第94話 ご一緒してしまった
市の日。
焼き見世。
相変わらず。
黒田万吉。
座っている。
茶。
焼き物。
そして。
次々。
試食。
最近。
完全に:
「若のいる見世」
として。
目立ち始めていた。
そのため。
別の商人達も。
気付き始める。
「なるほど」
「では、
わが見世も持ってみるか」
一人の商人。
考える。
持って来たのは。
小さめの餅。
串に刺してある。
食べ歩きしやすいよう。
工夫していた。
そして。
若の前へ近付く。
すると。
当然。
護衛。
前へ出る。
商人。
少し止まる。
「……まあ、
そうよな」
護衛。
低く問う。
「何用だ」
商人。
すぐ頭を下げる。
「黒田の若様に、
こちらを」
餅を差し出す。
すると。
万吉。
すぐ言った。
「通してやれ」
護衛。
少し下がる。
万吉。
餅を見る。
「くれると申すのか?」
商人。
少し慌てる。
「えっ」
だが。
万吉。
もう受け取っていた。
「悪いな」
「ちょうど、
違うものが食いたかった」
かなり本音。
そして。
万吉。
店の女へ。
「お前には、
こっちをやろう」
焼き物。
一つ渡す。
さらに。
「まあ、
茶も飲め」
商人。
少し困る。
だが。
流れで。
「……ご一緒してしまった」
座る。
茶。
飲む。
焼き物。
食う。
そして。
餅も食う。
万吉。
かなり真面目に言う。
「餅か」
「少し小さくして、
串に入れる」
「いい考えではないか」
商人。
目を丸くする。
「へっ」
さらに。
焼き物も食う。
「こちらも、
おいしゅうございます」
「特に甘いのがいいですね」
完全に。
普通に会話している。
その様子を。
周囲。
見ていた。
「……なんか」
「商人が、
一緒に茶飲んでるぞ」
「どうなってるんだ、
あの見世」
だが。
人は。
さらに集まっていた。




