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魔力は全てを解決する!  作者: 南国ブラックベア
第1章:家族と学友
22/35

タール火山の活動期

 各々が朝食を終えて疎(まば)になりつつある我が家の食堂。相も変わらず食べるのが遅い俺は、姉妹の争いを横目にせっせとパンを食らっていた。


「ねぇ良いでしょ?」

「残念だがアイリは連れて行けない。大人しく勉強でもしてなさい」

「勉強は充分なの! 先生にも優秀だって言われてるんだから」

「そうか。なら次は天才を目指すと良い」

「もちろん! ――って、そうじゃなくってぇ!」


 イルフィーナことイル姉さんに拒否されて不満タラタラなアイリ。尚も引き下がらずにイル姉さんの前に立ち……


「あたしだってダンジョン探索は何度もこなしてるんだから火山なんて楽勝よ。だから……ね? お願いお姉様!」

「はぁ……。いいかアイリ、火山はダンジョンではない、セーフティエリアなんてものは存在しないんだ。それに私は遊びに行くわけではないのだから――」

「遊びじゃないもん、トレージャハントだもん!」

「ダメなものはダメだ。どうせ宝物だって無いだろうから大人しく留守番をしていろ」

「ぶ~ぅ!」


 どうやらイル姉の勝利で終わったらしい。


「安心しろ、土産は買って来てやる。では留守番を頼むぞ」


 とりつく島もないとばかりにアイリを軽くあしらい、イル姉は邸を後にする。


「な~に~よ~、イル姉様の分からずや~! 火山にお土産屋なんて無いでしょ~!」


 そっちかよ。そりゃ地元の村とかじゃなきゃ無いだろう。しかも一番近い街が帝都なわけで、もはや土産でもなんでもないな。

 しかしイル姉さんも大変だ、休日だってのに軍の出動要請とはね。去年の今時期にはなかったし、何かあったのかな?


「フン、イル姉のバ~カ。こうなったら奥の手を使ってやるんだから」


 なんとこのバカな姉、まだ諦めてなかったらしい。まぁ俺には関係ないけどね。


「バースト、何を「俺には無関係ないけどね」って顔してんの。アンタも手伝うのよ」

「は? 何を?」

「決まってるじゃない、イル姉様の後をつけてタール火山に入るの」

「はぁ!?」


 なんと馬鹿馬鹿しい。夏を迎えたこの時期に火山へ行こうだぁ? 


「そんなドMな思想は俺には無い。却下だ却下。休みを無駄にしたくないんでね、俺は自室で研究でもしてるよ」

「へ~ぇ、火山に魔石が有るとしても?」

「何を言われようと――」


 ん? 魔石? 魔石と言ったか!?



 ガバッ!



「それは本当か!?」

「ちょ、コラ! どさくさ紛れに胸を押すんじゃないわよ!」

「ああゴメン! つ~か押せるほどないだろ。そんな事より魔石は!?」

「そんな事ってアンタ――」

「ま~せ~き!」

「だぁぁぁもぅ、説明するから落ち着きなさいっての!」


 アイリが言うには、火山の活動期に入ると通常よりも多くの魔力を噴出するらしい。つまり日常的に火口から微弱ながらも魔力を放ってるらしいんだ。タール火山にもそれが当てはまり、活動期に噴出された魔力が火口付近の石へと降り注ぐことで、魔石になる可能性が有るとのこと。


「ま、買い摘まんで説明するとこんなところね」

「じゃあアイリの狙いも魔石?」

「違うわよ。目的はゴーレムからのレアドロップ。それも火属性のね」


 レアドロップ……魔物を倒すとアイテムを残すことがある。ゴーレムのコアなんかは倒すのと同時に消えるのが殆どで、滅多にお目にかかれない。


「石切場などで湧いて出るゴーレムは地属性で火口付近のゴーレムは火属性。そういうことか!」

「そ。火属性のゴーレムのコアはレア中のレアなの。きっと珍しいマジックアイテムが出来上がるはずよ」


 それなら研究は後回しだ、良質な火属性の魔石を手に入れようじゃないか。


「でもそれなら先回りしたっていいんじゃねぇの? 目的地はタール火山だろ?」

「詳しい場所を知らないのよ。闇雲に探し回って時間を無駄にしたくないもの。それにね、火口の近くは危険だからって封鎖されてるのよ。だけど軍と一緒なら許可が下りるってイル姉様が言ってたわ」


 そりゃまた見事にイル姉は自爆したな。内部情報は漏らさない真面目な性格だからアイリの誘導尋問に引っ掛かったんだろう。

 しかしこれも魔石ゲットのためだ、有効に使わせてもらおう。




「で、俺たちはイル姉の後をつけてきたわけだが。どうやらイル姉、服屋の前で待ち合わせをしてたみたいだな」

「同年代の男の人と中に入ったわね」

「「これって……」」


 まさかとは思ったが、初めてアイリと意見が一致する。


「「……デート? いやまさかね」」


 うん、まさかだよ。だってイル姉は任務で行くわけで、デートに行ったわけじゃない。

 だが中の様子を伺うに男の方は楽しそうだ。イル姉は普段と変わらないけども。

 つまりアレか? 任務は嘘で本当はデート? いや、嘘をつけないイル姉さんだ、デートならデートだと言ったはず。ってことは……


「あの男、フリッフリのミニスカートをイル姉に見せてるぞ?」

「イル姉様が好むとは思えないけど ――あ、イル姉様に頭をペシペシされてる」


 さしずめ「こんなもの私が履くわけなかろう!」とか言われてるに違いない。


「ちょっとあの男、今度は水着を持ってきたわよ? しかもアレ……」

「ああ、そうだな……」


 どう見ても隠す部分が少ない。もう完全に煩悩(ぼんのう)全開ですやん。そして案の定イル姉に小突かれてやんの。


「え……あの男、とことん変態ね……」

「…………」


 もうね、説明するのも恥ずかしくなってくる。あの野郎、穴の空いた下着をイル姉に見せつけて見事に蹴りを入れられてら。そして……


「あ、2人とも出てきたぞ」

「男の方はガックリと肩を落としてるわね」

「「…………」」


 うん、この流れでわかった。男の方はデートのつもりだったけどイル姉は違ったと。仮にデートだとしてもあの野郎の行動は同じ男としても賛同はできないなぁ。


「あ、イル姉が走り出したぞ。連れの男は引っ張られてるな」

「何だか怒ってるっぽいわね。何を怒ってるのかしら?」

「「お前のせいで時間を無駄にしたではないか」とか?」

「納得」


 それが当たっていたのだろう、イル姉たちは馬車をも抜く勢いで走っていく。対する俺たちも一定の距離を保ちつつ尾行を続けていると、帝都の南門が見えてきた。開かれた門の先には馬に跨がった兵士の姿も見える。


「アレは……南門から馬に乗るみたいだな」

「馬ですって!? それじゃ追跡出来ないじゃない!」


 地団駄を踏むアイリ。だが俺ならではの追跡方法がある。


「任せろ――ほらよ」

「は? あたしの靴に何かした?」

「走れば分かる、行くぞ」

「行くぞって――え、嘘ぉぉぉ!? あたしってばすっごい高速で走ってる!」


 何度も世話になってる風属性の付与だ。アイリは感動と疑問をごちゃ混ぜにしながらも直ぐにコツを掴み、軽快なスキップで飛ばして行く。


「さすがに飲み込みが早いな。ルドラスは木に激突してたけども」

「フン、あたしの学習能力の高さは知ってるでしょ? ルドラスなんかと一緒にしないでちょうだい」



~~~~~



「へくしっ!」

「ルドラスぼっちゃま、風邪でも引かれましたか?」

「いや、そんなはずは。でも何故だろう、以前木に激突した時の痛みが感じられるような……」

「はい?」



~~~~~



 さて、ルドラスは放って置くとして、俺たちはイル姉に集中だ。山頂へと続いてるであろう緩やかな山道を4、50人規模の小隊がイル姉を先頭に走っている。火口はまだまだ遠そうだ。


「も~ぅ、いつになったら着くのよ~。移動が楽になったとは言え疲れないわけじゃないんだからね~」

「いや、文句を言いたいのは俺の方なんだが? 後どれくらいで目的地なんだよ」

「知らないわよ。知りたいならイル姉様に聞きなさい」


 それが出来れば苦労しねぇっての。


「それよりバースト、走ってたら暑くなってきたわ。涼しくなるアイテムとかない?」

「ねぇよ。ドラ○もんじゃあるまいし。それに暑さを感じるのは火口が近くなったからじゃないか?」


 涼しい風が生暖かくなり、更に熱風へと変化してる。周囲の木々も少なくなり岩場へと変化する中、前方で大人数が集まり謎の集団と化しているのが見えてきた。


「あの集団……あれは冒険者ね」

「冒険者? つ~かイル姉たちも加わったぞ。冒険者っぽく見えるけど、兵士なんじゃないか?」


 ――と思ったが、直ぐに前言を撤回する羽目に。


「兵士かと思いきや、アイツらジェノサイダーの連中だ!」


 そう、ファーナを誘拐したあの冒険者クランだ。リーダーのフェルディオが行方を眩(くら)ませたためクランは消滅したはずだが……


「見てバースト、よく見たら集まってる連中同士が揉めてるわ」

「ホントだ、それをイル姉たちが間に入って収めようとしてるな」


 こんなところで何を? ――と思っていたら、元ジェノサイダーの連中がガッツポーズをしだして、残りの連中が肩を落としてるようだ。


「あのジェノサイダーとかいう奴ら、イル姉様の後を付いてくみたいよ」

「残された奴らは兵士に通せんぼされて悔しがってるようにも見える」

「見ててイラつくわね。貴族の権限で通してやろうかしら」


 助けてやる義理は無いけどジェノサイダーの連中だけが得をするのは癪(しゃく)だ。そう思い俺たちも駆け寄ると、向こうも俺たちに気付いて満面の笑みで手招きをしてきた。


「ちょっといいかなキミたち。こんな場所に来たという事はキミたちも冒険者なのだろう? 急ですまないが協力してもらえないだろうか?」

「どうしたんです?」

「私は冒険者クラン――【熱血(ねっけつ)の拳(こぶし)】のクランリーダーをしているセルドアと言う者なのだが……」


 思った通り冒険者クランだった。彼らの目的はタール火山の火口付近でポップするヒートゴーレムのコア、つまりアイリと同じだな。だが奥へ進むには最低でも10人は居ないと許可が下りないらしい。元々10人は居たのだが後からやって来たジェノサイダーの連中に2名が買収され、悔し涙を流しているところだったと。


「ジェノサイダーの一部の奴らは元リーダーのやり方を継承し、新たなリーダーとして血の気の荒い事で有名なモーガンという男をトップに添えた。クランの名前も【バッカニア】と変え、他のクランに対して迷惑行為を行っているのだ」


 冒険者の買収もその1つか。解体されたとばかり思ってたけどな。しぶとくも名を変えて残っていると。


「さぁ、奴らに遅れを取るわけにはいかない。我々も後を追うぞ」


 人数をクリアーしたことで通せんぼしていた兵士が道を空ける。ここから先はイル姉たちも徒歩だったため直ぐに追い付けた。


「おや、こんなに早く10人以上という条件をクリアーしたのか――って、アイリにバースト、なぜここに!?」

「やっほ~イル姉様♪ バーストがどうしてもって言うから連れて来ちゃった」

「誘ったのはアイリだろ!」

「むぅ、バーストが言うなら仕方ないか」

「イル姉も信じるなよ!」


 というかなぜ俺だったら仕方ないのか。そこで大変気になる疑惑が浮かんだ。


「なぁアイリ、今日の俺の護衛役ってまさか……」

「そ、あたし。だから家に居なくちゃいけなかったのよ。でもアンタが出掛けるなら付き添わなきゃでしょ?」

「やっぱり……」


 どうやら最初から上手く誘導させられてたらしい。まぁ魔石が手に入るなら一向に構わんけども。


「おぅおぅ、そこのガキ共。セルドアに唆(そそのか)されて山登りとはご苦労なこったな。今からでも帰ったほうがいいんじゃないか? なぁ?」

「違いないねぇ」

「へへへへ」


 どこに居ても景観を損なうようなスキンヘッドのデブ野郎が俺たちを小馬鹿にしてきた。取り巻きは元ジェノサイダー、現バッカニアの連中だ。向こうは俺の事を忘れてるみたいだけどな。


「はぁ? なんでアンタらに言われなきゃならないのよ。これでも一流のトレジャーハンターなんだからバカにしないで!」

「へっ、これでも俺はバッカニアのクランリーダーだぜ? あんま怒らせねぇほうが良いと思うがなぁ、ケケケケ!」


 思った通り、この男がモーガンのようだ。


「おいお前たち、この辺りはすでに敵地である。いつ魔物の襲撃が発生するか分からんのだ、私語は慎め」

「フン……」

「ヘイヘイっと」


 兵士の1人から警告を受け、バッカニアの連中と距離を取る。互いに神経をすり減らすだろうしな。変わりに【熱血の拳】の人たちに混ざり火口を目指すことに。


「見たところ2人はあの女性軍人と知り合いなのかい?」

「まぁ……姉ですよ。留守番をすっぽかして付いて来ちゃいました」


 貴族という部分は敢えて伏せる。事実と異なるが大した違いはないだろう。


「そうだったのか。では火口に来た理由は知っているのかい?」

「大まかには。火山が活動期に入って危険だから噴火を抑えるためだと」

「ふむ、まぁ間違ってはいないが半分は違うな。例え軍隊を動員したとて噴火は防げん。本当の目的は噴火を抑えることではないのだよ」

「というと?」

「噴火で危険が生ずるのは、火口からの魔力噴射によってゴーレムが大量発生することにある。ゴーレムが下山してきたら野生動物が犠牲になり、生態系に悪影響を及ぼす。更に人里まで現れたら大騒ぎだ。つまり、ゴーレム討伐のために訪れたというのが正しい認識だな」


 そういうことか。


「それで冒険者の同行を許可してるんですね。さしずめ俺たちはお手伝い役と」

「その通り。我々としてもレアドロップの獲得は活動資金の大幅アップに繋がるのでね、バッカニアに出し抜かれるわけにはいかないのだよ」


 だったらゴーレムを狩りつつバッカニアの妨害をしてやろう。奴らが資金を獲たらロクなことにならないしな。


「でも妙な話よね。レアドロップが目的なら他のクランも集まりそうなもんだけど」


 アイリの言う通りだ。普段は解放されてないんだから今がチャンスのはず。


「ああ、それは多分異教徒の活動が活発化してきたからだと思うよ。全ての冒険者ギルドに国から依頼が出されていて、監視及び国外追放を協力して欲しいとか。生憎と我々はこの日のために事前準備を行ってきたから見送ったけども」


 あ~それでか。いつもは遅いグレイバムことグレ兄ちゃんが早起きして出ていったんだよ。グレ兄ちゃんは【ブレイキングKO】ってクランに所属してるから、きっと召集がかかったに違いない。


「だが安心したまえ。我々の兄弟クラン――【鉄壁の盾】と【精密の矢】が他の支部で活躍してくれている。南支部にも強いクランが存在するし、恐れることはない」


 まぁ南支部には俺も居るし、ファーナの父さんが立ち上げた【賢者の導き】というクランもある。何も心配はない。

 ちなみに【鉄壁の盾】はセルドアさんの兄セルガノさんが、【精密の矢】は妹セルファーさんがリーダーなんだとか。マジで兄弟クランだな。


「しかし杞憂(きゆう)なことが1つだけある。【バッカニア】とかいう劣悪なクランが存在することだ」


 おおっと、前方にいるモーガンに聴こえるようにぶちまけたよ。目の前で引き抜きに合ったのもあって、余程の鬱憤(うっぷん)が溜まってたんだな。


「テメェ……」


 当然モーガンも黙っちゃいられないとばかりにこちらへと振り向いたその時!


「ゴーレムだ、ゴーレムが出たぞぉ!」


 1人の兵士が叫び、それに連動して他の隊員も臨戦態勢に。


「へっ、続きは後だ。せいぜいゴーレムに殺られねぇよう注意しな!」

「フン、こちらの台詞だ!」


 ゴーレムとは初対戦だが。


「さて、一働きするか」

「そうね、ちょうど退屈してたところよ。思いっきり暴れてやろうじゃないの」


冒険者クランの紹介


マウンテンビート:東支部を中心に活動中の大型クラン。強者揃いだがガラの悪い者も少なくない。入会希望者は多くいるものの強い者しか認められていないため、入れる者は僅かだと言われている。


賢者の導き……南支部で活動中の小型クラン。地域に貢献するというのを目標に掲げており、少しずつ入会が増えつつあるらしい。クランリーダーはファーナの父さんでもあるザック。


ジェノサイダー:とある貴族の依頼でファーナを誘拐したクラン。それなりに大きなクランだったが犯罪に加担したとして解体された。リーダーのフェルディオは逃走し行方不明。


バッカニア:元ジェノサイダーの冒険者が多く入会しているクラン。素行不慮の者が多く、他のクランと揉め事を起こすことが多い。リーダーはモーガンというデブなスキンヘッド男。


ブレイキングKO:北支部で活躍中の大型クラン。血気盛んな者が多く、討伐依頼をメインにこなしている。バーストの兄グレイバムも所属している。


熱血の拳:南支部を活動拠点としている大型クラン。帝都の安全を確保するため、帝都から南側に湧いた魔物を討伐して回っている。リーダーはセルドアという紳士的な中年の男。


鉄壁の盾:東支部を活動拠点としている大型クラン。活動理由は熱血の拳と同じ。リーダーはセルドアの兄のセルガノ。


精密の矢:北支部を活動拠点にしている大型クラン。且つ理由は熱血の拳と同じ。リーダーはセルドアの妹のセルファー。


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