26話 アンバランス
7/4 飛龍→飛竜に訂正
本当に話が進みませんね。
もうしばしの我慢……のはず(汗)
ラウリスと吸血鬼……フィーアとの確執が解消したところで、冒険者についての詳しい説明を受けることとなった。
もとよりここには説明を受けるために来ていたわけであって、なぜラウリスとフィーアの対談になってしまったのかは謎である。……全く謎ではないが。
まぁそんなことは置いておくとしてだ。流れでラウリスが説明してくれるそうだ。暇ではないと言っていた気がするのだが、いいのだろうか。
「ソーマ君の魔法耐性も気になるところだけど、先ずは冒険者についての説明をするよ。冒険者にランクがあることは知っているかな」
一応軽くオルタから聞いたことがあるため、なんとなくは知っている。
「大体は知っているが、念のため説明してくれ」
「わかった。冒険者にはFからSSまでのランクが設けられている。これはその冒険者に合った依頼を提供するために存在している制度だ」
「身の程知らずの依頼を受けて死人が出ないようにするためか?」
「その意味合いが強いね。あとは、依頼の遂行率を高めるためとか、逆に実力者が簡単な依頼ばかり受けて、初・中級者の依頼を奪ってしまわないようにするという意味もある」
簡単な依頼は報酬が安いから、実力のある人は普通そんな依頼受けないけどね。と補足している。確かに、実力に見合った依頼を受けるのが依頼者も冒険者も美味しいと思うのだが……。
「ある程度のランクになると、そのランクに胡座をかいて他の冒険者をランクアップさせないようにしようとするような輩もいるんだよ」
見つかれば処罰の対象だけど、それを見つけるのも一苦労でね。と溜め息をついている。
「まぁ、それについてはなんとなくわかった。それぞれのランクについても教えてくれ」
俺がそう言うと、苦笑いしつつ説明に戻る。
「ああ、つい愚痴がね。Fランクはまぁ言わなくてもわかるかな。完全に初心者の冒険者だね。その状態でいくらか依頼をこなせば、すぐにEランクになれる。ソーマ君は魔法を結構な精度で打てるから、実力が多少あると見なされてここからのスタートだね。……本当はCくらいからでも通用する気はしているんだけど、周りの目もあるからね」
「まぁ、無理するよりは堅実に行けばいいだろ」
「そうだね。無理をして死なれてもギルドとしては損失になるから、初心者には臆病なくらい慎重になるよう教えているよ」
なんでも、初心者講習なるものがあるらしい。採取系依頼などで要求される薬草などの基礎的な知識から戦闘訓練まで、初心者に必要な技術を無料で教えているらしい。
これをやるようになってから、初心者の死亡率は大幅に下がっているのだとか。
「Dランクからは狩猟系の依頼も混じってくる。逆に言えば、Eまでは採取がメインということだね。下積みをして装備を調えたりしてからじゃないと、魔物に対抗するには厳しいものがあるからね」
つまり、俺もしばらくは採取がメインの依頼になるということだろう。他にも配達や清掃など、雑用に近い依頼がこのランク帯のメインになるそうだ。
「C以上は?」
「Cは中型の魔物の討伐が入ってくるかな。Dと違うのはそのくらいだね。Cランクまでは比較的簡単に上がると思っていいよ。どんな人でも、コツコツやっていけばいずれCランクまではいける」
この言い方からすると、Bからはそう易々となれるものじゃないということだろう。
「ここまで言えば気づいているだろうけど、Bからは格が違うと思っていい。大型魔物の討伐依頼が出されるのもBからだよ」
大型魔物――その多くは竜種らしい。神話なんかに出てくるドラゴンて奴がこの世界にもいるみたいだ。飛竜種なんかは"空の覇者"なんて呼ばれて恐れられているらしい。できれば出会いたくない相手だな。
「Bランクからは、依頼を受けているだけじゃなれないんだ。それに見合った名声や、活躍が認められないとね。ちなみに、そこにいるオルタ君はAランクだよ。戦争の時の功績が認められてね」
「ああ、それについてなんだが――」
ラウリスの言葉に対して、オルタが反応する。
「私の冒険者証を書き換えて欲しいんだ。私が王国に追われていたのは知ってるだろう?」
「……なるほど、見た目も変わったから、この際死んだことにして身分を偽ろうってことかな」
流石とでも言うべきか、ラウリスは頭が回るようだ。オルタの話を少し聞いただけでどうしたいのかを把握している。
「話が早くて助かるよ。それで、お願いできるかい?」
「……本当は良くないんだけど、オルタ君の頼みじゃあね。何とかしてみるよ」
フィーアと対峙していたときの殺気は何処へやら、眉をハの字にして答えている。
「恩に着るよ。ランクはヤチヨと同じでいい。ついでに、フィーアにも冒険者証を交付できるかい?」
「フィーア君については問題ないだろう。それより、ランクを下げてしまっていいのかい?いろいろと不便じゃないかな」
「名も知れてない女がAランクだったら不自然だろうに。それに、初心を思い出すのもいいかと思ってね」
「それもそうか。じゃあ、その方向で検討してみるよ。フィーア君の実力は測った方がいいかな?」
フィーアの方を見つつラウリスが言う。対するフィーアは人ごとのように話を聞き流し、俺の左腕にしがみついている。
おい。と声をかけてやれば、キョトンとした顔を一瞬こちらに向け、それからラウリスに向き直って言う。
「妾は何でもよいのじゃ。どうせ主様と一緒に行動するのじゃからの」
「そうか。まぁ吸血鬼なわけだし多少の力は持っているよね。ソーマ君と同じランクにしておくよ」
「うむ、助かるのじゃ」
同じランクで動いていた方が何かと楽だろうという配慮が窺える。俺の中でラウリスの株が上昇中だ。
「ランクの話だったね。といっても、SやSSはそう簡単にはなれない。というよりなれるような人がほとんどいないからね。まぁ大国を救うとか、そういうことが無ければまずお目にかからないと思うよ」
俺は世界を救おうとしているのだし、目指すはSSだな。
……などという気概があるはずもなく、コツコツ地道にやっていこうと思う。あまり名声やら地位やらに興味がないんだ。
「とまあ、ランクについてはこんなところかな。正直、わからないことがあれば都度受付で聞いてくれれば大体のことは教えてくれるからね。ランクごとに受けられる依頼が変わるってことだけ覚えておいてくれればいいよ」
そういってラウリスは話を終える。そして、オルタとフィーアの冒険者証を発行してくるから、と言って部屋を出て行った。
ちなみにヴェルゼの冒険者証は俺と一緒に発行しており、同じくEランクだ。
「やっと冒険に出られるな。こちらに飛ばされてきてから半年間。長かったな」
「あたしも死ぬと思ってたからね。新しいスタートも悪くないね」
俺の言葉に対して、オルタが合わせてくる。どことなく浮ついた気分になってくるものだ。
「一応今いるメンバーがパーティになるんだよな。前衛とか後衛とか、どうするんだ?」
このメンバーで行動するのが基本になるだろう。場合によって分かれたり、数が増えたりするかもしれないが、今のところはこのメンツだ。
となれば、それぞれの役割も決めておかなければならないだろう。
「そうだねぇ、あたしとヤチヨは後衛だろう? ヴェルゼも後衛になるのかね」
話を振られたヴェルゼ。フィーアと同じように俺の右腕を取りつつ、こくりと首肯する。
「だよねえ。で、フィーアは?」
「妾は基本的に身体能力を生かした前衛兼感知力による斥候かのう」
「あたしも死霊術で斥候みたいなことはできなくもないけど、大掛かりになるからね。大局以外は任せてもいいかね?」
「うむ、問題ないのじゃ」
というわけで、フィーアが斥候兼前衛。残りが後衛というアンバランスなパーティとなった。
「魔法に気を取られていたけど、ヤチヨが前衛を覚えるってのもありだと思うね。不死ってのも大きい」
実際、前衛は死にやすい。敵に近い位置で戦うのだから当然だろう。まぁ、後衛も防御に秀でていない分、死ぬ時はあっけなく死んでしまうのだが。
「前衛か……。武器を持ってどのくらい戦えるかわからないけど、一考の余地はありそうだな」
「やるとすると、魔法を併用した魔法剣士ってところかね。世間的には器用貧乏に思われがちだけど、ヤチヨならいい線行くと思うんだよね」
俺の魔力量的に、魔法を使わないのも勿体ないそうだ。なのでやるとするなら武器を持って魔法も使うスタイルになっていくだろう、ということである。
「まぁ、まだしばらくは戦闘はないはずだし、適性も見ながらゆっくり進めていけばいいだろ」
フラグを立てているような気がしなくもないが、焦って決めることもないだろう。運動神経は悪い方ではなかったし、剣などに興味もあるので、一度は触ってみたいとは思うが。
「そうさね。装備の調達もまだだし、調整しつつってところだね」
オルタがそう締めると、ラウリスが戻ってきた。どうやら冒険者証が発行できたらしい。
「お待たせ。冒険者証は無事発行できたよ。そして、オルタ君は今を持って正式にオルタナ君になった」
「おお、何とかなるもんだね。助かるよ」
「うむ、ありがとうなのじゃ」
できあがった冒険者証を受け取る二人。どことなく嬉しそうだ。
「じゃ、ここでの用事は済んだな。次は装備でも整えに行くか?」
「ヤチヨが金を出すわけじゃないだろうに……」
特に考えもしていなかったが、言われてみればその通りだ。先に依頼を受けて自分の金を稼ぐべきだろうか。
そう考えていると、オルタが続ける。
「まぁ、金は余ってる位だし、初期の装備くらいなら揃えてやるよ。剣も握らせてみたいしね」
「おお、ありがたい。気になってたんだ」
「若い男はみんなそんなもんさね。やれやれだよ」
と、妙に婆くさいことを言うオルタ。指摘したら怒られてしまった。
とまぁ、そんなこんなで冒険者としての説明とフィーア達の冒険者証の発行も終わり、いよいよ初の依頼を受ける時が近づいているのであった。




