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第92話 座る場所



 山裾の小屋。


 焼き見世の話。


 まだ続いていた。


 理由。


「茶が欲しい」


 万吉が。


 言い出したから。


 女衆。


 少し考える。


「茶は合うと思いますよ」


「甘い物の後、

 欲しくなりますし」


 井上之正も。


 頷く。


「焼き物だけだと、

 口が重くなりますからな」


 万吉。


 かなり真面目。


「だろ」


「どうにかしたい」


 すると。


 流れ商人。


 少し困った顔。


「でも」


「座るとこ、

 用意しないと」


 万吉。


 止まる。


「なんでだ?」


 商人。


 指折り始める。


「歩きながらだと、

 こぼします」


「熱いですし」


「あと、

 湯呑の回収が面倒です」


 周囲。


 頷く。


 確かに。


 焼き物は。


 紙で渡せる。


 だが。


 茶は違う。


 器。


 必要。


 しかも。


 市。


 人多い。


 湯呑。


 持って行かれる可能性もある。


 万吉。


 少し考える。


「……なるほど」


 かなり納得。


 すると。


 女まとめ役。


 ぽつり。


「小さい台でも置きます?」


「立って飲めるような」


 さらに。


 別の女。


「竹で札作って、

 湯呑交換にするとか?」


 周囲。


 少しずつ考え始める。


 最近。


 小屋では。


「困る」



「工夫する」


 が。


 完全に定着していた。


 そして。


 万吉。


 ぽつり。


「……椅子、

 増えるな」


 護衛。


 少し笑う。


 焼き見世。


 いつの間にか。


「座る場所」


まで。


 考え始めていた。


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