第76話 帳簿
それから。
若い家臣は。
たびたび。
山裾の小屋へ通うようになっていた。
目的。
「報告」
黒田職隆へ。
万吉が。
何をしているか伝えるため。
だが。
相変わらず。
梅干し。
飴。
紫蘇。
草鞋。
水路。
備蓄。
色々あり過ぎる。
しかも。
最近では。
「全部、
何か意味がある気がする」
余計に困る。
その日も。
小屋へ来ていた。
すると。
帳簿を見ていた万吉が。
ふと顔を上げる。
そして。
当然のように聞いた。
「お前」
「たびたび来るが、
何してるんだ?」
若い家臣。
止まる。
少し迷った後。
正直に答えた。
「殿に」
「見た物を、
報告しております」
沈黙。
万吉。
「ふーん」
それだけ。
若い家臣。
少し拍子抜けする。
すると次の瞬間。
「じゃ」
「お前、
帳簿手伝え」
「……え?」
止まる。
周囲。
普通。
女衆。
「そこ座って」
子供。
「これ運んで」
流れ商人。
「去年の分こっちです」
気付けば。
「私、
なんか使われ始めてる……」
若い家臣。
混乱。
だが。
数日後。
職隆への報告。
少し変わった。
「飴の売れ行きですが」
「普通の方が数は出ます」
「ショウガ入りは、
喉使う者が買っております」
「草鞋は、
一定数残す方針です」
「理由は、
春先不足したため」
「梅干しは、
保存食として試しております」
職隆。
止まる。
前より。
かなり分かりやすい。
「……何故、
急に詳しくなった」
若い家臣。
少し遠い目。
「帳簿を、
見せてもらえるので……」
職隆。
黙る。
そして。
少し頭を抱えた。
報告役として送ったはずなのに。
「向こう側の流れ」
へ。
少しずつ。
巻き込まれ始めていた。




