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紅き破滅の魔導師  作者: ひととせ そら


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4/7

◆episode.03 この世界で一番の宝物が手から零れ落ちた瞬間(とき)◆

「シア」

いつものようにドアをノックして声をかける。

しかし反応がない。


これもいつもよくあることだと思い、ドアを開けて入り、

カップをサイドテーブルへと置く。


「お寝坊さんか?シア。」

そしてまた、いつものように近づいて彼女の頬に手を添えようとした時、

彼女の肌が青白いことに気づいた。


「シア…?」

不安げに、恐る恐る彼女の頬に触れる。

ひんやりとした、温もりを感じない、肌の冷たさが伝わってきた。


「…。」

恐怖に変わる。


言い知れない不安と衝動を抑え込みながら、

彼女の頬を撫で続ける。


「シア…どうしたんだ? ほら…いつもの起きる時間だよ。

目を開けて、いつもの可愛い笑顔を見せてくれよ。」

生気のなくなった彼女の唇は、ピクリとも動かない。


「…嘘…だよな…? …シア? …なぁ、シア…?」

震える声で、何度も彼女の名前を呼ぶ。頬を撫でる。


でも、いつになっても、彼女から反応は返ってこない。


「そんな…どうして…。昨日はまだ…。

シア…、シア……シアっ!!!」

彼女を掻き抱いた。

起きて欲しくて…。強く、強く。


でも、どんなに抱きしめても、

彼女はもう二度と、いつものように俺を、抱き返してはくれなかった。


「うそ、だ……。

嘘だ…嘘だ……

嘘だ、嘘だ、嘘だ、うそだうそだうそだ

ウソダウソダウソダァァァーーーー!!!!!!!!」


壊れたように連呼し泣き叫び、彼女を強く強く、胸に掻き抱く。


もう、魂がボロボロになってしまっていた彼女の体は、

原型を留めていられず、手や足の先々から、

ぽろぽろと、光の粒となって空中へとゆっくりと溶けていく。


「あ…あぁ…ああ…あああ!!!!!

ダメだ、いくな!!! いかないでくれぇぇぇっ!!!!!!」


少しずつ、俺の腕から零れ落ちてゆく彼女を繋ぎ留めたくて、

ただただ、必死に崩れゆくその体を掻き抱いた。


その思いもむなしく、だんだん光へと溶けていってしまう、

愛しい彼女のぬくもり…。


どんなに叫んでも…

どんなに願っても…

俺の願いは、叶えてなどもらえなかった…。


それでも最後の最後まで、

彼女の姿を腕の中へと抱きしめていたかった…。


離したくはなかった…。


彼女のぬくもりが、

最後の一粒の光となって消えていく…

『その瞬間』まで…。


………


……



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