Anger
実際この勝負どちらが勝つといえば運がいい方もしくはカードの内容を知り、読み切るかの話になる。
しかし、それは何の仕掛けも無い場合に限定される。
キュウの持つトランプは俗に言うイカサマトランプというもの。
カードに印があり、それを見ることでカードの内容が分かる。
手をカードに触れればどの絵柄でどの数字などピタリと分かる。
更にキュウは記憶力パッチというシステムをダウンロードしている。
カードを記憶し、枚数や絵柄を理解する。
カードの傷も覚え、イカサマトランプ出なくともカードの把握さえすれば容易に全勝可能だろう。
更にキュウは天性の才能としてイカサマの技術も高かった。
本来賭場でイカサマをしようとすればイカサマ技術のデータを入れているものは入れない。
その為自分の技術のみで行かなければならなかった。
記憶力パッチのように抜け穴はあったがあれも100%的中には程遠い。
しかし、キュウはデータに頼ることなくイカサマ技術があった。
そんな訳でユウキはキュウとカードゲームをするのを拒んだ。
彼の技術であれば圧勝する事もギリギリユウキが勝つようにも出来る。
そんな面白味の無い事をやりたくなかったのだ。
尚、その時の経験で賭場を荒らし、紆余曲折を経て今ユウキの手下になっているのだ。
彼はイカサマの才能を持つ。
しかし、それではユウキを勝たせることは出来ない。
ポーカー等で自身の手を隠し、好きなカードに揃える等は容易だ。
しかし、今回のゲームはカードが1枚の時に数字を当てる物。
捲る際にカードを摩り替えるのは可能だが、既にカードは1組。
キュウがカードを理解しても伝える手段が無い。
そんな彼はイカサマ技術で荒らしていた時、ついにイカサマがバレてしまった時があった。
アルコールデータで脳が麻痺し、ちょっとしたミスを侵した。
その時に殺されかけ、誰かに助けを求めた。
誰も見向きもしない、暗がり。
そこに大勢の人間がやってきたのだ。
その人間の隙間を縫い、その場は逃げることが出来た。
結局はユウキの元にいる為に理解できるが、何故大勢の人間があんな場所にやってきたのか?
それは合図があったから。
ここに今来い、と。
どんな合図だったかとか、誰のものとか。
そういうのは一切分からない。
そんな超常現象など、電脳世界ではたった一つだけ。
キュウの電能力はCue。合図の電能。
キュウが対象に伝えたい事がダイレクトに伝わる。
それがキュウの電能力だった。
この電能力があれば、的中率は100%。
それも勝たせたい方を簡単に勝たせることが出来る。
Ashでカードを灰にしたのも演技の一つ。
電能力で破壊したものは元に戻らない。
つまり、自然にカードを交換できる。
カードを調べてもキュウにしか分からない仕掛け。
ユウキを調べてもユウキはイカサマをしておらず、見破る事は出来ない。
「ビッグorスモール?」
キュウは先行のユウキに話しかける。
それと同時にキュウから合図が来る。
数字の8。7より一つ上の数字。
それがキュウからの合図だった。
「ビッグ!」
ここからは調整を取りつつ、僅差でユウキが勝てば負け分を取り返す。
そしてツキまくっていたエイジを絶望に染める。
そう考えていた。
カードが捲られる。
捲られたカードには数字の4が書かれていた。
「…………………………………………………は?」
「手番が移ります……」
エイジに手番が移る。
「ビッグorスモール?」
「スモール」
捲られた数字は6。7より一つ小さい。
エイジは見事当てる。
手番は移らず、エイジのまま。
「お前何してんだ?」
ユウキは話しかける。
その相手はエイジでは無く、キュウへと。
「ビッグorスモール?」
質問に答えず淡々とディーラーを続ける。
「おい!何してんだって聞いてんだ!」
立ち上がり、キュウに掴みかかろうとする。
しかし、またエイジに止められる。
「勝負の途中に席を立つなら、サレンダーって事になるが。いいのか?」
キュウが何かをしている。
しかし、勝負を投げ出せば、負けと同じ。
エイジの言い分は理解してしまった。
勝負に拘った事は無い。
しかし、勝負を降りた事も無かった。
自身から持ちかけたこの勝負を降りることは嘘をつくこと。
それだけはユウキも嫌だった。
「さっさとしろや!」
仕方なく席に座り、キュウに怒鳴りつける。
そう、声を張り上げるしか無かった。
自身の手番でない今ユウキにやることは無い。
「安心しろ」
「あ?」
そしてもう二度と来ない。
「もうお前の手番にはならない」
そう、宣言した。




