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お久しぶりです。いや、まさかここまで間を空けるとは・・・。
待っていてくださった方、本当にありがとうございます!
さて、大祭もいよいよ二日目ということで人の多さにも慣れたよ、といいたいところだけれども無理。
無理。
だいじなことなのでにかいいいましたよ!と言いたいくらいには混乱している。
というか、昨日の挨拶のときですら人が多すぎると思ったのだけれども、あれが氷山の一部に過ぎなかっただなんて誰が予想できただろうか、いやない(反語)。
次から次へとあふれてくる人、人、人。
しかもなんだかみんな目がきらっきらしてるんですよ。会いたくてたまらなかったアイドルを目にしちゃった、っていう興奮みたいなのが前面に押し出されててこわい。わたしなんてそんな大層な人間じゃないのに、と内心涙目になっているけれど、笑顔だけは浮かべておく。女は度胸と根性だ!
というか、大祭って何をするんだろう、と思ってたら、もうやることは終わったらしくてあとはずっと無礼講。お酒とかジュースとかご飯やデザートがこれでもか、というくらいに用意されていて、気が向いたら食べて飲んでしゃべって踊って音楽を奏でて、となかなかのカオスっぷりでございます。
ただわたしに直接話しかけてくる人がいないだけまだマシなのかな。
日本にもあったお祭りの高揚した空気がここにもあって、人種だとか文化だとか世界とかそういうのがかわっても、こうして人の営みに変わりはないってことに少し安堵する。
「ん?」
とここでわたしはちょっとした違和感を感じた。目の前には人、人、人。よくもまあここまでと思えるほどの人だ。しかし、人でごった返している割には、圧迫感というか窮屈感のようなものがない。
「どうしたの?リリーナ」
気分でも悪くなった?とわたしの顔を覗き込んで尋ねてくるのは風華だ。うん、見慣れているとはいえ、つくりものめいた顔をいきなりつきつけられると、主に生存的な意味で心臓が痛い。
「いや、人が多い割りにきつくないなーって」
きらきらした目では見られているけれど、一定程度からは近寄って来られないからかな、と小声で質問すれば、風華は一瞬、目をまんまるくして笑い出した。
「あははははははは。あら、いやだもう。リリーナったら気づいていなかったの?まさかとは思っていたけれどここまでとはねぇ」
「どういうことよー」
笑ってないで教えてよ、と睨めば、だって今日は人間じゃないもの、とわけのわからない答えが返ってきた。
「は?人間じゃない?今日は、ってことはいつもは人間なのに、今日だけ人間やめちゃったの?って、え?人間ってそんなに簡単にやめれるものだっけ?あ、俺、人間あきたしぃ、みたいな?」
混乱してあれこれ口に出せばまたもや風華に爆笑された。なんて失礼な!
「違うわよぅ。っていうか人間やめるとかできないでしょうよ、職業とかではないんだから」
「そうよね、よかった。安心したわ。どっかの誰かさんが人間やめて今日からロリコンストーカーになるよ、って言われることはないんだってわかって心底ほっとしたわ」
「うんうん、そんなことになったらぶっ飛ばして存在すらかき消してあげちゃうから大丈夫。っていうか本当にわかってなかったのねぇ。今日集まってるのはみぃんな精霊たちよ。いうなればあたしたちの部下ってとこかしらん」
は?!
台詞の一部に物騒な言葉が聞こえたのは空耳として、いやだってわたしの周りにいる精霊さんたちのなかでいっちばん常識のある風華がそんな反社会的な言葉をするりと出すわけがない、出すわけがない、そんなことになったら精神衛生上大変よろしくない、だから聞こえなかった、ここまではオッケイ、でその後が問題だ。
ここにいるのが精霊ですって?
「ちょっ、どういうこと?」
「どういうことと言われても。ああ、リリーナは大祭に初参加だから知らないのよね。グランディーヤは精霊とも近しい一族なのよ。近しい、というかつながりがあるというか。今回の目的はリリーナのお披露目だから一日目は人間の一族に対して、二日目はこうして精霊に対してお披露目がなされてるってわけ」
わかるかしら、と風華は小首をかしげて言った。うん、美人がすると眼福だわ。
「え、でもここにいる人たちは人間にしか見えないよ?」
「リリーナからしたらそうかもしれないわね。それに、ここにいるのは基本的に上位精霊ばかりだし。さすがに人型になれない下位精霊まで詰め掛けたら、バランスが崩れちゃうもの」
へぇ、とわたしは相槌を打った。精霊の世界の秩序はなかなか興味深い。
「ってことはここにいる人間はわたしだけなの?」
「そうよ。あなたの家族たちも今は別のところにいるわね。精霊がこれだけ集まるのは珍しいからいろいろ隠したりしなきゃいけないし」
精霊王たちや他の四大精霊がいないのは、ここにこれだけの精霊が集まっているというのをばれないようにするためと、高位精霊が持ち場を離れても大丈夫なように力を貸す必要があるかららしい。わたしのエスコート役が風華なのは、伝令役にいちばん適してるからなんだって。それに精霊王たちがいたんじゃほかの精霊さんたちが萎縮してお披露目にならないんだとか。
「あたしとしてはラッキーだったわ」
「なにが?」
「だって、リリーナと二人でこうして過ごせるんだもの。役得でしょ?」
するりと頬をなでられた。え、ちょっ、風華さん?
「覚悟、しててね?」
風華って女性だよね?!