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Awake


「鍵は開けなくていい。自分で開けられる」


灰の男が動作をドアを掴んでいる。

ドアは徐々に白く染まり、灰になっていく。


「なんでこの場所が…」


クロエは焦りながら呟く。

ドアを破壊しながら、灰の男は答える。


「んなもん、金の力だよ。後はウチのじーさんが言ってたんだよ。東京の地下には秘密の通路があるってな」


ついにドアの施錠部分を灰にする。

力任せにドアを開け、右手でクロエの首を掴み、締め上げる。


「クロエ!」


「全くてこづらせやがって……動くなよガキ。一瞬で灰にすんぞ」


脅しの目ではなく、本気の目で灰の男は睨んでくる。


「さあ!本の場所を吐け!そうしたらこの手を話してやる」


ジュウジュウと肉の焼ける匂いがする。

灰にする1歩手前まで電能とやらを使用しているのかクロエの喉が焼けている。


呻き声を上げながら、クロエは答える。


「話す必要は無い。この男は私を殺す気は無い。既にお金を使いすぎてる。私の懸賞金が欲しいはず……でしょ?私の懸賞金受け取り条件はOnly Alive…だからね」

「黙れ」


より強く男は締め上げる。


「うぐぅ!………」


「確かにSecret Girlの言う通りだ。バレたら認めるのは当然だ。だから条件を変えてやる。ここで話せば一瞬で頭を灰にしてやる。足の先からゆっくりと灰にはなりたくねーだろぉ?」


灰の男は既に俺を殺す気以外無いらしい。

クロエの言う通り、俺たちの所在、会社の情報で金を使っている。

これ以上の散財はする気は無いようだ。

そしてその恨みも俺に来ていると着ている。


だが、クロエを殺す気がないならまだ出来ることはある。

例えば自分自身を人質にするとか。


「本は俺の頭の中にある」


「それは内容を覚えたとかそういう話か?一丁前に交渉しやがって…自分を殺すと話せねぇってか?そんな馬鹿な話を信じる馬鹿がどこに……」

「ストロボスコープ」

「……ああん?」

「本の中身だよ。それで情報を脳に直接載せる方法……あんたなら聞いた事あるんじゃないか?」

「まさか……本当に…?」

「前から気になってたんだ。アンタら本をこの電脳世界にあると思ってる節があった。アンタらの上が画像データだけで情報を見せたんならそれもありえるってな。だから現実世界の椅子の裏に隠していた本を発見できなかった。紙媒体のものだと思わなかったから……」


こいつらはデータを本タイプの電子書籍だと思って探していた。

だから簡単に現実世界で人を殺してた。

最初に見つけたあの死体の人も俺の椅子の所にデータがあると言って死んだ。

それは本が無くて絶望して死んだのではなく、辿り着いて助かると思った所で殺されたのだ。

だから絶望して死んでいた。


這ってあの場所にたどり着いた人間が椅子の裏の本を発見出来ないはずもない。


それをこいつらは殺し、接続コードでデータを探して無かった事で探すのをやめてあの会社の情報を買った。

あそこ周辺は全て会社員の椅子だ。

誰かが取ったとしても虱潰しで探せば見つかる可能性がある。


それで所長も殺した。

所長は現実世界から電脳世界に殆ど戻らない。

椅子に座って充電しているから電池が切れる事も無い。

多分電脳世界にいる社員は全員調べられたのだろう。

あの時は残りの社員を探していた。


それがあの時の真相だ。


「現実世界の俺の椅子の裏に本がある。確認してみなよ。分かりやすい見た目だからすぐ分かると思うぜ。それにもう用済みだってな」


灰の男は苦虫を噛み潰したような顔をするとクロエを車内に投げた。


「きゃっ!」

「く、クロエ!大丈夫か?!」


クロエの首には赤く手形が残っている。

痛々しい傷だ。

しかし、灰にはなっていない。

時期に再生するだろう。


灰の男は乱暴にドアを閉める。

そして周りの黒スーツに声をかける。


「てめぇら、見張ってろ!SecretGirlには印つけたから逃げる事は無いだろうが、逃がしたら全員灰にすんぞ!キュウ、お前は残って指揮してろ!行くぞウド」


3人のうち1人、キュウと呼ばれた男と周りの黒スーツをここに残すようだ。

そうして巨体の男を連れ、灰の男は場を離れる。


「これで少しは時間を稼げる。このうちに何か出来ないか?」


クロエは喉を押さえ込んでいる。

咳をすると口から血を吐き出す。


喉を見ると灰になっていない傷なのに再生していなかった。


「喉が!?どうして…」

「電能力者は電脳世界のバグ。世界の理から外れた存在である電能力者は自動効果が得られない。電脳世界でも傷は再生せず、外傷を負う…」


咳き込みながらクロエが説明する。

つまり、それは自然治癒でしか治らないということ。

勝手に直る電脳世界で始めた見る現象だった。

一世紀前には普通だったらしい、現象を眺め、恐ろしさを感じる。


こんなの簡単に死んでしまうじゃないか……


「私の秘密は相手に暴かれていない。正体が割れていない時に発動する。喉に印をつけられた以上私の電能力は使えない…」


クロエから聞いていたSecretの電能力。

詳しくは聞いていないが、戦闘向きな電能ではなく、現状は使えない。

これは詰んでいるんじゃないか、


「連絡手段があるけど、それを使うとあの男にバレる」


そう横目に残っていたキュウと呼ばれた男を見る。

灰の男の横で立っていただけの男。

仕事場から逃げる時も簡単に俺を逃した。


「アイツも電能力者……確かCueの……ゴッホゴホゴホッ!」


無理に喋ろうとしたのから更に吐血する。


「クロエ!もう無理に喋るな…!」


座席に座らせて休ませる。

しかし、いよいよ詰んでいる。


この車に武器のようなものは無い。

万が一あってもこの黒スーツの集団を相手出るとは思えない。

俺には戦闘の才能など無い。

車も運転できない。


金も無ければ稼ぐ才能も無い。

無い何も無い。

力が………俺にも能力があれば………………………………?




ふと靴に何か当たる。

そこにはいつの間にか落ちていた電能覚醒薬だった。

現状この場を打破することは出来ない。

いきなり俺が自然覚醒して電能力で圧倒するなど不可能だ。


代償は痛みといずれ使えるかもしれない未来。

だが、力はたった今必要だ。


そして可能性は充分だった。


「使えねぇ能力だったら承知しねぇぞ……」


USBメモリを持つ。

それを振りかぶり、胸に思いっきり突き立てる。

皮を突き破り、肉を抉らながら身体にUSBメモリが埋まる。


その瞬間に痛みが体全体に走る。


電撃に似たそれは身体を駆け巡り細胞一つ一つを破壊していくようだ。

身体の内側から同じサイズの自分が新たに生まれるかのように肉を押し上げ、皮を裂く。

それは無限にも刹那の一時にも感じる時間だった。


そして脳に理解させる。

自分の電能力がなんなのか。

それが漠然と理解させてくる。


流石に異常に気づいたのかキュウと呼ばれた男が近づいてくる。


「何をやってるっ?!」


痛みは超えた。


だが、これで終わらない。

俺は自分の頭を抑える。

そして電能を発動させる。

発動させたその瞬間……俺は気を失った。


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