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第10話 距離感

次の日。俺はいつも通り登校し、教室の引き戸を開ける。

 開けた瞬間、クラスメートが一斉に俺を見たが、昨日のように静かになることはなかった。

 やっぱり昨日の自己紹介、効果あったみたいだな。

 美空の言った通りだ。

 

 その後も特に面倒なことは起きず、俺は今日こそ平和に過ごせる。と安堵していた。

 だが授業中、俺は一つ致命的なことに気づいた。

––俺、今日一言も喋ってない。

 喋る相手がいないから当然のことだが。

 そう言えば俺、友達いないわ。

 でも美空は? ふと俺は横を向く。

 見ると美空は真面目に板書を写しており、いつもと変わらない様子だった。

 ただ、今日は俺に声すらかけてこない。昨日は『おはよう』まで言ってきたのに。まあそれを言うなら俺も同じだが。

 

 理由を考えると、すぐに頭に浮かんだものがあった。

 わかっていたはずなのに見落としていたこと。

 

 俺と美空は、友達じゃない。

 

 昨日まで()()()()一緒に帰ったりなどはしていたが、それはあくまで【俺の自己紹介を成功させる】と言う目的の元での行動。思い返せば、友達になったわけではなかった。

 

 いや、でもそこまでしたら友達か……

 でも……

 

 どっちだああああああああああ!

 混乱する思考の中俺が思いついた考えは、直接本人に聞くことだった。

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 というわけで休み時間。

 美空は隣で本を読んでいる。

 教室もちょうど良いくらいにザワザワとしており、聞くには絶好のチャンス。今しかない。

 

 話しかける前に、俺は頭の中でイメージトレーニングをする。

 

『なあ美空、俺達って友達か?』

 いやいやいやど直球すぎるか。もうちょっとなんかこう……遠回しに言いたい。

『なあ美空。俺、お前の何?』

 いやいや無い。考えただけでゾワっとする。これじゃあまるで彼女から金づるとして利用されてる残念な彼氏みたいじゃねえか! てか俺達カップルでもないしな。


 ていうか、どのくらいの距離感で接したら良いんだろうか。一応今の関係は、友達と言えるか言えないかのギリギリの距離感というところだろう。

 

––これは親しい感じで言って良いのか?

 なんならもう友達っていう前程で話を進めてしまうか。でもそれじゃ意味がない。

 

 あああああああああああああああああああああ! もうどうしたら良いんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 

「どうしたの? 具合悪いなら保健室行けば?」

 

 さっきまで本を読んでいた美空が、ちらっとこっちを見て言った。

 

 声をかけられるのも無理はない。あまりに悩んでいたせいか、俺はうつむきながら頭を抱えていたのだ。

「いや、別にそういうのじゃないが」

 俺は頭から手を離し、姿勢を正して言う。

 

 もういい、今言うか。

「なあ美空、お前は俺の友達か?」

 色々考えたが、俺の中でこれが一番自然で、無難な聞き方だった。言った後思うと、ちょっと変な気もするが。

 

 するとほぼ間を置かずに、美空はこう返答した。

「友達だけど。なんで急に……?」


 この言葉を聞いた時、俺はやっと目が覚めたように感じた。こんなに些細なことで友達だとか、友達じゃないとか、考えてる自分がおかしく思える。


 美空は考える間も無く俺を友達だと言ってくれた。つまり、俺が美空の友達であることはこいつにとって考えるレベルの話じゃなかったということ。

 

 俺はどうでも良い小さなことばかりよく考えてしまう癖がある。本当に治したい。

 

 まあでもこれで正真正銘、美空は俺の友達。ついにこの留年生活で1人目の友達ができた。

 これは俺にとって、大きな進歩だと実感した瞬間だった。

  

評価よろしくお願いいたす

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