覚醒、ヒートゴーレム!
「各隊、接近のし過ぎに注意しろ! 下手をすると一撃で首を持ってかれるぞ! 斬りかかったら直ぐに後退せよ!」
「「「了解!」」」
正面から岩の塊が動いて来た。大きさは全長2メートル近く。背景と同化してて見分けにくいから注意が必要だ。
「ゆくぞゴーレム、我がハルバードを浮けてみよ、ハァァァァァア!」
ドゴォン!
さすがはイル姉。真っ正面から斬りかかり、ゴーレムを粉々に粉砕する。そんなイル姉の実力を知らなかったのか、疑似デートを楽しんでいた男が慌てて止めに入るも……
「イ、イルフィーナ隊長、単身で突っ込むなんて!」
「カダック、一撃入れたら後退しろと言っただろう!」
「で、ですが……」
「イルフィーナさんは特別だ、あれだけの強さが有れば例え囲まれても生還できる。でもお前は違う。加勢したところで巻き込まれるだけだ」
あの男、カダックって言うのか。他の隊員に止められ引き下がるが、尚も首を振り……
「違う、そうじゃない」
「ん? 何がだ?」
「もっと……もっとか弱く精細で慎ましい性格かと思ったんです!」
「はぁ?」
「それが……あんな風にハルバードを振り回す野蛮な人だったなんて!」
「野蛮ってお前……」
うん、カダックの中のイル姉が幻となって消え去ったようだ。というかだね、ハルバードを担いでる時点で戦闘スタイルなんざ分かるだろうと突っ込ませていただく。
「隊長、左右にもゴーレムが複数! こちらを囲むように動いています!」
「側面を取られないよう迎え撃て! 後ろに回ったゴーレムは冒険者に任せろ!」
どうやら俺たちの出番も残されていたらしい。レアドロップの可能性も有るし、やる気も出てくるってもんだ。
「出番だぜ野郎共、後ろのガキ共に実力差ってやつを見せつけてやれ!」
「おぅ!」
「任せとけって!」
バッカニアの連中が右側を相手にするようだ。
「よし、我々は左側を迎撃する! バーストくんにアイリさん、2人は後ろに――」
「いえいえ、ちゃ~んと戦闘に参加しますよ、ファイヤーボール!」
ボム!
「「「ええ!?」」」
火球を受けて崩れ落ちるゴーレム。それを見たセルドアさんとクランメンバーが目を丸くして驚く。飛び入りで参加しただけの俺が魔法を使えるとは思いもしなかっただろう。
「バ、バーストくん、まさか魔法を……」
「そのまさかってやつです。これでも南支部じゃちょっと有名なんですけどね」
浮かれて余計なこと言っちまったか? まぁいずれはバレるしいいだろう。
「奥にもいるな、ファイヤーボール!」
ボム!
「はい命中!」
「す、凄いな、あの硬いゴーレムをこんなに容易く……」
ゴーレムは物理攻撃に強く魔法に弱い。これトーマス先生の豆知識ね。
「おっと、こっちにもいたか――よ~し命中! 次は――」
モゾ……
「は!? こ、この個体、命中したのに動いてる!」
頭部を失って倒れたはずのゴーレム。それが再び起き上がり、オレ驚愕。だが透かさずアイリが答えを教えてくれた。
「バカね、ゴーレムはコアを壊さない限り死なないのよ、――スポットボイル!」
ジュワ~~~!
起き上がった首なしゴーレム(←ホラーっぽいなおい……)が地面に焼かれて消滅する。
「おお! アイリさんまで魔法を!?」
「あたしのはトラップよ。色んなマジックアイテムを組み合わせてトラップを発動させてるの」
「そ、そんな事が……」
出来るんだよなアイリには。昔から頭の回転が早いから色んなトラップを効率良く仕掛けまくってたんよな、その度に母さんに怒られてたけど。そのうち改造までするようになった結果、殺傷能力の高いトラップまで出来上がったもんだから両親真っ青だよ。
ちなみにやり方を聞いたけど、俺を含む家族には到底無理だった。だって一度に5個以上のマジックアイテムを使い、しかもタイミングによっては全く違う効果になったりするし。
「この2人、只者じゃないぞ……」
「うん、私たちより強いかも……」
「ここで言うのもあれだけど、あの2人が引き抜かれて良かったかもな」
「「「うんうん」」」
「こらお前たち、ボヤっとしてないで我々も加勢するぞ!」
「「「は、はい!」」」
セルドアさんたちも戦闘に加わり、軍隊を囲もうとしていたゴーレムの包囲は瓦解。逆にゴーレムの勢いを削いでいく。
「クッソゥ、こっちはこんなに苦労してるってのに、何であっちは涼しい顔で討伐してやがんだ!」
「リーダー、きっと湧いてる数がこっちに片寄ってるんだ」
「んだと? だったらおい……」
「へぃ? ああ、なるほど!」
俺たちの後方で不穏な動きがあるとは露知らず、不意に声が届いた。
「お~い、そっち行ったぞ~」
「注意しねぇと危ねぇぜ?」
何気に振り向くと……
「何? ――ゴ、ゴーレムが背後に!」
バッカニアの連中がいる方向からゴーレムが迫っていた。アイツら、自分たちが相手をしていたゴーレムをこっちに押し付けやがったんだ!
「貴様らぁ、ゴーレムを誘導したな!?」
拳を震わせ怒りを露にするセルドアさん。それもそのはず、自分たちが戦っていた魔物を他人に擦り付けるのは法律上禁止されている。つまりそれほど危険な行為だからだ。
「さぁ、何のことだか」ニヤニヤ
「こっちだって必死に戦ってんだ、変な言い掛かりは止めてくれよな」ニヤニヤ
だがあのニヤケ顔が故意であることを物語っている。
「アイツら……」
「フン、上等じゃない。それならこっちにも考えがあるわ」
ここで悪の女王アイリが立ち上がる。何故に悪の女王かって? 見てりゃ分かるさ。
「上手く行ったぜリーダー」
「おう。数さえ減らせば討伐は楽勝だ。俺たちは危険を犯さず1体1体を各個撃破すりゃいいのさ」
「さっすがモーガンさん、頼りに――」
「そっちに飛んでったわよ~!」
というアイリからの忠告。
「「「は?」」」
というバッカニアの反応。からの~~~?
ドズン!
「「「ぬぉっ!?」」」
突如として空からダイビングしてきたゴーレムがバッカニアの連中が戦っていた真後ろに落下。
モゾ……
「ヤ、ヤベェ、このゴーレムまだ死んでねぇぞ!」
「んだとぉ!?」
「マズイぜ、早く対処を――」
「Guoooooo!」
「グヘェ!?」
あ~らら、隙を見せた1人がブッ飛ばされてやんの。それを見たモーガンが顔を真っ赤にして猛抗議。
「おいクソガキィ! テメェわざとこっちに寄越したな!?」
「はぁ? 知らないわよそんなの。ゴーレムが空を飛びたかっただけでしょ。変な言い掛かりしないでよ」
「ぐぬぬぬ……」
しかし戦闘を止めるわけにもいかず、悔しさを滲ませ引き下がっていく。
「さすがだよアイリ。悪巧みで敵う奴は地上にはいないだろうな」
「褒めてんのそれ?」
怖がってんだよ全力で!
「そういえば奴らが擦り付けてきたのは2体だったわよね? もう1体行っとく?」
「もう1本い○とく? みたいな乗りで言うなよ。レアドロップが欲しいなら多く倒さなきゃだろ?」
「あ、そっか。ならバースト、奴らのところへ行って根こそぎ奪って来なさい」
その役目を俺に振るんか。まぁレアドロップは寄越さないって考えには賛成だ。
「ちょいとゴメンよモーガンさん、ファイヤーボール!」
「――っておい、何でこっちに!」
「いや、苦戦してるみたいだから助けてあげなきゃってね、ファイヤーボール!」
「こっちは俺らだけで充分だ、余計な手出しすんじゃねぇ!」
「遠慮すんなよ、ファイヤーボール!」
「話を聞けぇ! て~かわざとやってんだろテメェ!?」
「いやすまんね、話してる余裕が無いもんで、ファイヤーボール!」
「だぁぁぁ! 魔法ブッ放つのヤメロォォォォォォ!」
「ファイヤーボール」
「ぬぁっちぃぃぃぃぃぃ!?」
「すまん、ゴーレムみたいな図体してるから間違えたよ」
こうしてバッカニアから横取りしたゴーレムを狩りまくった結果……
「あの~アイリさんや、レアドロップが0件なんだけど……」
「そう? あたしの方は3個も手に入ったわ。熱血の拳でも2個出たみたい」
ちなみにバッカニアの方も0のようだが正直どうでもいい。俺が入手出来なかったのが問題だ、ファッキン!
「ま、日頃の行いよ。神様はちゃ~んと見てるのね~」ニヤニヤ
「偉く不公平な神様だな」
もし本当に居るのならアイリ同様とっても腹黒な神なんだろう。あ~ヤダヤダ。
「ほら、ゴーレムも片付いてイル姉様たちが動き出したわ。ここに居ても暑いだけだし私たちも続きましょ」
「分かってるよ」
さすがに成果無しじゃ気が収まらない。何としてもレアドロップか魔石を持ち帰らないとイライラを通り越して怒りが――あれ? これってまさか……
「妙にイライラが収まらないと思ったらメッチャ暑いやん! まるで真夏日だ」
「そうよ、だから暑いってさっきから言ってるじゃない。分かったら冷たいものでも出しなさいよ」
「分かったよ、ウォーターナックル」
ブシュ!
「いった~い! 攻撃魔法じゃないのよそれぇ! しかも顔面に!」
「威力は極限まで抑えたぞ。ヒートゴーレムには最大級の威力で歓迎してやる」
「……ったく、少しは涼しくなったから許してあげるわ」
「そりゃ良かった」
何を許すのか知らんけど、アイリのお許しを獲たところでイル姉の行進がストップ。やや前方で広範囲に渡りモクモクと煙が立ち上がってるのを指すと……
「あれら一帯が火口だ。あの煙に巻かれると意識を失うこともあると言われている。当然だが火口に落ちれば助からないからな、迂闊に近寄らないように。いいな?」
「「「了解」」」
冒険者クランを含む全員に警告したイル姉は、持参していたマジックバッグから何らかの物体取り出す。見れば数名の隊員も同じように取り出し、火口へと投げ始めた。
「アレは?」
「水属性が付与されたアイテムだよ」
俺の疑問にセルドアさんが答えてくれた。
「当然ながら火口は火属性、その弱点となる水属性を投げ込むことで刺激するんだ。そうすることで……」
ゴゴゴゴゴ……ゴッッッボォォォォォォ!
「ふ、噴火した!?」
地鳴りの直後、火口から溶岩が噴き出してきた。その勢いは凄まじく、まるで俺たちを飲み込もうとしてるようにも見える。
「溶岩がこっちに来る!」
「いや、大丈夫だ。見たまえ」
「え? ――ああ!」
距離を取ろうとしたところ、噴き出した溶岩が周囲の岩場へと溶け込み急速に赤黒く染まっていく。そこからはデジャブのようにゴーレムが生成され、こちらに向かって動き始めた。透かさずイル姉も反応し、隊員に向けて号令をかける。
「さきほどよりも数が多い。各員注意して迎撃にあたれ!」
「「「ハッ!」」」
さて、イル姉も頑張ってるし俺もやることやらないとな。
「Guoooooo!」
「来たな、アイスジャベリン!」
ザクザクザクザクッ!
「Goooo……」
「よし、一丁上がりぃ! で、肝心のレアドロップは――無しと」
レアなのは分かるがちょっとくらい出てきても良さそうなもんだけどなぁ。
「よっし、ヒートゴーレムのコアゲット! この調子でガンガン稼ぐわよ!」
「なにぃ!?」
アイリめ、もうレアドロップにありつけたのか。くっそ~、俺だって!
「お、こっち方面は誰も居ないしゴーレムが固まってるな。だったら――サザンブリザード!」
ゴォォォォォォ!
暑苦しささえ覚えたヒートゴーレムが氷像と化し、直後に砂のように崩れ去る。それでもレアドロップ無しなのはいかがなものか。
だって10体はいたぞ? それでも0ってどういうこっちゃ……。
「バ、バーストくん、キミはそんな大魔法まで使えるのか……」
「ええ、まぁ生まれつきで」(←嘘つけ)
「やったぁ、またゲット!」
「ぐはぁ!」
持ち上げられた優越感もアイリによるレアドロップゲットの知らせで台無しに。くそぅ何故だ、何が原因だ? 性格の悪い姉が原因か? いや、本人は至って順調だ。するとやはり俺の倒し方に問題が?
「ちっきしょう! いくらなんでも数が多すぎる!」
「やべぇですよモーガンさん、皆それなりに傷を負ってまさぁ、このままじゃ……」
「バッキャロウ! ここまで来て引き返せるか! 最低でも1個は持ち帰るんだ!」
バッカニアが入手出来ないのは倒した数が少ないからだろう。だが俺は違う、何が原因か探らなければ。
「おお、これがヒートゴーレムからのレアドロップか」
「やりましたねセルドアさん!」
「この調子で行きましょう!」
【熱血の拳】もゲットしたのか。こうなったら思いきってやり方を変えてみよう。
「またまた失礼」
「あ! このガキ、また邪魔しに来やがったのか!」
「左側はほとんど残ってなくてね、こっちで試させてもらうぞ、アースバインド!」
まずはヒートゴーレムを地面に固定。後はコアを破壊するだけなんだが、コアに衝撃を与えるだけに留める。そうすれば……
「ウォーターナックル!」
ゴッ!
「Guaaaaaa!」
シュゥゥゥゥゥゥ……
水の拳をコアに叩き込んだのがトドメとなり、ヒートゴーレムは消え去った。
そして……
「「「あっ!」」」
思った通りだ。コアを消さないよう注意したらドロップしてくれた。
「よっしゃ、初ゲットだ!」
「おいテメェこの野郎! そのゴーレムは俺らの獲物だ、そのコアを寄越しやがれ!」
「嫌だね。悔しかったら真似してみろ」
「クソガ! 寄越せってんだよぉ!」
「あ、コラ、手を退けろ!」
モーガンが俺に掴みかかる。だがせっかくのレアドロップだ、くれてやるつもりは毛頭ない。
「このクソガキ、手を離せ!」
「うっせ~よ! お前こそ離せよハゲ!」
「好きでハゲてんじゃねぇ! 髪が勝手に居なくなったんだ!」
「んなこと知るかよ!」
「モ、モーガンさん、ゴーレムが!」
「「ん? ――ぬぁぁぁ!?」」
「Guaaaaaa!」
揉み合ってるうちにゴーレムの接近を許してしまった!
「何やってんのよバースト! ――オーバースプリング!」
バイ~~~ン!
間一髪で隊列を組んでいたゴーレムが遥か上空へと打ち上げられる。のんびり倒してるとバッカニアに取られちまうし、いっそ火口に落としてしまおう。
「ぶっ飛べ――ウィンドスマッシュ!」
バズゥ!
「「「Guoooooo!?」」」
突風を受けた計5体のヒートゴーレムが火口へと吸い込まれていく。ちょいと惜しいことをしたか? いや、バッカニアに得をさせたくないしこれで良い。
「ふむ、これで全てのゴーレムは討伐されたようだ。諸君らの働きに感謝する。では本作戦は只今を持って終了とし――」
ゴゴゴゴゴ……グォングォングォン!
「――!? な、なんだ、この揺れは!」
イル姉が狼狽える。明らかに地震とは違うからだ。
「な、何だ、何が起ころうとしている!?」
セルドアさんも血の気が引いて真っ青になっている。
「バースト、ゴーレムを投げ込んだのが原因じゃないの!?」
「そ、それは暴論だ! たまたまタイミングが重なっただけ――」
チュドォォォォォォォォォォォォン!
「「「ヒェ!?」」」
全員が似たような悲鳴を上げた。何故なら爆発音と共に巨大な何かが火口から飛び出したからだ。よく見るとそれには両手両足が付いており、頭部と胴体もしっかり健在。うん、どう見てもゴーレムですね。しかもかなりの大きさで……
ズズゥ~~~ン!
「うげっ!?」
うん、間違いない、火口に落としたヒートゴーレムが練り固まって巨大なゴーレムに進化したんだ。それが全長10メートル近くの大きさなため、倒すには苦労しそうだ。
つ~か目の前に降り立つんじゃねぇ!
「ひぃぃぃぃぃぃ! ガ、ガガガ、ガキィ、お前のせいだぞ! 責任もってソイツを討伐しやがれ!」
シュゥゥゥゥゥゥ……
「な、なんだ、このゴーレム。青色だった、コアが赤く光りだしたぞ?」
シュィィィィィィ!
「コア付近に魔力反応!? マズイ!」
シュイン!
「おいガキ、聞いてん――」
――ジュゥゥゥゥゥゥ!
「――――」
ゴーレムが放った光線が一瞬でモーガンを焼き殺してしまった。正確には腰より上を焼き払ったと言うべきか? 切断された下半身がドサリと膝をつくと、バッカニアの連中は半狂乱になった。
「リ、リーダーァ!?」
「嘘だろおい、リーダーの上半身が消し飛んだぞ……」
「む、無理、無理だ、こんなの勝てるかよぉぉぉ!」
「「「うわぁぁぁぁぁぁ!」」」
奴らが我先にと逃げ出すのは当然の流れというもので、釣られるかのように軍隊の半数も恐怖に駆られて逃走を開始。セルドアさんたちは予め距離を取っていたためその場に留まり戦況を見極めようとしていた。
「隊長、奴は危険です、1度退却して体勢を立て直すべきです!」
「バカを言うな、このような危険な魔物を放置出来るか! カダック、ここは私1人で食い止める。お前たちは撤退しろ!」
「そんな!」
イル姉の実力は知っている。けれどあんな巨体を相手にしてちゃ命がいくら有っても足りない。
「ゴーレム、覚悟ぉぉぉぉぉぉ!」
「GUOOOOOO!」
シュィィィィィィ!
まただ、またコアに魔力が集中し始めている。あの光線がくる!
「まったく、正面から突っ込んだら危ないじゃない! ――フライスプリング!」
ググ……
「GUOOO!?」
シュイン!
アイリのトラップでゴーレムの足元を浮かせた影響で光線は明後日の方向へと放たれ、間一髪イル姉は直撃を免れた。
「危なかった……」
「危なかった……じゃないわよ! 1人で突っ込むような真似しないで!」
「すまんな。だがいざという時は兄弟姉妹を護るのが我が家の家訓」
それは痛いほど知ってるが……
「真面目に相手をするのは組手と武闘会だけにしとけよ。――アイリ、もう一度今のやつを!」
「オッケー、フライスプリング!」
ググ……
「GuoGuo!?」
よし、足止めが出来てるうちに……
「身も心も凍りつけ――サザンブリザーーード!」
ゴォォォ――コチコチコチコチ!
凍ったは良いものの、崩れ落ちる様子はない。やはり普通のヒートゴーレムとは耐久力が違うようだ。ならば!
「イル姉、中心に見える赤いコアを壊してくれ!」
「任せろ――極限一文字突きぃぃぃ!」
バキィィィィィィン!
ズズズズ――ザァァァァァァ……
「コアが破壊され、サラサラと消え去る巨大ゴーレム。それは幻想的で美しく、まるで儚き夢のよう……」
「セルドアさん、何ですかその台詞?」
「いやぁ、最近小説を書くのにハマってしまってね。それより見たまえ、あそこに残されてるのはレアドロップではないか?」
「レアドロップ!?」
コアを破壊したから残ってないと思ってたが、キッチリと残されていた。凍り付けにしたのが良かったのか?
「これはまた見事な大きさだな。エリーが持つバンビーボールと同等か? いずれにせよ良くやった。バースト、これはお前のものだ」
「え、いいのかイル姉」
「私が居なくてもバーストなら仕留めることが出来たはず。トドメを譲ったのは面子を考えての事だろう?」
まだ隊員は残ってるしな。カダックとか惚れ直したみたいな顔してイル姉を見てるし。
「けどアイリは……」
「構わないわよ? レアドロップは充分手に入ったし」
それは朗報。強制的に没収されちゃかなわんからな。
「さぁ帰るぞ。トラブルは有ったが無事に完了したと報告せねばな」
イル姉は隊員を集めて引き上げて行く。他に残ってるのはセルドアさんたちだが。
「しかし2人とも、キミたちの実力は目を見張るものがある。どうだろう? 臨時とはいえクラン入りしたのだし、このまま正式にというのは?」
「いや、自分たちは他にやるべき事があるもんで……」
「あたしも。トレジャーハンターの方が向いてるって思ってるから遠慮するわ」
「そうか、残念だが仕方あるまい。でもキミたちならいつでも歓迎するよ」
「ハハ、まぁ考えておきます」
★★★★★
「ふぅ~、やっぱ自宅が落ち着くわね~。火山はしばらく見たくないわ」
「それは同感」
特に夏が過ぎ去るまではな。
「で、アイリは何個手に入れたんだ?」
「フッフ~ン♪ 気になる?」
「それほどでも」
「アンタが聞いてきたんでしょ! 教えてあげるから黙って聞きなさいよ!」
「わ~ったよ」
「地属性のコアが3個に火属性のが4個ってとこね。これでしばらくは遊んで暮らせるわ」
そりゃまた景気がよろしいこって。俺は火属性が1個にその巨大版が1個だ。天然の魔石も見つかれば良かったんだけど、残念ながらそれは無し。だが成果としちゃ充分だけどな。
「それより気付いた? 巨大ゴーレムに突っ込んだイル姉、即座に回避出来るようにハルバードを構えてたわ」
「え? どういうことだ?」
「あたしが手助けしなくても問題なかったってこと。それってつまり……」
俺たちの実力を計ろうとした?
「なんだよ、俺が居なくても楽勝だったのか」
「それは違うわよ? イル姉様に出来たのは被害を最小限に抑えて引き上げることだけ。倒せたのはアンタのお陰よ。物理耐性の強いゴーレムと魔法攻撃が出来ないイル姉じゃ相性が悪いもの」
確かにそうなんだろうけど、あのイル姉なら強引に倒してそうではある。イル姉、どこか抜けてる感じに見えてたけど、意外と頭が良いのかも。
ガチャ!
「ただいま戻ったぞ」
噂をすればというやつで、イル姉が帰ってきた。
「2人とも、今日はご苦労だったな」
「それよりイル姉様、お土産は?」
「いや、タール火山に土産屋なんか無いって言って――」
「土産なら買ってきたぞ」
「「え!?」」
まさか火山の麓に本当に土産屋が!? と思ったら……
「コレだ」
「「おお!」」
これまたカラフルな指輪だ。
「南門の近くで売っていてな、1つで金貨100枚のところを10枚でいいと言うからな」
そりゃまたお買い得で――ん? この指輪、どっかで見たような……
「解放のカラフルリングという指輪でな、様々な状態異常から護ってくれて――」
「「…………」」
アイリも気付いたが俺も確信した。この指輪、俺が作ったやつじゃねぇか! しかもイル姉、同じやつ渡しただろぉぉぉ!?
「ん? どうした2人とも?」
「いや……」
「なんでも……」
訂正。やっぱイル姉はおバカだった。
登場人物紹介
名前:カダック
性別:男
年齢:23歳
種族:獣人
備考:ランタール帝国の国軍に所属している軍人。イルフィーナに叱咤激励されたのを切っ掛けに片思いする流れに。ある任務を受けた日に服屋でイルフィーナと待ち合わせて強引にデートに持っていこうとするも撃沈。更にはハルバードを振るう姿を見て傷心。以後に彼の心中を察する者はいない。
名前:セルドア
性別:男
年齢:42歳
種族:人間
備考:冒険者クラン【熱血の拳】のクランリーダーで、南支部をメインに活動している。帝国の安全のため討伐依頼を多く受け持ち、外に湧き出た魔物を無償で討伐を行ったりしている。
名前:モーガン
性別:男
年齢:40歳
種族:人間
備考:冒険者クラン【バッカニア】のクランリーダーで、南支部をメイン活動にしている。元ジェノサイダーのメンバーが多く流入しており粗暴な輩が多い。リーダーのモーガンも癖のある粗暴さなため、街の人たちからは煙たがられている。だがある日、タール火山に遠征した際にゴーレムの亜種と戦い死亡。




