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第105話 商人の流れ


 御着。


 市の日。


 市。


 いつも通り。


 人が流れている。


 その中。


 黒田重隆。


 本当にいた。


 椅子。


 茶。


 そして。


 普通に座っている。


 さらに。


 商人。


 次々寄って来る。


「こちら、

 新しい干し物で」


「こっちは甘味を少し」


「茶請けにどうぞ」


 重隆。


 普通に受け取る。


 食う。


「……悪くない」


「塩が少し強いか」


 そんな事を言う。


 すると。


 商人。


 真面目に頷く。


 さらに。


 別の商人。


 寄って来る。


 また話す。


 また食う。


 そして。


 少し離れた所。


 櫛橋伊定。


 その様子を見ていた。


「……こんなんで、

 いいのか?」


 しかも。


 本当に。


 人が寄っている。


 店も。


 前より賑わっている。


 伊定。


 少し困惑。


「これで、

 見世が二件増えたのか?」


 理屈。


 分かるようで。


 分からない。


 そのため。


 伊定。


 直接聞きに行く。


「黒田殿」


 重隆。


 茶を飲みながら。


 視線だけ向ける。


 伊定。


 そのまま問う。


「こんなことで」


「見世が増えるのか?」


 重隆。


 少し笑った。


「そうです」


「ですが」


「わしが食って、

 良いと言えば」


「市の中で、

 良い噂になります」


「良い噂になれば、

 その店は繁盛する」


 少し止まり。


「逆に」


「悪い噂が流れると」


「その店は、

 立ち行かなくなります」


 伊定。


 静かに聞いている。


 重隆。


 さらに続ける。


「それが、

 商人の流れですな」


 その言葉に。


 伊定。


 少し考え込む。


 つまり。


 これは。


 単なる:


「客寄せ」


ではない。


「人が話したくなる流れ」


を。


 作っている。


 そういう事だった。


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