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魔力は全てを解決する!  作者: 南国ブラックベア
第1章:家族と学友
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邪教からの解放

「ヘン、四天王だかなんだか知らないが、俺を相手に選んだことを後悔させてやる!」

「お前がか? フッ、ならば見せてみるがいい、お前の力とやらを!」

「ああいいとも、ウィンドショック!」



 バズバズバズゥゥゥ!



 拡散された突風に当てられた黒ローブたちが硬直したまま動かなくなる。


「ハッ、何かと思えば僅かな時間だけ動けなくする妨害魔法ではないか。そのような弱小魔法が――」

「ミ、ミネルバ様、く……か、体が……」

「う、動か……ない……ので!」

「――通用してるではないか~い!!」


 恐らく魔力の違いからくるものなんだろう。ミネルバ本人は食らいながらも平気そうだが黒ローブは一般人。しばらくは動けないはず。


「チッ、覚えておれ!」


 状況が不利だと悟ったミネルバが廃屋の中へと消えて行く。


「……どうするバースト?」

「もちろん追うよ」


 帝都をどうするつもりだったのか問い詰めないとな。


「うく……ミネルバ様を護るのだ!」

「……うおぉぉぉ!」

「ここが……正念場ぁ!」


 おっと、ウィンドショックの効果が切れたらしい。


「ミネルバを追うためにもコイツらをどうにかしないとな」

「――それなら任せろ!」


 ゴォォォ!


「「「ふぎぁぁぁっぢぃぃぃ!」」」


 炎を纏(まと)った爪が強烈な熱風を起こして黒ローブたちを吹き飛ばす。この爪は!


「ヴォルト!」

「リスティから話を聞いてな、こっそりと後をつけていたんだ」

「浄化の槊杖(さくじょう)があの女に反応してたのん。絶対何か有ると思って付いてきたのん」


 頼れるクラスメイトだ。瞬時に判断してくれたのは有り難い。


「騎士団にも使いを回したから直ぐに駆けつけてくれるだろう」

「そうか。なら倒した黒ローブたちは騎士団に任せて、俺たちは……」

「うむ、先へ進もう」

「やってやるのん!」

「……お腹空いた」


 よし、入るか。

 意を決して廃屋へと足を踏み入れる俺たち。2階建ての廃屋、しかも何世帯もが集団で暮らせる大きさだ。日没という時間帯もあり、幽霊屋敷を探索している気分にさせられる。


 ドテッ!


「イッテェ……、足場が悪すぎて転けちまった」

「……大丈夫?」

「大丈夫さエリー。母ちゃんの特訓に比べればこの程度」


 寝坊したら拳骨を繰り返すうちに目覚めは人並になったからな。そこだけは感謝してるぞ母ちゃん。


「……あ!」

「おっと!」


 転びそうになったエリーを咄嗟(とっさ)に支える。


「大丈夫かエリー?」

「……バーストのお陰で転ばなくて済んだ。バーストえらい」

「フッ、任せろ」


 う~ん、リア充を見せつけたら怒り狂って姿を現すかと思ったけど、そんなことはなかった。近くには居ないのか。


「しっかしマジで足場の悪いアジトだ。信者の勧誘より拠点をどうにかしろっての」

「……完全同意。ミネルバはイルフィーナよりバカ」

「それにな、こんなゴミ溜めみたいな場所、女神デファートだって喜ばないぞ~」


 ゴソッ……


「何だと貴様~!」

「我らへの冒涜(ぼうとく)、許すわけにはいかん!」

「邪魔する者には死を!」


「……うるさい」


 ババンバンバン!


「「「んんぎゃぁぁぁあ!?」」」


 ついにバンビーボールの壁打ちを覚えたらしく、反射させたボールを当て始めた。凄いぞエリー、ドッジボールで優勝できるかも。


「2階を見てきたが誰も居ないな」

「1階はどうなのん?」

「数人残ってたけどエリーが全員アウトにした」


 おんや~? ミネルバが見当たらないなぁ。1階も全て回ったはずなのに。


「入れ違って外に逃げられたか?」

「でも外には騎士団が到着してたのん。外に出たなら騒ぎになるのん」

「けど隠れてそうな場所は全部見たし」


 いっそのこと建物を消し飛ばすか? 安否は不明になるけど、このまま終わらすよりかは……あ!


「そうだ! ――おい、起きろ」ペチペチ


 KOされていた黒ローブの1人を強引に叩き起こした。


「……う、うぐ……ミネルバ……様」

「まだ洗脳が解けないのか。まぁいいや、1つ聞きたいんだけどミネルバはどこだ? どこにも姿が見えないんだが」

「クククク、バカには見えんさ」


 バカには見えない……裸の女王様の話だっけ? 話が逸れるから掘り下げないけど。


「バカならお前にも見えないんじゃ?」

「し、失礼な! 帝都大学を卒業したボクがバカなはずがない! ザコとは違うのだよザコとは!」

「へ~ぇ、じゃあお前には見えんの?」

「もちろんだとも。ミネルバ様は今も尚ボクと共にある」

「何!?」


 狂気じみたように顔を歪める男。コイツ他の信者と違うのか!?


「クククク、これが証拠だ。見ろ、ミネルバ様が微笑んでらっしゃるだろう?」

「なっ!? ――あ? あ~、ああ……」


 徐々にトーンダウンしていく俺。見せてきたのは男が身に付けていたハート型のペンダントで、その真ん中には笑顔のミネルバが写っていたからだ。


「うん、何つ~か……凄いな、こんなにハッキリと」

「そうだろう? 大金積んで高位の術士に作ってもらったのだ。お陰で家と女房を失ったが、ボクは悪くない!」


 女房から見たらガッツリ悪いぞ。というか奥さんが可哀想なレベルだ。


「で、そんなもんはいいからミネルバの居場所」

「居るだろうここに!」

「だからそうじゃなくてさ、実物のほう」

「実物……実物のほうは無理だ、既婚者は論外って言われたし、どこに居るかも分からない……」


 いや、さりげなく浮気しようとすんな。


「……バースト、コイツは女の敵。シバいたほうがいい」

「エリーに賛成~! 不義理な男は浄化してやるのん!」

「はいはい、分かったって――ファイヤーボールっと」


 ボムッ!


「ンギャァァァァァァ!?」


 背中に火球を入れて外に放り出した。騎士団に怪訝(けげん)な顔をされたから、魔王の四天王と不埒(ふらち)な関係だったと伝えておいたぞ。


「さてどうしよう、ここまで来てアレだけど打ち切るか?」

「……でも相手は魔王軍の四天王。放置するのは良くない」


 エリーの言う通りなんだけどな。でも何も見つからない以上ここに居ても……


「むぅ、ひょっとするとだが……」

「ヴォルト、何か心当たりが?」

「心当たりというか、俺がエドワード伯爵の邸で過ごしていた時に偶然にも隠し通路を発見したことが有ってな」

「隠し通路……」


 貴族の邸なら脱出用の通路を隠しているケースは事実として多い。


「よし、隅々まで調べよう!」


 手分けして探すことに決まった。



★★★★★



 わたくしは魔王軍四天王ミネルバ。そう、かつて魔王様の下で魔王軍を指揮していた者の1人。魔王様が勇者との戦いに敗れ、お命を落とされてから早15年。ついに来るべき時が来た!

 魔王様の復活? フフ、違います。それはもっと素晴らしい事。わたくし自らが魔王となり、再び世に覇を唱える。そう、新たな魔王が誕生するのだ! そのための土台作りとしてランタール帝国を支配してやろうと画策したまでは良かったが……


「グヌヌヌ、生意気なガキどもめが。よくもわたくしの邪魔を……」


 何てことはない、魔力が強いだけの人間と多少は潜在的な魔力を持つハーフエルフ。しかも産まれて間もないガキの分際でわたくしの洗脳を跳ね返したのよ。


「忌々(いまいま)しい、実に忌々しい。今すぐにでもわたくしの手で息の根を止めてやりたい!」


 なら逃げるなと? フ、フン、今日は調子が良くないのよ。本来のわたくしならあんなガキ共簡単に捻り潰しているわ! きっと流行りのダイエット食品を食べ過ぎたせいよ、ええ、そうに違いないわ!


「!! チッ、あのガキ共め、仲間を増やして乗り込んで来たわね」


 強い魔力反応が小さな反応を引き連れて中を移動している。これだけ建物が穴だらけでは隠れてやり過ごすのは無理か。一旦は帝都を脱出するしかない。


「幸いにして本(・)命(・)はバレていない。信者共には一旦はおとなしくしてもらい、日を改めて収集をかけるとしよう」



 シュゥゥゥゥゥゥン!



 壁に掛けられた絵画に触れると視界がグニャリと回転し、元に戻った時には帝都の外に移動していた。四天王たるもの常に先を読んで備えるのは当然のことで、脱出ルートの確保くらいは造作もない。

 でもこの仕掛けも見つかってしまいそうね。そうなったらまた別のルートを確保しなきゃだし、骨が折れるわ。


「ウォン? ――グルルルルル……」


 あら、帝都の西は森が広がってるのね。生意気そうなブッシュウルフが無謀にも威嚇してきたわ。

 え、魔物が魔族を襲うのかですって? そりゃ魔物の中には忠誠心で付いてくる者も居るけれど、全部が全部じゃない。意志疎通が出来なかったり強いだけじゃ従わない者たちは、放置するか蹴散らすかの2択になる。


「シッシッ、こちとら雑魚の相手をしてる隙はないのよ。さっさとお行き」

「グルルル……ウォ~~~ン!」

「うん? 降参します――とは言ってなさそうね」



 ガサ――ガサガサ!



 茂みが揺れたと思ったら、暗闇で紅く光る複数の目が。お仲間が現れたわね。


「あらあら、わたくしは見逃してあげるつもりだったのにね。そんなに戦いが好きなら少しくらいは遊んでやってもいいわよ? 但し――」


 ザ……ザザザザ……ザザザザザザ……


「――この洗脳術【深淵悪夢(アビスドリーム)】に耐えれるならね」


 耐性の無い者は戦わずして無力化する。掛かった者は意識もあるため、無抵抗で惨めな姿を半永久的に見せつけられる。そんなわたくしは勇者たちからも深淵悪夢(アビスドリーム)と呼ばれ、恐れられるようになった。


「そろそろ良いかしら? わたくしの可愛いワンコちゃん、姿を現して整列しなさい」


 ザッザッザッザッ


「「「ウォン!」」」

「はい、良くできました」


 このように手駒にするのが衛生的かつ効率的なの。無駄な血を流さずに済むんだもの、素晴らしいと思わない? ええ、それでも抵抗してきたら潰すわ。毛の1本も残さずに――ね。


「さ、お利口なワンちゃんたち、帝都の南門に移動して門番にちょっかいを掛けてきなさい。休む間を与えないよう絶えず吠え続けるの、いいわね?」

「「「ウォン!」」」


 10体ほどのブッシュウルフが南へと走り去る。直ぐに倒されちゃうでしょうけど、何もしないよりはマシだもの。

 ま、そんなことより次はこ(・)っ(・)ち(・)ね。


「隠れても無駄よ。そこの男女2人、出てきなさい」


 さっきから木の裏側で身を潜めてる2人組がいるのよ。大した魔力じゃないし年齢層からガキ共の仲間とも思えないけど、黙って覗き見されるのは趣味じゃないわ。


 ゾロゾロ……


「す、すみません! 邪魔しちゃ悪いかと思って隠れてたんすよ。何だか取り込み中だったみたいだし。な、カルーア?」

「ですです! 何かしようとか思ってるわけじゃなくてですね、何というかその……」

「おい、そこで言い淀(よど)むな、余計に怪しく見えるだろ!」

「そ、そんなこと言うならお兄ちゃんが言ってよ! 私アドリブは苦手なんだから!」


 うん、このバカさっぷり、只の通りかかった一般人ね。警戒して損したわ。


「貴方たち、分かったからもう行きなさい」

「あ、いえいえ邪魔はしませんけど、逆にお力添えは出来るんじゃないかな~とか思ったりしてまして、なぁカルーア?」

「ですです、こう見えても私とお兄ちゃんはバッカニアっていう有名な冒険者クランの一員で――」

「バカ! バッカニアなんてハゲ親父の抜け毛より脱退者が多いじゃないか!」

「え? お父さんってハゲてないよ?」

「ものの例えだバカ!」

「さっきからバカバカ言わないでよ馬鹿モルツ!」

「おま、兄を呼び捨てに!」

「…………」


 何なのコイツら。あのリア充のガキ共でさえここまで醜くはなかったわ。


「結局貴方たちは何が言いたいわけ?」

「よくぞ聞いてくれました! 俺たち兄妹は実力が過小評価されている不幸な若者なんです!」

「本当なら今頃は白馬の王子様がやって来て、妃として迎えられてるはずなんです!」

「このままじゃダメだ、だけど自分たちだけじゃどうにもできない、旗揚げするにも金がない!」

「豪華な食事に綺麗なドレス、昼間は乗馬で2人乗り、夜にはペアでダンスを楽しむ!」

「ならば支える絶対的存在、俺たちに必要なのは主(あるじ)、世を支配する主(あるじ)なんだ!」

「そして2人は固く結ばれ、晴れて私は玉の輿。そんな巨額の富を分け与えてくれそうな存在!」

「「それが貴方なんです!」」

「…………」


 え~と、取りあえずイケメンで金持ちな王子を紹介しろってこと?(←多分違う)


「あ~すみません、コイツ、カルーアは少々ふてぶてしい部分がありまして……」

「な~によ~! お兄ちゃんこそ自分だけ正当化しようとしないで!」


 頭が痛くなってきたわ。要するに自分たちを雇えと言いたいらしいわね。けれど……


「残念だけど、何の取り柄もないおザコさんはお呼びじゃないわ。さっさとどっかへ行ってちょうだい、(なんとなく頭痛もするから)」

「お、お待ちを! 取り柄が無いのはその通りですけど、耳寄りな情報なら持ち合わせてますんで」

「そ、それでどうか1つ」両手コネコネ

「……最後まで胡散臭いわねぇ。まぁいいわ、話してみなさい」

「はい、実は……」



「え? 本当に!?」

「はい。後はどのように利用するかは貴女しだいですよ」

「ですです、利用しちゃってくださ~い」


 思わぬ情報を得たわ。これなら計画は続行出来そう。


「宜しい。この作戦が成功した暁には、お前たち2人を帝都の管理者として配属させてやろう」

「「本当ですか!?」」


 だが今のコイツらには言い知れない不安が残る(←分かる)。


「お前たち、さっき述べた情報の中に魔石が出てきたな? アレを出すがいい」

「魔石! はいはいコレですコレ、タール火山で討伐中にドロップしたんですよ。火属性で珍しいレアドロップだと聞いたんで、出てきた直後に素早く回収しました。バッカニアの連中も気付いてません!」

「ですです、お金が無くなったら換金しようかと思ってました!」


 意外とセッコイ真似するのねコイツら。


「経緯はどうでもいいわ。その魔石を2人で宙に掲げなさい」

「はい!」

「こんな感じでしょうか?」

「ええ、そのまましっかり持ってなさい」



 ザ、ザザザ、ザザザザザザザザ――



 ――ボン!



「うおっ!」

「ひぃ!?」


 2人が持っていた魔石が破裂し、光の粒となり消え去っていく。代わりに魔石の魔力が練り固まって2人に宿った。


「こ、これは……」

「凄い……この魔力なら発動すら出来なかった上位魔法を連発できそう!」


 でしょうね。わたくしの魔力も上乗せしてあげたから、多少は役に立つでしょう。


「さぁお前たち、帝都を手中にすべく行動を開始しなさい」

「「ハハァ!」」


 見ていろクソガキ共、わたくしをコケにした代償は倍にして払ってもらうぞ!


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