44話 アイティルの来訪
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累計PVが四万を超えたようです。昨日は一日で二千PVとか。
少しずつ見て下さる方が増えているようで、嬉しい限りです。
これからも頑張っていきます。
あの後、大した荷物も持っていないためそのままオルタの家まで二人は同行し、夜を迎えることとなった。
夕食などを終えてベッドに入ってから、ヴェルゼと契約の更新をしようとしていたところにフィーアが乱入するなどのハプニングはあったが、概ね何事もなく一日が終わったと言っていいだろう。
乱入してきたフィーアはどうしたかといえば、そのままヴェルゼと致す訳にもいかないし、かといってフィーアと致す訳にも(俺としては)いかなかったため、どうにかして退室してもらおうとしたところ、
「ならば、妾とも日頃口づけを交わしてくれると約束してくれれば、しばらくは我慢するのじゃ」
などという条件を出してきたため、やむを得ずそれを受け入れることにした。俺としては別に嫌ではないわけで、フィーアからそうして欲しいと言っているうえ、ヴェルゼからもお許しがでているからな。
というか、ヴェルゼはフィーアと致すことすら許しているようだが、彼女はそれでいいのだろうか。
まあとにかく、フィーアと致すことは免れたわけだ。代わりにフィーアとも日頃からキスをすることにはなったが。
次の日は色々と予定が立て込んでいて、それほど遅くまでヴェルゼと楽しむ訳にはいかなかったので昨日に比べれば早く就寝した。
そういうわけで、今は次の日の朝である。目が覚めたのは、隣でヴェルゼがもぞもぞと動く気配がしたからだ。
時間的にはまだ朝日が出て間もないくらいだろうか。昨日は寝坊してしまったから、今日はいつも通りに起きることができたので安心する。
「ふあ……。おはよう、ヴェルゼ」
隣に居るはずのヴェルゼに欠伸をしながら声をかける。ノスティは一年中肌寒いくらいの気候のため、就寝時はブランケットをかけているのだが、ヴェルゼは珍しくそれを頭まで被るようにしていた。
「ヴェルゼ?」
彼女らしからぬ行動に、少し疑問を持って声かける。ヴェルゼはもぞもぞと動くばかりだ。
「何やってるんだ? 朝だし、もう起きるぞ」
そう言って彼女が被っているブランケットをめくると――
「おはようなのじゃ。主様よ」
――そこには黒髪の吸血鬼が満面の笑みでこちらを見ていた。
「うおっ!」
「ふふふ、驚いたかえ?」
驚いたも何も、ヴェルゼだと思ってブランケットをめくったら別人が現れたのである。うどんだと思って食べていたらラーメンの味がした位の驚きだ。……例えがわかりにくい、六十点。
「俺のベッドに潜り込んで何やってんだよ……。ヴェルゼは?」
姿の見えないヴェルゼの所在を尋ねる。俺がヴェルゼを認識していない時間なんて、かなり久々な気がする。下手すると半年ぶりかもしれない。
「ヴェルゼなら、ほれ」
フィーアが俺の背後を指差す。するとそこには、こちらを眺めて楽しそうに頭を揺らすヴェルゼの姿があった。
「ああ、後ろにいたのか。フィーアをヴェルゼと勘違いしてて、それが違ったから後ろにいるなんて全く思ってなかった」
「……ん。おはよう」
なんとなく噛み合わない会話をヴェルゼと交わしつつ、浮かんだ疑問をフィーアに投げかける。
「で、なんで俺のベッドにいるんだ」
「主様に構ってもらおうと思っての。せっかく口づけの約束も取り付けたのじゃし。ヴェルゼには許可を取っておるのじゃ」
そこまで楽しみにすることかとは思うが、彼女としてはそうなのだろう。あまり気持ちが理解できないが、それはもう今更だ。
「ん。でも、最初は私」
フィーアの言葉にヴェルゼが反応する。手を伸ばして俺の頬に触れると、そのまま唇を重ねてくる。
しばらくその感触を互いに楽しんでから、顔を離す。満足げに微笑むヴェルゼはやはり可愛いなと思う。
「ヴェルゼばかり羨ましいのじゃ。まあ、今日からは妾もできるのじゃがの」
ヴェルゼと見つめ合っていると、今度はフィーアに振り向かされる。腕を俺の首に回し、半ば抱きついてくるような格好だ。彼女の真紅の瞳は閉じられて、長いまつげが顔立ちの良さを際立たせている。ヴェルゼに埋もれている感がなくもないが、こうしてみるとやはりフィーアも相当な美少女だということを痛感する。
慣れていないためか、ややたどたどしい彼女の口づけは、これはこれで楽しめるものだった。こちらから舌を絡めればピクリと反応し、その初々しさに愛おしい気持ちが溢れてくる。
しばらくそれを楽しんで、フィーアが疲れてきたのであろう、脱力したのでそこで顔を離す。
「主様、ちと上手すぎるのではないかの。それと、初めから激しいのじゃ……」
批難めいた内容とは裏腹に、表情と声音は嬉しそうだ。
「なんだ、嫌だったか?」
「そんなことはないのじゃ。妾もこれから主様で練習するからの。楽しみにしておくのじゃ」
そう言ってフィーアはくくく、と笑うのだった。
そんなやりとりをしていると、ヴェルゼが袖を引っ張ってくる。
「ヤチヨ、ヤチヨ」
「なんだ?」
「フィーアの方がちょっと長かった」
どうやら自分の時より長くしていたのが気にくわなかったらしい。……いや、気にくわないと言うよりはずるいと言っていると解釈した方がいいか。
「わかったよ。もう一回するから、機嫌直せって」
そう言ってまたヴェルゼと唇を重ねる。そしてそれにフィーアが反応し、またねだり……と、三周ほど二人とキスしたところで切り上げた。このままだといつまでも終わりそうになかったからな。
「今で最後なわけじゃないんだ。オルタが朝飯を準備してるだろうから、そろそろ行くぞ」
そう言って、俺はベッドから降りた。ヴェルゼもそれについてくる。
しかし、なぜかフィーアがベッドの上でぺたんと座ったまま、動こうとしない。
「フィーア?」
疑問に思って声をかければ、フィーアからは思いもよらない返事が返ってきた。
「……腰が抜けたのじゃ」
どうやら激しく責め立て過ぎたらしい。一応言っておくが、断じてキス以外のことはしていない。
とは言っても、やり過ぎた俺に責があるだろう。なので、その始末は俺がすることにする。
「……しょうがねえな」
そう呟いて俺はフィーアに近づき、右腕は彼女の両膝の下へ、左腕で体を抱えるようにして抱き上げた。彼女の腕は俺の首に回すような形だ。
「あ、主様?」
「このまま運んでやるから。嫌なら下ろすぞ」
「い、嫌じゃないのじゃ! むしろ、お願いするのじゃ!」
慌てたようにフィーアが言う。出会った時は慰め者にしろだとか結構過激なことを言っていたが、その実彼女はかなり初心なようだ。そういったギャップというか、強がりというかは、彼女の可愛らしさを増す材料となっていると思う。
一つ懸念があるとすれば、この状態の俺たちをヴェルゼが食い入るように見つめていることだろうか。まばたき一つせずにじっと見られているのは、かなり怖いものがある。
「あとでヴェルゼもやってやるから、怒らないでくれよ」
そう声かけると、ヴェルゼは相好を崩してこくりと頷くのだった。
フィーアを抱えたまま居間へ移動すると、案の定オルタが朝食を用意して待っていてくれていた。
「起きてきたね。おはよう……って、なにやってるんだいあんたたちは」
「ああ、色々あってフィーアが動けないって言うから抱えてきた」
言いつつ、フィーアを椅子に腰掛けさせる。
「ありがとうなのじゃ。これはかなり良い気分になれるの」
「そうか? まあ、機会があればまたしてやるよ。尤も、先にヴェルゼだけどな」
そんな会話をしつつ、俺も席に着いた。
「ヴェルゼ様とは仲がいいのは昨日見ましたが、フィーア様とも仲が宜しいのですね」
そこに、オリヴィアが声をかけてくる。どうやらオルタと同じく彼女も朝は強いらしく、オルタと一緒に朝食の準備をしてくれていたようだ。意外に家庭的なんだな、と思う。
「どちらかと言えばフィーアに一方的に迫られている気がするがな」
「なんだかんだで主様は受け入れてくれるじゃろ? 妾が手つきになるのもそう遠くないと思うのじゃ」
「それはそれは」
何やら言っているフィーアに、それを聞いて頷いているオリヴィア。何を納得しているのか小一時間問い詰めたい。
「ところで、王女サマは?」
姿が見えないエンゼリカについて尋ねる。
「今更そんなよそよそしい呼び方ですか? エンゼリカなら、髪をセットしていますよ」
呼び方について軽く触れつつも、敢えて言っているのがわかっているようで笑いながら答えるオリヴィア。
どうやらあのツインドリルはセットに時間がかかるらしく、毎朝苦労しているのだとか。
そんな話をしていたからか、丁度エンゼリカが部屋から出てきた。
「あら、待たせてしまいましたかしら?」
「いや、俺たちも今起きたところだ。気にするほどじゃない」
俺たちの前では高慢なキャラでいるのをやめたようで、開口一番に俺たちに気を遣っていた。やはり本来は人を気にかけることができる人間なのだろう。表向きのキャラのせいで暴走してしまうところが玉に瑕だが、この状態でいる分には全く問題ないだろう。
というか、ずっと素でいればいいのに、と思う。
「そうですの。なら良かったですわ」
「皆揃ったし、食べるとするかね」
オルタの一言で、各々が朝食を食べ始める。今日の朝食はサンドイッチのような、白いパンの間に色々と具を挟んであるものだ。ブレードラビットの肉が使われていたり、トマトのような野菜が挟んであったりと、あっさりしつつも美味しい。
「この肉はブレードラビットだよな。淡泊だけどそれが旨いな」
「癖がなくて扱いやすいからね。いろんな料理に入れるよ」
オルタはがさつそうな言葉遣いとは裏腹に、かなり家事スキルが高い。一人で暮らす時間が長かったというのもあるだろうが、本人が基本的に几帳面だということも相まっているだろう。
故に、俺の口からこの言葉が出るのも当然といえた。
「料理だけじゃなくて家事全般がかなりできるし、オルタはいい嫁になりそうだよな」
「よっ……!? いや、そんな、あたしは……」
「何を狼狽えてるんだ?」
褒めただけなのに顔を真っ赤にしているオルタ。それを見てエンゼリカが何やら言う。
「ヤチヨさんは天然ですの?」
「主様は……。そうと決めれば男らしいのじゃがの」
それに対してフィーアがフォローなのかそうでないのかわからないことを言っていた。失礼な奴らだ。
「ヤチヨは素晴らしい旦那様」
となりでヴェルゼが嬉しいことを言ってくれていたが、それを見る俺以外の面々は半目になっていた。
「バカップル、というやつでしょうか」
「そうに違いありませんの」
「じゃな」
オリヴィアの言葉に乗っかる二人。ずいぶんな言われようだが、好き合って日が浅いのだし、この位はいいだろうに。
そして、オルタはと言えば――
「……嫁だなんて、あたしはこんなだし、もうすぐ行き遅れなんて言われる歳だし……」
――まだ赤い顔でぶつぶつと言いながら、サンドイッチを食んでいた。
朝食が終わってしばらくすると、オルタの家へ来客があった。こちらが迎えに行くつもりだったが、もしかしたらギルド辺りに家を聞いて、アイティルが自分で来たのかもしれない。
「どちら様だい?」
オルタが言いつつ玄関を開けると、そこにいたのは案の定アイティルと、予想外なことにルコタであった。
「今日からお世話になります。ルコタ様に案内してもらって、こちらから来てしまいました」
どうやらルコタがオルタの家を知っていたため、巡回ついでにアイティルを案内してくれたそうだ。やや時間が早い気がしなくもないが、さほど気にすることでもないだろう。
「早かったね。ルコタ神官も、ご苦労様」
「私はもののついでですので。アイティルをよろしくお願いします」
ルコタはそう言うと、さらにアイティルに向けて言葉をかける。
「オルタ君たちの言うことを良く聞くんだよ。あまり迷惑をかけないように」
「はい、ルコタ様。精一杯頑張ります」
その言葉に満足したのか、一度大きく頷くとルコタは礼をして去って行った。
「とりあえず中に入りな。朝は食べてきたかい?」
「はい。神殿で頂いてきました」
そんな話をしながら、アイティルを家に招き入れる。
これからは部屋や荷物をどうするかについてのことや、メンバーとしての立ち位置などを話す事になる。
すんなりと決まるといいな、などと思いつつ、今日はある意味休暇日なので羽を伸ばそうと思う八千代であった。
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