Actor
「ゲームはビッグオアスモールだ。山札から捲ったカードが7より大きいか小さいかを判断するゲームだ」
机を挟み向かい合う2人。
ユウキとエイジは睨み合っている。
それ挟まれるキュウはどこか顔を青くしながら対応する。
ユウキの後ろには巨体の男が立ち、睨みを聞かせている。
そしてエイジの後ろには車椅子に乗った妹、アンジュの姿があった。
どうしてこんな状況になったのか。
それは10分ほど前に戻る。
ユウキによりゲームを誘われたエイジ。
あからさまに罠でしか無かったエイジは素直に首を振るか迷っていた。
その時にキュウが戻ってきた。
車椅子を押しながら。
車椅子には妹のアンジュを乗せていた。
「アンジュ!」
立ち上がろうと動くが藻掻くだけで立つこともできない。
「可愛い子だよなー」
キュウは眠っているアンジュの髪の匂いを嗅ぎ、ニヤリと笑う。
「アンジュに触れるな!」
「確かに気持ち悪ぃ。キュウはこっち戻ってこい」
ユウキに咎められ、手が止まるキュウは不服そうに机へと向かう。
「キュウの言う通り可愛い子だ。眠ったままとはいえ、色々と活用法はあるだろう…」
「アンジュは関係無い!アンジュを解放しろ!」
「おお、怖いなせっかく命の恩人にそれは酷いぜ」
「命の恩人…?」
ユウキが命の恩人と言うことに意味が分からないエイジ。
そこで1度思考が冷静になる。
妹は病院におり、金を払えなければ削除される。
金を払うまでは病院を外に出る事はできない。
ここにアンジュがいるのはそれはユウキが金を払ったからに他ならない。
「一千万。なるほど、こんな危ない事に首を突っ込む訳だぜ。納得納得………まあ、俺が買ったんだがな!」
「貯金が一千万ある!それでアンジュを…!」
「それじゃお前は死ぬだろう。それにまた削除が来たら死ぬぜ」
そんなことはエイジは分かっていた。
だから本が、本を売って得たお金が欲しかったのだ。
「それで、一千万妹ちゃんで稼いでもいいが、気分が良くてな。どうだ?一千万の妹を担保にして俺とカードゲームしようぜ」
それがユウキの交渉だった。
できるのは暇つぶし。
それだけで2人の命を天秤にかけたのだ。
「1戦一千万。お前ら2人の命が二千万。2回勝てば命を買い取ってまた暮らしていけるぜ。どうだ?」
エイジに断る選択肢は残っていなかった。
対電能力者拘束具以外の拘束を外されたエイジは机を挟んでユウキと対峙する。
ディーラーには相変わらずキュウがいる。
1度イカサマが無いかトランプを確認し、軽くゲームのルール確認をした。
その間ユウキがイカサマしたようには見えなかった。
クロエは勝負を遠く眺めていた。
ユウキ達はゲームに集中し始めた。
クロエはチャンスと考えた。
なんとか枷を外せれば連絡を取れる。
1度連絡を取れば仲間が救援に来るはず……
クロエは密かに行動を開始した。
しかし、時間を稼ぐ時間も無くゲームは終了する。
エイジの運が無いのか、ユウキが本当に強いのか。
みるみるうちにカードがユウキに取られ、山札が0枚になる。
「お前は本当に素直だな。こんなに早く終わるなんて運も無い。負けたお前は妹を失ってGAME OVERだ」
妹を移動させようとウドが動き始める。
そんなウドに対してエイジは手を前に出し、制する。
「あ?変な足掻きはやめろ。見苦しい……ウド、とっとと運べ」
「情報を売る。それを一千万で買って欲しい。それでもう1戦したい」
ウドへと命令をくだすユウキに提案を行う。
その提案に1度キョトンとするが、ユウキらニヤリと笑い了承する。
「ホント、面白いな。良いだろう。但し、一千万の値打ちの情報ならな」
「言う前に聞きたい。アンタとそこのウドとキュウ。全員で幾らだと思う?」
自分たちが幾らだと聞かれ、1度考える素振りを取る。
「そうだな…あくまで俺達も蜥蜴の尻尾だからな。一人10億で30億だろう」
「なら、見合うな。クロエは仲間への連絡手段を持っている。取り上げないと全員やられて損失が出るぞ」
そうエイジは告げた。
その言葉に誰よりも目を剥いたのはクロエだった。
エイジの売れる情報とはクロエの情報だった。
それを知られれば救援が来る可能性がある。
しかし、それよりもエイジは妹の身柄を優先した。
いくら取り繕うがそれは紛れも無く、裏切りだった。
「何だと?身体検査は行ったぞ!」
「イヤリングは確認したか?髪で見づらいがしてあるぞ」
それを聞きキュウは急いでクロエの元に向かう。
そして髪をかき上げる。
確かにイヤリングがある。
それを取り確認する。
すると真ん中が割れ、通信番が出てくる。
「ユウキさん!」
「一千万で買うぜ。確かに一千万の値打ちがあるな。なんなら安いくらいだ……」
「なら、増額してくれよ…」
「そうだな……」
少しユウキは考え込む。
「女ァ!残念だったな!直ぐに破壊して……」
「やめろ!」
踏んづけてイヤリングを破壊しようとするキュウをユウキが止める。
「壊した瞬間に緊急信号が送られるかもしれねぇ。キュウ、海に捨ててこい!」
「また俺すか!」
「さっさと行け…」
イヤリングを片手にキュウは倉庫を出ていった。
「エイジとかいったか?」
改めてエイジに向き直るユウキ。
ユウキは尋ねる。
「もう+一千万でいい。それでお前らは自分を買った。その状態でもう1戦やろう。勝てば一千万やる。負けたらお前を殺す。どうだ?」
「提案を呑めば」
「聞かせろ」
「俺だけじゃなくて妹の分も賭ける。それで二千万でゲームをしよう。勝ったら二千万」
最高に口が弧を描く。
三日月のようにニヤリと笑うユウキ。
「1回で終わらせたいのか?せっかちなやつだ。いいぜ、キュウが戻ったらゲームスタートだ」




