表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

3話目

頼まれたのは実験器具の整理と職員会議の書類のホッチキス止めだった。

「いやすまなかったな!なんだか強引に頼んでみたいで!」

わはは、と笹本が笑う。お前絶対すまなく思っていないだろう。

「謝る時間があるならとっとと手を動かしてください」

まったく誠意の籠っていない謝罪など私はいらない。

「もう祥子!」

先生に対してそんな口の聞き方はないじゃない、と恵が窘める。

「いやいや、気にするな!言ってることも最もだしな」

笹本がまた笑う。そして恵は、大らかな先生も素敵……。みたいな顔をしている。勝手にやれ。

「まあ、作業の能率を言ったら黙々とやるのもいいんだが、正直な所、作業中の話相手が欲しくてな。話に付き合ってはくれないか」

「……まあ、いいですよ」

まあ、この仕事の量を見ると、さほど時間もかからないだろう。このアホの会話に付き合ってやるのもいいか。

恵もニコニコ笑顔を見せて頷く。笹本は喜んだ。

「そうかそうか!いやあお前たちは本当にいい子たちだな!俺の話を楽しんで聞いてくれるし!」

私にとっては唯の暇つぶしだ。恵なんて話を聞くことはついでにしかなっていない。

「今日は何の話にしようかなあ……」

笹本の目が子供のように輝く。恵はこの瞳がいいのだと力説するが、私にはよく分からない。

しばらく考え込んでいた笹本であったが、しばらくして顔を上げた。

「お前たちはカタバミ、という草を知っているか?」

「カタバミ……ですか……?」

恵が顔を傾ける。どうやら恵も分からないようだ。

「名前は知らなくても、お前たちは見たことがあるはずだぞ?」

こんな形をしている、と黒板にそのカタバミとやらの絵をチョークで書き始めた。

仕事をやれ、と言いたいところであったが、自然と目は黒板に引き付けられる。

そこに描かれていたのは三枚の葉を持った、私たちがよく知る形をした草であった。

「これってクローバーじゃないですか?」

恵が切り出した。私もうんうんと頷く。

「残念ながらまったくの別物だ。お前たちがクローバーと呼んでいるものはシロツメクサという」

そういうと、笹本はそのカタバミとやらの隣にシロツメクサの絵を描きだした。

こうして比較してみると一目瞭然である。

「カタバミはシロツメクサと比べて葉がハートの形をしているな」

「へぇ……」

思わず、感嘆の声を上げてしまう。

「……一応教科書に載ってあるはずなんだがな」

「私たち、実践派なので!」

私の親友よ。腰に手を当てて言う事か。

「お前達の研究が昆虫や鳥ばかりだったからな。こういう植物について調べるのもいいものだぞ」

「でも地味ですよね」

思わず言ってしまう。正直な所、昆虫などに比べて動きが無くて面白くないだろう。

「それはどうかな?」

にやりと笹本は笑う。そこで乗せられてしまっていることに気付く。

笹本は理科室の隅からビデオを取り出して、備え付けのビデオデッキの中に入れる。

仕事しろ、とはすっかり言えない雰囲気である。隣では恵は目を輝かせているし。

「植物は確かに自ら動くことができない。だが、それゆえに子孫を残すために様々な工夫をしている」

そこにはカタバミが種をばら撒いている様子が映されていた。

「カタバミは種ができると、実が弾けて種が近くにばら撒かれる。その範囲は1m異常にも及ぶ。植物にはこのように実を弾けさせて増える植物が沢山いる」

そして、笹本は付け加えた。

「まあ、何事にも例外は付き物だがな」

私達はは画面に夢中でその言葉があまり耳にはいらなかった。

その後、笹本は人間や動物にくっついて種を運ばせる植物や鳥にあえて果実を食べさせて種を運ばせる植物についても説明してくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ