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魔力は全てを解決する!  作者: 南国ブラックベア
第1章:家族と学友
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マジックアイテム第1作

「お前さん、なかなかやるなぁ。ワテらも色んな連中を見てきよったけど、即席でマジックアイテムを作り上げたんはバーストはんだけやで」

「そんなお前さんに名誉あるお仕事を1つ頼むわ。なぁに、帝都の南郊外まで護衛するっちゅ~簡単なお仕事や。これをやってくれたら鑑定メガネはくれたるわぃ」


 ――とまぁ何だかんだで護衛をすることになったわけだ。見たところご立派な荷馬車まで有るようだし、そりゃ2人だけじゃ心もとないよな。それに本来の授業はこっちだったんだっけ?


「ところでさ、何で護衛が俺だけなん?」

「そらワテらが依頼したからや」

「ワテらの本命は別にあるからな」

「別?」

「ま、付いてくりゃ分かるで」


 何のこっちゃと首を傾げつつも20分程が経過した頃、南門が目と鼻の先くらいに見えてきた辺りで荷馬車が停止。住宅が殆どなく更地が広がる地面を指してオッサンが叫ぶ。


「ここや、この土地が欲しかったんや!」

「土地を?」

「せやで。いくら郊外のやっすい土地や言うたかて、余所もん相手にゃ簡単には売ってくれへんやろ?」

「そこでアンタの出番やバーストはん。貴族のアンタからちょちょいと口利きして欲しいんよ。そうすりゃ国の許可なんざちょちょいのジ◯イやで」


 護衛は建前で、土地を購入して店を構えるのが目的だったようだ。何でも商売の匂いがする? とか言い出したりして。


「けどどうして俺が貴族だと――」

「なんや、もう忘れたんか?」

「ワテらは鑑定スキル持ちやで?」


 おおぅ、こりゃ失念。


「ほなそういう訳やから、今後ともご贔屓(ひいき)に頼むわ」

「贔屓ねぇ」


 つまりはリスティのライバルか。確かパルソン商会だっけか? クラスメイトのよしみで贔屓にするつもりだったし……


「ま、善処するよ」

「くぁ~! こらあかん、善処するなんざその場しのぎの台詞やないか! 後で聞いたら「あ~忘れとったわ~」とか言うパターンやろ? テキトー言うたらアカンでぇ!」


 チッ、なかなか鋭いな。


「ならちゃんと許可は取るからそれでチャラってことで」

「くぅ~、憎らしいほど口が回るようになりよってぇ! いったい誰の影響や!」←お前らだよ

「落ち着けチャビン、何も損はしとらん。けど許可の方は頼んまっせ~!」

「はいはい」


 何とも商魂逞(たくま)しい2人と別れて近くの詰所へと急ぐ。もちろんあの場所で出店する手続きだ。貴族と騎士団が揃ってれば許可は下ろせるからな。

 へ~ぃ、国の許可なら皇帝への報告が必須なのでは――と思ったそこのキミ、甘い、甘いぜ~? ハチミツをガブ飲みするくらいには甘い!(←想像したら気持ち悪くなってきた……)

 そんな事のために皇帝にご足労願うわけには行かないだろ? 中には公にしずらい大人向けの店だってあるし、それを見たら「けしから~ん!」とか言われかねない。だからこそ貴族が代わりを勤めるわけさ。


「さて、着いたことだしさっそく――」

「何だとぉ!? そんなものが帝都の郊外に!」

「うぉ!?」


 詰所に入った瞬間、いきなりの怒号で大きく仰け反ってしまった。何事かと中を見渡せば、何人かの騎士が神妙な面持ちで腕組みをしているのが見える。恐らくは団長であろう初老の騎士が俺に気付くと、軽く会釈をしてきた。


「ああ、驚かせてすまない。今は少々立て込んでいてね。用があるなら出直してもらえると助かるんだが」

「いや、それはちょっと……。待たせるとうるさい奴らなので、出来ればちゃちゃっと出店許可を出したいんですよ。あ、言い忘れてたけど俺、キルロード家の者ね」


 家紋の彫られた腕輪を見せると一同がギョッとし、姿勢を正して一礼してきた。


「こ、これは失礼、貴族様でしたか!」

「ああ、畏まらなくてもいいですよ。用件さえ済ませればすぐに帰るんで。ところで郊外で何があったんです?」

「それが――」


 それとなく聞いてみたが、これが予想以上の事態だった。農夫が畑を耕していると、人1人が優に通れる怪しげな空洞が出てきたと言うんだ。これでお宝でも見つかれば酒場のネタにでもなりそうなもんだけど、出てきたのは得体の知れない動物型の魔物。驚いた農夫が咄嗟(とっさ)に鍬(くわ)を振り回して撃退したんだとか。


「――という訳でして、今から団員を集めて調査に向かおうかと」

「なるほど。そういう事情なら――」


 いや、待てよ? 魔物が居るってことは魔石も有るんじゃないか? 上手くいけば大量の魔石が手に入るかも!


「いや、その調査は我が家に任せてもらえないだろうか?」

「「「え!?」」」

「これでも武家として名高いキルロード家の末子ですよ。その気になれば洞穴に巣くう魔物なんざちょちょいのジ◯イって感じで」

「し、しかし……」

「実を言うとその辺りは知り合いが住む予定なんですよ。この目で安全確認もしたいってのもあるんで」

「むぅ、そこまで仰るなら……」



 半ば強引に話をまとめ、外へと出た後の詰所の中では……



「団長、大丈夫なんでしょうか? キルロード家と言えば、末子以外は優秀な実力者であるという噂が」

「それは知っている」

「ならばあの息子が行ったところで犠牲が増えるだけでは……」

「分かっている。しかしああも啖呵(たんか)を切られては……」

「「「…………」」」


 団員たちの表情が曇る。が、そこへ……


「心配は入りません。巣くった魔物は必ずや討伐して見せましょう」

「あ、貴女は!」



★★★★★



 詰所を後にした俺は、地図を確かめつつ魔物が出たという郊外へと出向いた。そこは隣家との間が果てしもなく遠いほど畑が列なる場所で、遠くには見覚えのある――って!


「ドビンチャビンが出店する場所のご近所やないかい!」


 無意識にトラブルを抱える才能でも有るのかあの2人は……。


「で、これが魔物が出てきたっていう空洞か」


 俺の足元には異質な空洞が広がっており、一寸先は闇の状態。危険なのは承知だが、この先にあるかもしれない魔石に脳内が支配されつつあり、気付けば闇の中へと滑るように入り込んでいた。


「トーチ」フワッ


 手から浮き出た光の玉が宙に浮き、俺の頭上で激しい光を放つ。光源としてはランタンの比ではなく、邸のロビーよりも広い漆黒(しっこく)の空間を隅々まで照らし尽くす。この光なら周囲にいる魔物を見逃すことはないだろう。


「グ、グゥゥ……」

「オォォォ……」

「む? さっそくお出ましか!」


 動物型と言われた魔物の姿は、四つ足で動く獅子の胴体に翼を生やした化け物。更に顔の部分は正気を失った人間にしか見えないというマンティコアの亜種――って!


「つい最近ダンジョンで見たやつにそっくりじゃないか!」


 あの時に見た個体には翼は生えてなかった気がするが、もしかして見逃してたか?

 いや、そんな事よりとうとう帝都に入り込んだってのかよ。見える範囲だけでも3体は居るぞ? いったいどこから……


「けれど帝都に魔物を侵入させたとあっては民衆の不安を増幅させてしまう。速やかに討伐を行いましょう」

「そうだな――ってラミエル姉さん!」


 いや、もう驚くのは止そう。今日の護衛役がラミエル姉さんなだけだ。


「「「グオォォォ!」」」


 っと、呑気に話してる隙は無さそうだ。


「援護します、スプラッシュホーミング!」


 一見すると複数の弓矢をデタラメに放ったように見えるラミエル姉さん。だが恐ろしいことに、その1本1本が意思を持つかのように敵目掛けて飛んでいくのだ。


「ギャァァァ!?」

「グゴォォォォォォ!?」 

「ギィギィギィィィ!」


 姉さんが狙ったのはマンティコアの翼。穴だらけのボロ雑巾へと変えたことで飛び立つのは不可能となっただろう。


「バースト!」

「分かってるよ、フレイムキャノン!」



 ドゴン!



 炎の砲弾が1体を貫き、2体目への着弾と共に消滅。2体は討伐できたが、残った1体は……


「キェェェェェェ!」

「あ、逃げるかクソッ!」


 ダンジョンの奥へと逃げて行った。というか勢いでダンジョンとか言ったけど、あんな化け物が居るんだしダンジョンだと思っていいよな?


「うん? コレは……魔石かしら」


 ラミエル姉さんが手にしたのは、動かなくなったマンティコアの額から引っこ抜いたやつだ。


「魔石!?」

「ちょ、ちょっとバースト!?」


 魔石というフレーズに引かれ、引ったくるようにして手に取った青白く光る石。確かに魔力は感じるが……


「う~ん、ドビンチャビンが持っていた魔石よりも魔力が弱い。これじゃ良質なマジックウェポンは難しいか」

「すっかり魔石マニアに成ってきたわね。まるでマジックアイテムに目がないアイリみたいよ?」

「えっ!?」


 マジかよ? あんな性悪と一緒にされたくないんだが……。


~~~~~


「ハックシュン!」

「おやアイリさん、授業中に盛大なクシャミとは、少々はしたないですわよ?」

「え? あ! ご、ごめんなさい、あたしったら……オホ、オホホホホホ!」


~~~~~


 しかしそうか、端からだとそう見えるのか。今後は気を付けよう。

 

「けど何かに使えるかもしれないし、一応貰っとくか」


 手にした魔石をさりげなく自分の懐へとしまい、逃げたマンティコアを追う。幸いにして空洞は一本道なため、風属性で加速した俺たち(←ラミエル姉さんの靴にも付与した)はすぐに追い付くのだが。


「ギェェ、ギェギェ!」

「まだ逃げるか」


 横付けして並走して見せたがまだ諦めてはいないらしく、息を切らしながらも走るのは止めない。

 ならばと俺は立ち止まり、手を正面に向けて狙いを定めたその時、マンティコアが走る先で紫色に輝く塊が見えた。


「アレだ!」

「アレ?」

「そう、あの紫色のやつ。アレこそが俺の求めていた魔石だ!」


 ドビンチャビンが持っていた魔石も似たような色だったし、恐らく間違いないだろう。

 が、同時に厄介なものも発見した。


「「「キェェ、キェェェェ!」」」

「「「グオォォォ!」」」


「うわっ! なんだよこれ!?」


 所狭しと設置された鉄製の檻の中で逃走中だったマンティコアと同等の魔物が閉じ込められていた。


「これは……明らかに人工物ね。何者かがここに仕掛けたんだわ」

「何者――って、いったい誰が?」

「そこまでは分からないけれど。でも詳しく調べる必要がありそうね。畑に出た個体もここから逃げ出したものみたいだし」


 よく見れば幾つかの檻が壊れている。倒した個体もここから抜け出たやつなんだろう。


「ガァッ! ガァッ!」

「ん? コイツ、他の檻を壊そうとしてやがる!」


 逃れていた1体が必死に檻を揺すり始めた。仲間を逃がすつもりらしい。


「そうはいくか――フレイムキャノン」

「ガァァァッ!」

「あっ! テメェ、檻を盾に!」


 ドゴォォォン!


「ちょっとぉ、何やってるのバースト!」

「やっちまった!」


 不覚にも檻を壊してしまい、待ってましたとばかりに中にいたマンティコアが躍り出る。そして狙っていたかのように大きく息を吸い込むと……


「スゥ~~~ゴォォォォォォ!」


「伏せなさいバースト! マンティコアのブレスには状態異常の効果があるはず!」


 つってもシールド張ってるから俺には届かないんだけどな。どれ、せっかくだしブレスを鑑定してみるか。


 カーズブレス……強力な呪い。これを受けた生命体は徐々に身体を侵食され、いずれは異形の魔物へと姿を変えてしまう。


 はぁ!? なんつ~危険なもんブッ放してくれてんだよコイツ!


「大丈夫かラミエル姉さん!? コイツのブレスには――」

「う……くぅ……」

「姉さん!」

「だ、大丈夫よバースト、それより……マンティコアを早く……」


 いや、大丈夫なわけない。明らかに顔色が悪くて苦しそうだし、指先から黒く変色し始めている。こんなところで時間を費やすのは危険だ。


「一気に殲滅(せんめつ)してやる――ゴッドインフェルノ!」


 神々しい純白の火柱を広範囲に出現させ、その場を掻き回すようにうねらせた。逃げ場のない空間なため、火柱に触れたマンティコアが1体また1体と朽ちていく。そして最後の1体を溶かした頃には、鉄製の檻も完全に消滅していた。


「よし、討伐完了! 急いで教会に――」


 ――と思い踵(きびす)を返そうとしたところで先ほど発見した魔石が目に止まる。魔法の余波を受けてあちこちに飛び散ってはいるが、魔力反応は衰えてはいない。


「うん、これなら絶対に上手くいく。ラミエル姉さん、ちょっと待っててくれ!」


 テキトーなサイズの魔石を手にして脳裏で強く念じる。呪いからの解放、苦痛からの解放、異常からの解放を強くイメージして魔力を込める。それを姉さんが付けている指輪と合成させると……




「あ、あら? 急に身体が軽くなった気が……」


 みるみるうちに顔色が良くなっていき、変色しかかっていた手も元通りに。


「よかったぁ! 上手くいったみたいだ」


 安堵したところで改めて指輪を鑑定してみた。


 解放の指輪……状態異常を受けた場合、即座に完治させる指輪。残り3年。


「うん、素晴らしい出来だ! ちゃっかり有効期限を設けられてはいるけど3年も持続するなら充分だろ」


 魔石にはその環境に置かれた思念が宿ると聞いた。思えばここのマンティコアも何者かに捕らわれていたわけで、彼らが願う解放の二文字が相乗効果になったのかもな。


「フフ、助かったわバースト、さすがは自慢の弟ね」

「世間じゃそうは思われてないけどね」


 詰所を出る直前、団員たちが後ろで話しているのを聞いた。今となっては気にするほどでもないんだけどな。それでも完全に気にするなと言うのは無理があるわけで。


「それなら見返してやりなさい。幸いにして原料となる魔石はたくさん手に入ったのだし、今のバーストならマジックアイテムだろうがマジックウェポンだろうが何だって作れるんだもの」

「もちろんそのつもりさ」


 さ、帰ったらさっそく研究だ。そう期待に胸を躍らせつつ魔石を回収。


「ん? この空洞、まだ先があるみたいだ」


 怒りに任せて魔法をブッ放したから気付かなかったけど、通路が細まりつつも先へと続いていた。


「調査は騎士団に任せましょ。あれだけ狭い通路ならマンティコアは出てこれないでしょうから」

「それもそうか」


 やや後ろ髪を引かれるもマジックウェポンの研究が優先されるのもあり、素直に引き返した。しかし空洞を抜け出た直後、予想外な人物と鉢合わせに。


「バーストくん!? それにラミエルくんまで」

「「ヴィクトル様!?」」


 気付けば互いに驚いていたが、明らかに場違いなのは相手の方だ。しかも近衛兵まで引き連れていて、雰囲気が物々しい。


「魔物が出たと聞いて馳(は)せ参(さん)じたのだよ。城下の平和を守るのも我々の勤めだからね」

「そうだったのですね。しかしせっかくご足労いただいたところで大変恐縮なのですが、中の魔物はバーストが殲滅致しましたわ」

「なんと! ア(・)レ(・)を殲滅してしまったと……」

「ヴィクトル様?」

「い、いや、何でもない。……そうか、ではやはり強化を厳重にして……」


 何とも言えない険しい表情を作り、ヴィクトル様と近衛兵たちは空洞へと入っていく。


「何だったのかしら?」

「さぁ?」


 まぁそんな事より研究だ。さぁ、これから忙しくなるぞ~。


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