再出発編2『渚の卒業式』
渚視点です。
私の卒業祝いに、家族みんなが来てくれた。
お父さんも、お母さんも。
お兄ちゃんの両親も。
美凪お姉ちゃんも、夏お姉ちゃんも、ちぃ兄ちゃんも。
みんなが私のために集まってくれた。
「卒業おめでとう」
たくさんのお祝いの言葉をもらった。
プレゼントももらった。
笑顔で祝ってもらった。
私は幸せなはずだった。
ずっと夢見ていた日だった。
大学を卒業して。
これで私も学生じゃなくなる。
これからは、お兄ちゃんともっと一緒にいられる。
そう思っていた。
なのに。
「…………」
ちっとも嬉しくなかった。
胸の奥が、ずっと苦しい。
笑わなきゃ。
せっかくみんなが私のために集まってくれたんだから。
嬉しい顔をしなきゃ。
「ありがとう」
そう言った。
ちゃんと笑えた……つもりだった。
でも。
お兄ちゃんがいない。
私の隣にいるはずだったのに。
写真を撮る時も。
みんなで食事をする時も。
何か面白いことがあれば、一緒に笑ってくれるはずなのに。
いない。
「……」
そんなことを考えちゃダメ。
みんなは私を祝ってくれている。
心からのお祝いをくれている。
それなのに。
「お兄ちゃんがいないから嬉しくない」なんて。
そんなことを思っちゃダメ。
みんなの気持ちに水を差しちゃダメ。
我慢しなきゃ。
ちゃんと笑わなきゃ。
「渚?」
お母さんに声をかけられた。
「……なに?」
「どうしたの?」
「なんでもないよ」
笑った。
今度こそ、ちゃんと笑えた。
そう思った。
でも。
駄目だった。
ぽろり。
頬を、一筋の涙が伝った。
「あ……」
慌てて拭う。
駄目。
泣いちゃ駄目。
せっかくのお祝いなのに。
また一滴。
また一滴。
止まらない。
「ごめ……」
声が震えた。
「ごめんなさい……」
どうして。
どうして止まらないの。
私は幸せなはずなのに。
みんながこんなに祝ってくれているのに。
「……なんで」
とうとう耐えられなくなった。
「なんで……お兄ちゃん、いないの……」
声が漏れた。
「なんで!」
そこから先は、もう駄目だった。
わんわん泣いてしまった。
子供みたいに。
何度も何度も涙を拭っても、止まらなかった。
「お兄ちゃん……!」
会いたい。
会いたいよ。
声を聞きたい。
顔を見たい。
昔のように、笑ってほしい。
「お兄ちゃん……!」
でも。
泣いても。
叫んでも。
お兄ちゃんは帰ってきてくれない。
当たり前だ。
私たちは、もう別れたんだから。
「……うっ……」
また涙が溢れる。
こんな私だから。
こんな面倒な私だから。
お兄ちゃんに嫌われた。
だから、捨てられた。
そう思っているのに。
それでも会いたい。
それでも戻ってきてほしい。
そんなことを願ってしまう。
「ごめんなさい……」
誰に向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。
「みんな……本当に、ごめんなさい……」
せっかく私のために集まってくれたのに。
せっかく笑ってくれているのに。
私は泣いている。
最低だ。
こんな日に。
こんな幸せな日に。
私は。
お兄ちゃんがいないことだけで、こんなにも悲しい。
「ごめんなさい……」
何度謝っても。
涙は止まってくれなかった。
次回から、いよいよクライマックスです。




