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3.初めての授業

 入学式から一週間経ち、ようやく今日から授業が始まる。

 この一週間目立たないように学校生活を送ってきた。入学式でのことを忘れてもらうために。

 幸い入学式では前の方に座っていたため、他のクラスの生徒からは後ろ姿しか見られていない。

 よって、浜岡涼太という名前さえ知られなければからかわれることはなかったが、クラスの人からは名前と顔を覚えられ、よくからかわれた。


「浜岡くん、今日は睡眠時間足りてる?」


「は、はい・・・」


 正確には覚えていないがこの一週間でこんなやり取りを、五回は繰り返したと思う。

 後六十八日。苦痛でしかない。

 しかし、今日から待ちに待っていた授業が始まる。プログラミングやネットワークの授業が楽しみでたまらない。

 今日は金曜日。金曜日の時間割を確認してみると国語、ネットワーク基礎、科学、体育、数学だった。

 一時間目開始のチャイムが鳴り、俺は席に着いた。

 しばらくすると50代くらいの男性が教科書をもって教室に来た。恐らくこのおじさんが国語の担当教員なのだろう。


「えー、国語科担当の伴野(ともの)です。皆さんお願いしますね」


 一言だけ挨拶を済ませると、早速教科書を開いて通常の授業を始めてしまった。

 初回の授業くらいもう少し自己紹介の時間を設けてもいいのに。何の面白みもない先生だ。

 早く次の時間にならないかな。そう思い、俺は窓の外を眺めていた。国語は嫌いだ。

 しばらく窓の外を眺めていると、隣の席から手が伸びてきた。

 何だと思い隣を見ると、灯里が俺のノートに黒板に書かれていた内容を写し始めていた。

 優しい。昔から思いやりのある優しい子だったけど、今でもその思いやりが健在しているとは思わなかった。

 俺が彼女を見ていると、灯里が一瞬こっちを向いてきたのでありがとうと伝えた。

 灯里は笑顔で返事をすると、再び二人分のノートをとり始めた。

 それから30分ほど外を眺めていると、チャイムが鳴り、一時間目が終了した。

 先生が教室から出ていくと、灯里が俺のノートを笑顔で返してくれた。


「はいっ!」


「ありがとう。授業サボってる奴のことなんて助けてくれなくていいのに」


「いや、幼馴染って放っておけなくない!?」


 灯里は身振り手振りで激しく訴えてくる。うん、可愛い。

 いやいや、何考えてんだ俺。ダメだ、また頭が回らなくなってきた。

 

「次の授業ってパソコンの部屋だよね?移動しよ?」


 灯里に言われ、次の授業を思い出した。次はネットワーク基礎だ。

 この学校のコンピューター室は全て新校舎棟にあり、俺たちは二階の第三コンピューター室へ向かう。

 教室に到着すると、パソコン全台に番号が割り振られていた。灯里とは出席番号が離れているため、教室に入ってすぐ別れ、俺は自分の出席番号である26番のパソコンへ向かい電源を入れた。

 30秒ほど経過するとログイン画面が表示されたが、まだ自分のアカウントが登録されていないためログインできない。

 その画面をしばらく見つめているとチャイムが鳴った。

 それと同時に準備室から川島先生が出てきた。俺の担任なのに、そういえばこの一週間担当科目を知らなかった。


「みなさん、高校の授業にはもう慣れましたか?さすがにまだか・・・」


 と川島先生は自分の発言に小さい声で突っ込みを入れて、話を続けた。


「一時間目は他のクラスを担当していましたが、自分のクラスの子たちを教えるって何か新鮮ですね!」


 いつもよりテンションが高い。


「みなさんにはまだ伝えていませんでしたが、私の専攻分野はネットワークセキュリティとプログラミング等における基礎的なアルゴリズムです。改めて、この一年間よろしくお願いしますね」


 こういう科目は、大体男性教員が多い印象だが、女性が教えているところを見るのは珍しいと思った。

 川島先生はすらっとした体型で、パソコンを操作するイメージがない。

 なんか新鮮でカッコいい。

 

「えー、早速ですが、今の状態ではみなさんのユーザーアカウントが登録されていないためログインすることが出来ません。これから登録用紙を配布するのでちょっと待っててくださいね」


 登録用紙?パソコンに入力しないのか。

 配布された用紙を見ると、パスワードを記入する四つの枠があった。


「これからみなさんが三年間利用するアカウントのパスワードをその紙に入力してください。数字四文字で」


 おいおいマジかよ。数字四文字とか脆弱すぎないか?しかも物理的にこの用紙を誰かに見られたらパスワードが流出してしまうじゃないか。

 さすがに自分の誕生日では脆弱すぎるので「0716」にしておいた。これは美琴の誕生日だ。


「全員記入出来たみたいなので回収します。出席番号が一番後ろの人、裏向きにして回収してきてください」


 川島先生がそう言うと、一番後ろのメガネをかけた少年が回収しに来た。彼に紙を渡した後、一瞬顔を見られたような気がしたが気のせいだろう。

 彼は全員分の用紙を裏向きのまま川島先生のもとへ届けに行った。


「この用紙をもとに、今日の放課後までに私が登録処理をしておきます。IDは自分の学年とクラスと出席番号をそのまま入力してください。例えば、一年B組26番の人は『1B26』がIDになります」


 なんだ・・・。今はまだパソコン操作できないのか、なんか残念。

 その後も川島先生の話は続く。


「次に、個人用フォルダの説明をします。みなさんには一人5GBまで利用できるストレージがこの学校のサーバーに用意されています。パソコンにログインすると自動的に接続されるので難しい設定は必要ありません。授業で配布されたデータは基本的にこの中に収納するようにしてください。このストレージは本人しかアクセスできないようになっているので安心して利用してくださいね」


 パスワードが脆弱過ぎて全然安心できねえ・・・。

 その後もこのような話が続き、今日の授業は初回という事でコンピューター室の利用方法などの説明だけで終わった。

 今日一番楽しみにしていた授業なだけあって、パソコンを操作できなかったのは残念だ。

 この後の授業は眠くなるようなものばかり。早く授業終わらないかな。

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