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第9話 はつこい① 出会い

とりあえず読め。





いや読んでいただけると嬉しいですよろしくお願いします。

何の変哲もない平日の夕暮れ時。私はあるお店の前に立っていた。就職のための一人暮らしを始めて早2週間。毎日苦手な自炊をして、何かを買って食べた事なんかなかったこの生活も、今日で一区切り。

 

 そう、私佐倉ナツキは、この【南部精肉店】というお店に、一人暮らし生活で初めて【惣菜】というのを買いに来た。


 と思っていたのだけど……。

 店内を覗くと、中は男の人が二人いる。短髪でエプロン姿のお店の人と、制服姿のもう一人。お客さんかな。

 しかも、ずいぶん楽しそうに話してる……もしかして友達とか?

 

 この状況で一人で店内に入るとか無理でしょ!

 ぐぬぬ、入りずらいー!

 

 私は昔から、人とコミュニケーションを取るのが苦手だ。スーパー行ってもセルフレジしか使わないし、最近入社した会社でも最低限の会話しかしない。というか、できない。

 だから彼氏いない歴=年齢だし、まず男性との絡みがない。もし仮に彼氏を作れたとしても、絶対に私みたいな女じゃ、無理をさせてしまう、と自虐的な事ばかり考えてしまう。

 

『佐倉ちゃん、もっと喋りなよ。僕もこんなこと言いたくないけど、君入ったばかりなのにもう周囲から浮いちゃってるよ』

  

 今日、会社の嫌味な上司から言われた言葉だ。でも、好きで浮いてる訳じゃない。私だってみんなから可愛がられたいし、褒められたい。仲良くなれるかもと思った人もいた。

 でもダメ。小さい時から、ずっとそう。心の中はうるさい方な気がするけど、それを口に出す事は苦手。人と喋る時、私は自然と頭が真っ白になってしまう。そして最終的に、相手を気まずくしてしまう事がよくある。

 

 勇気出せナツキ! もう22歳。立派な大人なんだから!

 

 そう勇気を振りしぼったが、ずっと中を覗いていたせいか、中のお客さんと目があってしまった。

 彼は不思議そうな目で、こちらを見ている。

 

 あぁー! 今絶対怪しい人だと思われた! もう本当に私……何してるんだろう。

 こんなことで慌てふためく自分に呆れて、一度自分を落ち着かせて頭を冷やすため店の横で壁のほうを向き体育座りをした。

 

 しばらくすると、店から人が出て来た。

 そしてなぜか、私に声をかけてきた。

「あの……大丈夫ですか?」

 びっくりして振り向くと、さっき目があったお客さんだった。

 大丈夫ですかって、頭の事か。

 でもやっぱり緊張して、うまく話せない。

「わ‼︎ あ、あ、ごめんなさい!」

 私は立ち上がり、反射的に謝る。

「さっき店内を見てたんで……あ、もう入って大丈夫ですよ」

 片手に袋を持ったその人は言った。

 おそらく私が店の外でソワソワしてるのを見て、気を遣ってくれたようだった。

 最近の男子高校生って、こんな良い子なんだ……

 心の中でそう思うと、ふと我に返り「ありがとうございます」とお礼を言ってスッと店に入った。

 親切にしてくれたあの子には申し訳ないけど…… 

 

 

「どうも!」

 お店に入ると、開口一番お店の男の人が大きな声で私に言った。私は一応会釈だけはしておいた。

 惣菜の一覧表を見て悩んでいる振りをしているけれど、私の頭の中は今にもショートしそうだった。

––何やってんの私! 勢いで入ったけどまだ心の準備ができてない! どうしよう!

 んんー……じゃあ適当に無難そうなものを頼んで、早くお店出よう。

 そう考えた私は、やっとしっかり一覧表に目を通す。

 てか、すごいいっぱいある……。

 私はその種類の多さに圧倒された。

「えっっと、コロッケを、一つ、で」

 なんとか選び抜きなんとか注文できた。ちょっとカタコトだったけど。

「はい! コロッケ1つですね、少々お待ちください」

 

 

 はぁ、疲れた。

 その後支払いを済ませ、やっと店から出てきた私はかなり疲れ果てていた。

 ただ今晩のおかずを買いに来ただけだったのにな。私は大きくため息をつく。

 こんなんじゃ、会社でも浮いちゃうわけだよね。

 その場で少しだけ、この状況をどうすれば変えられるのかを考えてみたけど、案の定何も浮かばなかった。

 ひとまず家に帰ろうと思って歩き出すと、次の瞬間私は地面に落ちていた石を踏んでしまい、足を捻って転んでしまった。

 いった! しかも捻った……

 立ち上がろうとしたが、足が痛すぎて立ち上がれない。

 

 もう……最悪。

 

 すると転んだ様子を見ていたのか、さっきのお店の人が店先まで出てきた。

「大丈夫ですか⁉︎ 立てます?」

 そう言って男の人は、私を心配そうに見る。

 一時的に足の痛みが引いて、なんとか立ち上がれた。

「だ、大丈夫です」

 私は慌てて言った。

「あ! コロッケ!」

 お店の人が見ている方を見ると、さっき買ったコロッケが入った袋は見事逆さまに落ちたみたいで、路上に放り出されてしまっていた。 

 私はコロッケを拾って、袋に何事もなかったかのように戻した。

 それを見た男の人は、いきなり私にこう言った。

「名前! なんていうんですか!」

 このタイミングで名前聞く?

 そう思ったけど一応教えることにした。

「佐倉、ですけど」

 私は小さな声で言う。

「じゃあさくらさん! ちょっと待っててください‼︎ 1分! 1分だけ!」

 そう言って、男の人は急いでお店に戻って行った。

 それにしてもこの人が言うサクラは、なんだか違和感がある。

 うぅ、痛い……。

 さっき捻った足首が、若干青くなっている。

 え、まさか捻挫しちゃったかな……。

 

 ほんとついてない日だなー。

 そしてまたため息をつく。すると、今まで積み重なってきた嫌なことが、何か外れたかのように一気に込み上げてきた。私の目には、涙が浮かんだ。

 いや、なんで泣いてんだろ、こんなところで。

 一粒の涙がこぼれ落ちる。

 だめ! ダメダメダメ! 泣いちゃ!

 頑張って涙を堪える。

 確かに最近、嫌なことしかない。今までもそうだったけど、本当に自分を嫌う瞬間が何度もあった。それが今、転んだだけの些細なきっかけで、溢れ出てしまったんだろう。

 

 疲れてるな……。

 幼い頃からの夢だったOL。働く女はかっこいいなんて思っていたこともあった。でも現実は厳しく、女だから、喋りにくいから、などの本質以外の面で評価されて、入社一週間も経たずに挫折しかけている。

 

 社会は、辛い。

 

「さくらさん! これ!」

 ちょうど1分ほどで、男の人は帰ってきた。何かが入った袋を持って。

「コロッケです!」

 最初、この人の言ってる意味がわからなかった。なので自然と「え?」と言う声が出てしまった。

「あ、お金は大丈夫ですよ」

 自分で転んで落としたのに、お店の人にまで迷惑かけられないでしょ……。

 そう思った私は、お金を払おうとバッグから財布を出す。

「いやほんと、大丈夫ですよ」

 と、男の人は微笑んだ。そして「それより……」と続ける。

「足、大丈夫ですか? 湿布持ってきたんですけど」

 そう言って男の人は、手に持った湿布を差し出してきた。

 

 しばし沈黙が続いたのち、男の人が言う。

「あ、やっぱり大丈夫ですか……。すみません、早とちりしすぎまし……」

「要ります‼︎」

 完全に無意識。今までの人生の中で一番大きな声が出た。

 これこそが、私のやりたかったこと。頭で思ったことをそのまま口に出す。今までこれが出来なかったから、会話がすぐに途切れて気まずくなっていた。でも、今は何かが違った。自分じゃない気がした。

 気づくとまた、頬に冷たいものが伝った。


「あの、泣いてますよ」

 

 きょとんとした表情で、男の人が言った。


 

 南部精肉店の店内。私は即興で用意してもらった丸椅子に座り、右足首にさっきもらった湿布を貼っていた。

「は、貼れました」

「よかったです!」

 横で立ってその様子を見る男の人は安堵の表情を浮かべた。

 一呼吸置いて、男の人はまた喋り出す。

「そういえば名乗るのを忘れてました。俺の名前は南部ケイタです」

 南部……お店の名前と一緒! でも、店主にしては若いな……

 

 良い機会だと思って、私はある事を聞いてみようと思った。

 普段自分から質問をしたりする事はないが、これだけは確かめてみたかった。

「あの、ちなみに私の名前って……」

「ああ、分かりますよ。さっき教えてくれたじゃないですか! さくらさん ですよね!」

 ……。やっぱりおかしい。

「えっと、知ってたら良いんですけど、そのさくらって……名前じゃないですよ」

 この人に名前を教えてからずっと感じていた違和感。それは、佐倉 のイントネーションだった。普通の人は【佐倉】なのに対して、この人は【さくら】と言う感じ。

 だからきっとこの人は……

「えぇ‼︎ いやずっと名前だと思ってました‼︎」

 そうだろうと思った。

 そして私はポケットからスマホを取り出し、【佐倉】と打って見せる。

「苗字です」

「あ……ごめんなさい‼︎」

 南部さんはそこで土下座をしかけたので、私は急いで止めた。

「大丈夫ですって! 全然気にしてないですから!」

 全然と言えば嘘になるけど。

 

 でも、私の顔はその時確かに笑っていた。

 

 

 ワンルームの小さなアパートの一室。私はちゃぶ台を前に部屋着姿で座っていた。今から夜ご飯を食べる。

 ちなみに今日の献立はご飯、コロッケ、作り置きしておいたサラダ。健康的な食事だと、我ながら思う。

「いただきます」

 まず最初に食べるのはコロッケ。

 結局あの時は南部さんの圧に負けて、新しいコロッケと交換してもらった。本人曰く『うちのお店のものはいつでも美味しく食べてもらいたい』とのこと。

 そして帰り際に勇気を出して聞いたことがもう一個ある。年齢について。

 結論から言うと、南部さんはまだ18歳らしい。

 随分体格が良かったからか、全然そうは見えなかった。

 同い年、もしくは年上? なんて事を考えていたけど、まさかまだ未成年だなんて……

 そして、あのお店は南部さんの父親がやっているものらしく、今はまだ修行の身だとか。

 

 それにしても今日は、ついてない日の割にそんな悪い気がしない。

 理由はきっと、新しい自分を見つけることができたからだと、私は思う。

 つまり私にも伸び代はあるということ。

 社会は、辛い。けど、もう少し頑張ってみようと思った。この伸び代を信じて。

 では、早速一口目。

 サクッ

 

「うん、おいしい」

どうもです。えぇーと、まずはここまで、長々と読んでいただきありがとうございました。

この話を読んだ人の感想を予想します。


「なんだこれ」


まあこれでしょうね。

お答えします。この【はつこい】というお話は、普段の【にどこい】のストーリーと並行して進んでいく、いわばシリーズもの。①と書いてあるのでこの後も続くんですが、次話は一旦本編に戻ります。

今後は本編の区切りが良いところに、ちょこちょこと入れていく予定です。

本編ばかりだと飽きられてしまう可能性があるので、少し他の人の恋模様もガッツリ描こうかなってことで。


この【はつこい】のストーリーざっくり説明したいところなんですが、ただでさえ文字数が多くなってしまったこの第9話にこれ以上付け足したら大変なことになりそうなので、近況ノートの方で後日掘り下げていこうと思います。(公開したらTwitterでお知らせします)


最近なかなか伸びがいいこの作品。僕自身の力量も大事ですが、読者の皆様の協力も必要です。ぜひ、共有もよろしくお願いします。


第10話も近日公開予定なのでお待ちください!


テラガミコタロウ

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