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第53話 組紐


 そこから。

 季節が流れた。

 夏が過ぎ。

 空気が変わる。

 山裾の小屋。

 何度か見世を出し

 流れも。


 少しずつ安定し始めていた。




 縄。




 草鞋。




 修理した鍋。




 前より。




 人も来る。




 一方で。




 川さらいの人数は減っていた。




 理由。




 稲刈り。




 秋。




 村人達も。




 田へ戻る。




 井上之正。




 人数表を見ながら。




「まあ、


 仕方ありませんな」




 万吉。




 頷く。




「米の方が大事だ」




 流れは。




 一つではない。




 そんなある日。




 小屋へ。




 女衆のまとめ役みたいになっている女が。




 少し興奮した顔でやって来た。




「若様!」




「私、


 組紐できるようになりました!」




 そう言って。




 紐を差し出す。




 細かく。




 編まれている。




 まだ荒い。




 だが。




 確かに。




 以前の縄とは違う。




 万吉。




 それを見る。




 そして。




 隣の流れ商人と顔を見合わせた。




「これ、


 売れるか?」




 流れ商人。




 紐を触る。




 編み。




 締まり。




 素材。




 少し考える。




「……使ってる物が悪いので」




「多分、


 今のままでは売れません」




 女。




 少ししゅんとなる。




 だが。




 流れ商人。




 すぐ続けた。




「ただ」




「使う物が、


 ちゃんとした物なら」




「そこそこ売れると思います」




 万吉。




 止まる。




「どこで使う」




 流れ商人。




 紐を見る。




「鎧ですね」




「直したり」




「繋ぎ直したり」




「まとめたり」




「そういうのに使えます」




 さらに。




 少し真面目な顔。




「特に」




「まとまってれば、


 売れやすいです」




 万吉。




 少し考える。




 まとまっている。




 揃っている。




 また。




 流れだった。




 そして。




 ぽつり。




「益は出るか?」




 流れ商人。




 頷く。




「まとまって売れれば、


 益は出ます」




 沈黙。




 万吉。




 もう一度。




 組紐を見る。




 そして。




 女を見る。




「頑張ったな」




 女。




 少し目を丸くする。




 嬉しそうだった。




 万吉。




 その後。




 流れ商人へ向いた。




「糸」




「頼めるか?」




 流れ商人。




 少し止まる。




 今までは。




 余り物。




 拾った物。




 荒い素材。




 だが今。




「売れる物を作るために、


 仕入れる」




 段階へ来ている。




 流れ商人。




 静かに頷いた。




「……探してみます」




 その横で。




 井上之正。




 少し遠い目。




 最初は。




 川だった。




 泥だった。




 道だった。




 それが今。




 組紐。




 仕入れ。




 見世。




 利益。




 そこまで来ている。




 しかも万吉本人は。




 多分。




「流れやすい方がいい」




ぐらいにしか思っていない。




 だが。




 その積み重ねで。




 山裾の小屋は。




 少しずつ。




「仕事場」




から。




「流れを生む場所」




へ変わり始めていた。

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