第六声 魔導士始めよう
目的は商業ギルド、でも五十キロ近くある。
クリスは呑気に歩いていた。
慌てさせても足にマメでも出来たら大変だからこれで良いのです。
ゆっくりで良い、2日~3日くらいで着ければ良しとしよう。
歩いているとクリスが「ナビ君」と呼びかけて来た。
「ねぇ、ナビ君、これ見て!!」
クリスが赤い石を見せて来た。
「宝石だと思うんだけど?さっき解体していたら出て来たの。
ねえねえ、これを鑑定してくれない、凄い宝石だったら肉と一緒に売ろうかな」
解体中に出て来るもの・・・それは鑑定するまでも無いものだった。
「鑑定するまでもありません。
魔石です。
さっきのボアスは魔獣化していたのです」
「ま・せ・き?」
「魔石は魔力の塊です。
魔力は色々な生物が元々持っている力です。
野獣たちが色々な動物を食べている内にその魔力が蓄積し臓器の中に結晶化したものが魔石になります。
でもその石の大きさはそんな簡単なものではありません。
通常は数十年掛かって「ほんの小さな塊」になるのでこの大きさのものは珍しいですね。
多分、既に魔獣化した小動物を食べ蓄積した小さな魔石を数えくれないくらい食べて大きくしたものでしょう
この大きさであれば水の柱や火の柱を出すことも出来たでしょう」
そうクリスは運が良い魔法を使う前に倒したのだ。
クリスが魔石をじっくり見ていた。
「これ使うと私も魔法使えるの?」
「今のクリス様は魔法レベルが全くありません。
まずは『魔導師』という役割にならないと全く役には立ちませんよ」
「そうなんだ、やっぱり町で売ろう」
「それより剣に仕込んだら如何でしょうか?・・・あっ!!」
しまった、聞かれもしないのに先に説明してしまった。
少なくとも錆びないという機能を持つ剣。
つまりこの剣は、最初の鑑定通り通常の剣ではない。
「この剣は魔石を使える剣なの?」
「そう、そうです。クリス様のレベルもさっき上がっているので鑑定結果が『魔道剣』となっています」
いや、これは嘘です・・・
今のクリスのレベルではだんだん能力が向上する剣というレベルしか鑑定できない。
参ったな・・・早速減点だよ。
ちなみに、この情報はナビ教育の中で聞いたアイテム学習から知った。。
例えば徐々にレベルの上がる戦闘力を持つという意味は「この剣は魔導剣」であることを表している。
今見た魔石の大きさであれば、この剣が魔導剣として効果を発揮するには十分な大きさだ。
ただしレベル5であるのでリミッタが働いて全力は出せないだろうけどね。
「そうなんだ、なんか嬉しい」
そう言うと魔石を剣に近づける。
ちなみに剣は短剣になったままだった。
魔石は柄にある四角くなっているところの飾りのように吸い付いた。
というか剣と一体化した。
剣のレベルは見かけ上は上がってはいなかったが並行レベルが上がった。
並行レベルが上がっているということでレベル10になってから驚くほどレベルが上がるだろう。
「何が出来るの?」
「クリス様に『魔導士』の役割が与えられレベル1となりました。
また剣はレベルが上がっていませんが、補足レベルが上がりました。
この結果剣は魔導力を発揮することが出来ます」
少し首を傾けながら考えていたクリスは何か機嫌が悪くなっていた。
「意味が分からない、具体的に教えて」
「クリス様の『魔導士』レベル1は何時ものように何もできません。
今後魔導士となることが出来るようになったということです。
そして剣の持った力の一つはクリス様の支援魔導力を持つことです。
ただしクリス様の魔導士レベルに準じた力を発揮しますので今は特になにも出来ません。
そしてもう一つは剣自体が持つ力です。
これは剣のレベルが上がることで増えていきます」
「だから具体的に言ってくれないと分からない」
「今の段階では、剣は能力を二つ獲得しています。
『装美』という能力と『防御』という能力です」
「なに、なにその能力!!」
「『装美』という機能は鞘や柄を飾る機能。
剣の大きさに応じて剣自体を飾ります。
そして『防御』と言う機能は剣を抜いている状態の鞘を大きな盾にできる機能です。
戦う時に役に立つでしょう」
「やった~鞘が手に入るのね・・・
だって抜き身で持っているなんて変だものね」
クリスは短剣を持つと「装美」といきなり叫んだ。
剣はきらびやかな鞘を持ち柄も飾り立てられた。
それは金持ち貴族が好きそうなデザインだった。
「うわ~っ、趣味悪っ・・・」
何かが気に入らなかったのかクリスは再度叫んだ。
「もっと質素で趣味の良いものに!!『装美』」
今度は質素ではあるが奇麗な薄い青紫色の鞘を持った短剣になった。
「そうね、この程度ね、どうナビ君」
「質素ですが、この塗は高価な『皇帝紫の樹塗』ですね。
樹塗職人が何人も掛かって、ほぼ2年掛けて仕上げた感じでしょうか?
多分鞘だけで大きなお屋敷が買えますよ」
「えっ?そうなの」
クリスは鞘をまじまじ見ていた。
少しして短剣を抜くクリス。
鞘を左手で持つと「防御」と叫んだ。
鞘は左手に合わせて盾になった。
「軽い!!、これなら大丈夫かな?」
その時クリスのレベルが上がった。
「クリス様、クリス様の剣士レベルが3に上がりました」
「えっ、私のレベルも上がったの?」
「両刀使いと言う能力です。
右でも左でも剣を使えるようになりました。
これで盾も自由に使えるのではないでしょうか?」
「剣道もやったことも無いのに、なんか剣のレベルが上がるなんて不思議ね」




