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転生者ゲーム  作者: 魔茶来
3/8

第三声 その剣ではありません

 泣き虫少女が何度も問いかけるので小一時間ほど答え続けた。


 時間が過ぎていくと少女も少し落ち着いたのか涙は止まっていた。


「お腹すいた・・・、ねえナビ君食べ物はないの?」


 すっかり俺は「ナビ君」と言うことになっていた。


 彼女は転生者ではあるが、赤ちゃんから転生したわけではないので完全に別世界からの訪問者的な存在だ。

 そして前世での彼女の名前は「須藤 琴乃」だった。

 俺は彼女のことを「コトノ」と呼べばいいのだろうと考えていた。

 ただし本人からの要請がない限りその名前では呼べない。


「いかがいたしますか?今はまだ遅い昼食となりますので軽い昼食といたしますか?

 それとも、このままディナー・レベルの食事といたしますか?


 まずは貴方様のお腹のすき具合に合わせて返答いたしたく思います」


「なんか『貴方様』と言うのは嫌だな・・・

 こっちの名前を貰ったの『クリサレスト・シードレル』だって変な名前・・・

 ナビ君はどう思う?」


「どう思うと言われましても、貴方様のお名前ですので何も答えられません」


「私的には微妙過ぎ。でもしようがないので、私を『クリス』って呼んで良いわよ」


「それではクリス様、軽めの食事といたしますか?ディナーになさいますか?」


「そうね、早いけど作る時間もあると思うから、少しぐらい待っても良いかな。

 よし、ディナーにしようかな?」


「クリス様、まずは食材集めからですね」


「えっ?食材は持ってないの?」


「もちろんですよ。そんなものはありません」


「集めるって?私が食材集めるの?」


「はい。私は集められませんし、作ることもできません。だいたい私は食事を頂く必要もありません」


 少し考えてクリス嬢は良いことを思いついたように明るい顔になった。

「そうか、魔法で出せばいいのよね。なんか食べ物が出てくる魔法を教えて」


「クリス様はレベルがゼロですので魔法は使えません」


「マジ?」


「マジです」


 クリス嬢はまたベソを掻き始めた・・・


「泣いてもしようがありませんよ、クリス様が集めるのです。集めて頂かないと食事にありつけませんよ」


「グスッ、出来るわけないじゃん!!」


「大丈夫出来ますよ。まあ、今この場所では狩りをするか何か食べられる植物かキノコなんかを収穫するしかないですけど」


「え~~~っ、ハードル高いわよ!!レストランは近くにないの?」


「レストランですか?王都にはありますが。この辺りには存在しません。

 ちなみにお金をお持ちでしょうか?レストランではお金も必要ですよ」


「そうよね、お金ね。。。ある訳ない。。。私この世界のお金を持っていないわ。稼ぐ方法ってあるの?」


「ギルドに冒険者登録して、色々な依頼を紹介してもらって完了すればお金がもらえます。

 もしくは動物を狩ってその肉や皮を商業ギルドの売ればお金になりますよ」


「そうよね、異世界らしくなってきたわね。でもギルドってどこにあるの?」


「ここから五十Km程先の村に在ります」


「ははははは、笑うしかないわ・・・、今から行くの遠すぎ!!無理~~~っ!!」


 ギュルギュル~~ッ

 少女のお腹が鳴いていた。


 少女はごまかすためか恥ずかし気な顔で「ナビ君、ともかく何か食べないと。どうすれば良いの方法を教えて」と呼びかけて来た。


 (恥ずかしい)という感覚か?

 彼女にとってはナビではなく意思があるものとして認識しているのだろうか?


 俺は本当は意思があるのだが、本来はナビは意思がないものだ。


「それでは初級編です、魚を釣るか小動物を狩りましょう」

 そう言って道具になりそうなものを少女に探させることにした。 


 実はここは大事なところだ、最終的に彼女の武具になるものを偶然見つけさせるんだ。

 目指すは『Y字枝』だな・・・その名の通りY型のただの枝だ。

 とりあえず釣り竿にもなるし、グム木の弦を付けるとスリングショットになる。


 スリングショットとして使って、レベルが上がれば最終的にセイント・アーチェリーになる。

 つまり最初は小さな棒で重くも無いし、最終的にはアーチェリー型と言う女の子が使うには最適な武器だ。


 うんうん。そうそうだ、俺冴えてるな、いいぞ、いいぞクリスのレベルアップは間違いなし!!

 俺の持っているマップを見ると、あっちの方に生えている『レクの木の根元』にあるはずだ。


「ではクリス様、釣竿になるような『木の枝』を拾いましょう」

 

「分かったわ」


 そう言うとクリスは歩き始めた。

 でもすぐに何かに躓いて転んでしまった。


「痛い、何かに躓いちゃった」


 クリスが躓いたものを確認している。

「え~~っ!!、これって剣じゃない?」


 見るとサビが酷い大きな重そうな鉄剣だった。

 

「鑑定してみないと分かりませんが、ただの錆びた剣です。それより今は棒を・・・」


「凄い!!、剣なんて初めて見た」


 そりゃそうだろう、日本ではそんなものは落ちていないからね。


「いや、だから早く棒を・・・」


 だが彼女はその場所に座り込んで離れない。

「これを鑑定してみて」


 錆びた剣ということは鉄剣である。

 つまり特殊な鋼で出来た剣ではない・・・

 そんな剣はクリスのレベル上げには繋がらないということになる。


「ですからただの錆びた剣なので材質的にも鉄ですから強い武器ではありませんよ」


「ナビ君。良いから鑑定して!!」


 ここはナビと言う立場上鑑定するしかない。


「『アルカレアの剣』と鑑定が出ました」


「凄い。それでどんな剣なの?」


「今はクリス様の鑑定レベルが低いのでここまでしか分かりません」


「え~~~っ、つまんない!!」


 少なくともこの場所はスターターポイントである、敵は来ないが武器は初期化設定されて落ちている。

 この剣も名前があるのでそれなりの武器だろうが、女の子向けとは思えない大きさだ。

 きっと重いので今から旅を始めるクリスには携帯すら無理だろう。


「それでは棒を・・・」


 そう言いかけたのだが、クリスはその剣を引きずって移動を始めた。


「その剣を持っていくつもりですか?見たところずいぶん重そうですが?」


「だ。。だ。。大丈夫よ・・・う~~ん・・重い・・・」


「ほら重いでしょ、そんな剣を持って行くのは無理ですし、錆まみれですから切れませんよ」


「でも、持っていくの。武器は大事なのよ」


 いや、そんなものより有用な武器はあるんだ・・・と言いたかったがそれは言えないナビのお仕事。


 とりあえず困ったことになった。

 クリスは少し移動すると剣の重さからか引きずるのを止めて座り込んで剣を詳細に見ていた。


 そういえば剣を見つけたことでお腹が減っていることを忘れたようだった。


 ナビの学習の中で習ったことがある『アルカレアの剣』と言うのは剣自体のレベルが10にならないと攻撃の効果すら発揮されないはずだ。


 簡単に言えばこの剣はレベル10までは剣として使えるようにするための効果しか付かない。

 剣がレベル10になるのは何時のことやら。


 今のクリスの状況では武器にならず足手まといな『モノ』なのだ。

 そんなものは早く諦めてほしいものだ。


 摩るように剣を触るクリス、触られている剣も引きずられた剣先当たりが磨かれて光っている。

 その時剣のレベルがひとつ上がった。


 どうも剣先が磨かれて光ることで、剣がクリスを持ち主と認めたと言うことらしい?

 というか引きずっただけだよ?


 でもこれは報告するのがナビの義務なので報告する。

「クリス様、剣のレベルが上がりました」


「えっ本当?、何か出来るようになったの?」


「はい、従属属性が上がるので少し携帯しやすくなります」


「ほんと?」

 そう言うとクリスは剣を持ち上げて見た。


「う~~ん、なるほど持ち上げられなくもないわね・・・」


 クリスは剣を重そうに持ち上げていた。

 今でも重いのだろう。

 だが俺の記憶では実際にはこの剣、大人の男が持ち上げることすら出来ないはずだ。


 最初に引きずることが出来たのも彼女のチート能力が関係しているのかもしれない。

 ほんとうは持ち上がる程に軽くなっていることに驚きだった。


「レベルはまだ1なのでそんなものでしょう」


 そうなんだ、この剣はレベルが上がるまでは持ち主のお荷物なのだ。


 でも、レベルが上がるということが、そうとう喜ばしいことだったのだろう?

 クリスは剣を土の上にズリズリ擦り付けながら錆を落としていた。


 やがて剣の錆は落ちて光り輝いていた。


 そして全体の錆が取れたことで再度剣のレベルが上がった、それも2つもだ・・・

 俺の考えているより剣のレベルが上がるのが早い?


 これも報告するのがナビの義務なので報告する。

「クリス様、剣のレベルがまた上がりました、レベル3になりました」


「えっ本当?、今度は何か出来るようになったの?」


「はい、従属属性がまた上がったのでまた少し携帯しやすくなりました。それと耐錆属性の獲得とあります」


「耐錆属性?」


「要するに錆びないということです」


「それとクリス様に『剣士レベル1』が付与されました」


「剣士レベル1、それっては何が出来るの?」


「剣を自由に操るスキルが伸ばせるようになります」


「それで、具体的に今は何が出来るの?」


「『アルカレアの剣』との相性が設定されただけで、今は何も出来ません」


 クリスは剣を持ち上げた。

「確かにさっきより軽いけど、やっぱり重いよ・・・」

 そう言うと剣を地面に投げた。


 ドス~ン


「えっ?」


「クリス様がお持ちの時は軽くそれ以外の時は初期値より重くなっているのです。

 つまり誰もその剣を持って逃げたり出来ないでしょう。

 それがその剣との主従関係が出来た証拠となります」


「へぇ~っ、面白い。でも重いもの持ったら余計にお腹がすいたよ~。ナビ君ご飯!!」


「ですから食材を集めないとご飯はありません」


 クリスは泣きそうな顔をしながら困っていた。


 食事もそうだが、それよりも夜の対策だ。


 彼女が来たばかりの時は、この場所は旅立ちの場所なので防御されている。


 だが夜になるとその防御は解除され最初のステージとなる。

 よって野獣等の敵が襲ってくる。


 『魔法属性』が全くない『剣士レベル1』では全然役に立たない、つまり対応のしようがない。


「お腹すいた~~~っ」


 彼女はまた大きな声で泣き出した。


 なんかピンチだな・・・

 

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