第74話 なんか変
夜。
山裾の小屋。
火。
作業も終わり。
人も少し落ち着いていた。
小屋へ住み始めた者達。
銅細工の男。
女衆。
子供達。
皆。
なんとなく。
今日の話をしている。
「若様」
「今日も山見てたねぇ」
「紫蘇探してたはずなのに」
「途中から、
全部聞いてたな」
周囲。
少し笑う。
そして。
女まとめ役。
ぽつり。
「初めは」
「私達の生活のために、
頑張ってるんだと思ってた」
皆。
頷く。
川。
仕事。
塩。
草鞋。
実際。
かなり楽になった。
だが。
最近。
少し違う。
「最近、
やたら」
「増やせんか」
「保存は」
「流せるか」
「そんな話、
増えてきたよね」
銅細工の男。
苦笑。
「分かる」
「まず、
残せるか聞く」
「次に、
増えるか聞く」
「最後に、
売れるか聞く」
周囲。
笑う。
さらに。
別の女。
ぽつり。
「あと」
「好物の基準、
なんか変ですね」
「栗好きだって」
「理由、
保存できるからじゃない?」
小屋。
笑いが広がる。
「ありそう」
「干せるしなぁ」
「腹持ちいいし」
さらに。
別の男。
思い出したように言う。
「ほかにも」
「若が好きだって言う物」
「大体、
保存きいたり」
「増やしやすそうな物だったりする」
周囲。
「あー……」
という顔。
「塩とか」
「ショウガとか」
「干せる物好きだよね」
「確かに」
皆。
段々納得し始める。
そして。
女まとめ役。
少し笑いながら。
ぽつり。
「若様」
「人の好き嫌いまで、
流れで見てない?」
小屋。
また笑いが広がる。
だが。
その後。
ふと。
誰かが呟いた。
「……私達」
「どこまで、
やらされるんだろうね」
一瞬。
静かになる。
そして。
誰かが笑う。
「分からん」
「でも」
「気付いたら、
飴作ってた」
「私は組紐だし」
「俺、
銅叩いてる」
「子供ら字書いてるしな」
また笑い。
火の向こう。
万吉は。
まだ何か書いている。
多分。
次の:
保存。
普請。
増やせる物。
そんな事。
そして小屋の者達は。
少しずつ理解していた。
この若の近くにいると。
「気付けば、
何か増えている」
のだと。




