Whispers in the shadows
光と影の境界を越えた先、二人の前には影がゆらめく森が広がっていた。
木々の影は深く、月明かりが届く場所はわずか。
風の音が、まるで囁き声のように耳に届く。
「……ここ、少し怖いね」
リオが小さく呟く。
ワンダーランド・ボーイは少し笑い、肩に手を添えた。
「俺がいるだろ? 手を離すなよ」
その言葉だけで、リオの胸はふわっと温かくなる。
手を握り返すと、二人の指が絡まり、鼓動が静かに同期する。
森の奥から、ささやき声が聞こえてきた。
それは風でも、木々でもない。
まるで、誰かが名前を呼んでいるかのような感覚。
「……リオ、聞こえた?」
「うん……でも、気にしないで。俺たちの道は、俺たちで選ぶんだ」
ワンダーランド・ボーイの声は強く、けれど優しい。
その強さが、リオの心をそっと包む。
影の森を進むたび、足元の光が揺れ、
名前を呼ぶ力が微かに反応しているのがわかる。
呼ばれること、呼ぶこと――
その感覚が、二人の絆をさらに確かにしていく。
「影が怖くても、リオと一緒なら大丈夫」
「……うん。俺も、ワンダーランド・ボーイがいれば」
月明かりの隙間に、二人の影が重なる。
揺れる森の中で、手を握り合う温もりだけが確かに存在している。
そして森の奥に、一つの小さな扉が浮かび上がった。
光でも影でもない、不思議な色を帯びた扉――
それは二人への試練であり、名前の力を試す扉だった。
「……行く?」
リオがそっと差し出す手に、ワンダーランド・ボーイは力強く握り返す。
「もちろん。君となら、怖くない」
二人はそっと扉に手を触れ、
名前を呼ぶ力と互いの心を確かめながら、次の一歩を踏み出した――
影の中でも、二人の存在は互いを呼び合い、迷わず導く光になっていた。




