表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/61

45話 王女と守護方陣

 アイティルをどうするかということは、大きな問題も無くすんなりと決定した。


「いやあ、年の割にしっかりしてて助かるねえ」


 オルタがそんなことを言う。 

 全くもってその通りで、アイティルは自分についてのことはしっかりと自分で考えて行動することができるようだった。


 結局どうなったかというと、部屋は余っている部屋でいいとのことだったし、荷物については必要最低限の衣類などをまとめて持ってきていたので、それを収納するくらいで済むそうだ。足りない物はこれから仕入れればいいと言っており、すぐに必要になるようなものは特にないとのこと。

 パーティとしての立ち位置は後衛だ。普段はオルタの近くで待機して、誰かが怪我を負えば回復魔法で支援するという、ヒーラーの役割となる。

 ゲームならば支援効果のある魔法を味方にかけたりもするのだろうが、アイティルはまだ使えないそうなので、しばらくは専ら回復役だ。


「一応俺たちが守るとはいえ、狩りに出て大丈夫か?」


「はい。英雄様と行動を共にするのであれば、私も強くならないといけません」


 見た目十二才前後の少女に見えるのだが、その考えはかなりしっかりしていると言えた。この場合も危険を顧みず狩りに付いてこようとしているのではなく、自分の安全が確保されることをしっかりとわかった上での発言だ。


「英雄ですの?」


 アイティルの発言に反応したのはエンゼリカだ。しまった、と思ったがもう遅い。


 ちなみに、エンゼリカたちのことはすでにアイティルに紹介済みだ。王女ということに驚いていたが、すぐに慣れた辺り肝が据わっていると思う。


「はい。ヤチヨ様は世界の破滅を食い止めようとする英雄様なのです」


「破滅を食い止めるって、あの破滅ですの?」


 エンゼリカが目を見開いてこちらを見ている。……今の話で信じたのだろうか。


「ヤチヨ様は破滅を食い止めるために今後世界中を旅するそうです。私はそのサポートに選ばれました」


「守護方陣を設置する気ですの? ……ということは、本当に?」


 身分の高いエンゼリカは、やはり世界の破滅を食い止める方法を知っていたようだ。彼女はテトラだし、もう少し頑張れば守護方陣を設置することも可能かも知れない、と思っていたりしたのかもしれない。


「まあ、なんだ。色々あって俺がなんとかすることになった。一応神託みたいなのもあったしな」


 疑わしそうにこちらを見やるエンゼリカに対して、諭すように俺が言う。


 俺の言葉を受けたエンゼリカは、震えるようにしながらも言葉を絞り出していた。


「で、ですが、守護方陣の設置には全属性が使えないといけないはずですわ。テトラである私ですら無理ですのに……」


「あー。俺、ヘキサなんだわ」


「ふえ?」


 この際隠しても仕方が無いので正直に話したのだが、エンゼリカは惚けたような返事をするばかりだ。


「光魔法の出力が安定してないんだが、そのためにアイティルがいる。その他の属性ならどれも中級は余裕だな」


「そ、そんなことって……」


 まだ信じられていなそうなので、神官にやった時のようにそれぞれの初級魔法を手の平に作り出してみせる。


「本当、ですのね……」


 ようやく信じてくれたようだが、なぜかエンゼリカはショックを受けているようだった。


「驚くのはわかるが、そこまで落ち込むことか?」


「だって私、自分をテトラだと言って上から目線で……」


 自己紹介の時の事を思い出しているらしい。そう言えばあのときテトラだと自慢げに言っていたような気がしなくもない。俺としてはその魔法のコントロール技術に驚いていたので、そこまで気にしていなかった。


「テトラでも十分珍しいだろ。それに、俺はエンゼリカの魔法のコントロールは純粋に凄いと思ったぞ」


 落ち込んでしまった彼女にフォローを入れる。すると、ゆっくりと顔を上げてこちらを伺うように問いかけてくる。


「本当ですの? 内心で莫迦にしたりしていませんの?」


「するわけ無いだろ。エンゼリカの魔法技術は凄いよ」


「そうですの? えへ、えへへ」


 どうやら俺の励ましは功を奏したらしい。エンゼリカは嬉しそうに笑いながら、頬に手を当てて身を捩っていた。


「まあ、そういうわけだからしばらくしたら各地を巡ることになると思う。オルタが転移を使えるから、拠点はここになるだろうけど」


 そう、転移魔法をオルタが使えるため、陸路でわざわざ移動する必要がないのだ。実はそれを忘れていて、最近になって思いだしたのは内緒だ。


「では、まずはこの町に方陣を敷きますの?」


 エンゼリカがそんな質問をしてくる。

 それができれば効率がいいのだが、俺はまだ方陣を設置する方法を知らないため、先ずはその知識を得ることから始めなければならない。


「それなんだが、先に王国まで行って守護方陣についての情報を仕入れないといけないんだ」


「情報ですの?」


「ああ。守護方陣によって破滅を食い止めることができるってのは知ってるんだが、具体的にどうやってそれを設置するのかまでは知らないんだ。だから、王国まで行ってそれについて調べないといけない」


「ああ、そんなことですの」


 エンゼリカは簡単に言うが、これをしないとどうにもならないのだ。それがわからないような奴ではないと思うのだが、説明しないと駄目だろうか。


 そう考えていると、彼女は驚くべき事を口にした。


「それなら、私が教えられますわよ」


「え?」


 教えられると言ったか。世界の破滅を食い止めるとは言え、その存在自体がお伽噺のような事について?


「ですから、教えられると言ったのですわ。私も方陣の設置ができれば、と思ったことがありましたの」


 尤も、私には前提条件からして無理でしたけれど。とエンゼリカは自嘲気味に言うが、それでもその知識は貴重な物だ。

 一般人にとっては全くの無駄知識も甚だしいだろうが、ヘキサである俺にとっては喉から手が出るほど有用な情報に早変わりだ。


 というか、やはりテトラである彼女は守護方陣に手を出そうとしたらしい。二属性足りない程度なら、なんとかなるかも知れないと思ったのだとか。


「結局、術式が複雑な上に超精密でしたので、正真正銘、ヘキサの方にしか扱えないものでしたわ」


「そんな情報、どこで……」


 自然とそんな疑問が浮かび、無意識に口に出していた。


「私は一応王族ですのよ? 秘匿文献ですら閲覧許可くらい下りますの」


 疎まれていたとはいえ、その扱いは王族の物であったということだろう。なんにせよ僥倖だ。これでわざわざ王国に行く必要がなくなったのだから。


 さらに言えば、エンゼリカたちを王国まで連れて行くのにやや抵抗があった。ノスティに来ているのは視察という名目であり、絶対に帰ってくるなというわけではないために帰っても罰される事はないだろうと思うが、半ば捨てられた彼女たちがどんな扱いを受けるか想像できないためだ。


「凄いじゃないか。これでわざわざ王国まで行かなくても済むぞ」


 助かった、と言いつついつもの癖でエンゼリカの頭を撫でてしまう。勝手に手が動いていたので、しまったと思ったのだが、意外なことにエンゼリカは嫌そうではなかった。

 てっきり、不敬ですわ! などと言われてしまうかと思ったのだが。


「こんな風に誰かに撫でられた事ってありませんの。悪くないですわね」


 彼女はそんなことを言っている。王族として一般人に撫でられて悪くないとはどうなのかと思うが、彼女にとって俺たちの存在がそれを許してもいいくらいのものになっているということだろう。


 またしても出会って間もない人間の好感度が高いような気がするのだった。


「ヤチヨ様」


「ん?」


 今までのやりとりを黙って見ていたオリヴィアが声をかけてくる。流石に護衛の騎士としては見過ごせない行動だったのだろう。顔を真っ赤にして怒っている。

 そしてそのまま彼女は怒りを抑えているかのように震えつつ言葉を続ける。


「エンゼリカばかりずるいです。私もあとで撫でてください」


「お、おう」


 どうやら怒っているというのは完全に俺の勘違いだったらしい。最初の凜とした雰囲気の彼女はどこへ行ってしまったのだろうか。


「妾も撫でてもらうのじゃ!」


 そんなやりとりにフィーアも加わり、なぜか最終的にオルタやアイティルも含めて撫でる事が決定していた。


 このやりとりで怒っていたのはただ一人だった。いや、怒っているというよりは拗ねているに近いだろうか。


「……」


 俺の隣で、無言で頬を膨らませている死神様がやはり一番可愛いなあとしみじみ思うのだった。

着々とハーレムが形成されていきます。

物語は全然進んでいないのに……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ