2話目
5時間目が終わり、放課後になった。今日は夜から大雨が降ると聞いている。
早く帰らなければ、と、思うのだが。
「相沢!山本!ちょっといいか?」
厄介な奴に絡まれた。隣で恵は目を輝かせている。
目の前には使い込まれた白衣の袖を通した中年男性が立っている。
笹本である。
「お前たちの研究レポートを見せてもらったんだが……」
……嫌な予感がする。
「あ、あの!どうでしたか……?」
恵はすっかり恋する乙女モードだ。お前の眼はどうなっているんだ。
目の前にいるのは無精ひげ生やしたおっさんだぞ。
もちろんそんなことはおくびにも出さず、私もこのアホ、じゃない、笹本に対応する。
「何か問題がありましたか?」
「いや、真に素晴らしい出来であった。だが、少々調査の質が甘い場所があること気になってな……」
「ああ、それは私たちの担当していたところと男子に任せていたところの差ですね」
正直な所、男子はあまり役に立たなかった。男の癖に虫も持てない奴らの多いこと多いこと。
その一方で私たちは泥まみれになって調べ尽くした(なお、私たちの班のもう一人の女子もアウトドア系女子だったため死角はない)。
そりゃあ差が出るってものである。
「ほう、そうかそうか!最近の生徒はそういった生物を嫌がるからなあ……お前たちは実に優秀だな!」
「ゆ、優秀だなんて……えへへ……」
冷静に考えると私たちも女を捨ててるってレベルではないので喜んでいいのか微妙である。
特に恵はカブトムシのメスとゴキブリを間違えて捕まえた女なのだ。
というか、このパターンって……
「いや、それでだな。今日は折り入って頼みがあるのだが……」
やはりおだてて乗せる作戦か。
「はい!何でもやります!」
早い、早いよ恵。まだ内容すら聞いてないだろう。
というか、理科委員の恵はともかく、どうして私まで頼まれねばならないのだ。
せっかくの機会だ、二人きりにしてやろう。決して面倒臭いからではない。
すぐに家に帰らなくてはならない用事があるとか言ったらいいだろう。
と私が思ったのを悟ったのか、恵が私に目配せして告げた。
『二人きりは恥ずかしいから手伝って。手伝ってくれないとトマト食べてあげないぞ☆』
恵の瞳は雄弁に告げていた。ふん、いくらなんでもそうそう何回もそのパターンには引っかからない。
「はい、あんまり時間のかかることでなければ大丈夫ですよ」
無理でした。




