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魔力は全てを解決する!  作者: 南国ブラックベア
第1章:家族と学友
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デファート教の大進行

 ミネルバを見失った俺たちは廃屋を調べ回ることでようやく絵画の仕掛けを発見するに至った。だが作動させた先にはミネルバの姿はなく、取り逃がしたことを悟り落胆。モヤッとした気分のまま数日を過ごす羽目に。


「それにしても惜しかったッスね兄貴~、もうちょっとで四天王をやっつけられそうだったのに。仮に倒してたら大金星だったッスよ! 俺が居たら全力で捜索のサポートを出来たッス」

「ほんっとに惜しいことしたわね。あたしも冒険者の勘で見つけられたのに」


 ウィルとファーナは居なかったもんな。タラレバ言っても仕方ないけど、やっぱ悔しいよなぁ。


「今度会ったら絶対にブッ倒してやるさ」

「来れば良いけどね~」

「ファーナは来ないと思ってるのか?」

「うん。だって国の上層部も警戒してるでしょ? そんな状態で動くとは思えないし、魔族の寿命は長いって聞くよ? 数ヶ月や数年くらいは潜伏しちゃったりとか」


 それだと困るんだよ。人間の寿命は短いんだから、直ぐにでも動いてくれないと。



 バタン!



「ファーナさん、よくご存知で。確かに魔族が長寿であることは間違いないです。人間や獣人にとっての1年は彼らにとっての数週間でしょうから」

「「「先生!」」」

「おはよう御座います皆さん、3日ぶりでしょうか?」


 ここでマイティーチャーのご登場。気のせいか3日前よりは緊張が和らいでるように見える。


「しかし皆さん、授業の再開はまだ検討段階です。なぜ教室に集まったのですか? 校内への出入りも許可してませんが?」


 そしてあからさまに嫌そうな顔で問い詰めてくる。サボタージュを邪魔されたのが余程イラついたらしい。


「そんな顔しなくてもいいじゃんよ。学校が安全だと判断したまでだし」

「う~む、それは責任者として喜ぶべきか、はたまた責任が重くなり手間が掛かると言うべきか、実に難しい」

「手間は掛けさせないって」


 自作のマジックアイテムはミネルバのスキルから解放してくれたからな。次に襲われても結果は変わらないと断言するぜ。


「それにしてもデファート教、面倒なことをしてくれます。皆さんの近くでデファート教にハマッたなんて人は居ませんよね?」

「ないッス」

「ないない」

「宗教に興味はないな」

「商売には関係ないのん」

「……お腹空いた」

「それを聞いて安心しました。ちなみにエリーさん、お昼はまだまだ先ですよ」


 デファート教ではないが、アドセルトことアド兄とフレデリカことフレ姉さんは神道に入ってるな。父様と母ちゃんは容認してるけど本家のキルロード家は宗教関連は一切認めない構えで、何かとチクチク嫌味を言ってくるらしい。派閥に関しても本家と同じく改革派に入れと迫ってるとか。世知辛い世の中だねぇ。


「ではバーストくん、戸締まりはお願いしますね。下校時間になったら速やかに帰宅するように」

「おっけ~」



 その日もワイワイと騒ぎつつ組手やらに時間を費やし、あっという間に夜を迎えた。まさか例の信者たちが大騒動を起こすとも知らずに……。



★★★★★



 夜、帝都の南門にて。


「ふぁぁぁ……」

「どうした、やけに眠そうだな? しっかり見張ってないと上官にシメられるぜ?」

「仕方ないんだよ。数日前にブッシュウルフ共が一晩中吠えまくっててよ、追い払おうとしても直ぐに戻って来やがるし倒そうとすりゃ逃げるしで、討伐するのに1時間は掛かっちまってな。お陰で時間遅れで睡魔が……ふぁぁぁ……っと」

「あ~、そりゃ災難だな」

「明日は非番だし、丸1日は寝て過ごすぜ」


 あと何時間かすれば何事もなく日付が変わる。門番たちもそう思っていたのだが……


「ん? おい、街の方がやけに明るくないか?」

「夏祭りじゃないか? そろそろそんな時期だったと思うが」

「いや、祭りはもっと先のはずだし、中央通りに露店が出るはず。それに煙のようなものが上がってて――いや、マジで煙だ、ありゃ火災だぜ!」

「何だって!? いったい何が……」


 街の方で何が起こっているのか、だが門番だけに迂闊に動くことができず、苦虫を噛み潰したような顔で見つめることしか出来ないでいた。



★★★★★



「だ、旦那様大変です、異教徒が街中で暴動を!」

「何だと、デファート教が!?」


 家族が食堂で顔を揃えていた時だ。飛び込んで来た使用人が鬼気迫る表情で捲し立てる。


「すでに火の手も上がっています! ここを狙われるのも時間の問題です、一刻も早い対処を!」

「ぐぬぬぬ……門番は何をやっている、異教徒を歓迎してるのか!」


 確かに疑問だ。信者たちがミネルバと一緒に襲ってきたのを切っ掛けに、表立って行動している連中は帝都から叩き出したんだ。つまり帝都内部のデファート教徒はほんの一握りしか残っていないはず。


「父上……」

「父上!」

「分かっている。私とて黙って見過ごすほどバカではない、この手で不届き者を討伐してくれる!」


 父上の台詞に母ちゃんも力強く頷き、即座に武器を手に取り邸を飛び出した。父上に続き母上、グレ兄、アド兄にルドラス、俺とエリーが最後に続く。姉の4姉妹には邸を護るため残ってもらった。


「中央の方に火の手が上がっている。急いで向かわねば!」

「落ち着きなダーリン。信者が入り込んでるってことは門が突破された可能性が高い、そっちを先に――」


 そう母ちゃんが言い終わる前に騎士団の1人が駆け寄ってきた。


「ラインハルト様~、ご無事でしたか!」

「うむ、こちらは問題ない。それより状況はどうなっている?」

「ハッ、異教徒共は帝都の中心部にて建物に火を放ち、城に向かって行進中のようです」

「中心部……いや待て、どうやって門を突破した?」

「いえ、奴らは門を突破してません、突如として貴族街に現れたのです!」

「何っ!?」


 まるで転移でもしてきたかのような台詞だな。皇帝陛下のお膝元でもある帝都は全体を結界で覆っているんだ、転移して来ようものなら即座に弾かれるはず……。


「他の団員によると、ある貴族の邸から溢れるように現れたと」

「「「!?」」」


 これは決定的かもしれない。その邸の貴族が協力させられた、或いは積極的に協力しているのどちらかだ。


「行進から外れて略奪を行う者もいるそうです、くれぐれもお気をつけください。では」


 騎士は一礼して走り去った。その反対側では火を放ちながら叫んでいる信者がこちらに迫っているのも見える。正に暴徒だ。


「おのれ異教徒め、これ以上の狼藉(ろうぜき)は断じて許さ~ん! 私に続け~!」

「あいよダーリン!」

「俺もやるぜ~!」

「我輩の神道、汚す者は許せん」


 迫るデファート教におれたち一家が突撃を開始。端から見りゃ狂ってるだろうが、我がキルロード家は武家。それも少数精鋭だ。


「アヒャヒャヒャァ! カモの貴族様がやって来たぜぇ、身ぐるみ剥いで――ガハッ!」

「どちらがカモか教えてやろう! ぬぉぉぉぉぉぉ!」

「ヒッ!? な、なんだこのオッサン!」

「ギャァァァ! う、腕が、腕がぁぁぁ!」

「フン! 腕の1本がなんだ、残りの1本で立ち向かってこい!」

「「「無茶な!?」」」


 若い時に母ちゃんに助けられてから一心不乱に剣術を学んできた父上だ。徒党を組んだ一般人に負けるわけがない。


「さぁさぁ、よそ見してる隙はないよ! アンタらの性根はキッチリと叩き直してやるからね!」

「こっちもか――ギェェェ!」

「ヒィィィ、お助け――グホォ!」

「な、何なんだよ、こっちのオバサンも強ぇじゃねぇか――ンギャ!?」

「誰がオバサンだ! かつての傭兵団じゃ戦場に咲く薔薇と呼ばれたんだよ!」


 父上から聞いたけど、母ちゃんが【戦場に咲く薔薇】と呼ばれたのは血渋きが原因らしい。つまり容姿とは関係なかったりする。言ったらキレられるから言わんけど。


「クッ、こっちはダメだ、他をターゲットにして――」

「逃がすかぁぁぁぁぁぁ!」


 ブシッ!


「ギャァァァァァァ!?」

「俺の大剣を前に逃げようなんざどうかしてるぜ? じっくり味わってくれねぇとな!」

「ヒィィィ――」


 ドッ!


「ぐ……」

「安心しろ、峰打ちだ」

「峰打ちだ――じゃねぇぞアドセルト! 俺の獲物を取んなよな!」

「グレイバムがもたついてるからだ。我輩のせいにするな」

「んだとぉ!?」


 コソコソ……


「(今のうちに逃げるぞ)」

「(おぅ、声にださないようにな)」



「「逃がすかぁぁぁぁぁぁ!」」

「「バレて~ら~~~ンギャ!!」」


 うんうん、さすがは俺の家族だ。あの様子なら暴徒に囲まれても何の問題もない。一方の俺は何をしてるかというと……


「……バースト、どこに向かってるの?」

「デファート教徒が現れた邸さ」


 貴族の邸なら近所のはず。散らばってる暴徒は家族に任せ、暴徒がやって来た方角に向かってみると……


「見ろ、あの邸の前だけデファート教が固まってる」

「……うん。でもあの邸って確か……」


 俺やヴォルトにとっては良い思い出がない邸――エドワード伯爵の邸だ。いや、衣食住は平民より上だし、ヴォルトにとっては良かったのか? ともかく、そこを経由して帝都に侵入してるっぽいな。おおかた脱出用の通路が外に繋がってるんだろう。まずは暴徒を叩きのめして通路を塞ぐか。


「むむ? ここは我らデファート教の拠点だ、関係ない者は――」

「はいはいこんばんは、でもってさよなら――ウォーターナックル!」

「――フゲッ!?」


 入口を塞いでいたデファート教徒を邸の壁にに叩きつけてやった。気付いた信者たちがワラワラと邸から出てくる。


「ここを奪われるわけにはいかん。者共、逆賊を討伐するのだ!」

「「「おおっ!」」」


 だ~いぶムカついてきた、全員張っ倒してやる!


「誰が逆賊だ! 他人の邸を勝手に拠点化しやがって、お前らみたいな侵略者はこうだ――グランドアッパー!」

「「「ヒデブッ!」」」


 奴らの足元が急速に盛り上がり、上空へと打ち上げた。中庭の芝生に落ちたようだし、死んではいないだろ。


「グググ……我らデファート教に楯突くとは生意気な……」


 次々と同士がやられるのを見た残りの暴徒共は、あからさまに俺たちから距離を取り始める。それでも引き上げないのはこの邸が重要な意味を成している証拠だ。


「取り壊すって話だったのにさっさとしないから悪用されるんだ。今ここで取り掛かることにしよう」

「き、貴様、何をする気だ?」

「何をするって? そんなもん――」



「――邸ごと焼き尽くすに決まってるだろぉぉぉ!?」←マジキチスマイル

「なにぃぃぃ!?」

「お前ら火を放つのが好きそうだし、本物のキャンプファイアってやつを見せてやる――ゴッドフレア!」



 ドゴォォォォォォン!



 火属性で最大級と呼ばれてる魔法だ。バンビーボールよりも大きな赤い球体を邸へと放り投げると、着弾と共に大爆発が発生。たちまち邸全体が炎に包み込まれていく。


「あああ、拠点がぁぁぁ!」

「これで新手も来れないし、退却もできなくなったな」


 これで暴徒の勢いは削がれ、残った連中が掃討されればと思ったのだが……


「あ~あ、こんなに燃やしちゃって。せっかく住めそうだったのに勿体ないな~」


 そう呟くのは、塀の上に佇(たたず)む白ローブに身を包んだ女。するとさっきまで頭を抱えていた暴徒たちが顔を上げて懇願(こんがん)し始めた。


「おお、カルーア殿!」

「カルーア殿だ、カルーア殿が来てくれたぞぉぉぉ!」

「お助けくだされカルーア殿! この若造めが邸を台無しに!」

「そうでしたか。それはそれは、月に代わってお仕置きしなければですね~」

「そうですそうです! 一発ガツーンといっちゃって下さい!」

「フフ~ン、良いでしょ~う。ここは私に任せて――ゲッ、アンタは確か……」


 振り向いた女が俺を見るなり後退りしている。ローブに覆われてて顔が見えないけど俺を知ってる人物か?


「も~最悪最悪、どうしてコイツがここに居んのよ。いくら強くなったからって、コイツを相手にするのは……」

「お~い」

「でもダメダメ、ここで逃げたら今までと何ら変わらないもの、ここは勇気を振り絞らないと……」

「お~い!」

「あ~でも勝てるビジョンが全然見えない。だってゴーレムの群を秒で瞬殺するのよ? そんな奴をどうやって……」

「お~い!!」

「くぅ~! せめてミネルバも戦える魔物とかお供で寄越しなさいよ! そんな甘っちょろい考えで上手く行くわけ――」


 ボグッ!


「――フギッ!?」

「……バーストを無視するな」


 しびれを切らしたエリーの一撃が後頭部に炸裂。


「ングググ……いったいわねこのクソガキが! しかも後ろからボールぶつけるとか卑怯にも程があるわ!」

「ん? お前は……」


 ボールが当たった拍子でローブが外れ、振り向き様の顔が街灯の下でハッキリと写される。そう、この女には見覚えがあった。


「思い出した、【熱血の拳】から【バッカニア】に鞍替えしたバカ2人の内の1人!」

「合ってるけど嫌な覚え方するなぁ!」


 バカな奴らだと思ったらマジでバカなことをやらかしてるな。


「こうなったら自棄よ、アンタをブッ殺して四天王に取り立ててもらうんだから!」

「四天王?」

「そうよ、今でこそミネルバ様は魔王軍の四天王だけど、魔王になったら四天王が必要になる。そこに私とお兄ちゃんが収まれば万事解決みんなハッピーじゃない」


 ハッピーなのはコイツの頭の中だけなんだよなぁ……。


「あんなこと言ってるけど、お宅ら信者はそれでいいのか?」

「おお、新生魔王軍の誕生ではないか! そこに我々が選ばれる(←そんな事は言われてない)とは、正に光栄の極み!」


 ダメだこりゃ……。(←次行ってみよ~)


「そうやって余裕ぶってるのも今のうちよ。新生四天王の最強魔法、じっくりと味わいなさい――ライトニングスターーーーーーッ!」



 キラン!



「んあ? ――うおぉぉぉ!? 空に何か浮かんでるぞ!」


 それは巨大な玉のようで、真っ白な光を放ちながらこちらを見下ろしてるかのようだった。


「フフ~ン、残念でしたね。この魔法を受けたら最後、真っ黒コゲに燃え尽きるのをまつだけなのですよ。例えアンタでも防ぐのはムリムリ~♪」


 確かに凄まじい魔力を感じるが……


「で、いつ来るんだ?」

「はい?」

「はい? じゃねぇよ。デケぇ割にはメチャクチャ遅いやん」


 そう、コイツにとっての最強魔法は最強にトロいようで、一向に着弾しそうにないんだ。多分だが到達するまで数10年は掛かるんじゃね? ってところか。


「そ、そんな!? この魔法に人生を託したのに!」

「つまりお前の人生は宙ぶらりんってこと?」

「優しさってもんがないのアンタ!」

「いや、事実だし……」

「グヌヌヌ……」


 悔しげな表情を作るも徐々に綻(ほころ)びを見せ、最後には脱力したのうにガックリと肩を落とすと……


「そ、そう……よね、これが……事実、これが……現実……」

「ん? お、おい、どこ行くんだ?」

「故郷(くに)に……帰ります」


 そう言うとトボトボと歩き出した。


「お父つぁん、お母つぁん、都会は恐ろしいところさぁ……」


 完全に戦意を喪失したらしい。これなら放って置いてもいいだろう。


「カ、カルーア殿がやられたぞ!」

「こりゃ大変だ、早くモルツ殿の元へ!」


 残された信者共が城の方に向かって一斉に走り出す。バカ2人の片割れが居るんだろう。


「よし、後を追うぞ」

「……おけ」


魔法の紹介


ウォーターナックル:水属性。鉄砲水を意図的に作り対象にぶつける魔法。魔力が強いほど遠くへ飛ばすことができ、弱ければ水が流れるだけの場合も。殺傷能力な低いので多様な使い道がある。


グランドアッパー:地属性。地面が盛り上がり対象に向けて強烈なアッパーカットをお見舞いする魔法。打ち上げダメージに落下ダメージが加わるため、それなりに強力。



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