42話 高慢の裏に
深夜更新できずすみません。
お詫びと言ってはなんですが、過去最長の八千字です。
このところ何かと関わる事の多いラウリスに連れられて、俺たちはまたしても冒険者ギルドに来ることになっていた。
予想していた通り、王女と騎士のことで話があるとかなんとか。正直、あまりお近づきになりたくない奴らだ。
「今は執務室でお待ち頂いているんだけどね。くれぐれも、失礼の無いようにね」
執務室に入る前に、ラウリスはそんな忠告をしてきた。
「いや、失礼なのは向こうだろうよ。王女だかなんだか知らないが、急に人を斬っていいことにはならないだろ」
「うん? 君はオリヴィア君の剣を受けたのかな」
ラウリスには俺がヘキサだということは知られているが、不死であることについては話していなかった。これは失言だったかもしれない。
「あーいや、まあ、実際に斬られた訳じゃないんだけどさ」
「そうか。まあ、君はランクに見合わぬ実力を持っているし、不思議ではない……かな」
俺の話を信じているのかいないのか、ラウリスは何やら考える素振りを見せたが、すぐにこちらに向き直って言う。
「まあ、それは置いておくとしよう。まずは中に入ってくれ」
そう言って執務室の扉を開けるラウリス。中ではソファの真ん中に王女が、その傍らに騎士の女が立っていた。
ぞろぞろと俺たちが中に入り着席したのを確認すると、ラウリスが後ろ手に扉を閉めて話し始める。
「お待たせして申し訳ありません。依頼を受けて森へ狩りに行っていたようで」
「遅いですわよ! いつまで待たせるつもりでしたの!」
相変わらずピーピーと煩い王女だ。こいつの護衛で騎士がついているのだろうと推測するが、彼女の苦労が計り知れない。
「妾たちの行動は妾たちが決めるものじゃと思うのじゃが? 急に呼び出したのはそちらじゃろうに」
フィーアは元姫で立場が似ているからだろうか、怖じ気づかずに言葉を返していた。王女と言うからには偉い人なのだろうが、言動があまりにも稚拙なために、敬意を表するという気が起きないのもあるが。
「また口答えするつもりですの! 蝙蝠風情が!」
「王女様、その言葉は問題になります。お控え下さい」
王女の言葉に対して騎士の女が諫める。それに対して、フィーアが冷めた視線を王女に浴びせながら言葉を連ねる。
「ほう、蝙蝠風情、とな。妾を見て吸血鬼とわかる程度の力があるのは認めるのじゃが、嘆かわしいことじゃ。この大陸一と言える王国の姫が、あろう事か亜人差別主義者とはの」
ラウリスの時も蛮族などと罵られていたが、それはこの町、ひいては人族に対する襲撃から出た言葉だ。決して亜人を差別するようなものではなく、その行動によってのみ称されていた。
それに対して王女の放った蝙蝠という言葉。これは吸血鬼という種族に対する差別的な表現であり、亜人差別を良しとしない王国では問題となる発言であった。
「ふんっ、ヒトモドキ(・・・・・)の分際で、口だけは達者なようですわね」
「王女様っ!」
騎士が声を荒げて王女を諫める。当の王女は反省した素振りもなくすまし顔だ。
ヒトモドキという言い方は、吸血鬼だけで無く全ての亜人たちを差別するものだ。獣人族などの見た目にわかりやすい亜人だけでなく、エルフやドワーフなどの見た目は殆ど人と変わらないような種族をも総括して侮蔑している。
「落ち着いて下さい、エンゼリカ王女。それにフィーア君も。気持ちはわかるけど、ここは穏便に頼むよ」
見かねてか、ラウリスが止めに入る。ここに喧嘩しに来たわけでもないのだろうし、彼としてはさっさと本題に入りたいのだろう。
「出過ぎた真似をしてしまったの。すまぬのじゃ」
素直に引き下がるフィーア。内心では腸が煮えかえっているかもしれないが、それをおくびにも出さない辺り、彼女は弁えている。
王女はまだ何か続けて言いたげな様子だったが、騎士が必死に両者を取り持ったことで、王女の話す機会はなかった。
「で、俺たちが呼ばれた理由はなんだ? こんな喧嘩をさせるために呼んだわけじゃないんだろ」
全体が静まったところで、俺がラウリスに尋ねる。そうもしないと、話が進みそうにもなかった。
「ああ、そうだね。でもまずは、先にお互いを紹介するのがいいかな」
すでにかなりくたびれた表情で、ラウリスが促す。それに乗っかる形で、王女たちに向けて自己紹介することにした。
もはや慣れたと言っていい自己紹介を俺たちがそれぞれ終えると、次は王女たちの番だ。
「私を知らない者がいるというのも驚きですけれど、僻地だから仕方がないのかしら?」
口を開けば嫌みを言う王女。だがそれに反応すればまた面倒なので、黙って続きを聞く。
「ま、いいですわ。私はエンゼリカ・シュティヴァニツァ・フォン・セントリア。セントリア王の娘にして、超一流の魔術師ですわ」
噛みそうな名前だな、というのが第一印象。シュテイヴァニツァ、というのは王家の人間にのみ与えられるものなんだとか。フォンってのは貴族のミドルネームか何かだった気がするが、あまり詳しくは知らない。
それよりも自分で自分を超一流と評する辺り、人間性が疑わしいうえにその実力も不安だ。
そんな事を考えているのが表情に出ていたのか、王女は得意げにこちらに向かって言葉をかける。
「あら? 疑っているのかしら。よろしくてよ」
実力に相当自信があるのだろう。魔力を手の平に集め始める。
「私はテトラですのよ。その証拠を見せて差し上げますわ」
そういった次の瞬間には、四つの属性――水・風・土・光だ――の初級魔法が形成され、王女の両手の平の上で円を描くようにしてくるくると回っていた。
「どうですの? この大陸に五人いるかも怪しいテトラを前にして、声もでませんこと?」
テトラが珍しいのは当然にしても、ヘキサである俺からしたらそこまでの驚きはない。むしろ俺たちが驚いているのは、その魔法の形成速度と、同時にそれらを発動したことだ。
魔法は同じ属性のものを両手で一つずつ発動するくらいなら多少の練習でできるようになるのだが、別の属性を用いてそれをやるとなると、難度は加速度的に上昇する。
今見せられたのは初級魔法といえど、四属性を同時に無詠唱――魔法の種に名を与えることをしない――で発動し、かつ完璧にコントロールして見せたこのエンゼリカという王女は、本当に練度の高い魔術師であると言えた。
「ああ、凄いな。俺にはそこまでのコントロールはできない」
素直にその技術を褒めるとエンゼリカは顔を赤らめ、形成していた魔法を散らした。
「わ、わかればいいんですのよ」
そう言ってそっぽを向けば、よく手入れされているのであろう質のいい金髪の、両側で巻いている髪束が揺れる。いわゆるツインドリル――ツインテールを巻いたもの――というやつだろう。
ふんぞり返って胸の前で組まれた腕は立場に見合った尊大な態度だが、そちらには揺れるものが無かったことも追記しておくべきか。
「最後に私ですね。オリヴィア・フォン・アリスティナと申します。セントリア王直属の騎士団に所属しておりますが、今は王女様の護衛として付いております。お見知り置きを」
簡潔に自己紹介を終えた彼女はやはり騎士であったようだ。燃えるような赤いロングの髪に、ヴェルゼよりは薄い水色の瞳が凜々しさを際立たせている。
「オリヴィア君は相当な実力者でね。騎士団でもトップを争う力を持っているそうだよ」
「いえ、私などまだ未熟な者です」
ラウリスが補足のように付け足す。俺の首を刎ねたあの剣技を見ればそれも納得だ。王女とは違って謙虚さも持っているようで、そのギャップのせいか一度殺されているというのに俺はあまり悪い印象を持っていなかった。
「先ほどは王女様の命があったとはいえ、失礼いたしました。貴方ほどの実力を持った者を見抜けなかった自分を恥じております」
そして、オリヴィアが続けて俺に謝っていた。俺が実力であの剣を躱したわけでも、耐えたわけでもないのだが、何やら勘違いしているようだ。
「いや、まあ大事には至らなかったし、気にしてないから」
俺がそう言うと、一礼した後は沈黙していた。
というか、実行者が謝ってそれを命令した奴が謝らないというのもどうなんだとは思ったが、まあ王女の性格的に難しいのかも知れない。
「じゃあ、これで自己紹介は済んだね。ここからが本題なんだけど――」
一通りの紹介が済んだのを見計らって、ラウリスが話し始める
「エンゼリカ王女たちは、ノスティの視察に来ているそうなんだよ」
「視察?」
ならば王女などというお偉いさんが来なくても、それこそお抱え騎士団にでもやらせればいいと思うのだが。
「うん、理由はよくわからないけど、王の勅命でエンゼリカ王女たちが来ることになったみたいでね」
「はあ。で、その視察と俺たちに何の関係が?」
煮え切らない回答に生返事をしつつ、俺たちがどうして呼ばれたのかを率直に尋ねる。
「今回の視察は、オークキングが襲撃してきたことが中心らしくてね。今までこの町はそんな大物の魔物が襲ってくること何て無かったから、セントリア王は何か原因があるんじゃないかってことで、詳しく調べているみたいなんだ」
中心、という言い方からしてオークキングが襲来したことだけでなく、それが生屍化したことや伝染病についても含めてなのだろうと推察する。
「で、その中心に近かった俺たちから事情を聞こうと?」
「そうだね。撃退したのはオルタ――ナ君だけど、その後はソーマ君も動いてくれているからね」
オルタと言いかけて付け足したのは王女たちの目があるからだろう。彼女らがオルタに対して何かしら行動を起こすことは考えづらいが、万が一と言うこともある。
「それと、森の視察もするらしいんだけど、そうなるとオリヴィア君だけではエンゼリカ王女の護衛が不足することになってしまってね」
「はあ? そこの騎士サマの実力なら森くらいなら十分だと思うんだが。王女サマも実力はあるんだし、そこまで警戒する必要があるのか?」
「私のことはオリヴィアとお呼び下さい、ソーマ様」
何やらオリヴィアが会話に割って入る。自分は呼び捨てにしろと言う割に、俺のことは様付けだ。
「私と王女様の力ならば、対少数なら問題はないでしょう。ですが、森では魔物の群れに遭遇する可能性があるのです」
その際に、二人では手が回りきらない可能性があるのだという。
「それで、俺たちも護衛に付けと?」
「はい。どんな方法かはわかりませんが、私の剣を無傷で凌いだ貴方がリーダーのパーティならば、信用するには十分かと思いまして」
相当買いかぶられてしまっている。このままでは厄介事を押しつけられかねない。
どうしたものかと考えを巡らせていると、オリヴィアが付け足してくる。
「もちろん、ただ働きしろとは申しません。相応の報酬はお約束します」
それは当然だ。いくら何でも護衛させておいて無報酬なんてのは横暴が過ぎる。
「でもな……」
それでも俺が渋っていると、報酬だけでは足りないと思ったのか、オリヴィアがなにやら尋ねてくる。
「聞いたところ、ソーマ様は魔法剣士をお目指しになっているとか。今は魔法が中心になっているそうですが、剣の方はいかがなさるのですか?」
どこからそんな情報を、と思ってふとラウリスの方を向けば、凄い速度で目をそらすのが見えた。お前か。
「あー、まあしばらくは独学になるか。教えてくれるような人にアテもないからな」
「お言葉ですが、剣において最も重要となるのは基礎です。そこを独学にしてしまうと、最終的な伸び代に大きく関わってくることが予想されます」
その道専門の人が言うと信憑性が違う。かといって、俺にはどうすることもできない。
「そこで提案なのですが、不肖ながら私が基礎を教える代わりにソーマ様たちは王女様の護衛をして頂く、というのはいかがでしょうか」
これは願ってもない提案だ。その道のトップクラスの人間から剣を教えて貰えるというのは、剣を志す人間からすれば喉から手が出るどころの話ではない。
いくら金を積んでもトップクラスの人間から教えを請うことは難しいとされており、その教えを受けられるのならば命すら惜しくないという人間が多くいるのだ。
「まあ、それなら考えなくもないが、そんなことを王女サマに相談も無しに決めていいのか?」
そもそもこの護衛を俺たちに任せるという話に王女が加わっていないのがおかしな話だ。しかし、その疑問には王女が答えてくれた。
「このようなことに関しては、オリヴィアは専門家とも言える人材ですの。冷静に物事に対応して、最善の解決策を見つけるのが彼女ですわ。ですから、私はその分野に口出しはしませんの」
だそうだ。ずいぶんと信頼されているんだなというのがわかるが、王女をそこまで言わせるほどの実力が備わっているということでもあるだろう。
「それで、いかがでしょうか。ソーマ様」
「そうだな……」
俺はパーティのメンバーを見渡す。ヴェルゼはいつものように俺のしたいようにしろ、という表情だし、フィーアは嫌そうにしながらも俺の返答を待っている。オルタは明らかに近づきたくなさそうだ。
うむ、決まりだな。
「悪いが断る。パーティのメンバーがあまり乗り気じゃないんでな」
「そんな……」
オリヴィアがあからさまに落胆の表情を見せる。すこし心苦しいが、それよりも俺にとってはパーティの面々の方が大切だ。
急に来て高慢な態度を取る人間の護衛なんかに比べたら、ヴェルゼたちと会話でもしていた方がよほど建設的だ。
「話は以上か? なら、俺たちは帰るぞ」
これ以上は話す事もないだろうと、会話を切り上げて立ち上がる。ヴェルゼたちにも声をかけて、退出しようとする。
そこに、背後から声がかかった。
「お待ちになって!」
王女だ。ドレス調だがしっかりとした防具である、そのスカート部分を握りしめながら、思い詰めたような口調で言葉を続ける。
「私の態度に腹を立てたのなら、謝りますわ……。ですから、オリヴィアのお願いを聞いてあげてくださいまし」
「王女様……」
王女が頭を下げ、その態度にオリヴィアが瞳を潤ませている。結果的には自分の護衛をしてくれと頼んでいるわけだが、彼女としては自分の護衛をしてもらえないということより、オリヴィアの頼みを聞いてもらえないというところが嫌なようだ。
羨ましくなるほどに、オリヴィアは王女に信頼されているようだ。
そして、俺も気づいたことがある。
「王女……いや、エンゼリカ。今までの高慢な態度はフリだろ? 何であんな態度取ってたんだよ」
俺の言葉に、俺とヴェルゼ、そしてオリヴィア(・・・・・)以外が硬直する。
「な、そ、そんなことは――」
ない、と続けようとしたエンゼリカを、オリヴィアが止める。
「取り繕うのはやめましょう、エンゼリカ(・・・・・)。彼には、もう見透かされているようです」
今まで王女様と呼んでいたオリヴィアが、優しく諭すようにエンゼリカに語りかける。
そして、俺に向き直ると今度は俺に対して疑問を投げかけてくるのだった。
「どうして、そうお考えになったのです?」
「どうしてと言われてもな。まず、あの高慢な態度だけど、無理してるような感じがしたんだよな」
わざとらしさが残る、というのだろうか。でなければ生粋の王国民である王女が亜人差別的な発言をするはずがなかった。敢えて高慢な態度を取ろうとするあまりに、止めどころを失ってしまったというのが近いだろうか。
恐らく、王女が何か言おうとして言えなかったタイミング。あれは言い過ぎたことを謝ろうとしたのではないか、と思う。
出会い頭に首を刎ね飛ばされたのは……、気負いすぎて空回りした、と捉えられなくもない……と思う。
「無理、ですか」
「それ以外にも、高慢な態度の割には人を尊重してる」
オリヴィアに対する言動がそうだ。専門分野のことに口を出さないというのは、高慢な人間にはなかなかできないことだ。
自分をそっちのけで話が進めば、そういう奴は口を出したがるのが常というものだ。
「まあ、確信したのは俺を止めたことだな。自分の護衛をされないことより、オリヴィアの頼みを聞いてくれない事に対して自分から謝った。自分より他人を優先なんて、らしくない。 こういったことをまとめれば、エンゼリカがわざと高慢に振る舞ってるのはなんとなく推察がつくだろ」
柄にもなく安い推理ものの真似事をしてしまったと思うが、そこまで外れたことは言っていないと思う。
エンゼリカはと言えば、俺の言葉を聞いて顔を真っ赤にしてぷるぷると震えていた。
そこに、オリヴィアが話し始める。
「エンゼリカは、貴方の言うように普段は高慢な人間を装っています」
俺の推察は間違っていないと、オリヴィアは言う。
「エンゼリカは王家に生まれましたが、お兄様が三人いらっしゃるので、その継承権はかなり下がっています。王家と言えども人は人ですので、普通の貴族と変わらないような生活を送っておられます。貴族において女性は男性よりも下位に見られることが多いのですが、王族であるエンゼリカは一段とその重圧を受けておりまして……」
「で、舐められないように高慢にってか」
「簡潔に言ってしまえば、そうなります。今回の視察に彼女が駆り出されたのは、セントリア王にその高慢な態度を見咎められたためです」
「家族の前でもあんなだったのか……」
敵を欺くにはまず味方から、とは言うが、やり過ぎも良くないだろう。それが理由でこんなところまで来るハメになっているのだから。
「セントリア王は、エンゼリカを疎ましく思っている節があります。今回の視察も危険を承知のはずですが、目立たせないためという建前で、護衛は私だけです」
「自分の娘だろ? 疎ましいもんか?」
「エンゼリカは、側室の娘なのです。正妻である王妃様から生まれたのは、お兄様たち三人ですので……」
「政治的なしがらみもないわけではなさそうだな」
俺はそういったことに詳しくはないが、王族や貴族で側室の娘なんて言うと、色々と厄介なことがあるというイメージがある。物語の読み過ぎかもしれないが。
「はい、そういうことも相まって、今回危険な場所へ派遣されることとなったのです」
あわよくば消えて欲しい、とまでは行かないかも知れないが、それに近い物を感じる。
「で、俺たちにそんなことをペラペラと話してしまってよかったのか?」
「知られたからといってどうにかなるわけでもないですし、貴方にはその前に感づかれてしまいましたので」
ちなみに、私はエンゼリカと幼少期によく遊んでいたので彼女の本心を知っているのですよ、と付け足すオリヴィア。
エンゼリカは自分の事を洗いざらい知られてしまって、恥ずかしそうに俯いている。
「あー、なんというか」
このまま彼女たちを見捨てると、俺たちが悪いような気がしてきてしまう。
どうする、とオルタやフィーアの方を見れば、先ほどまでの嫌悪感はないようで、何やら考えている。
「妾としては、まあ護衛しても良いかとは思うがの。止まれなくなって悪口が口をついて出ることもあるじゃろうて」
亜人差別的な言葉に対するものだろう。フィーアは受け入れる気になったようだ。
「あたしとしては……、まあ、あの王と仲がよろしくないなら、いいかね」
オルタも懸念が少し薄れたので、そこまで忌避するような事でもないと考えたようだ。
「じゃあ、決まりだな」
俺の言葉に、フィーアやオルタ、それにオリヴィアやラウリスまでもが頷く。
それらを確認して、俺は自信を持って口にする。
「だが、断る」
「「「「「……ええっ!?」」」」」
王女本人を含めた驚きの声が、執務室一杯に広がるのだった。
ヴェルゼは八千代の隣で無表情。




