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49話 行くのか否か

累計ユニークアクセス一万突破です。ここまでお付き合い頂き感謝感激です。

これからもよろしくお願いします。


7/5 嬉しさのあまりユニークアクセスをPVと書き間違えたため修正

7/19 誤字修正

「それにしても、不死だなんて……」


 未だ受け入れがたいものがあるのか、エンゼリカは一人呟いている。


 エンゼリカとオリヴィアに俺が不死であることを証明するため、フィーアの補血も兼ねて心行くまで血を吸ってもらったのだ。

 少しずつやつれていく俺を見て気が気でなかったとエンゼリカは言っていた。


「急に言われても信じてもらえなかったろうしな。証明するにはやってみせるしかないだろ」


「妾は主様の血が吸えて満足じゃ」


 棚から牡丹餅とでも言わんばかりのほくほく顔でフィーア。彼女には定期的に血を分けているが、次の吸血まではもうしばらくあったからな。


「しかし、これでわかりました」


 オリヴィアが口を開く。


「わかったって、何が?」


「ヤチヨ様と最初に出会った時のことです」


 俺と彼女らが最初に出会った時――出会い頭に首を刎ねられたな。ああ、つまりそういうことか。


「なんで俺が切られたのに無傷だったのか、か」


「はい。あの時確かに手応えを感じたのですが、ヤチヨ様は無傷でしたので不思議に思っていたのです。てっきり、相当な手練故のものだと思っていましたが」


「んなわけ無いだろ。あの時は剣も魔法もド素人だ。今も付け焼刃ではあるけどな」


 さすがにあの頃よりは戦えるとは思うが、オリヴィアの無拍子斬りを見切れるかと言われると怪しい。


「ですので、納得しました」


 エンゼリカと違ってオリヴィアはすんなり受け入れてくれたようだ。実際一度その手で俺を殺めているわけだしな。

 別に根に持ったりはしていないし、謝罪もされたので殺されたどうこうは気にしていない。


「ま、俺としてはわかってくれればいい。ただ、あまり広まると面倒だからオフレコで頼むぞ」


「おふれこ……?」


 オフレコの意味ががうまく伝わらなかったらしい。こちらには存在しない言葉だったか。


「他言無用だぞってことだ」


「ああ、はい。さすがにこの異常性は私たちもわかりますから」


 ひとまずこれで一安心か。となると次は……。


「じゃあ、次は迷宮をどうするかだな」


 守護方陣を使えるようになるためには攻略しないといけないらしいので、迷宮に行かねばならないのは決定事項だ。


「迷宮は龍種がいるって話だったからねえ」


 しばらく口を噤んでいたオルタが言う。


「あたしも昔は迷宮に潜ったりしてたけど、さすがに龍種討伐まではしたことがないね」


 元Aランクのオルタでも龍種の討伐はしたことがないらしい。便宜上Bランクからは大型魔物の討伐依頼も受けられるが、その中で本当に龍種とやり合う者は少ないのだそうだ。

 誰だって命は惜しいのだ。龍種とやり合うということは、命を賭けるのと同義なのである。


「ウェンティの迷宮自体に行ったことがあるのはエンゼリカ達だけか?」


「転移の心配かね? ウェンティの迷宮に入ったことはないけど、近くの町なら転移できたはずさね」


「なら移動の心配はなさそうだな」


 世界中を動き回っていたオルタはこういう時に頼りになる。ここからウェンティまでまともな手段で移動しようとすると、下手したら年単位になりかねない。

 近い町まで転移できるのならその手間が省けるし、道中の危険も少なくなる。いいことづくめだ。


「それより今は迷宮の攻略をどうするかですわ」


 立ち直ったらしいエンゼリカが口を挟む。


「行ったことのあるわたくしだから言えますけれど、地龍はもとより守護者もなかなかに厄介ですわよ?」


 失念していた。地龍の話が大きすぎてそればかりに気を取られていたが、一定階層ごとにいるという守護者なんて名前のついた強い魔物も倒さねば迷宮は先に進めないのだ。


「それって、どのくらいの強さなんだ?」


「そうですわね……。冒険者ランクで言えばBあればなんとか、といったところですわね」


 Bランク。パーティで大型魔物が狩れるくらいは必要ということだろう。今の俺たちでどこまで通用するかはわからないが、ギリギリ届くかどうかといったところだろう。


「ちなみに私とオリヴィアはAランクとして活動できることになってますわ」


 ことになっている、というのは恐らく立場上冒険者として登録することに問題があるからだろう。しかし実力などから鑑みればAランクと言われても頷ける。


「俺たちはCランクだからな……。実力がCかどうかは置いておくとしてな」


 一応俺だけでなく他の面々もCランクまで上がっている。この数ヶ月で依頼をコツコツこなしたためだ。Cランクでの依頼もさほど大変ではないため、Bになるのにそこまで苦労はしないのではないかと踏んでいる。


「実際、ヤチヨさんをCランクなんて言ったら本当のCランクの人たちが怒ると思いますわよ……」


 呆れたようにエンゼリカが言う。


「じゃあ、守護者は問題ないってことか?」


「一応私たちもいますから、無理ってことはないかと思いますの。それでも守護者との相性による可能性もありますけれど」


 聞けば、守護者は魔法に耐性があったり、逆に物理攻撃が効かなかったりというような特性を持っていることが少なくないのだとか。あれ、どっかで似たようなことを聞いたような……。


「俺とヴェルゼはどっちもいけるし、エンゼリカとオルタが魔法、オリヴィアとフィーアが物理でなんとかなるんじゃないか?」


 何かあっても多少はアイティルの治癒魔法でなんとかなる。最近はアイティルも力をつけているし、いざとなれば彼女にも奥の・・・がある。……あれを奥の手と言っていいのかはわからないけどな。


「大丈夫だとは思いますけれど、『蜥蜴を以て竜と見よ』と言いますわよ」


 この世界にも諺はあるらしい。小さなことでも大げさなくらい警戒すべき、という意味だそうだ。『備えあれば患いなし』みたいなものだろう。


「幸いすぐに攻略しないと世界が滅びるわけじゃない。もうしばらくは期間があるし、行けると思える実力をつけてからでも遅くはないかもな」


 一応女神からは世界の破滅について、「直近ではないがそう遠くない未来」という曖昧な回答を頂いている。一年二年ではないことは確かだそうなので、多少の猶予はあるのだ。


「一応迷宮でも経験は積めますし、攻略がてら訓練というのも悪くはないかと」


 オリヴィアがそう助言する。この案は悪くないだろう。


「となると、迷宮都市でしばらく生活することになるかい?」


 そう言うのはオルタだ。いちいち転移で戻ってくるのも大変だろうし、滞在する場所を確保できるのならそちらの方がいいだろう。


「あそこは迷宮に潜る人向けの商いが中心ですから、滞在に困ることはないと思いますの」


「じゃあ、しばらくは訓練と攻略を兼ねてウェンティの迷宮都市を拠点に生活ってことで大丈夫か?」


 一応全員に確認する。発言していた組は行く気満々なのでいいとして、ヴェルゼやフィーア、アイティルの考えも聞くべきだろう。


「妾としても問題ないのじゃ。できれば観光もしたいのう」


「私も問題ないです。……デミュル様も問題ないと」


 フィーアが呑気に言い、アイティルが続く。アイティルは一瞬瞑目した後、デミュル――女神も問題ないと言っていると告げる。


「ポンコツが問題ないって言うと何か起こりそうで嫌だが……、まあ大丈夫だろ」


「……もうっ!ポンコツって言わないで下さいっていつも言ってるじゃないですか!」


 一瞬のラグの後、アイティルが別人の様に(・・・・・)まくし立てる。その雰囲気はいつもより神々しさが増し、後光が射しているように感じてしまう。


「……悪かったって。ポンコツ女神様」


「ほらまた!」


 この遣り取りも最近はよく行われるようになった。何が起こっているのかと言えば簡単なことで、アイティルの体に女神が降りているのだ。


 初めてこの現象が起こった時はかなり驚いた。神殿にいつものように祈りに行った時、たまたまついてきていたアイティルの雰囲気が急に変わるのだ。驚かない方がおかしい。


 なんでも、自分の分身体みたいなものだからできるんじゃないかと思って試したら本当にできちゃいました。てへぺろ。だそうで、だったら最初からそうしろと言いたくなるのは仕方のないことだ。

 以来俺は女神をポンコツと呼ぶことにした。毎度毎度抜けているところが多すぎるのが悪い。


 降りられると言っても常には無理なようで、普段はアイティルの中で眠っているような感じらしいのだが、アイティルを通してコンタクトを取れるし、時たまこうやって表に出てくることもある。


 また女神が憑いたことによるものか、アイティル自体の光魔法と回復魔法は強力になった。と言っても気休め程度だったものから実用できるレベルになったくらいの変化で、全てを浄化する程の力は備わっていない。備わっても困るからいいのだが。

 しかしこれによってパーティでのヒーラーポジションが確立した。回復役は重要だし、結果オーライだ。


「世界の破滅はいつ来るかもわからんし、会いに行けば大事なことを言い忘れる。ポンコツ以外の何者でもないだろ」


「ぐ、それを言われると……。ここは戦略的撤退です」


 そう言うと女神は引っ込んだようで、先程までの神々しさは鳴りを潜め、いつものアイティルに戻る。


「結局、何しに出てきたんだよ……」


 こういうところもポンコツたる所以だろうと思う。


「ま、まあ一応全員迷宮都市に行くってことで異存はないんだろ?」


 オルタが苦笑いしつつ再度皆に問いかける。


「ヴェルゼもそれで大丈夫か?」


 聞くまでもないだろうが、一応彼女にも聞いておく。


「ん。大丈夫」


 例によって可愛らしくこくりと頷くヴェルゼ。思わず撫でてしまう。


「あっ妾も撫でて欲しいのじゃ」


 目ざとくそれを見ていたフィーアが便乗しようと頭を擦り寄せてくる。苦笑しつつその黒髪を撫でつけながら俺は言う。


「そんじゃ、いっちょ迷宮攻略と行くか」


「「「はい!(ですの!)」」」

「あいよ」

「うむ」

「ん」


 各々が返答する。バラバラで締まらない感じが彼女たちらしいな、と思うのだった。

俺たちの戦いはこれからだ!

オモイツの次回作にご期待下さい(大嘘)

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