Betrayal
ユウキの手番が来ない。
そう宣言したエイジ。
ユウキは何を言っているか分からず、呆けていた。
その間もゲームは続く。
当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる当てる。
百発百中の連撃。
呆けていたユウキも異変を感じ取る。
しかし、遅かった。
カードは既に半数以上がエイジの元に。
あと全てユウキの元に行ったとしても勝利は無い。
「ビッグorスモール?」
「スモール」
「数字は4。手番はそのままです」
尚もエイジが当てる。
もう勝ちが無いことを理解していたユウキは立ち上がり、今度こそキュウの胸ぐらを掴みあげる。
「てめぇ、何してる!俺をバカにしてんのか!」
凄まじい剣幕でキュウに怒鳴りあげる。
その気迫に圧倒されたのか押し黙ってしまう。
それが更に気に触ったのか、掴みあげたまま憤怒の形相でエイジへと尋ねる。
「お前……何をした?イカサマか?じゃなきゃこんなことありえねぇ…」
「イカサマしたのはそっちだろ。トリックトランプまで使って……」
「なっ!お前気づいて…」
「しかも、イカサマと見破られないように電能力で合図を送ってたなんてな……やり口が汚ねぇよ…」
イカサマがバレていた。
それも驚きだが、より驚愕したのがキュウの電能力を知っていたこと。
合図の電能はキュウだけの電能では無い。
他にも持っている奴をユウキは知っている。
しかし、都合よくキュウのを知っているなんて事があるのか?
Cが頭文字の単語など山のようにある。
それにCueだと分かっても、能力の詳細までは分からないはず。
何故なら同じCueでも能力は人により差が出るのだから……
「相変わらず驚きだぜ。まさかキュウを超えるイカサマ使いとはな……」
キュウの能力を知っているならイカサマの技術が高いのも知っているだろう。
賭場界隈ならキュウは少し有名だ。
そこから情報を得たなら……
落ち着かせるためか金に困っているエイジがどうやって情報を得たのかの方法を考えずに次々と思考していく。
自分を納得させる為に。
「別にそんなんじゃない」
そしてそれは容易く否定された。
目の前にいる幾分も若い子どもに。
「アンタがやろうとしてた事と同じことをしただけだよ」
「同じこと……だと?」
キュウの電能力でエイジに情報を送った。
なら、誰にもバレずに行える。
ユウキと同じくディーラーのキュウが仲間なら。
「まさか…今までのゲームも」
「最初の一戦目以外はな。回を追うごとに的中率が上がったろ?」
最初の負け。
その後は全てイカサマが行われた。
運がいいと笑っていたあの時も、キュウが心配そうに声を出した時も、イカサマは行われていた。
僅差も接戦も無い。
全てはエイジの手のひらの上だった。
胸ぐらを掴んでいた手をキュウの首元に当てる。
電能力を発動し、殺さない程度に喉を焼こうとする。
制裁と尋問の為に。
「キュウ!!!てめぇ、よく裏切りやがったな!何がお前を動かした?金か!女か!それとも……」
そんなユウキにキュウは絞り出すように言葉を吐き出す。
「《《Aの癖に》》………《《Cの2つ下の癖に偉そうなんだよ》》…」
「はあ?お前そんなことで裏切ったのか?」
呆れるようにユウキは手を離す。
地面に尻もちをつき、咳き込むキュウ。
息を整え、言葉を激流のように吐き出した。
「ああ、そうだよ!俺はイカサマっていう能力がある!お前は電能力だけなんだ!その電能力もA……Cの俺の方がよっぽど希少価値がある。いつも首を閉めたり、電能力で脅したり……金を稼げず組織でも浮いてるんだよ!他のチームならもっと稼げる!俺の才能が使われる!お前の元じゃいくら立っても上に行けねぇ!だから裏切った!俺の価値が認められる場所に行くために…!」
「もういい、Ash」
キュウの頭に手を添える。
電能力を発動し、頭から灰になり、崩れ、消えていく。
1分も経たないうちにキュウは灰の山となった。
ユウキは椅子に座り直し、対面に座るエイジを見据える。
「何をした?」
「何とは?」
質問を質問で返される。
普段なら怒りを覚える反応だが、ユウキはより強い怒りに染められ納得のいく答えが欲しかった。
今はその程度を怒る気も無かった。
「とぼけんな、キュウに、なにかしたろ。不満は確かにあったろう……だが、いささか裏切るにしては理由が弱えぇ。このタイミングで裏切る理由も無いしな。それもこんな小僧に」
冷静に淡々と話してくる。
「説明したいんだが、枷が外れてないと説明できない」
「ウド、外してやれ…」
ユウキの指示で巨体の男がキュウだった灰の中から鍵を取り出す。
そしてエイジに近づき、枷を外した。
ゴトンっ!
その音と共に床に枷が落ちる。
窮屈だったのか少し腕を動かす。
そして歯で服の袖を噛み、捲る。
そこにはアルファベットのAが刻まれていた。
「A。俺と同じ頭文字。そいつはどんな能力なんだ?」
やはり、電能力か。
そういった表情で、エイジの腕のAを眺める。
少しでもおかしな動きをしたら灰にするべく、Ashの準備を整えながら…
「これはAwake。覚醒の電能だ」
「覚醒ね……それで不満を覚醒させたか?それとも正義に覚醒したか?」
「いや、これは自分にしか使えない」
「自分の何を覚醒した…?いや、まさか…………!」
「そして、これが枷を外して貰った理由だ」
そう言うとエイジの腕に刻まれたAの隣りに新たに文字が浮き出る。
それはアルファベットのB。
エイジの腕にはABと刻まれている。
「Awakeは電能を目覚めさせる電能。そして目覚めた電能はBetrayal。対象を裏切らせる電能力」
2つ目の電能。
まるでトランプの中に紛れ込むJOKERのようにそれは姿を表した。
キュウやユウキ、クロエさえも一つの電能しか持たない。
こんな事が有り得ていいのか。
そんな空気に場は支配されていた。
周りの人間が驚く中ユウキは笑っていた。
「なるほどな。確かに電能は複数持てる。方法は難い奴と外道な奴、金がかかる奴の3種類あるが新しい方法だな」
ユウキの顔は納得の表情を浮かべていた。
「枷をつける時に触れたのか。常時発動系じゃなくて、発動さえすれば効果が働きっぱなしの単発発動系か…理解出来た。納得した。これならキュウを処分してよかったな……」
死んでよかったという物言いにエイジは気にかかる。
「殺しておいてよかった?普通逆じゃ無いのか」
クロエから電能力でつけられた傷も治ると言っていた。
この裏切りの能力も治そうとすれば治せるのでは無いのか。
「当然だろ、不満を持っていたんだ。いつか裏切る予定だったんだろ。それが早まっただけ。万が一正気に戻っても俺の元には置いておけねぇ。この業界、裏切ったら信用なんて無いんでね」
倉庫の入口が叩かれる。
ノックが6回。
抽出屋が来た合図だった。
「ようやう来たか……」
「記憶を消して逃がしてくれるんだよな。あとお金も…」
「ああ、約束だからな…」
そう答えるユウキにエイジは驚く。
そんなエイジにユウキは笑った。
「信用第一なんでね。ただキュウを失った分はいつか取り立てに行くぞ。きっちり10億な」
そう笑いながら告げる。
確実に怒っている。
しかし、当たり散らす事は無い。
内に秘め、いずれ全てをエイジに向けるのだろう。
「じゃあ、10億で情報を買わないか?」
「はあ?」
しかし、その時は来るのだろうか。
「裏切ってるのが枷をする前なら、クロエの連絡端末はどうしたんだろうな。それに今来たのは本当に抽出屋なのか?」
「………お前まさかっ!?」
理解し納得していた。
しかし、無理矢理納得させた事が一つだけあった。
今まで全ての信用を賭けに出したキュウ。
それを賭けれる程エイジに信用は無かった。
あの時は電能が覚醒させるならいくらでも電能を得て好きに使えるだろうと予想を立てた。
それで無理に納得した。
しかし、エイジよりも強い信用の相手がいた。
なら、おかしな事は無い。
《《自分たちに反抗する組織に行くならあの裏切りは信用に変わる》》!
この瞬間にユウキは全てに納得した。
それとほぼ同時に倉庫の扉が破壊され、吹き飛ばされる。
扉だけでなく、人も数名飛ばされていた。
倉庫の入口には複数名の人影があった。
「クロエちや〜ん。大丈夫?」
「雑魚がワラワラといるな。掃除のしがいがあるぜ」
「クロエ及び保護対象を発見した」
「情報提供者は……死んでんな。なんまんだぶなんまんだぶ…」
「無駄口を叩くな!さっさと給料分働け!」
「「「「了解!!!!」」」」
黒い影に紛れ、姿は見えない。
しかし、みるみるウチに人が倒されていく。
銃の乱射や鉄パイプも空を切る。
クロエもいつのまにか救出されている。
そんな中ユウキは無言でエイジへと手を伸ばす。
最後に最大の損失を与えたエイジへの報復か。
しかし、間に黒のフルフェイスヘルメットが飛んでくる。
エイジの目の前でヘルメットが灰になる。
その刹那の時間。
それが運命を分けた。
ユウキの手は届かなかった。
「くそがっ…………」
短く悪態をつく。
苦しそうな弱々しい声。
絶望を見続けた男は真の負けを知らなかった。
最後には勝ち、相手の絶望の負け顔を見ていたから。
今まで重ねてきた自分の勝利も霞むほどに。
初めての敗北は辛く苦いものだった。
「エイジ……楽しかったぜ。次遊ぶ時は必ずお前の絶望を見てやるよ…」
クロエやその仲間と思われる人が近づいて来る。
ユウキは不穏な一言を残し、入口とは逆の方向に逃げていった。
しかし、追いかける気力も無ければ意識を保つ気力も無い。
ユウキの逃げる背中を最後にエイジの意識は途絶えたのだった…




