第4話「届かない言葉」後編
※本作は、
まだ古い学校の空気が色濃く残っていた頃の、
学校空間の記録です。
過去に起きた出来事を、
映像記録のような感覚で綴っています。
当時実際に使われていた方言表現や、
当時の言い回しをそのまま残している箇所があります。
また、
重苦しい描写や精神的圧迫を含む表現がありますので、
苦手な方はご注意下さい。
※当時の空気をそのまま体感してもらうため、
感情表現は極力削り、
事実の断片を中心に並べています。
教室には、
すすり泣きだけが、
静かな教室の中で、
いつまでも途切れず響いている。
窓の外には、
街並みが見えていた。
いつもと変わらない日常。
『卒業できなくなる』
その言葉が、
教室全体へ深く染み込んでいた。
誰も顔を上げない。
体育教師は、
日頃から言っていた。
『親に言っても無駄だぞ』
『俺は保護者相手でも負けない』
だから、
私は言った。
「大丈夫だよ」
「あれは脅しだから」
「本当に留年させるなら、
教室だって足りないでしょ」
何人もの視線が、
ゆっくりと私へ向く。
泣き終わっていたはずの者たちまで、
黙ったまま、
私を見ていた。
私は、
気づけば叫んでいた。
「やれるもんなら、
やってみ!」
返ってきたのは、
冷めた目と、
刺さるような視線だった。
そして、
誰かが低い声で言った。
『お前、
この状況理解できてる?』
『裏口入学』
さっきまで泣いていたはずなのに、
誰も喋らない。
誰も動かない。
ただ、
時々聞こえる鼻をすする音だけが、
静かに小さく響いていた。
私は席に座ったまま、
うつむいていた。
気づけば、
泣いていた。
窓の外は、
陽光だけが、
何事もなかったように街並みを照らしていた。




