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第81話 匂い
焼き見世。
準備は。
思ったより大変だった。
鉄板。
かまど。
炭。
煙が出過ぎないように。
火加減も見る。
さらに。
女衆達も。
売り方を考える。
「熱いうち渡した方がいいね」
「紙、
先に切っとこう」
そんな話。
そして。
何とか。
次の市へ間に合った。
当日。
朝。
市が開く。
いつもの見世の横。
新しい。
焼き見世。
炭火。
鉄板。
じゅう。
「……匂い立つな」
通る人間。
少し足を止める。
酒粕。
焼ける香り。
甘い。
香ばしい。
自然に。
人が寄る。
そして。
女衆達。
意外と。
明るく売っている。
「熱いですよー」
「腹に溜まりますよ」
「一つどうです?」
最初は。
ぎこちなかった。
だが。
少しずつ。
慣れて来る。
そして。
買った客。
一口食う。
止まる。
「……うまいな」
別の客。
「これ、
いいな」
すると。
その声で。
また人が寄る。
さらに。
焼き見世へ来た客が。
そのまま。
隣の見世も見る。
草鞋。
飴。
紐。
流れが出来る。
少し離れた所。
万吉と。
井上之正。
見ている。
井上。
ぽつり。
「なかなか、
人集まってますね」
万吉。
頷く。
「そうだな」
少し見た後。
「前より、
いいかも」
小さく呟いた。
匂い。
人。
流れ。
また一つ。
「止まらない流れ」
が。
増え始めていた。




