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第2話「連帯の檻」

※本作は、

まだ古い学校の空気が色濃く残っていた頃の、

学校空間の記録です。


過去に起きた出来事を、

映像記録のような感覚で綴っています。


当時実際に使われていた方言表現や、

当時の言い回しをそのまま残している箇所があります。


また、

重苦しい描写や精神的圧迫を含む表現がありますので、

苦手な方はご注意下さい。


※当時の空気をそのまま体感してもらうため、

感情表現は極力削り、

事実の断片を中心に並べています。

後日。


あの罰則は、

単位に関わるものだったのか、

それとも単なる罰だったのか。


母は、

それを確認してきなさいと言った。


そして、

もし単なる罰だと言うのなら、


『家へ来て、

土下座して謝れ』


と伝えてきなさいとも言った。


私は、

担任へ聞いた。


すると担任は、

苛立ったように怒鳴った。


『罰に決まっているだろうが!』


私が、

「土下座して謝れ」と伝えると、


担任は、

小さく鼻で笑った。


『みんな、

決められた工程を、

最後までやり遂げたんだぞ』


家へ戻り、

そのことを両親へ話した。


両親は、

強く怒っていた。


だが、

担任の言葉だけが、

耳へ残った。



あの頃の学校には、

常に見えない圧力が漂っていた。


廊下を歩くだけで、

どこか息苦しい。


教師の機嫌一つで、

教室の空気は簡単に凍りつく。


誰も、

教師へ逆らえるとは思っていなかった。


当時の私たちにとって、

教師は絶対だった。


竹刀を持ち歩く教師もいた。


それだけで、

廊下の空気は、

静まり返っていた。



ある日の授業中。


教室は自習状態で、

担当教員は席を外していた。


少しざわついた教室。


笑い声。


机を引く音。


誰もが、

いつもの時間だと思っていた。


その時だった。


前の扉が、

ガラガラと音を立てて開いた。


だが、

入ってきたのは一人の生徒だった。


安心したように、

再び教室へざわめきが戻った。


うつむいたまま、

ふらつくように歩いている。


顔は真っ青だった。


今にも泣き崩れそうな顔で、

おぼつかない足取りのまま、

ふらふらと教壇へ向かっていく。


ざわついていた教室が、

少しずつ静まっていった。


誰も、

笑わなくなっていた。


やがてその子は、

震える声で言った。


『みんな聞いて……』


その一言で、

教室は一瞬にして静寂に包まれた。


全員の視線が、

その子へ集まる。


その子は、

絞り出すような声で続けた。


『さっき……

体育教師に呼び止められて……』


そこから先は、

か細い涙声になり、

うまく聞き取れなかった。


途切れ途切れの言葉だけが、

静まり返った教室へ落ちていく。


『連帯責任で……

このクラス全員、

留年させるって……』


空気が止まった。


誰も、

動こうとしなかった。


『すみませんでした……』


その子は深々と頭を下げた。


勢いよく扉を開け、

教室を飛び出していった。


数人の生徒が、

慌ててその子を追いかけた。


誰も、

すぐには口を開けなかった。



しばらくして、

後ろの扉が開く。


戻ってきたその子は、

自分の席へ座るなり、

ハンカチで目を押さえた。


涙が、

机へぽたぽたと落ち続けていく。


そんな背中を、

複数の生徒が、

声をかけながら、

さすり続けていた。


『なんで、

うちのクラスだけ

こんな目に遭わなきゃいけないの!』


一人の生徒が叫んだ。


『担任がちゃんとしてれば、

こんなことにならなかったはず!』


別の生徒が言う。


さらに別の生徒が、

涙声で叫んだ。


『ベテランの先生たちは、

教師同士の繋がりも強いけれど……


うちの担任は新人だから、

その皺寄せが全部、

私たちへ来るんだ!』


泣き声。


怒鳴り声。


『どうしよう……』


その言葉だけが、

何度も繰り返される。


誰も、

未来の話をしなくなっていた。


体育教師は、

常日頃から言っていた。


『親に言っても無駄だぞ』


『俺は保護者相手でも負けない』


教室には、

クラス全員の泣き声だけが、

いつまでも響いていた。

異世界は

過去にあり。

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