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37話 ポンコツ女神

6/3 誤字修正


相変わらずの説明回。

もはや説明がこの物語の根幹のような気さえしてきます。

 ペルセポネ像の前で、祈りを捧げる。隣に死神様がいるのでこの行為に意味があるのかは疑問だが、今のヴェルゼは神様という扱いからは外れているらしいので、意味があるということにしておく。


 オルタがしていたように両膝をつき、両手を組んで目を瞑る。何かしらの願いがあるというわけでもないので、頭を空っぽにして瞑想することにした。


 瞑想を始めてすぐに、体が軽くなるような感触を受けた。五感が曖昧で、膝立ちしていたはずだが自分が立っているのか座っているのかもわからなくなっている。


 おかしいと思って目を開ければ、そこには一面が真っ白な世界が広がっていた。

 一面が真っ白というのは比喩でも何でもなく、地面も天井も真っ白で、奥行きも何も感じないほどの白さだ。普通ならば慌てるところかもしれないが、俺はなぜか女神によって創られた空間だと認識していて、全く慌てるようなことはなかった。


 時間の感覚も曖昧なのでどのくらいの時間が経ったかはわからないが、しばらくその状態で待っていると、後ろから人の気配が近づいてくるのがわかった。


「やっと直接お話しすることができますね。相馬八千代さん」


 声を聞いただけで体が清められそうな声質で、それは俺に話しかけてくる。

 振り返れば、金髪金目の絶世の美女――いや、そんな言葉では言い表せないくらいの美しさの女が、素肌にヴェールのようなものを纏った姿で、微笑みを湛えつつ立っていた。


「違和感のない発音で名前を呼ばれるのは久々だな。あんたが女神か」


「ええ、指輪に付与していた私の声は届いていたようですね。長らく逢いに来て下さらないので、焦れてしまいましたよ?」


 口元に指を当て、拗ねたような表情を作ってみせる女神。美女がこれをやるとなかなかの破壊力があると思う。

 会いに、のニュアンスにやや含むものを感じたが、面倒な予感がしたので勘違いだったことにして返答する。


「ああ、いろいろあって神殿ってやつの存在を忘れてた」


「悪びれもせず……ですか。まあ、いいのですけど」


 女神はやや残念そうな素振りを見せるが、本気ではないのが見て取れる。意外と茶目っ気のある神様なのかもしれない。


「ところで、ずいぶんと大変な人々をお連れになっているのですね」


 かと思えば。急に真面目な話をし始める女神。恐ろしくマイペースだ。

 連れということは、多分ヴェルゼかフィーアのことだろう。前者のことを指しているという線が濃厚か。


「それは、ヴェルゼのことか」


「それ以外にありますか?」


 やはりそうだったようだ。ニコニコとしているので察しにくいのだが、怒っているのだろうか。


「あ、いえいえ、怒ってなんかいないですよ? ただ、なかなかとんでもないものをお連れにお選びになったのだな、と思っただけです」


「ん? 言葉に出ていたか?」


「いえ、この空間では貴方の心の中まで見えてしまうのですよ。初めからお見通しというわけですね」


「悪趣味だな」


「そんなつれないこと言わないで下さい。私のこと美人だって褒めてくれてたじゃないですか」


 やはり悪趣味である。となると、この場では隠し事やらはできないと考えるのが妥当か。

 まぁ、隠すことがあるかどうかは別として。


「まあまあ、私は貴方の敵ではないですから、そんな目の敵にしないで下さいよ」


「心を読まれると知っていて、友好的になれる奴も少ないと思うけどな」


「それはまあ、置いておくとして。えっと、何の話でしたっけ?」


「ヴェルゼの話だろ」


 わかっていてやっているのだろうところがまたイラっとさせるな。指輪の時はこんな奴じゃなかったような気がするけど、電話だとキャラが変わるタイプなのだろうか。


 そして、この想像も読まれているのだろうが、女神は気にせず続けるようだ。


「そうでしたそうでした。そのお連れ様ですけど、何者かはわかっているのですよね?」


「死神だろ? それが出てくるように召喚したんだし」


 オルタがヴェルゼを召喚したときのことを思い出しつつ答える。


「そうです。神様なのですよ。まぁ、召喚された時点で神とは少し違う位置づけではありますが、元は神様です」


「それが何か問題か?」


「いえ、特にそれ自体は問題ではないのですよ。人と一緒に行動するには些か高次な存在かもしれませんけどね。でも、大きな問題ではないです。世界の理に干渉できるほどの力はないですからね」


 俺を死ななくしている時点で世界の理に干渉しているような気もするのだが、そうではないらしい。


「彼女と私とでは、大きな違いがあるのですよ」


「違い? あんたも神様なんだろ?」


「はい。彼女も私も、神様というのは同じですね。しかし、私は創造神。彼女は私の作った世界における、作り物の神なわけです」


 何やらスケールの大きい話だが、簡単に言えば目の前の女神が今俺のいる世界を創って、そこに様々な神を配置したということらしい。

 物事の理がそれぞれの神によって為っている、と女神は説明していたが、雰囲気しか伝わってこない。


「例えば、ヴェルゼさんは死を司る神ですね。それ以外にも、太陽の神や夜の神、大地の神などと、様々な役割を持たせた神を配置することでこの世界は形成されています」


 俺の疑問を読み取ってか、詳しく説明してくれる。


「あー、とりあえずいろんな役割の神がいるくらいの認識でいいか?」


「あまり細かく言っても仕方ありませんからね。そのくらいでいいかと思います」


 俺が面倒に思っているのを悟ってか、適当でいいと言う女神。


「それで、この世界の成り立ちみたいなのはわかったけど、それがどうしたんだ?」


「はい。ここからが本題になるのですが、貴方は世界の破滅を食い止めるなんていう大役を任されましたよね」


「何で知っているのかはまあいいとして、そうだな」


 どうせ空から見てましたとか言うんだろうしな。この際気にしない。


「あら、先回りされちゃいました。ええと、それで世界の破滅についてのことなのですが」


 いちいち人の心を読み取って反応するのをやめて欲しい。話がなかなか進まないだろ。


「すみません。真面目に説明しますから。世界の破滅はですね、非常に申し上げにくいのですが、私がこの世界を創ったときに残ってしまったバグのようなものなんです」


「バグ?」


「はい。神を配置して世界を成り立たせたは良いものの、完全に全ての事象を神と紐付けることができなかったのです」


「いろいろな事柄に対して神の数が足りてないってことか」


「そういうことになります。その数も一つや二つではなく、新たに生み出される概念などもあるために、年々齟齬が増え続けてしまうわけです」


「新たな概念を司る神でも創ればいいんじゃないか?」


「あ、なるほど。そんな手があったんですね。貴方は私よりも創造神に向いているかもしれませんね」


「いや、感心されても困るんだがな」


 というか、素人の俺が気づくようなことに気づかないってのも、相当なポンコツなのではないだろうか。


「失礼しちゃいますね。これでもそこそこ優秀だって創造神グループの中では――」


「そんなこと聞いてないって。それより話を続けろ」


 創造神グループなんてのがあるのにも驚きだが、そんなことよりも話の続きをしてほしい。


「ああ、すみません。どうも久々にお話をするもので、舞い上がってしまって」


「そうかよ。一通り話が終わったら付き合ってもいいから、とりあえずは大切なことを話せ」


「はい……。それで、齟齬は増え続けることによって世界の存在そのものを危うくさせてしまう可能性があるのです」


 世界を構成するためのリソースを齟齬に持って行かれるんです、と女神は言う。


「あー、そのリソースとやらが何かはわからんが、齟齬が貯まって世界が崩壊すると?」


「そういうことになります。完成した世界に手を入れるわけにも行かず、こうして滅びと再生を眺めることしかできなかったわけです」


「で、その創造神様にもできなかったことを俺がやろうとしている、と」


「そういうわけですね」


 どう考えても無謀としか言いようがないだろう。創った神にできないことを、人一人がどうにかできるとは思えない。


「それが、そうでもなくてですね」


「そうなのか?」


「私は創造神ですが、創り終えた世界に対して、新たに直接的な干渉ができないのです。主にリソースの不足が原因なのですが……」


 どうやら、防ぐ手立て自体はあるものの、女神自身にはできないらしい。


「そこで、それをなんとかして下さる方を見つけるべく、転生者に相応しい魂を探していたというわけです」


「それが俺、と」


「はい。尤も、世界の破滅については神殿に着いた際に詳しくお話しして、受け入れて頂くつもりだったのですが。それよりも早く世界の破滅を食い止めるという役目を負うなんて、もはや運命ですね」


「オルタは俺に出会わなければ自力でなんとかしようとしてたみたいだけど、それじゃ駄目だったのか?」


 転生者じゃなければいけないということもないのではないか? と質問する。


「それがですね、破滅を防ぐ方法に問題がありまして、転生者じゃなければどうにもならないのです」


「その方法ってのは?」


「特殊な守護方陣ですね。世界の各地に設置することで、破滅を食い止めてくれます」


「それが転生者じゃないと設置できないのか」


「そういうわけです。全属性の魔法が扱えないと、方陣を展開できないのですよ」


 この世界でヘキサが生まれる可能性はゼロらしく、それ故に加護を用いてヘキサの人間を作り出して送らなければならなかったそうだ。


 と、そこで疑問が浮かぶ。


「あれ? 転生させるって世界への干渉じゃないのか?」


「干渉と言えば干渉なのですが、その辺にも色々と制約がありまして……」


 偉い人の都合、というやつらしい。それに、転生にはかなりのリソースが必要だとかで次に転生させるとしたら世界をもう一度創り直す方が早いくらいらしく、今回俺を転生させたのはかなり無理をしての行動なのだそうだ。


「よくわからんが、そういうものだってことにしておく。詳しく話されてもわからなそうだからな」


「そうしていただけると助かります。そして、新たな問題なのですが」


 まだ何かあるらしい。大変だな。……他人事じゃないか。


「貴方が死神と契約したことで、光魔法が安定しなくなっていますよね。それが問題なのです」


「守護方陣に関わってくるってことか?」


「はい。全属性の魔法を高水準で扱えないといけないのです……。本来ならば問題ないはずでしたが、こうなるとは予想していなかったもので……。」


 ヴェルゼとの契約はイレギュラーだったようだ。だとすると、やるはずだった俺が機能しないということになるのだが、どうするのだろうか。


「ええと、急遽リソースを割きました。それによって世界の破滅までの時間が早まってしまいましたが、背に腹は代えられませんので……」


「具体的には?」


「はい。神殿に見習い神官の少女がいましたよね。彼女は私によって創られたといっていい存在です。化身と言っても過言じゃないかもしれませんね。リソースの不足から貴方の光魔法の補助程度のことしかできないレベルですが、それでも機能してくれるはずです」


「また世界への干渉じゃねえか。干渉できない設定はどこに行った」


「これも緊急ですので、大幅にリソースを減らしています……。ただでさえ齟齬によってリソース不足なので、本当にできることが限られているのです」


 ひどく落ち込んだ表情で女神が言う。


「で、その少女と一緒に行動して、守護方陣を各地に展開してこいと?」


「簡単に言えば、そういうわけですね。少女は一応きちんと人間として育ってきたということになっていますので、そこまで心配はいらないかと思います。能力的には、あまり期待はしない方向で……」


 光魔法はそこそこ使えるはずで、伸び代も一応あるので。と女神は説明していた。


「やるしかないんだから、なんとかしてみるけどな」


「ありがとうございます。精一杯のサポートはさせて頂きますので」


 神殿や協会で祈れば、この場所で会うことができるらしい。あまり来たくはないが、アドバイスが必要な時もあるだろう。


「眺めているだけなのも暇なんですよ? たまには来て下さいね」


 心を読まれているので、女神がまた拗ねている。


「気が向いたらな」


「約束ですからね」


 相当に暇みたいだ。世界は大変なのに、管理する神は暇とは、矛盾しているように感じる。


「それで、設置場所などの詳しいお話なのですが――」



 女神の話は重要事項だけでもうしばらくかかった。


 そして、それが終わった後には愚痴やら世間話やらで、俺はさらに長時間拘束されるのだった。

ポンコツ美人萌え。

適当設定なので甘いところもあるかと思います。

致命的なミスがない限りは、このユルい設定で行こうと思います。

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