40話 王女と騎士
物語を投稿し始めて一ヶ月が経ちました。
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これからも頑張っていきたいと思います。
全員が食事を取り終えたので、予定していたように冒険者ギルドへ向かう。
「結局また外に出るなら、外食でよかったよな」
「まだそんなこと気にしてるのかい。そんなに行きたいなら、明日にでも行けばいいさ」
オルタは俺の言葉に呆れながらも、明日は外食にすることを提案してくる。
「そうだな。でも俺はこの町の食事処なんて知らないから、その辺はオルタに任せるわ」
「はいはい、わかったからさっさと行くよ」
こんな言い方はしているが、なんだかんだでオルタはいい店に連れて行ってくれるはずだ。この半年間で、オルタの面倒見の良さは身に染みている。どんな料理が出てくる店なのか今から楽しみだ。
そんなとりとめもない会話をしていると、すぐに冒険者ギルドに到着する。カウンターまで向かうと、いつもの受付のお姉さんが俺に気づいて声をかけてきた。
「お待ちしておりました。ラウリス様から、ソーマ様が見えましたら呼ぶようにと言われておりまして」
少々お待ち下さい。と言ってお姉さんは奥の部屋へ向かい、ラウリスを呼んできた。
「やあ、ソーマ君。それに君たちも」
まずは俺に挨拶してから、残りの面々とも言葉を交わすラウリス。相変わらずニコニコとしているが、腹で何を考えているのかわからない。
一応挨拶を返して、何の用件があったのか尋ねる。
「昨日振りか? ここのところよく顔を合わせるな。それで、俺に用があるって聞いたけど」
「そうそう、恩賞が思ったより早く用意できてね。緊急性の高い案件ではあったから、分析というか検証が迅速に行われてね」
どうやら、それを渡そうと思っていたらしい。数日かかると聞いていたからもう少し先だと思っていたのだが、これはありがたい。
「そういうわけで、受け取ってくれるかな」
そう言ってラウリスは袋から金貨五枚を取り出した。金額にして、五十万ドルグだ。
「ちょっと少ないけど、君たちのランクのこともあるからね。あまり多いと、余計な目をつけられかねなくて」
悪いねえ、と言いながら金貨を差し出してくる。本当かどうかは怪しいところだったが、俺としては大金だし、文句はない。
が、若干一名気にくわなかった奴がいるようだ。
「あの案件で金貨五枚ねぇ。ちょっとぼったくりすぎじゃないかい?」
オルタである。自分は金を持っているからいいとは言いつつも、俺が絡んでいると話は別らしい。こういうところで面倒見の良さが現れていると思う。
「まあまあ、落ち着いて。何も恩賞がこれだけとは言っていないさ」
詰め寄られて、ラウリスが慌てたように続ける。同期だったということもあってか、オルタとラウリスは距離感が近い。
それを見ているとなんだか胸の内に不快感が出てくるのだが、その正体はわからなかった。
そんなことを考えているうちにも、オルタとラウリスの会話は続く。
「へえ? じゃあ他に何をくれるっていうのさ」
「残念ながら物じゃないんだけどね。一応、そこそこの価値はあるというか、便利にはなると思うんだ」
「勿体ぶらずに教えなよ」
「そう焦らずに。今回の件で実力が評価されてね。ランクが上がることになったんだ」
「へえ。短期間でランクが上がるなら、まあ悪くはないかね。で、どのくらい上がるんだい。Cくらいにはなるんだろうね」
オルタがさらに詰め寄っている。ほぼ脅しに近いような気がするのだが……。近くに控えているお姉さんもオロオロしているので、やめてあげてほしい。
「本当はCにしてあげたかったんだけど、それだとあまりにもランクアップが早すぎてね。まだ登録して数日も経っていないだろう? 登録前に有名だったわけでもないから、ちょっと難しくてね
「じゃあDかい。言う割には、そこまででもないねえ」
落胆したようにオルタが言う。すると、ラウリスが小声で補足してくる。
「便宜上Dという扱いだけど、内情はC以上ってところでまとまってるんだ。だから、Dランクでの依頼を一つか二つもこなせば、すぐにCになれるはずだよ」
どうやら、実力はそこそこ認められているらしい。俺としては実感が湧かないのだが、生屍化したオークキングはそれだけ厄介な相手だったということだろう。
「まあ、そういうわけだからさ。Dからは狩猟系の依頼も入ってくるから、慣れるってのも踏まえて軽くやってみたらいいんじゃないかな」
「のう、そのランクアップというのは、妾たちもなのかの?」
そこで、今まで話を聞いていたフィーアが質問する。普段は適当なことを言っているように見えて、以外と物事を考えているのが彼女だ。
今回も、フィーアが聞いていなければ聞き逃していて、二度手間になったかもしれない。
「ああ、その辺の説明をしてなかったね。一応、パーティのメンバー全員が今回の件でDになるね。ただ、その後の扱いはソーマ君だけが評価されている形になるかな」
つまり、依頼をいくつかこなせばCになれるというのは俺だけということだろう。オークキングはほとんど俺が倒したような形だから、仕方ないのかも知れない。
「なるほどの。まあ妥当じゃな。パーティのリーダーがランクを満たしておれば、妾たちも一緒に行って良いのじゃろ?」
「そうだね。あまりにランクが離れているわけじゃなければ、パーティメンバーに限っては同行できるよ」
「なら、今のところ問題はないの。礼を言うのじゃ」
「いやいや、僕の説明不足だからね。他に何か聞くことはあるかな?」
そう言って、俺たちを見回す。特に聞きたいことは出なそうだった。
「なさそうだから、このまま依頼を受けられるか? せっかくだし、狩猟系を受けようと思う」
「ん、早速だね。じゃあ掲示板から選んできたら、ナリア君に渡してね。僕はこれでも忙しいから、執務室に戻るよ」
ナリアと言うのは受付のお姉さんのことらしい。他にも従業員はいるのだが、俺たちはいつもこの人にお世話になっている。
「わかった。じゃあ、ナリアさん。ちょっと待ってて貰えるか」
「はい。ごゆっくりどうぞ」
そう声をかけてから俺たちは掲示板前に移動して、依頼を見繕う。
Dランクからの依頼は、森に入っての狩猟が入ってくる。森までの草原に出てくるような魔物はかなり弱い部類に入るので、その肉の納品などは採取系に分類されてしまうのだが、森の中に入れば話は別になる。
森にはゴブリンやオークを初めとした、ある程度の知能を持った魔物が出没する。知能と言っても軍を率いるオークキングほどの知能ではなく、石を投げることで武器にしたり、数体の集団で行動したりといった程度だ。
それでも油断はできないため、森に入る時は十分に気をつけなければならないと教えられている。
「まずは腕試しってところで、ゴブリンの討伐でいいか」
ゴブリンはファンタジーではお馴染みの、序盤に出てくるような弱めの魔物だ。数体の集団で行動し、獲物などは巣に持ち帰ってからゴブリンの仲間同士で分け合うなど、弱いながらもその知能は高い方に分類される。
繁殖力が強く、成長も早いために放っておくと数が爆発的に増えて被害が増加するため、常に狩猟の依頼がでているのである。
森に入るのは初めてだし、回復役もパーティ入りは明日からのため、無理をしないようにその依頼を受ける。
カウンターに戻ると、ラウリスがまだ残っていた。
「あれ、どうした?」
「渡し忘れていた物があってね。これ」
そう言うとラウリスは小さめの袋を取り出して、俺に渡してくる。
「袋?」
「ただの袋じゃないよ? 魔法の袋さ。容量はさほど大きくはないけど、それでも大きめのバッグより遙かに物が入るはず。君の魔力量によってもさらに容量が大きくなるはずだから、かなりの量が入るはずだ」
なんとも便利な袋である。袋の入り口よりも大きな物を入れようとすると、勝手に入り口が大きくなるらしい。魔法というのはすごいな。
「そんないい物を貰っていいのか?」
「貴重な物だけど、作れる人はいるからね。大事に使ってくれ」
と言うので、ありがたく貰っておくことにした。後からオルタに聞いたら、これだけで百万ドルグはするらしい。やけに金額が安いと思ったよ、とオルタは笑っていた。
オルタの持っているずた袋も魔法の袋だそうで、あの大きさになるとかなりの容量を誇るらしい。金額は考えたくもない。
その後ラウリスは執務室へ戻っていった。俺たちはナリアさんに依頼内容を提示して、ゴブリンの討伐を受注した。
「そういや、剣ないんだった。今日は魔法で行くか」
「そうだね。明日はアイティルの関係でごたつきそうだから、明後日に剣が受け取れて丁度いいんじゃないかい?」
そんなことを話しつつ、冒険者ギルドを出ようと扉を開けようとした。
――のだが。
「全く、迎えも寄越さないとはどういう神経をしてますの。これだから僻地は――きゃっ」
タイミング悪く、ギルドに入ろうとしてきていた人と激しくぶつかってしまう。かなり勢いよく入ってこようとしていたらしく結構な衝撃があり、数歩よろけてしまう。
相手の方は女性だったらしく、尻餅をついていた。
「いてて……。大丈夫か?」
とりあえず起こしてやろうと思って、手を差し出す。すると、
「無礼者がっ! 私を誰だと思ってますの!?」
そう言いつつ、パシッといい音をさせて手を払いのけられてしまった。
「いや、ぶつかったのは悪かったが、そっちの不注意もあったろう」
「私に口答えしますの!? 万死に値しますわ!」
かなりヒステリックな女のようだ。口ぶりからすると、貴族だったりするのだろうか。だとすると面倒なことになったかもしれない。
「オリヴィア! この無礼者の首を刎ねなさい!」
なぜか激昂している女は、後ろに控えていた騎士風の女に対し、物騒な命令をしていた。
オリヴィアと呼ばれたその女は、言われた通り前に出てきて、剣の柄に手をかける。
「申し訳ありませんが、立場上こうするよりありません。せめて苦しまぬように致しますので」
無機質な声質だな、と思ったのも束の間、抜刀する瞬間を俺が感じ取る間もなくその剣は俺の首を捉え、振り抜かれ、そして鞘に収められていた。
まさか、本当にやるとは思っていなかった。
一瞬視界が暗転したかと思えば、再生したとき特有の感覚が体を襲ったのである。この女に首を刎ね飛ばされたのは間違いないだろう。
俺でなければ、大問題になっていたのではないだろうか。
「おいおい。いきなり物騒なことするな」
内心かなり驚いているのだが、取り繕って冷静なフリをする。不死が知られるのは何かと拙いと思ったのだ。
「……おや」
確かな手応えを感じていたのだろう、オリヴィアとか言う女が少しだけ眉根を寄せていた。
そこに、ヒステリック女が叫び声をあげる。
「何をしていますの! さっさとしなさいな!」
どうやらオリヴィアの剣筋を知覚できていない様子で、さっさとやれと騒いでいた。
「姫様、この者は実力者のようです。私の居合いで死んでいないのですから」
オリヴィアが何やら説明している。どうやら不死であることはバレていない様子で、ひとまず安心だ。
すると、俺の後ろから仲裁の声がかかった。
「はいはい、喧嘩はそこまでにして下さいね。長旅で苛々するのはわかりますが、もう少し節度を持って下さい。エンゼリカ王女」
やれやれといった様相で出てきたのはラウリスだ。引っ込んだり出てきたりと忙しいな。
というか、王女と言ったか? これは本格的に厄介事の臭いがしてきたな……。
俺の考えを余所に、ラウリスはオリヴィアと一緒に王女を宥めて、執務室へ案内していった。
「……ヤチヨ、大丈夫?」
「ヴェルゼがいなければ死んでたな。いや、死んで生き返れなかったと言うべきか」
ずっと隣にいたヴェルゼが心配してくれていた。彼女がいなければ今頃俺の頭は胴体と永遠にさよならしていたことだろう。
「あのオリヴィアとか言う者。かなりの手練れじゃったのう。剣の扱いが達人の域じゃった。妾ともあろう者が反応もできず、情けないのじゃ」
一連の動作が視えていたのだろうフィーアは悔しそうにしていた。しかし、急なことだったしあれに反応できる奴はそうそういないと思う。
「まあ、一応誰も被害を受けてないからさ。とりあえずここにいるとまた面倒なことになりそうだから、とりあえず森行くか」
そう言ってそそくさとギルドを後にする。きっとしばらくしてからまたお呼びがかかるのだろう。今のうちに依頼をこなしてきてしまおうという作戦だ。
正直、かなり焦った。急に王女なんてのが出てくるとは思わなかったし、首を刎ねられるとも思っていなかったからな。どう考えてもあいつらは普通じゃない。
だが、ここであまり騒ぐとまたヴェルゼたちを心配させてしまうので、取り繕うことにしたのだった。
オルタは苦々しそうな顔をしていて何やら考えているようだったが、俺が声をかけるとすぐに近寄ってきて、いつも通りの状態に戻っていた。
先行きが思いやられるな、と心の中で舌打ちしつつ、俺たちは森へ向かうのだった。
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活動報告などもちまちま書いておりますので、興味があれば併せてどうぞ。
尤も、大したことは書いておりませんが。




