少し若けりゃ手合わせ願いたかったよ」


 俺が城に到着した時はすでにミネルバの姿はなかった。でも何故かヴィクトル様には礼を言われたんだよな、よく分からんけど。



 ドタドタドタ――バタン!



「奥様、バースト坊ちゃま、グラスフォード様が御帰還されましたよ!」


 俺たちがいる食堂にメイドが駆け込んできた。言ってなかったけど、今日は長男のグラスフォード兄さんが遠征から帰ってくる日なんだ。勇者候補として辺境に足を運び、治安維持等をやってたんだよな。


「思ったより早かったね。そんじゃバーストは出迎えてあげな。あたしは料理の準備をしとくからさ」

「うん、分かった」


 およそ半年振りの再会か。土産話とかも聞きたいと思ってたんだ。


「お、ようやくバーストも来たみたいだ」

「遅いわよバースト。ほら、早く扉を開けてあげなさい」


 正面入口には他の兄弟たちも集まっていた。ルドラスとアイリに急かされ俺が代表して扉に手を掛ける。そして……


 ガチャ!


「ようバースト、元気にしてたか?」

「グラスフォード兄さん!」


 忘れかけてた(←失礼)兄の顔がそこにあった。条件反射で兄の手を引き中に招き入れようかと思ったその時、兄の隣に俺と同い年くらいの女の子がいるのに気が付く。


「ん? この子は……」

「ああ、ちょうどすぐそこで会ってね、バーストに用があるって言うから連れて来たのさ」

「俺に?」


 チラ見しかしてないから知人であることに気付かなかったのかもと思い、もう一度その子を見てみると……


「フッ、久し振りじゃなバースト」

「え……」


 その台詞を聞いた瞬間、俺の意識が急激に遠退いていく気が――と、そこで意識を失ってしまう。

 が、次に目覚めた時、まさかこの俺が心底仰天する事態に陥っていたと知ることになる。


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