接客の基本はスマイルです
志信とシリエルがこのムリェールの町に来てから4ヶ月が過ぎていた・・・・・
「おぉ・・・愛しの君、貴女の美しさには劣るけれど・・・どうかこの指輪を受け取って欲しい・・・」
「いつもありがとうございます♪キレイですね♪・・・・では、鋼のコップとヤカンの2点で2千600クートになります♪」
「あぁ・・・嬉しい・・・・また必ず来ます」
「ご利用ありがとうございましたぁ~、次の方どうぞぉ」
「シノブ様今日は手作りのスフレを持って来ましたの!」
「ありがとうございます。休憩中に頂きますね♪ハンカチ3枚と黒のインク瓶中サイズ、合わせて3点のお買い上げで1130クートになります♪」
「はぁ・・・お姉さまに受け取ってもらって幸せですぅ・・・・また来ますね♪キャハ」
「ご利用ありがとうございましたぁ~」
「次のお客様どうぞぉ~」
現在、志信は雑貨店の店番の真っ最中・・・・・店内は無数の人でごったがえし皆レジの会計の際、必ず何か志信に手渡すと満面の笑みで帰って行った。
やがて店内の品物が少なくなり志信が店に立ち始めて数時間が経過した頃、入り口では複数の人が立ち並び店の入店を止めていた・・・・
「これより志信様はご休憩の時間になられる!一旦入店を禁止する!休憩時間は30分各々通行の邪魔にならぬよう待たれたし!!」
まるでアイドルの握手会の様な異様な熱気の中、志信は店の奥へと下がると机に突っ伏し『ふにゃぁ~』っと情けない声を出しながら休み始めた。
「お疲れさま!あい、頑張ったシノブちゃんには特性ハチミツ酒だ」
「わぁ~ありがとうございます、ホルドさん・・・・では、いただきま~す」
志信は店主のホルドに感謝しつつ渡されたハチミツ酒を美味しそうにゴキュゴキュと飲んでいると、野太い声の男がヅカヅカと奥まで入ってきた。
「邪魔するぜ、丁度良いタイミングだったようだな!」
「あれ?タンクス今日は早いねぇ」
「ちょっと野暮用があるんでね、早めに来たのさ」
「ふーん・・・・それじゃぁ・・・・」
そんな会話をしながら志信はアイテムBOXに手を伸ばそうとすると、今度は高めの穏やかな声でもう1人ツカツカと奥まで入って来た。
「お邪魔するわねシノブさん・・・・ってあらタンクス久しぶり♪」
「っく・・・・・・・嫌な奴と会っちまったぜ」
今度入ってきたのは、司祭のリヒティーだった。
「あれー、リヒティーさんも今日は早いねぇ・・・・・もしかして!タンクスの野暮用って・・・」
「おい!何、勘違いしている!そもそもこいつは男だろ!何で俺がこんな奴と・・・・」
「いや、だからそうゆう関係なのかと・・・・リヒティーさん美人ですし・・・」
「!!・・・・・・・うっうぅ終にばれてしまったわね・・・・そう私とタンクスは・・・・(ぽっ///」
「何が!(ぽっ//// っだ!!適当な事言うな!俺とこいつは強いて言うなら犬猿の仲ってやつよ!」
「タンクス・・・・・・・・・ノリ悪ーい!」
「そうですよ、ここは私を熱く抱擁して気障なセリフを一発かます所でしょ!?」
「だぁー!!煩るせぇ!とっとシノブ、物を出しやがれ!じゃないと俺は帰るからな!」
「あっゴメンゴメン・・・それじゃぁ・・・・・・・はい!今日の分」
そう言って苦笑しつつ志信はアイテムBOXから大量のプレゼントを取り出した。
「相変わらずスゲー量だな・・・・・・」「シノブさんはモテモテですねぇ」
そうして出されたプレゼントをタンクスとリヒティーは黙々と自分達のアイテムBOXへとしまっていった。
「そういやぁ・・・表の数少しへってねぇか?」
「あぁ・・・うん、大分 分裂と統合があったみたいで今は6~8の団体くらいに落ち着いたみたいかな・・・?」
「最初の頃に比べれは落ち着いたなぁ」
「本当に最初は大変だったからねぇ」
この4ヵ月の間、志信とシリエルはとりあえずギルドのランク上げを頑張る事にした・・・・志信は当然戦えないのでエルが冒険のギルドのランク上げをし、志信は商業ギルドや魔法ギルドと海洋ギルドの登録を済ませ町中で、出来る依頼を中心に活動していた
エルの方は元々"罪深の森"で魔物を1人で狩れるだけのスキルもレベルもあったので、トントン拍子にランクを上げ今ではCランクまでになっていた。
一方、志信はタンクスの指示で"何でもできる!"を禁止した状態でランクアップを目指さなければならず多少はランクは上がったが、今だGランクでろくな仕事が無かった・・・・・無論エルと一緒に着いて行っても足手まといであり、Cランクの依頼は受けれないのだから自ずと別行動になっていった。
そんな最中ロナルドから魅了効果を薄めるアイテムを貰ったので、こうやって店番などの接客の仕事をしているのだが・・・・・
「最初の頃は無秩序で、シノブさんの泊まっている宿にまで押しかけて来ましたしねぇ」
「リヒティーさんあの時はご迷惑おかけしました・・・・」
「あぁイイのよ、別にシノブさんが悪いわけではないのですから」
「しかしお前さんのお蔭で町はスゲー活気づいたから、大きなプラスになってるからギルドとしてはありがたいけどな」
そう、いくら魅了の効果を薄めたと言っても抵抗できるスキルを持っていない人に対し効果は絶大で、志信が店番や売り子をしている店は物凄い大盛況となり、志信と付き合いたい老若男女問わず押しかけてきて町は一時騒然となったのだ。
しかしリヒティーとタンクスやギルドのお蔭で一応ルールが制定され、志信も全員の前で演説した事により落ち着きを取り戻したのだ。
「しかし皆さんせっかくプレゼントした物を売られるって、分かっているのに何で持ってくるのでしょう?」
「恋は盲目って言うからなぁ・・・もしかしたらワンチャンスお近づきになれると思っているんじゃねぇのか?」
「さぁ?私はには分かりませんが、今のところ誰も困ってないから良いのではないですかぁ」
ちなみに志信に対するルールとは以下のようになっている・・・・
1:プレゼントは基本いらない、もし渡してもギルド・教会を通して売却します
2:町や人に迷惑をかけない
3:シノブが嫌がることを絶対にしない
4:ストーカー、監視等の行いをしたものはギルド及び国営騎士の名の下に逮捕
5:シノブが休みの日は原則声をかけたりしてはいけない(シノブから声をかけたり、商いの場合は免除)
6:シノブが仕事中もしくは接客時、以外の会話は禁ずる(免除項目は5と同文)
7:会計時の会話は30秒以内に納めること(卑猥な話や中傷・罵倒等の会話は罰則の対象)
8:強引なアプローチや金や武力による独占は禁ずる
9:シノブの働いている店の少人数で品物を買い占めたり、占拠、貸切等を一切を禁ずる
10:以上の事柄を守れない者は、たとえ国王でも拘束及び罰則を与えるものとする
と、まぁこんな感じだ。
そんないつものような会話をしながらプレゼントを粗方片付けると、タンクスは店を出ようと出入り口へと向った。
「うしっ・・・・・こんなもんだろ、残りは教会で捌いてくれ!それじゃあな」
「うん、いつもありがとうタンクス・・・またねぇ」
「おう!じゃあなっ」
にこやかにタンクスは表の人をグイグイと掻き分け店を後にした。
「リヒティーさんも毎回すみません・・・」
「別に構いませんよこれくらい、ヒマですから」
「そんな・・・いつも迷惑ばかりかけてしまって、お詫びもできず・・・」
「あら?それじゃお詫びの品、今貰おうかしら?」
「えっ?・・・・・・んっんんん!?ぷはっ!ちょ・・・何をぉ・・・」
「はい、これでチャラです♪フッフ・・・プックリとした唇よかったですよ、ちょぴりハチミツの味でしたね」
「/////////っ!そりゃハチミツ酒を飲んだんですから当たり前です!そうじゃなくて、貴女!今!!」
あまりにも自然に近づいて来たので、志信は警戒をする暇もなくリヒティーに唇を奪われてしまった。
「顔を真っ赤にして可愛いですよ♪それではシノブさん、これにてごきげんよう・・・」
そう言って優雅にお辞儀をするとスッススっと表の人を軽やかに避けてリヒティーは帰っていった・・・・
(うぅ・・・くそぉ・・・相手は男なのに・・・男なのに・・・・弱間ときめいている自分がいるのが物凄く恥ずかしいぃぃぃぃ・・・・・・・ついでに悔しいぃぃぃぃ)
そんな自問自答をしながらジタバタともがきながら顔の火照りを治まるまで、テーブルに突っ伏していた・・・・・・・
さて、次回あたりから展開を動かそうかと思います。・・・・たぶん・・・