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Ado



思考が止まったあの後、俺は初めて仕事を無断欠勤した。


先輩に話を聞かなくてはいけない。

そう思っても身体が動かなかった。


なんで妹の名前が商品リストに。


幾ら考えても答えは出ない。

いくら脳の中の情報を読んでも答えは出ない。

アンジュは今も病院にいる。

売られてなどいない。


だが、ある記述を見つける。

それは売却日。


アンジュは既に売却された扱いをされていた。

それも3年前に。


その数字には身に覚えがあった。

3年前だった。

元気に笑い、起きていたアンジュが眠り続けるようになってしまったのは。


電脳世界がアンジュに判断したのはデータの欠如。

それにより脳が異常をきたし、目覚めないと伝えられた。

しかし、電脳世界でデータが欠如しようとも新たにデータが再生する。

その、データが無くなっていれば。


しかし、売却したとある記述。

データが無くならず残っているなら、データは欠如したまま。

アンジュは目覚めない。

データが欠如した状態でどこかに残っているのだろう。


この顧客名簿に書かれた客の誰かが。


その考えに達した時には既に1日経過していた。


所長からの通知の音に気づき、日付が経過した事に気づいた。


『エイジくん。君が無断欠勤なのは珍しいけど、マサルくんに連れられた時点で少し予想していましたを明日はちゃんと来てね。マサルくんにも伝えといてください。彼はあまりメッセージを見ないから』


所長はどうやら食事で酒を飲むと予想していたようだ。

2人で飲んで騒いで、休むと思ったのだろう。

実際はもう食事の味は思い出せないほどに疲弊しているのだから。


幸いな事に所長の通知ぶりから先輩も仕事場に来ていないようだ。

仕事場で待っていれば情報を教えてくれるかもしれない。


少し足をふらつきながら、立ち上がり、仕事場へと向かう。

仕事場の建物からは誰かの話し声が聞こえた。


きっと先輩が礼儀に欠けた挨拶をして所長に小言を言われているのだろう。

ひとまず、自分も休んだことを所長に伝えなければ…


そう思い扉を開けた。


「昨日は休んで申し訳……」


ドンッ!!!ドゴォッ!!!



扉を開けたとほぼ同時。

その音は前方から聞こえた。


重厚な音。

炸裂した場所を貫通し、地面へとぶつかった音。

建物全体が揺れ、地面にヒビが入る。


部屋の中は荒れ果てていた。

書類が飛び、電子機器が破壊され、机類が部屋の端に追いやられていた。


人がいた、4人。

1人は所長。いつもの作業服に身を包んでいる。

そして3人の見覚えのない黒いスーツに身を包んでいた男達。

1人は壊れた机に座り込んでいる。

音の鳴った場所を楽しそうに眺めている。

1人は扉の近く。

目の前の事に集中しているのか、俺が開けた事に気づいていない。

最後の一人は巨体の男だった。

工業用のパイルバンカーを片手で持ち、起動していた。

パイルバンカーからは鉄釘状の柱が射出され、男の前に立っていた所長へと命中していた。


パイルバンカーは易々と所長の体を貫き、地面へとくい込んでいた。

先程の重厚な音はパイルバンカーが地面に当たった音。

所長を貫通して。


「何だ、お前」


机に座っていた男が俺に反応する。

それに答える前に建物を出る。

反射的に動いた足はあれほど重かったはずなのに。

動き出し、椅子へと駆け出す。


「待て!キュウ捕まえろ!」


扉近くの男がキュウと名前を呼ばれ、反応する。

手を伸ばすが反応が遅かった為その手は空を切る。


すぐさまその場所から離脱する。


昨日本からあれ程の情報を脳へ叩きつけられたというのに、現実世界は更に畳み掛けてくる。

自分も現実世界が嫌いになりそうだ。


思考が纏まらない。

だが、1つだけ分かる。

あの黒スーツ達は俺の椅子で死んでいた男を殺したんだ。


それが分かれば奴らの狙いも分かる。

俺の頭の中にある顧客名簿のデータだ。


捕まれば同じように胴体に穴を空けられる。

そうなれば妹は救えない。


幸い直ぐに走り出したお掛けか黒スーツ達は追いついてこない。

無事に椅子へと辿り着く。


震える手でなんとかコードを接続する。

そして電脳世界へと移動する。


ひとまず逃げきれた。


顔は見られた。

電脳世界でも追われるだろう。

その前に金を手に入れた妹だけでも救わないと。

電脳世界なら話し合える。

妹に10億渡して俺はその間になんでもやって金を稼ぐしか方法は無い。


路地裏の椅子で目覚める。

先輩はもしかしたら飲み屋街で倒れているかもしれない。

まずはそこを探そう。


そう思い目を開ける。





そこには黒いスーツに身を包んだ集団がいた。


集団が2つに割れる。

そうして3人の男が前に出てくる。


それは先程仕事場にいた3人だった。


「おかえり、エイジくん?話聞かせてもらうぜ」



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