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魔力は全てを解決する!  作者: 南国ブラックベア
第1章:家族と学友
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目指せ、小物職人!

「う~ん……」


 自室に隠ること1週間。例の魔石のお陰で幾つかの武器は出来上がったのだが、全員分とまでは至っていない。やはりというか、魔石に込められた思念の影響が大きいんだ。


「この槊杖(さくじょう)は力作だけどね」


 浄化の槊杖……この世に縛られている不浄な存在を浄化する対アンデッドに有効なロッド。5年有効。

 発動可能魔法:ホーリーストーム、ライトニングレイ、キュアクリア。


 2本作った内の1本はリスティに持たせてある。強そうな魔法も撃てるし、強力な武器になるだろう。


「同じ要領で地属性の剣を作ろうと思ったんだが、出来上がったのが……」


 破魔(はま)の剣……悪しき魔の者を討ち滅ぼすと言われている剣。対魔物に対しては絶大な効果を発揮し、アンデッドに対しては触れるだけで浄化してしまう。5年有効。

 発動可能魔法:ホーリーストーム、ホーリーウェイブ。


 何かね、いかにも~って感じに勇者が持ってそうな剣なんだよ。だからウィルには似合わないかな~と。それにウィルは地属性、ヴォルトは火属性と決めてるんだ、ここは譲れない。(←その拘りは何だね?)


「ま、この剣は俺が貰っとこう。俺が作ったんだしいいよな。――でだ、属性付きの武器は一旦保留として、こ(・)ん(・)な(・)も(・)の(・)を量産してみた」


 解放のカラフルリング……状態異常を受けた場合、即座に完治させる指輪。デザインが多種多様だが全て効果は同じ。5年有効。


 装飾店の前を通りかかった時に偶然にも指輪が目について閃(ひらめ)いたんだ。これを錬成して売り付ければ小遣い稼ぎになるってな。

 ありったけの指輪を買い込んで作ったその数はなんと100個以上! 金貨も100枚近く吹き飛んだけど、それ以上の値段で売れるはず。


「フフン、これで金にものを言わせて高価な武器を買えるってわけだ。もう数ヶ月も掛けて小遣いを貯める必要はない!」

「へぇ~え、なかなか有能なアイテムじゃない」

「だろう? これさえ有れば――」

「面白そうね、ちょっと貸しなさいよ」


 ヒョイ!


「あ、コラァ!」


 ニヤァとしながら俺の力作の1つを引っ掴んでいく忌々(いまいま)しい手。悪魔の姉(アイリ)がやって参りましたよ。


「うん、これが良いわ。このペガサスをデザインしたやつを貰ってくわね」

「おい、他人の商売道具を勝手に持ち出すな!」

「何よ、文句あんの?」

「いや、せめて何かと交換とか……」

「はぁ!? 家族に物をねだるとか図々しいにも程があるわ!(←お前が言うな) 有効活用してあげるんだからタダで差し出しなさい!」


 おのれアイリめ、伝説の勇者が言ってたぞ? こういうのをジャイアニズムって言うんだ。そんな弱者を護るのも勇者の勤めだとも言っていたし、俺は堂々と立ち上がりハッキリともの申す!




「お1つ金貨3枚になります」


 皆の者、許して欲しい、これが今の限界だ。だって怒らせると怖いんだもの!


「あっそ。なら家族割引で金貨1枚ね。ほら、取っておきなさい」


 あのドビンチャビンをも上回る要求を平気でして来やがるとは。これじゃ骨折り損のくたびれ儲けじゃないか。


「不満そうな顔ね、文句でもあんの?」

「御座いません……」

「よろしい」


 そして勝ち誇った笑みを浮かべて立ち去るアイリ。ムカついたらから痔になる呪いでも掛けてやろうかと思ったが、本当に掛かったらバレそうだから我慢しよう。


「……バースト、またアイリと喧嘩してたの? 大丈夫?」


 アイリと入れ替わりにエリーがやって来た。アイリとの関係を察した彼女はいつも俺を慰めてくれるので大変ありがたい。ルドラスとかいう頼りない兄貴とは大違いさ。


「エリーか。喧嘩はしてないから大丈夫だぞ。それよりエリーも1つどうだ?」

「……綺麗な指輪がいっぱい。でも私はお金無いし……」

「フフ~ン、ノンノン♪ お代はけっこうですぜお嬢様」

「……ホ、ホントに? ありがとうバースト!」


 どうせ家族や仲間に付けさせるつもりだったしな。残りを売り飛ばせば利益も出る。


「どうだ、気に入ったの有ったか?」

「……うん、コレにする」


 エリーが選んだのは雲で半分が隠されているハーフムーンのやつだ。うん、ハーフエルフらしいと言えばらしいか?


「……明日みんなに自慢する」

「いやいや、他の仲間にもあげるつもりだぞ?」

「……そう、残念」



 残念という割には嬉しそうなエリー。当日クラスメイトと顔を合わせると、初めて見せるドヤ顔で指輪を披露。


「……貰っちゃった」

「そ、それってまさか!」

「婚約指輪なのん!?」

「…………」ニヘェ


 おい、そこは否定してくれ!


「どういう事よバースト! そんな話、1度もしてなかったじゃない!」

「なのんなのん! 貴族婦人にしてくれるって約束はどうするのん!?」

「ちょっ!? その話も聞いてないわ! 私はのけ者!?」

「勝手に盛り上がるな! そもそもリスティとの約束なんかしとらん!」

「な~んだ、リスティの妄想か」

「チッ……。でもエリーの婚約指輪は本物じゃないのん!?」

「それも違う!」



「……チッ」


 エリーさん、今舌打ちした? しましたよね? キャラが崩壊してるよ!


「けどアニキ、そんなレアなアイテムを貰っちゃっていいんスか?」

「そうだな。5年という期限が有れど、状態異常を受け付けないのだ。冒険者や商人なら即座に飛び付くだろう」

「フッフ~、だからこそ――だぜ? 伝説の勇者はこう言った、人の命は金じゃ買えない……ってな。仲間を護ってこそ真の英雄とも言っていたらしい」


 そう、今よりも更に強くなる必要があるんだ。どうもキナ臭い事件が続いてるし、エドウィンみたいに我がキルロード家を狙ってる輩もいる。と、なれば、関り合いの深い者が狙われる可能性があるし、何より誘拐されたファーナの例もある。


「そういうわけだ。ウィルとヴォルトも遠慮するこたぁないぞ」

「アニキ~、俺ッチ感激ッス!」 

「俺もだ。礼を言うぞバースト」


 だがこのままじゃ終わらない。この指輪は状態異常しか防げない。遠出してでも良質な魔石を手に入れなくては。


「でもアニキ、さすがにタダってのは申し訳ないッス。実はここ数日で臨時収入が有ったんスよ。金貨1枚なら余裕で払えるッス」

「え?」


 万年金欠病に悩まされているウィルの爆弾発言だ。訝(いぶか)しんでいると、納得の理由を告げてくる。


「あれ、知らなかったッスか? 冒険者ギルドの緊急クエストで、地下に出来た巨大な空洞を埋める作業を受けたんスよ。ヴォルトもッスよね?」

「うむ。何でも国からの依頼で1日で金貨1枚が支払われてな、稼ぎが良いから冒険者以外の市民まで集まったくらいだ。ファーナも家族で参加していたな」

「そうそう。それも3日前に終っちゃって父さんが嘆いてたけどね~」


 ふむ、地下の空洞を大勢で――ねぇ。思い当たるのは1つしかない。


「でもさ、それなら俺も誘ってくれよ。知ってたら参加したのに」

「何言ってるッスか、研究で忙しいから先帰るぜ~とか言い出したのはアニキッスよ」

「オゥフ……」


 おしいことをした。魔石は回収したけど奥の方は探索できてなかったんだ。もしかしたらもっと良質な魔石が有ったかもしれないんだよなぁ。終わったんなら探索できないし、諦めるしかない。


「でも妙な話を聞いたッスよ? 奥で作業していた奴らが呻(うめ)き声みたいなのを聞いたとか言ってるッス」

「それでどっかの邸の地下室に繋がってるのではという憶測が飛び交ったな。そこでは買われた奴隷が道楽のために苛烈(かれつ)な拷問を受け、死霊となって彷徨(さまよ)っているとか何とか。結局はデマだったらしいが」

「…………」


 本当にそうだろうか。もしその呻き声があのマンティコアだったとしたら……。


「なぁウィル、奥にいた奴らは――」

「も、もう止めるのん、つまんない話はナシナシなのん!」


 リスティが割り込んで中断させてきた。


「悪かったな、つまらん話で。それでヴォルト、その話って――」

「なんだ、妙に食いつくじゃないか。バーストはホラーが好きなのか?」

「へ? 別にそういうわけじゃ。ただどうしても気になる部分が――」


 リスティを無視して続けようと思ったがガチでホラー耐性が無いらしく、必死に両手で✕を作り……


「なら止めて欲しいのん、商売の失敗と怖い話は嫌いなのん!」


 いや、それって結局のところ商売での失敗が怖いだけじゃ……



 ガチャ……



「ほぅほぅ、初夏が訪れたと思ったらホラーですか。旬には少し早いですよ?」


 マイティーチャーのトーマス先生が呑気に入室。


「そういう先生のサボり癖は季節を選びませんよね」

「うぐ……、なかなか言うじゃないですかバーストくん。そんな鋭い指摘ができる優秀なキミのためにピッタリな課題を用意しましたよ。ズバリ――」



「――第一回、念を飛ばして周りに影響を及ぼしてみよう大か~~~い♪」ドンドンパフパフ♪


 勝手に盛り上がってら……。無視すんのも可哀想だし少しだけ付き合ってやるか。


「は~い先生~、それはどうやればいいんですか~」(棒)

「全く回り道をしないド直球で遊び心のない質問ですねバーストくん」

「早く進めろ下さい」(怒)

「分かりましたよもぅ……。んんっと、皆さんは念を飛ばしてくる魔物をご存知でしょうか?」


 これは知ってる。ゴースト系の魔物がそれに該当するな。魔法攻撃の他に精神攻撃も仕掛けてくる厄介な存在だ。


「彼らの内に秘める詳しい仕組みは依然として不明ですが、我々にも同じような事を起こせるのですよ。そう、魔力を使えば」


 ここで真剣な眼差しを俺に向けてきた。魔力と言えば俺、魔法と言えば俺、うんうん分かってるじゃないの。


「つまり俺の魔力で念を飛ばせと」

「その通り。さっそくですがバーストくん、殺気を出してみてくれませんか?」

「は? いや、いきなり言われても……」

「なら怒りの感情でもよいです。どうぞ私にぶつけて下さい」


 ならばと日頃の鬱憤(うっぷん)を晴らすつもりで罵(ののし)ってみた。


「(このサボり魔)」

「…………」ピク


「(不良教師)」

「…………」ピクピク


「…………」

「…………」フッ(←涼しい顔)

「…………」イラッ



「(公務員ニート、給料泥棒、社会のゴミ、水虫、遺伝ハゲ)」

「オゥフ! バ、バーストくん、もういいです、ストップストップ。ちなみに最後のは全力で否定させていただきます!」


 つまりは可能性ありっと。(←水虫は否定しないらしい)


「……とまぁこのような感じで、魔力が強ければ強いほど効果が絶大なのですよ」

「でも先生、アニキと違って俺たちには大した魔力は無いッスよ? そんな芸当出来るわけないッス」

「フフ、そこでマジックアイテムが物を言うのです。この間の授業で魔石に念が籠るという話をしました、覚えてますね?」


 そう言って予め用意していたであろう魔石を教卓の上に置いた。赤に近い紫? 空洞の魔石よりは少し良質なようだ。

 

「ここに1つの魔石があります。深い海の底で活動している海底亀(アビスタートル)の死骸から発見されたものです。人力では決して潜れない場所に有ったのですから、他人の念が入り込む隙は無いでしょうね」


 念が込もっていない!? つまりは自分の意図する効果を発揮できる可能性が!


「フフ、バーストくん、出番ですよ?」

「は、はひぃ!」


 緊張のあまり声が裏返ってしまった。

 落ち着け俺、深呼吸深呼吸。こんなチャンスは滅多にないんだ、絶対に成功させてやる!


「フン!」


 ゴォッ!


「でた~~~、気合いを込めたアニキの魔力!」

「この威圧感、まるで強風にでも当てられてるかのようだ」


 よし、準備完了。後はこの魔石を融合させたい装備品に――




 ――って、ヤベッ! どれを使うか決めてねぇ! でも早くしないと融合に失敗する。何か、何か方法は!


「クッ、こんなことで失敗するわけには――あ……」

「ん? 何?」


 偶然にも視界に入ったファーナの手。 どこにでも売っているごく普通の黒いグローブを付けた手が目に止まり、次の瞬間……



 シュィィィィィィン!



「え、えええ!? なななななななななんであたしのグローブが!?」

「すまんファーナ、意識がソレに固まっちゃって。完全に事故った……」

「はぁぁぁぁぁぁあ!?」


 激しい光が収まり、ファーナのグローブが――いや、どう見ても変化したようには見えない。けどよ~く見れば光沢があるようなないような……う~ん、どうなんだ?


「ちょっとバースト、あたしのグローブに何してんの!」

「いや、すまんて。わざとじゃないんだから怒んなよ。それに良質な魔石を使ったんだからきっと素晴らしい効果が……」

「じゃあ鑑定してよ」

「おぅ。う~んと……うぉっ!?」


 鑑定メガネで見た結果、驚きの性能が明らかに!


 サイキックグローブ……これを装備していると、脳裏に浮かべた魔法を発動させることができる。特に水属性が強力。但し、魔力が不足していると発動しない。

 ※ファーナ専用のため、彼女以外は扱えない。


「すげぇぞファーナ、お前今日から魔法が使える」

「は?」


 まぁそういう反応になるわな。そこで鑑定結果を教えてやると……


「え、えぇぇぇぇぇぇえ!? 好きな魔法が使えるの!? ホントに!? 嘘だったら父さんの靴の臭い嗅がせるからね!」

「どんだけ臭いねん。ま、論より証拠だ、何か放ってみろよ」

「じゃあ……ファイヤーボール!」


 バリ~~~ン!


 ファーナの掌から火の玉が浮かび上がり、視線を向けた方向へと飛んでいった。


「う、嘘……あたし、本当に魔法を使えてる!」

「な?」

「いやいや、な? じゃありませんよ! 堂々と窓をブチ抜いといて何言っちゃってるんですか! ミレニアさんに怒られるのはボクなのですよ!?」


 荒ぶる校長トーマス。ミレニア教頭とやりあえるのは立場的に貴方しかいない。ファイト校長、後で教頭に報告しとくね。(←鬼かよ)


「まぁ高い授業料ってことで。なぁファーナ?」

「うん♪ ありがとうバースト!」ダキッ!

「……そこ、くっつきすぎ」

「引っぺがしてやるのん!」


 うん? 高いと言えば、海底亀(アビスタートル)から取り出した魔石。アレは相当高価なアイテムだ。もちろんアビスタートルの死骸そのものもな。そんなレアなものをどうやって校長は入手したんだ?


「おやバーストくん。どこか腑(ふ)に落ちないといった顔ですね。そんなに経緯が気になりますか?」

「そりゃ~、まぁ……」

「ハハ、でしょうね。ですがボクにもプライベートというものがあります。おいそれと話すのは憚(はばか)られるのですよ」


「(どこで目を光らせているか分かりませんからねぇ)」

「え?」

「いえ、なんでもありません」


 これでファーナとリスティの武器が揃った。エリーはすでに持っているし、後はウィルとヴォルトの分を揃えればひとまずは安心だな。


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