第二十話 <クロス正教>
大晦日ですね。
偶然この日にこの話が来たことを、少し不思議に感じます。
セイジたちの新居がようやく準備完了し、そちらに移った。
近くに警備隊の詰所はあるし、左隣はグシャーネン将軍の広大な邸宅の敷地に接しているし、右隣はラドルビンの邸宅の敷地が接している。というか、両者が均等に土地を出し合って、この館の敷地を提供したのだ。
「でまあ、こういう仕掛けか。」
「ほっほっほっ、婿殿お邪魔するぞ。」
親バカとこっそりつけたくなる公王陛下は、グシャーネン邸宅からの地下道を通って、我が家に平然と入ってきた。
鉱山掘りの得意なドワーフに掘らせれば、200メートル程度の地下道は、あっという間だろう。まあいいけどね。
あんまり驚いていないのは、当家自慢のゴーレムたちが、
「セイジサマ、チカドウガホラレテイルタメ、シンニュウサレルカノウセイガアリマス、ウメマスカ?」
館に来てすぐ聞いてきたからだ。
地下道の位置と方向までセンサーで感知していたので、ああ、グシャーネン将軍の所からなら問題ないと判断した。
試しに聞いてみると、埋めるときはパイルバンカーとかいう振動衝撃波を与え、地盤ごと崩して埋めてしまうらしい。
公王は、娘と同世代の女性が何人もいて、仲良くしてくれている様子に、安心したようである。
またディリエルについてきたメイドや執事たちも、一流ぞろいなので、たとえ公王陛下が突然お出ましになっても、何ら問題は無い。
「将軍様は来られなかったのですか?」
「誘ったのだが、『公王陛下が家族にお会いになられるならとにかく、自分が勝手に他人の家に踏み込むのは失礼になりますので』と固辞したのだ。あれも意外に頭が固いからの。」
将軍が常識派で、セイジは少しほっとした。
あの筋肉ダルマが、夜に突然出てこられたら、心臓に悪い。
「地下道には呼び鈴をつけますので、それを引いてもらえれば、お出迎えできるようにしておきます。」
お風呂やベッドルームで妻たちと楽しんでいるところへ、突然出てこられたりしたら、さすがに具合が悪すぎるし、公王陛下もバツが悪かろう。これでも一応新婚である。
「あ、ああ、そうだな。すまん。」
さすがに、自分の若いころを思い出したのか、公王も一言謝ってくれた。
誰だって、止めるに止められない時というのはあるのだし。
「で、どうだ婿殿。孫はまだかな。」
「父上、いくらなんでも、その、ちょっとお控えくださいませ!。」
真っ赤になるディリエルだが、これが楽しくて聞いてるようなものだろうなあとセイジは思う。
あの顔色を見るだけで、夫婦仲のうまくいってる様子はもろばれだ。
「失礼いたしますぞ、セイジ殿。」
「セイジ殿すまぬ、ちと急用でな、失礼いたす。」
ドアが開いて、地下からラドルビンとグシャーネンの側近コンビが現れた。
「何事だ?」
愛娘いじりで楽しんでいるところを、野暮に邪魔され、少し不機嫌そうな公王陛下。
手を振るので、いらぬ礼儀は無視だという意味らしい。
「実は、サンカーネン枢機卿が、セイジ殿になんとか取り持ってほしいと強く要望されまして。」
「そしてセイジ殿に加えてぜひともハイネ殿も、というところでしょう。」
ハイネがびくりと身を震わせた。
「クロス正教ですか。」
ダレルブレアン公国の国教は、クロス正教と呼ばれている。シンボルの十字といい、元の世界で言うキリスト教に近い。神霊と呼ばれる絶対神と、その子であるシーザスの教えを元にした、聖なる書を規範とする宗教だが、カソリックなどに比べると、多少ゆるいのか教会関係者も結婚の自由がある。2500年ほど歴史があるが、分派もかなりあり、各派で争いも多いらしい。宗教団体としては、有力な信徒はぜひ欲しい所だろうか。
「今や吟遊詩人の人気の歌にまでなっておるのですよ。
『白き紙を漉く黒髪の麗人あり、麗しき美貌を持ち、偉大なる救いの技を持つ』とな。」
ハイネの癒しの力は、異常にハイレベルらしく、馬車にひかれて千切れた足を繋ぎ、高熱で苦しむ重病人すらも治癒させる。
公王や大貴族、法王や枢機卿らに仕える最高技量レベルでめったにいないらしい。
グリの影響かと思ったら、逆にグリはハイネの癒しに引かれて、側に現れたのだそうだ。
その代り、癒しの力はいろいろ悪いものも引き寄せるので、それを全部食べてグリは満足(意外に悪食らしい)、ハイネはきれいになれるという共存関係だ。
「んー、私は異国人の素浪人ですし、妻のハイネは今さら教会にというわけにはいきません。」
「いや、さすがに夫婦の仲を裂いてシスターになどは、聞いたことも無い。ただ、その力を貸してほしいということですじゃ。」
面倒なことになったな、とハイネの方を見ると、嫌そうに震えている。
無理もない、ひどいトラウマで二度と教会になど行きたくあるまい。
「お断りします。妻は長年シスターとして仕えていましたが、結局教会は認めてくれず、一人ぼっちで苦しみぬいてきました。今さら一人になどできませんよ。」
それに、ハイネにはグリがついてくる。
これはディリエルが危惧していたことだが、教会には、神聖域という結界があり、レベルが高いほど奇跡や聖霊(神霊の眷属)降臨を起こしやすくなる(と言っても、限度があるが)。
逆にそれを穢されると、レベルが下がり、奇跡や聖霊の降臨を起こしにくくなる。
ミレン村では愚かな村長が神聖域を壊した教会だから何の問題も起こらなかったが、高レベルの神聖域でも、グリのような大精霊なら、おそらく入るだけで破壊してしまうので、そうなったら何が起こるか想像もつかない。
『場合によっては、大精霊を追い出そうと、聖霊との争いすら起こりかねません。』
セイジは思わず『最終戦争は勘弁してくれ』と思った。
『出来れば宗教とは関わりたくないなあ』
だが、聞いてみると宗教の影響力と権力は、公王でも無視できないものがあるそうだ。
「では、セイジ殿だけでもどうじゃ」
「考えておきましょう。」
「よろしかったのですか?。」
「何が?」
俺が風呂を入れる横で、ハイネがタオルその他を用意しながら、申し訳なさそうに聞いてくる。
ディリエルが引き連れてきたメイドや執事たちはいるし、家の用事のほとんどは彼女たちがしてくれるが、風呂の湯を用意するのは、俺の左手でないと大変すぎる。
「私の事で、セイジ様にご迷惑を・・・」
「妻の事は俺の事、何も遠慮はいらん。」
小柄で頼りなさそうな旦那様が、ハイネにはこの世で最も信頼できる相手に見えた。
その後、風呂に入ると、ハイネは縋り付くように裸をこすりつけ、体を洗うと称して全身でサービスしてきた。
「あの、セイジ様、このような愛撫はお嫌いでしょうか・・・」
「うひょおおおっ」
「うっひゃああっ、そういうテクもあるのっ!」
イーラもガン見している。
「はひいっ、あ、あ、あ、そ、そんなことまでっ、」
ディリエルも真っ赤になりながら、両手の隙間からしっかり見てるし!。
「あ、あかん、こっちまでっ、」
キアナが、太腿の間に手を挟み、体をくねらせる。
「セイジ様、私は・・・」
「いらんことは言わんでいい。」
ハイネが何か言おうとしたが、強引に唇で塞いだ。
自分を卑下するような言葉は、俺には一切不要だ。
4人の妻と、すっきりした朝を迎える。
昨日の夜は、刺激的だったらしく、朝食の時に経験豊富なはずのイーラまで、少しぼーっとしていた。キアナも火照った顔をして、ディリエルは、冷静そうに見えるが目が泳いでいた。
ハイネは、黒のセーターに細身のズボンというすっきりした姿だが、潤んだ眼がキラキラしている。
薄く焼いたパンに、蜂蜜とオリーブオイルをつけ、紅茶に似た飲み物と食べる。
意外にもダレルブレアンでは蜂蜜がよく取れるのと、砂糖なども貿易で良く入ってくるので、甘味料は高くはないのだそうだ。チーズを入れたオムレツの焼き加減も良く、うまい。果物も豊富で、今の時期はリンゴやナシに似た果物が山盛りになっている。
昼や夜は魚がメインで、たまに肉が出るが、比較的味付けもあっさりしていて、魚が好きなセイジには文句が無い食環境である。
だが、全体的に野菜が少なめで、甘みを好むために炭水化物が多いので、料理人に三食必ず野菜をたっぷり入れたスープをつけさせている。今日は、小エビとレタスのような葉野菜と玉ねぎによく似た根野菜のスープで、旨みがたっぷりでよい。貝や小エビのスープはさっぱりとうまく、朝の食事によく合う。
「セイジはすごいスープが好きなんやなあと思っていたけど、三度三度野菜のスープを飲んでたら、肌荒れが減ってしもうたわ。」
「あ、それは私も思った。ニキビがでなくなったのよね。」
キアナとイーラが喜んでいる。
「野菜は大事だぞー。体をきれいにしようと思ったら、肉より野菜だ。」
「私は野菜中心でしたから、有るとほっとします。」
これはハイネ。グリの関係で良い野菜が野草、果物がいつも食べられたからである。
「王家の食事も変えさせないといけませんね、祖父の贅沢病もそれが原因だったのかも。」
ディリエルの言う贅沢病とは、王侯貴族が良くかかる病気で、目が見えなくなったり、小さなケガも治らなくなったりして、寝たきりになる病人も多いらしい。おそらく地球で言う糖尿病だろう。
さて、今日はサンカーネン枢機卿に会ってこなければなるまい。
「ハッハッハッ、お初にお目にかかります。神の使徒にして、教会の僕、サンカーネンと申します。HAHAHAHA!。」
『ちょっと、え、こういの人なの?。』
〝教会の枢機卿" というので、もう少し、静寂、荘厳、厳粛などのイメージを持っていたセイジは面食らった。
『声でけえ・・・』
この世界には拡声器やマイクなんぞ無いわけで、それなりの教会でミサや説教をするとなると、声が小さかったら話にならない。
ダレルブレアン公国教会本部の受付で、面会を申し出たら、ブラウンの髪をした美人のシスター服を着た人が、
「セイジ・リグマ様ですね。サンカーネン枢機卿からうかがっております。午前の予定はすべてセイジ様に空けておりますので、すぐにご案内してよろしいでしょうか?。」
公国本部ともなると、やはりかなり人の出入りも激しいのか、プロの受付嬢としか思えない言葉遣いである。
案内された枢機卿の執務室は、何故かドアがでかい。
そして入って理解した。
枢機卿は縦横でかいのだ。
身長は2メートル、体の横幅もどっしりして、赤い健康そうな肌をした丸顔で、なんというか、赤の枢機卿の服が迫力満点目が痛い。
失礼だが、イメージ的には妖怪『ぬりかべ』に近い。
この体格なら、グシャーネン将軍とタメをはれるんじゃないだろうか・・・、とセイジは思ってしまう。
「ドラゴンスレイヤーと聞きまして、失礼とは思うのですが、お会いするのをワクワクして待っていたんですよ。兄はやたら面会を渋りますしなあ。HAHAHA。」
「え、兄?」
「おや、兄さんまた言わなかったのですか。兄はグシャーネン将軍です。兄は軍に、私は教会の騎士団に入ったのですが、何故か中央に引っ張られまして、こうなってしまいました。」
何故か残念そうに、ど迫力の枢機卿の服をつまむサンカーネン。そういえば、顔だちもひげをつけて考えると、グシャーネンによく似ている。
聞けば、お二人はグレー家という貧乏騎士家の3男と4男。当然家も爵位も継げるはずが無い。
体にだけは自信があったので、軍と騎士団に入ったのだが、それなりに昇進したところで、でかくて丈夫そうな体格と性格の良い若い婿を欲しがっていた軍系貴族と教会重鎮の家に、婿としてほぼ同時に引っ張り込まれたのだそうだ。
元の世界でもそうだったが、体が資本なのは変わらない。いや野蛮で医療が発達していない分、体ははるかに大事だろう。とびぬけて体格の良かったお二人は、もっと家柄やコネの良い貴族の子弟を飛び越して目をつけられたのだと思う。この体を鍛えぬいたら、おそらく瓜二つの筋肉ダルマが出来そうだ。
先ほどの美人の受付嬢・・・じゃなかったシスターが、香りの良いお茶を入れてくれた。
ミンスと呼ばれる、ハッカに似た香りと、それを柔らかく包むような数種のハーブが混ざっていて、わずかな甘みと鼻に抜ける香りで気持ちがスッと落ち着く。
サンカーネン枢機卿は、ドラゴン退治の様子を聞きたがり、狼、陽炎熊、空竜と立て続けに現れた様子を語ると、何とも言いようのない顔をした。
「なんと言いますか、それはまた・・・酷い。」
ドラゴンの竜巻のブレスを、別の力に変えて打ち返し、首を落とした様子を語ると、ぐっと眉を寄せる。その眉は確かに兄上そっくりだった。
「変換の力ですか、しかしドラゴンのブレスとなると、凄いものですな。」
邪を正に、闇を光に変ずる『変換』という力、どちらかと言えば神の奇跡に近く、魔法にもあることはあるらしいのだが、非常に困難なものだそうだ。
「ありがとうございます。私も武を目指したことのある者として、どうしても聞きたかったのですよ。それと話は変わりますが、奥様となられたハイネ殿、そちらについても事情はある程度調べさせていただきました。教会として、敬虔なシスターを置き去り同然にしたこと、深く反省しております。」
聞きたいことを聞くと、今度はハイネの話を持ち出した。
「正直に申せば、ハイネ殿の癒しは、是非ども我が教会に欲しい所でございますが、とてもそのようなことを言えた義理ではありませぬ。教会を代表して、お詫びを申し上げます。」
俺に対して、清々しいまでに頭を下げる光景は、兄のグシャーネン将軍が、王の無事を見て足元でオイオイ泣いていた様子を思い出した。この二人、やっぱり血が濃いのだろう。
また、自分たち教会の恥として、このこと一切を表に出さぬ事も暗に誓っている。
「妻は、教会に対して何一つ恨み言は申しておりません。そのお言葉だけで、十分です。」
「ありがとうございます。これを、法王様よりお預かりしています。よろしければハイネ殿にと。」
それはクロス正教の銀の小さな十字架だった。だが、少しだけ違うのが一番土台の部分にユリの花が刻まれていた。
白百合は、確か聖母の象徴だったはずだ。その事を言うと、枢機卿はほおと目を開いた。
「ご存知でしたか。神の子をお産みになった聖母アリア、その象徴たる白百合は、今なお多くの人々に癒しを授けるハイネ殿をたたえるためです。」
「わかりました。妻にはこれを日常の糧とするよう、申し伝えておきます。」
法王から直接賜った十字架、その権威は地球では考えられないほど高い。
また、この世界では、このような特別な意匠や素材の十字架は、許可なくては下げることは許されない。
庶民や神父は鉄や青銅、司教以上から枢機卿までが銀、法王のみが金の十字架を下げる。
ハイネについての約束を、こういう形で証明したと言えよう。
同時に、たとえ教会に来なくても、この十字架を下げていれば、教会の使徒と言う事にもなる。
奇跡の癒しを授けるハイネは、それだけで教会の名を高めることにもなるだろう。
ハイネは教会は恐れていても、信仰は忘れていないようで、毎朝のお祈りは欠かしたことが無い。喜んで受け取るだろう。
思っていたのとはだいぶん違い、サンカーネン枢機卿との話は、むしろ気を楽にするものになった。
恐らく教会側も、それを見越してグシャーネンの弟をわざとあてたのだろうが。
だから、セイジは気分良く懐の袋を出した。
「これはわずかですが、教会への寄進に。」
「ありがとうございます。」
セイジは枢機卿のでかい手に袋を渡した。
法王の十字架は、価値では測れない権威がある。『うーむ、やられたな』と、少し悔しい気分だった。
入れているのは金貨ではなく、白金貨を10枚。寄進としては破格だろう。
もし、法王の授けた十字架が無かったら、相手を一方的に仰天させてやれたのだが、ちょっと残念だ。
あと、後日俺に、正式な洗礼を行うよう勧められた。
セイジは階位は無いが、勇者や英雄に対する洗礼は公国内での身分保障にもなるので、ぜひとの事。
どうせ、信者としての名前だけの登録である。
サンカーネン枢機卿の勧めなら、喜んで受けることにしよう、とセイジは決めた。
「ウエボッカ殿、ハイネ嬢の夫は力に奢らぬ良い男でありますな。」
セイジを送りだした後の執務室で、一人たたずむサンカーネン枢機卿は、宙を見つめながらつぶやいた。
捨て子だったハイネを拾い育てた老神父は、リスト・ウエボッカといい、クロス正教でも名の知れた治癒術師であった。サンカーネンがまだグレーの名を持ち、騎士団にいた頃、ケガを何度か治してもらったことがある。
ウエボッカは、教会中枢で昇進栄達することも可能だったが、一生をかけて各地の教会を回る事を望んだ。
『私は、民と共にありたいのです。貧しくも清き人々の助けになりたいのです。』
当時のサンカーネンは若く、その純粋な思いに共鳴した。しかし、彼に目を付けた代々枢機卿の家柄のサンカーネン家の当主は、一人娘の婿に彼を迎え入れた。小柄で病弱だった当主は、己の血に強く心根の良い血を混ぜたいと心底願っていて、ウエボッカの紹介がきっかけになり、彼の巨躯と純朴な心根にほれ込んだのである。
自分には不釣り合いなほど、小柄で可愛い一人娘は、貞淑で優しい妻となり、すぐに子供も出来た。こうなると、妻も子も愛しく、そのために必死に働く事が幸せであり、頑丈な体はそれに十二分に応えてくれる。そうすると、彼は自分が思わずともぐんぐん栄達してしまった。
ウエボッカの民と共にありたいという、きらめく思いも忘れられなかった。だが、妻や子のために働く幸せも捨てることなど出来はしない。どちらも神に仕えるという面では、同じなのだ。
ただ、栄達と共に、彼の周りに分厚く人の壁が出来た。
次第に外の声は聞こえにくくなり、年をとったウエボッカの様子も長く耳にしなくなっていた。
もし、もう少し早く、ウエボッカの亡くなった直後でも、その話を聞いていれば、彼が拾い育てた娘を保護してやれただろう。自分の養女として迎え入れていたかもしれない。平穏で幸せな家庭を持たせてあげられたかもしれない。
だが、それは全部自分の都合のよい希望でしかないのだ。
無用で聞きたくもない情報も、今の彼の耳には飛び込んでくる。
長年教会に尽くしたウエボッカの願いに、教会がどれほど冷淡であったか。
彼の拾い育てた娘が、彼の死後どれほど酷く悲惨な2年を過ごしたか。
耳を覆いたくなるような話であったが、それは同時に、自分の負うべき罪でもある。
今教会を背負う者の一人であるのだから。
ウエボッカの忘れ形見を救い、妻として迎えている少年に合い、ハイネ嬢と共に自分もまた救われたと感じた。それゆえに、自分もハイネとセイジを温かく見守ろうと思う。それが残されたものの義務であり、責任なのだから。
「あとは、お任せください、ウエボッカ殿。」
サンカーネンは、亡き友の冥福を静かに祈った。
年の終わりに、思い起こすことはいろいろありますが、来年へ向けてまた紡いでまいります。ここまで駄文をお読みいただき、ありがとうございます。
続きは、新年3日から書こうかと思っております、どうぞよろしくお願いいたします。
来年も皆様に良き年でありますように。




